収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第55話 「家宅捜索」

 周囲の再開発から取り残された、古びた団地。

 

 老朽化のため一度は取り壊しが検討されたものの、市がその計画に待ったをかけた。

 

 若者たちが、少ない初期費用で自分の店を持てる場所として活用し、地域の活性化に繋げようと提唱したからだ。

 

 市の補助金を受けて団地は格安の家賃の雑居ビルとして改装された。

 

 その結果、1階にはレストランが入り、2階には美容室とアクセサリーショップが並んでいる。

 

 そんな雑居ビルの4階に宗教法人「星の智慧(ちえ)」の事務所がある。

 

 3階部分は建前上は空き室になっているが、以前に矢上君達はここで謎の怪人……おそらく使い魔に遭遇している。

 

 3階部分は実質教団の倉庫などの目的で活用されていると考えて良いだろう。

 

 4階の窓際付近に設置されている防犯カメラの上に鳥を乗せて、そこから室内を覗き込ませる。

 これならば防犯カメラには何も記録されない。

 

 事務所内では事務員らしき中年女性が1人でノートPCを広げて何やら書類のようなものへ何かのデータを入力しているだけだ。

 

 他には誰もいないように見える。

 

 もし、能力者が身を潜めているとしたら建前上は無人で誰も使用していないはずの3階の方かもしれない。

 

「なんでもいいですけど、中の部屋は古い団地と思えないくらい綺麗で広いですね」

「全国的に行われている古団地のリノベーションですよ。壁をぶち抜いて元2部屋を商業用雑居ビルとして改装しているんです。1階や2階も同じ構造です」

 

 和泉さんが双眼鏡で団地の様子を確認しながら説明してくれた。

 

 俺達が今いるのは団地からおおよそ300m離れた高層マンションの一室。

 

 10年ほど前まではここにも団地が建っていたらしい。

 

 それが老朽化を理由に最新式の高級賃貸マンションに建て変わった。

 

 ただ、団地と比べて家賃を大幅に上げすぎたせいか、入居率はあまり良くはないようだが。

 

 それこそ、俺達が教団事務所を監視するために、こっそりと空き室に忍び込んでも、住民や管理人が誰も気付かない程度には入居率は低い。

 

「4階は1フロア……全部教団が使っているんですよね。4部屋ぶち抜きですか?」

「資料によると1階や2階と同じく2部屋ぶち抜きですよ。ベランダを通路代わりにして1フロア1室という贅沢な使い方をしているんです」

「どうせなら3階も教団の事務所として借りれば良かったのに」

「目立ちたくないんでしょう。流石に家賃が安いと人気の物件を2フロアも占拠すると、それはそれで煙が立つというもの」

「1フロア全部使ってるのもそれはそれで不満の声が出そうですけどね。3階も表向きは放置だし」

「なので、私達が教団を追い出したら後にはヨガ教室でも入るんじゃないですかね?」

「ヨガか」

 

 ヨガ教室に通う生徒が空中浮遊した状態から口から火を噴き出し、ヨガテレポートしたりする映像が脳裏に浮かんだ。

 

 いや、今は宗教法人のことは忘れよう。

 ……忘れちゃいけない、そっちが本題だ。

 

「でも、警察の家宅捜索に対して能力で抵抗なんてしますかね? 一時的には追い返せても所詮は多勢に無勢ですよ」

 

 俺が疑問を口にすると、和泉さんが双眼鏡を下ろした。

 

「今回は権限を駆使して異例の速度で令状を取りました。マスコミへの報道規制も必要ないほどです。私達以外にあの団地を監視している者は誰もいません」

 

 和泉さんの言う通り、連中の本拠地である団地の周囲にマスコミの姿はなかった。

 

 そのことは、上空から使い魔の視点で周辺を監視していることで確認できる。

 

 どれほど巧妙に身を隠しているつもりでも、人は空からの視線までは意識しない。

 

 地上を歩いて暮らす人間にとって、三次元の視点は日常の感覚から外れているのだ。

 

「速さにこだわったのは証拠隠滅を防ぐためです。教団を潰すだけならともかく、東議員に繋がる証拠を手に入れるには時間的な余裕を与えるわけにはいきません」

「速さが重要なのは分かりましたが、法律的に教団や議員を追い込める根拠は十分なんですか?」

 

 俺の質問に和泉さんは眉間にシワを寄せた。

 あまりよろしくないようだ。

 

「ギリギリ……よりもブラック寄りですね。以前から教団は監視団体として機会を窺っていたので準備だけはしていましたが、神父は黙秘で何も語らず。手に入ったのは大胡少年からの証言とメールのみ。流石に家宅捜索に踏み入る根拠としては若干弱い」

「それでも勝負に出る必要が有ったと」

「教団の歴史は調べられたのでしょう?」

 

 それはもちろんだ。

 

 昭和初期には警察が大捕物を仕掛けて教団を解散させたにも関わらず、すぐに復活して現在もこうやって生き延びているのだ。

 

 時間を与えるとあの手この手を駆使して逃走して、ほとぼりが冷めた頃に復活してくるのは分かる。

 

「中心人物である神父を捕縛し、実働部隊複数人を捉えた今回は教団を追い込めることが出来る稀有なチャンスです。この機を逃せばまたのらりくらり逃げられるでしょう」

「根拠が弱いからこそ、この家宅捜索で決定的な証拠をゲットさせる必要があると」

「そういうことです。なので連中からすると、一度でも警察を脅して追い返せば東議員の権力をフルに使って嫌疑不十分として揺さぶりをかけられる算段でしょう。官憲の横暴だと。そうなれば我々の負けです」

「世論を味方に付けられたら負けと」

「どの道、異能力を正しく取り締まれるような法律なんて今の日本にはありませんからね。無理矢理でも動いて別件で起訴するしかないんです」

「やっぱり官憲の横暴なのでは?」

「我々は正義の味方ではないですからね。警察とも癒着した社会の裏に潜む悪の秘密結社ですよ」

 

 和泉さんがどこまで本気か分からない冗談を交えながら笑みを浮かべた。

 

 おー、こわいこわい。闇の権力怖い。

 

「能力者が事務所内に見当たらないのは気になりますが、家宅捜索の時間が近付いてきました。我々も団地の近くに移動して準備に入りましょう」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 2月は流石に17時近くになると日が落ちて一気に暗くなる。

 

 そんな中、古い団地の階段を重々しい足音が駆け上がっていく背広姿の数人、そして制服の警官。

 

 彼らは無言のまま、4階の奥まった一室の前で足を止めた。

 先頭に立っていた背広姿の警察官がチャイムをが鳴らす。

 ほどなくして中から中年の女性が顔を覗かせた。

 

「はい、どちら様でしょうか……?」

 

 先頭の男が懐から書類を取り出して広げた。

 

「警視庁です。こちら、家宅捜索の令状になります」

「えっ……?」

 

 女性の顔が引きつった。

 

「この令状に基づき、横浜市にて発生した匿名、流動型犯罪の捜索を致します。ご協力をお願いします」

 

 女性の視線が書類を泳ぐが、内容を理解するよりも先に、背後から一人、また一人と空のダンボールを抱えた警察官が床を軋ませながら室内へと入っていく。

 

「ちょ、ちょっと待ってください、何のご用ですか? 私、何も聞いてませんけど――!」

「必要であれば、後ほど説明します。まずは令状に基づき、捜索を実施させていただきます。証拠品が見つかりましたら差し押さえを致します」

「誰か……誰かーっ!」

 

 警察官達は女性を無視して淡々と薄暗い室内を奥へと進んでいった。

 

「何から行きましょう?」

「事務机にあるPCが最優先だ。外付けディスクなどが繋がっていないかについても確認を。紙資料について事前打ち合わせ通りに」

 

 そして奥の部屋に入ったところで足が止まった。

 

 部屋の隅――窓も照明もないそこには「誰か」が立っていた。

 

 逆光と薄闇のせいで最初は判別できず、ただ黒い人影のように見えた。

 

 先頭に立っていた背広姿の警察官が目を擦る。

 

 部屋が暗いため、室内に立っている人間を黒い影と見誤ったと考えたのだろう。

 

「誰かいるのか? 部屋が暗いからよく見えない」

「こう暗くちゃ何も出来ませんね。照明点けます」

「ああ、点けてくれ。なんでこんな暗闇で作業をしてたんだ?」

 

 先頭の男が命じると制服の警察官が壁際に設置されている照明のスイッチに手を伸ばした。

 

 暗い室内が一気に明るくなる。

 だが、人影は依然として黒い影のままだ。

 

「人……じゃない? ただの置物か?」

 

 背広姿の警察官はその黒い影の正体を確かめるべく、半歩前へ出た。

 

 刹那、その影がざらりと動いた。

 

 風でも、呼吸でもない……無数の細かな粒子が形を解いていく。

 

 思わず呟いた声に、誰も答えなかった。

 影が崩れた。音もなく。重力に抗うようにふわりと浮き上がったそれは――無数の羽虫だった。

 

 警察官の叫びが響くよりも早く、羽虫の群れが全身を覆い尽くした。

 

 後ろの警察官たちが叫びながら後退する。

 

 その足元にも、ぽたりぽたりと黒いしずくのような羽虫が落ちていた。

 

「な、なんだこれ……」

「うわあああああ!」

 

 誰かの叫びを合図に、制服の男たちが教団の女性を突き飛ばして、我先にと入り口へ殺到した。

 

 そんな彼らをかき分けて2人……青年と中学生くらいの少女が室内へと入ってきた。

 

「極光!」

 

 少女の叫びと共にかざした手のひらから、まばゆい虹色の光が放たれ、暗い室内を明るく照らし上げた。

 

 虹色の光は少女の手の動きに併せるように部屋中を撫でるように走り回り、照射を受けた羽虫は焼け焦げて次々と床へと落ちていく。

 その残骸は床に積もり、まるで黒い絨毯を敷いたようになった。

 

「あまりやりすぎないでください。押収すべき証拠まで焼いてしまいます」

「それはもちろん」

 

 少女が手の向きをベランダ方面へと向けると、虹色の光の軌跡の先にあった扉に張られたガラスが一瞬で砕け散った。

 

 やや遅れてガラスだけではなく扉自体も圧力に耐えきれずに勢い良くドアレールから外れて吹き飛び、ベランダの壁に派手に叩きつけられた。

 

「派手にやらないでくださいと言いましたよね」

「すみません、私の能力は調整が利かないんです」

「火力が低いと言っていませんでしたか?」

「最初は弱かったんですよ。今はちょっと強くなっただけで。それよりも本体の方を。こいつら、ただの分体なのでいくら叩いてもキリがなさそうですよ」

 

 少女が目を閉じて右手を拝むように立てた。

 ややあって、人差し指だけを立てた状態で真下を指差す。

 

「事前に3階も調べておけば良かったですね。こいつの本体は真下……3階に潜んでいます。矢上君の時と逆パターンです!」

「分かりました。私が迎撃に向かいます!」

「目視出来たのは1人だけです。他にもう1人潜んでいる可能性がありますので奇襲に気をつけてください」

「もちろんです。上戸さんは上に残って警察官の護衛をお願いします」

 

 青年は扉が破壊されて筒抜けになったベランダへと勢い良く駆け出した。

 

 その勢いを殺さずにベランダの壁の縁を掴むと、跳び箱のように壁から宙へ身体を踊らせた。

 

 もちろんそのままでは地上へと落下するだけだが、ベランダの縁を掴んだ手を軸に器用に空中で身体を捻って方向転換。

 そのまま飛び蹴りのように角度を付けて3階のベランダへと飛び込んで行った。

 

 短時間にあまりに多くの出来事が起こり、呆気に取られて動きを止めている警察官達に少女は向き直った。

 

「もう大丈夫です。ここは私達がガードしますので、家宅捜索を継続してください」

「協力者が来るとは聞いていたが……こんな事態が起こるとは」

「作業継続いただいても大丈夫です。先程のような虫が出て来ても私が対処致しますので」 

 

   ◆ ◆ ◆

 

「上戸さんの言うとおりで敵は目の前に1人だけ。もう1人の姿は確認出来ず……」

 

 和泉の前にいたのはレザージャケットを着た体格の良い男だった。

 男の周辺には蚊柱のような羽虫の群れが黒い筒のように浮かんでいる。

 

 警察官を襲った羽虫はこの男の召喚能力で間違いないだろうと和泉は考える。

 

「降伏しろ! 今ならば我々の中で内密に処理出来る。上の階の警察に見つかれば公務執行妨害と傷害の現行犯で重刑は免れないと知れ!」

「そんな必要はないだろ。ここでお前を倒して逃げ切れば済む話だ!」

「聞く耳持たずか……」

 

 和泉は手に持ったアタッシュケースのロックを外して床に落とした。

 

 衝撃で蓋が開いたケースの中から術具であるナイフを取り出し、宙で星印を描くように印を切る。

 

 陰陽術が召喚能力者が喚び出した使い魔に対して有効であることは既に経験から分かっているからだ。

 

 和泉はナイフを構え、男と一定の距離を保ったまますり足で動き始める。

 

「お前は私と対峙した時点で既に敗北している」

「どういう意味だ?」

「私を倒すには使い魔を手元に呼び寄せる必要がある。そうすれば階上の警察官達を攻撃出来ず、目的は果たされない。だが警察への攻撃を優先すればお前は無防備になり、この場で倒される」

 

 痛いところを突かれたのかレザージャケットの男が下唇を噛んだ。

 

 苦々しい顔つきで改めてすり足で移動を続ける和泉を睨みつけるように見る。

 

「今のうちに降伏すればどんなメリットがある?」

「他の教団員や議員からの報復からの身柄の保護は約束しよう。警察と違って我々は暇でもないし予算も限られている。適当に匿った後は釈放する。その後どこへ行くのも自由だ」

「この羽虫の能力はどうなる?」

「教団に与えられたその召喚能力は消させてもらう。方法については説明出来ない」

「ならば答えはNo(ノゥ)だ! こんな使い勝手の良い能力を手放すなんてありえない」

「その発想がありえないな。教団にインスタントに与えられた力だろう。突然なくなることを考えたことが有るのか?」

「後付だろうが力は力だ!」

 

 男の前に黒い人影……人の形に集まった羽虫の集合体が出現する。

 

「ここでお前を倒した後に上の階の警察官達も倒す。それで目的は全て果たされる」

「知っているか? それを取らぬ狸の皮算用と言うんだぞ。実現不可能な内容を計画に盛り込むな」

「ならお前は狩られる側の狸なんだよ!」

 

 男の叫びと共に黒い人影が「ほどけた」

 

 そのまま無数の羽虫の群れとなって和泉の方へ向かおうとする。

 だが、羽虫の群れはターゲットである和泉から大きく逸れて、誰もいない部屋の隅へと向かっていく。

 

「なんだこれは? どうして俺の命令を聞かない!?」

「気付かなかったのか? 既にここは私が展開した陣形の中だ」

 

 和泉の指摘通り、経年劣化で剥がれかけた板の間の床面に淡く光る幾何学模様のような図形が描かれれていた。

 

 和泉が会話中にさり気なく摺り足移動ついでに靴の踵で描いていた方陣だ。

 

奇門遁甲(きもんとんこう)……お前の攻撃はもうどこにも届かない。全て害のない方向へと流れて無力化される」

「ふざけるな!」

 

 破れかぶれか男はジャケットをはだけて内側に付けていた革のホルダーからナイフを抜いた。

 

 和泉のナイフよりも更に刀身が長く幅広の軍用ナイフだ。

 

「それでどう勝つつもりなんだ?」

「ほざけ!」

 

 男はナイフで切りかかるが、先程の羽虫と同じく、やはり和泉とは全く関係ない虚空を切り裂くのみだった。

 

「どこにも届かないと説明したはずだが」

 

 男は和泉に顎へ強烈なストレートパンチを入れられてあっさりと意識を奪われた。

 

 男が昏倒して床に倒れると共に羽虫の群れも自然と姿を消した。

 

「典型的なにわか能力者だな。与えられた力に溺れて、ろくに研鑽もしなかったのか。高校生達の方がよほどしっかりしている」

 

 和泉は床に転がったままのアタッシュケースから手錠を取り出し、男の後ろ手に手錠をかけた。

 

「あと1つだけ訂正を要求する。陰陽道は人を幻惑することから狐には喩えられるが狸などと一緒にされるのは困る」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 大捕物というにはあっさり気味の家宅捜索はつつがなく終了した。

 

 押収されたPCはこれから警察が時間をかけて解析予定ではある。

 そこに他の能力者情報が入っていれば良し。

 

 東議員や秘書の関与の証拠が入っていても良し。

 

 能力者の片割れは早々と逃走してしまったようだが、1名だけでも拘束出来ただけ良しとしたい。

 

「上戸さん、ご協力ありがとうございました」

 

 和泉さんが握手を求めてきたので応じる。

 

「これで一区切りです。議員については我々の出る幕はないでしょう。ここで押収したものから得られた証拠を元に後の手はずは警察が進めてくれます」

「流石に、最後にラスボスを倒してドーンという感じではないですね」

「現代の日本で、しかも議員が戦うわけもないですからね。荒事については終わりです」

 

 割とあっさりだが、神父がいなくなり、事務所も機能しなくなった時点で教団も終わりだ。

 

 能力者1人が逃走中というのは気になるが、流石にその人物の素性も名前も知らないので、追跡しようがない。

 

 羽虫を操っていた奴の口から正体が出るかどうかだが、その時はその時だ。

 

「この事件も後処理を残すだけですので、私の出番は終わりです。私は次の案件に移りますので、何かあれば八頭から連絡があるかと思います」

「大変ですね。休みなしに次の仕事とか」

「陰陽師だの言ってますが、実態は会社勤めのサラリーマンですからね」

 

 やっぱりどこの世界も大変だ。

 

「そうですか。和泉さんもお元気で」

「いえいえ。出来れば貴女には我々の仲間になって事件解決に協力していただけるとありがたかったのですが」

「褒め言葉としては受け取っておきます。流石に本業があるのと、一生荒事で生きていく気はしないので」

「それは残念。まあ、こんな事件に関わる人間なんていないので、またどこかで会うことも有るでしょう」

「そうですね。またどこかで」

 

 実際、現実離れした事件に対応出来る人材はほぼいないようなので、思いも寄らないところに急に再会することもあるだろう。

 

 それこそ人の縁だ。

 

 警察官達が押収した証拠品を運んでいく。

 

 デスクトップとノートPC、何かの帳簿、手書きのノートなど。

 事務所1つ分なので思っていた家宅捜索よりは押収物が少ない。

 

 テレビのニュースでは汚職事件などで踏み込んだ場合はダンボール箱を次々と運ぶ映像を見るが、それに比べると明らかに小規模だ。

 

 ここでふと思い出した。

 教団や議員は何らかの理由のためのメダルを集めようとしていた。

 

 もしかしたら、メダルを集めていた理由が分かるかもしれないと思ったのだが、今のところ警察官がそれらしいものを見つけた様子はない。 

 

「そうだ、メダルだ。押収物の中にメダルはありますか? 少なくとも矢上君が取引で渡したメダルはあるはずなのですが」

「メダルですか? 私が聞いてきましょう」

「頼みます」

 

 和泉さんは小走りで警察官に駆け寄って会話をした後に戻ってきた。

 

「今のところ、メダルやそれに類する物は見つかっていないようです」

「となると、既に議員のところへ運ばれたのか。それとも、またどこか知らない拠点に隠されているのか……」

「警察が押収したPCの中から何か情報は出てくるかもしれませんが……」

 

 連中がメダルを集めて何かをやろうとしていることは明らかだ。

 

 議員の手駒は減っているとはいえ0にはなっていない。

 少なくともここから逃げ出した謎の能力者が1名残っている。

 

「小森くんに警告を出しておくか。新聞部の部室に保管してある銀のメダルが狙われるかもしれない」 

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