収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第26話 「能力を消す方法」

 約束していた週末……土曜日がやって来た。

 

 大学時代以来、久々に引っ張り出した緑のバイクでただひたすらに東名高速を走る。

 

 格安中古で買った何世代も型落ちとはいえ、流石にリッターバイクだ。

 製造から50年超のうちのオールドカーとは比べ物にならないくらい速い。

 

 あっという間に小森くんが通う学校の前に到着した。

 

 集合時間より少し早く到着出来たので一番乗りかと思ったが、流石に近くに住んでいる面子には負ける。

 

 俺が到着した時点で集合場所には既にド派手で巨大な「エコ」という言葉とは無縁のアメリカ製のSUVが停まっていた。

 その前で矢上君と友瀬さんがカーターと談笑していた。

 

 海外メーカーの車にはあまり詳しくないが、GMの何か……ハリウッド映画でもそれなりに出て来るやつだ。

 

 1人で自動車の非関税障壁に立ち向かうとは大した奴だと思いながら、SUVの後ろにバイクを停めた。

 

 道路の縁石を利用して「よいしょよいしょ」とシートから降りる。

 昔はこんなことはなかったのに、身長が低くなると色々と大変だ。

 

 バックミラーに写るヘルメットに押さえつけられてボサボサになった髪を整えているとカーターが近寄ってきた。

 

 カーターは向こうの世界ではずっと一張羅のスーツで過ごしていたからか、皺だらけのボロボロのスーツを着た無精髭を生やしただらしないオッサンというイメージしかなかった。

 

 それが今ではきちんと髪は短く整えて髭も綺麗にそって清潔にまとめている。

 

 スーツも体型にピッタリで皺も綺麗に伸ばしている。

 

 やればちゃんと出来るじゃないか。

 

「ラビ助、そのバイクは何なんだよ」

 

 日本に帰って来てからリアルで会うのはこれが初めてだというのに最初の言葉がこれである。

 

 何か気の利いたセリフも言えないのか?

 本当に情緒というものが何も分かっていない。

 

「大学時代から乗ってるバイクだよ。久々に引っ張り出してみたんだけど、やっぱり公道を走るだけならうちの車より速いよ」

「こんなクソ寒い時期にバイクとか……って、よく考えたら冬に箒で空を飛んでいたんだから、今更バイクくらいどうってことはないか」

「逆だ逆。バイクに乗っていたから向かい風に生身で晒されるのや、体重でバランスを取るのに慣れていて箒でも飛べたの」

 

 実際、箒で空を飛ぶという人類未体験の動きに対応出来たのは、バイクで培ったバランス感覚と荷重移動、生身での高速移動の経験が生かせたのが大きい。

 

 そして、別に慣れたところで寒くなくなることはない。

 単に我慢するのに慣れただけだ。

 

「何CC?」

「ナンシーおじさんって実在するんだな。1000ccだよ」

「それで、その彼シャツみたいなブカブカバイクジャケットは何なんだ? 最近の流行り?」

「バイクには長い間乗ってなくて近いうちに売るつもりだったから、ジャケットは昔に着ていたやつしかないんだよ」

 

 そんな他愛ない話をしていると小森くんと柿原さんがやや遅れてやってきた。

 

「うわっ、凄いの乗ってきましたね」

「こういうのを見ると本当に中学生じゃないんだなって」

 

 2人ともバイクが気になるようでシートやカウルなどを触っている。

 

「欲しいんだったらあげるよ。どうせ中古だから売っても大した値段にはならないし」

「タダなら欲しいと言いたいところですけど、貰っても免許がないですし、これって大型バイクでしょ。尚更無理ですよ」

「大型バイクは18歳からなんですけど」

「そう言えば高校生はまだ乗れないのか」

 

 そもそも法律的な問題だった。

 流石にそこの部分をどうにかすることは出来ない。

 

「オレは将来的にハーレーが欲しくて免許だけは取ったから乗れるけど、カワサキはちょっと……」

 

 カーターが色々と分かっていないのはいつもの通りだ。

 

「カワサキの何がダメなんだよ」

「色」

 

 とんだ素人が来てしまったようだ。

 

 身内びいきではあるが神戸で産まれた川崎重工とライムグリーンの魅力について一から説明しようとしたところ、小森くんから声がかかったので中止せざるを得なかった。

 

「全員揃いましたし、そろそろ移動しましょうか」

 

 それは妥当な判断だ。

 俺達はここでバイクの話をするために集まったのではない。

 

「神父」「地下遺跡」についての情報共有と矢上君達に与えられた変な能力を消すためについての説明のためだ。

 

「それでどこに行く? 喫茶店あたりか?」

「そこがいいだろうな。流石に部外者の俺達が学校の中に入って部室で歓談というわけにはいかないだろう」

「じゃあラビ助以外は全員俺の車に乗ってくれ。打ち合わせ場所まで連れて行く。地元民の小森は喫茶店までのナビ係な」

「ナビと言ってもすぐそこですよ。歩いてでも行けます」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 カーターの車を停められる場所が良いだろうということで、国道沿いの珈琲店で打ち合わせを行うことにした。

 せっかくなのでミニケーキなども注文することにする。

 

 流石に朝の早い時間なので客席はガラガラだ。

 これならば色々と込み入った話をしても大丈夫だろう。

 

「こんな喫茶店だと他人に聞かれそうですけど大丈夫なんですか? 重要な話なんでしょ」

「大丈夫。あまりに荒唐無稽すぎてゲームの話をしているとしか思わないだろうから」

 

 カーターの言うことは妥当だ。

 異世界がどうの、魔法がどうのなどと言う話をしていても現実の話とは思わないだろう。

 

「まずは今日の本題から入ろうか」

 

 カーターがスーツのポケットから包帯のように白い紙をグルグル巻きにした球体を取り出した。

 

 白い紙の上にはサインペンで何やら呪文のようなものが書かれていたが、もちろん俺には何が書かれているのか全く読めない。

 

 カーターがその白い紙を破かないように丁寧に解いていくと、中から赤い宝石が姿を現した。

 

 ただ、以前に俺が送った時よりも劣化が進行しているようだった。

 赤い宝石には目立つ白い線がいくつも走っているのが見える。

 

「こいつはラビ助……上戸がオレのところに送ってきた輝く(シャイニング)トラペゾヘドロンという曰く付きのアイテムだ。ちなみに届いた時点で割と粉々だったので、瞬間接着剤で見た目だけは一応直してある」

「そんな雑な扱いでいいのか?」

「大丈夫。届いた時点でこいつは完全に電池切れな上に割れていたんだ。流石にこんな状態だと何も起こらないし起こす方が難しい」

 

 いきなりとんでもなく雑な話が飛んできた。

 

 まあいきなりドカンと爆発しなければ、それでも大丈夫なのかもしれないが。

 

 カーターは赤い宝石にもう一度白い紙を巻き付け直した後に、鞄からセロハンテープを取り出してそれで固定した。

 

 伝説のアイテムの末路にしては本当に雑だが、現代日本での魔術という求められていない存在に対する処遇はこの程度で良いのかもしれない。

 

「こいつは別の次元とこちらの次元を無理矢理接続出来るという機能を持っている。なので、これを使えば異次元に物を送ったり逆に取り寄せたり出来る」

「でも単なる四次元ポケットになんで人間を能力者にするような機能があるんだ」

「扱っている力の問題だ。これは人間に対しては刺激が強すぎるんだ。だから、人間の身体はそれの影響で変質する」

「変質……」

 

「変質」という言葉を聞いて当事者の3人。

 矢上君、柿原さん、友瀬さんの表情が曇った。

 

 今までは精神的に何かが覚醒して、謎の超能力を使えるようになったくらいの認識だったかもしれないが、ここに来て自分達が人体改造されているということに気付いたようだ。

 

「要するに召喚用のゲートみたいな器官が身体の中に作られるんだ。そしてその機能を通して別世界の存在がこちらの世界に現れるようになる。オレの見立てだと『火』だ」

「『火』と言われても……そのまま火炎放射ってわけじゃないんだろ」

「文字通り『火』。火の精霊みたいなものだ。人間の代わりに『火』が全てを支配する世界からそこの住人を喚び出す」

 

 火の世界と言われてもイマイチ想像が追い付かない。

 

 俺の乏しい想像力だと、火山が噴火している荒野でモヒカンがバイクに乗って走っている世紀末しか連想されないし、それは火と一切関係ない。

 

 カーターが向こうの世界で火炎放射スキルを使う時に「火精召喚」と言っていたので、おそらくはそれと同じ炎だとは思うが。

 

「ファンタジー物ではありがちな精霊が住む精霊界みたいな場所ってことでいいですか?」

 

 矢上君がカーターに聞いた話でようやくイメージが固まった。

 

 ゲームやアニメなどでたまに見かける精霊が住む世界。

 

 画面の端から謎のクリスタル(綺麗にカットされたもの)がニョキニョキ生えていて、空にはオーロラが浮かんでおり、何故かギリシャ風のトーガを来たようなオッサンやサラマンダーなどがいる世界だ。

 

 ……これも何か偏ったイメージの気がするな。

 

「ゲーム世代らしい理解だが、概ねその通りだと思う。火の神クトゥグァが支配する世界」

「その世界の火がどういう理屈でカボチャ頭に?」

「こちらの世界では火は水がかかったり強い風が吹くだけで簡単に消えてしまう不安定な現象でしかないから、魔術的な何かを使って物質化して安定する必要があったんだろう。その物質化の過程で召喚者のイメージが使われた。矢上君ならハロウィンのカボチャ。友瀬さんなら赤いクジャク」

 

 それを聞いた矢上君が挙手して言った。

 

「僕が最初にジャッコを召喚する時に脳内で神父の声と姿が出てきたんです。そして選べって」

「選んだのがハロウィン?」

「上戸さんが鳥の使い魔を出していたイメージが記憶に新しかったので。そこからハロウィンが連想されて」

 

 矢上君がそう説明するとカーターが俺の頭を叩いた。

 

「お前のせいじゃねえか!」

「そ、そうかも……すみません、矢上君」

 

 流石にこれは謝罪するしかない。

 

 俺のせいで変なイメージを与えてしまったようだ、

 そして、その結果として出てきたのがハロウィン飾りのカボチャの怪人。

 

 ハロウィン仲間を増やしてしまって本当にすまない。

 

「じゃあ私は? 出てきたのがなんか火の化け物だったんだけど」

 

 柿原さんも不安そうに聞いてきた。

 それを聞いたカーターも悩まし気に答えた。

 

「問題はそいつだ。柿原さんが出したやつはヤマンソ。最近はイオマグヌッソの方が通りが良いのか? これは火の神を召喚する際に勝手に割り込んでこちらの世界に出てくるという、全く別の火の神だ」

「火の神……」

「そいつが出てくる理由はただ1つ。この世界を火の海に包み込んで全てを焼き尽くして火の世界にすること。なので、火の神の世界からの召喚を検知した時に割り込んで自分が火の神のフリで出てこようとする」

「要するにティンダロスみたいなものか」

 

 ティンダロスも強敵だった。

 

 次元移動などの変調を見つけると次元の彼方から飛んできては襲ってくる謎のモンスター。

 一度は撃退できたが、なるべくはもう戦いたくはない。

 

 そいつと同タイプとなると色々と面倒しかないのは分かる。

 

「私のイメージを受けて実体化した使い魔なんじゃなくて、全然関係ないやつが使い魔のフリをして勝手に割り込んできてるだけってこと?」

「そういうことだ。ヤマンソの目的はこの世界を焼き尽くすこと。だから、近いうちに確実に暴走……じゃないな、本来の目的のために動き出す」

 

 大変なことになってきた。

 矢上君と友瀬さんはともかくとして、柿原さんの能力は早く消す必要がある。

 

「その上で今日の本題。矢上君達に変な能力が覚醒した件と、それを消す方法についての説明だ」

 

 カーターが説明すると矢上君、柿原さん、友瀬さん。当事者3人が背筋を伸ばして改めて聞きに入った。

 

「理屈の話は後でするが、結論から言うと召喚能力は消せる。ただし今すぐに全員の能力は消せない」

 

 カーターの説明を聞いて3人が微妙な顔をした。

 もちろん「今すぐに消せない」という部分だろう。

 

「まずはこれを見て欲しい」

 

 カーターが今度は南京錠で閉じられた小さなアタッシュケースを取り出した。

 その中にはやはり先程の赤い宝石と同じく白い紙でグルグル巻きにされたゴルフボールほどの大きさの球体が納められていた。

 

 俺達がその存在を確認した直後にすぐに蓋を閉じて鍵をかけた。

 あまり表には出したくないもののようだ。

 

「今のは魔力結晶。先程の赤い宝石ほどではないが、人間をほんの少しだけ変質させることが出来る」

「変質?」

 

 明らかによろしくないワードだ。

 赤い宝石で身体をおかしくいじられているというのに更にまた変えられるというのだから。

 

 だが、カーターの話はまだ途中なので割り込むには早い。

 同じように矢上君達も不安そうな顔をしてカーターが話の続きを待っている。

 

「虫歯治療みたいなもんだと思って欲しい。虫歯の穴に歯科用レジンを詰めるようなもんだ。魔力結晶は人間が作り出した魔術の道具なので、人間に特殊能力を与えるという大きな変化なんて起こせないが、その分だけ制御はしやすくて事故はまず起こらない」

「そんな小さい変化で大丈夫なんですか?」

「召喚能力ってのは無数の歯車が付いた時計みたいな精密機械だと思って欲しい。なので、そこに異物が詰まって1つでも歯車が止まれば全てが止まる」

 

 処置を不安に思っている相手に対して虫歯治療でたとえたのはなかなか上手いと思った。

 

 確かに自然界には存在しないものを人間の身体に埋め込む手術ではあるが、それで痛みはなくなるし、それ以上の症状の悪化も止まる。

 

 外見で目立つようなところもない。

 

 3人も安堵の表情を見せている。

 

「それで今すぐに消せないというのは?」

「この魔力結晶にあるエネルギー残量だと2人分の治療しか出来ない。最初に話を聞いた時には2人ということだったからどうにかなる予定だったんだが」

 

 今すぐに出来ないという話について理解できた。

 

 矢上君と柿原さんだけならどうとでもなったが、友瀬さんという3人目が出て来てしまった。

 

 他にも教団に協力している木島君やその他アルファがいるはずだ。

 

 全員から召喚能力を消して回るにはカーターの持っている魔力結晶ではエネルギー不足だということだ。

 

 先程まで安堵の表情を見せていた3人の表情がまたも曇った。

 

「何とかならないんですか?」

「なる。要するにこの魔力結晶を充電すれば良いんだ。そして、その充電先はすぐ近くにある。ここまで説明すれば分かるな」

 

 流石に魔術の知識がない俺にもそれくらいは分かる。

 

「赤い宝石の出番ってわけか」

「そういうことだ。赤い宝石はそのままでは使えないが、秘めているエネルギーを充電器として使えば、魔力結晶を充電出来る」

 

 思っているよりも簡単な話だった。

 ダンジョンを攻略して最深部で宝を見付けたらそれがハッピーエンドに繋がる。

 

 冒険の王道だ。

 

 金銀財宝を見付けて大金持ちというのはちと違うが、それで元の生活も戻ってくる。

 町で暗躍している「神父」も撃退して町の平和も戻ってくる。

 

 分かりやすい目標が提示されて矢上君達も少し元気になったようだ。

 

「その上であえて確認だ。明らかに柿原さんのヤマンソだけはヤバいので、今のうちに能力を消しておくという選択肢はある」

「遠慮しておきます。私だけ1人だけ抜け出すのはちょっと違うと思うので。消すなら3人揃ってです」

 

 カーターの提案に対して柿原さんは即答した。

 

 柿原さんの気持ちは何となく理解できる。

 

 柿原さんは他人が困っているのに自分だけが安全圏にいて黙って見ていることに耐えられないタイプだ。

 逆に他人を助けるためならば自分をコスト計算から外せる……まあ、俺と似た感じだ。

 

 その上で小森くんや矢上君の気持ちも分かる。

 大切な友人が危険な目に遭うのが耐えられず、出来るだけ遠ざけたいと感じている。

 

 俺もドロシーちゃんがいつ暴走するか分からず、常に気にしていた時は同じ心境だった。

 そして、あの時は結局暴走を止められず、結果としてレルム君やタルタロスさん、カーターを負傷させてしまった。

 

 そう言う意味では柿原さんを護るのは俺のリベンジマッチでもある。

 

 毒食わば皿までだ。

 

「では柿原さん。今晩は私と一緒に行きましょうか」

「えっ? でも良いんですか? 和泉さんには未成年を危険な場所に連れ回すなと怒られたはずじゃ……」

 

 柿原は驚きと戸惑いを隠しきれないようだった。

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

 

「今の状況ってどこにいても危ないんですよ。ならば目に見える範囲内で私が監督している方が間違いはないと思います」

「私としては嬉しいですけど……」

 

 その瞬間、小森と矢上が焦ったように駆け寄ってきた。

 

「ラビさん、流石にそれはダメですよ! 柿原が……何かあったら困るじゃないですか」

「僕も同感です。綾乃が行くなら、当然僕も行きます。でも、だからって安易に納得するわけにはいきませんよ。危険すぎます」

 

 2人も柿原さんを本気で心配しているのは分かる。

 だからこそだ。

 

「でも……私は役に立ちたいの。危ないって分かってるけど、ずっと誰かに守られてばかりじゃ嫌だし、自分で決めたい」

 

 柿原さんの決意の言葉に、小森くんは一瞬言葉を失った。

 それでも柿原さんの意思を尊重する方向に傾いたのだろう。

 

「わかった。だけど、絶対に無茶はさせないからな。俺がいるんだ、心配しなくていい。何が有っても護ってやる」

「そういうことだよ、僕達は君を守ることを諦めたりしないからね」

 

 柿原さんは良い友人に恵まれたようだ。

 

「ということですけど、友瀬さんはどうされます?」

「わ……私も行きます!」

 

 友瀬さんの声は震えていたが、決意は固いようだった。

 

 この場にいた誰もが覚悟を決めていた。

 

 善人の……否、まともな大人ならば未成年が危険に突入しようとしているのだから止めるべきだろう。

 世間的にはそれが正しい。

 大人は子供を護るものだからだ。

 

 それを分かった上で、悪役である魔女としては、あえて柿原さん達に同行を頼みたい。

 本人の意思を大切にしたい。

 

 もちろん、戦闘力だけならば多分、探偵さん達よりあるだろうから、一か所に固まって暴れてもらう方が安全という打算的な考えがないわけではない。

 

 地上の大人の社会の中で政治やら法律やらにがんじがらめになって戦うならば未成年の彼らは無力だが、イリーガルな地下の遺跡での異能力バトルならばそれらに縛られる必要はない。

 全力で暴れてもらいたい。

 

「どうせ聞くまでもないだろうと思ってるんだろうけど」

 

 俺の心を読んだようにカーターが声を掛けて来た。

 

「オレも行くこと前提で全員揃ったと思ってない?」

「思ってたよ」

「この悪人め。まあ、魔術の知識がなくて困る場面があるだろし、優しいオレが最年長の監督として一緒に行ってやるよ」

「すまない、いつも助かるよ」

「悪いと思ってるなら、そろそろうちに来いって。前から言ってたほうとうパーティーやろうぜ」

「今回の件が片付いたら必ず行くよ」

 

 これで全員での地下遺跡への突入が決まった。

 

 では学校の遺跡地下への最後のメンバー、探偵の2人を迎えに行こうか。

 

「ということです。矢上君、探偵の和泉さんに伝えてください。異世界帰りの魔女、上戸佑が会って話をしたいと」

 

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