収穫祭の魔女   作:れいてんし

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Chapter 12 「この世界に友人はいません」

 シャワーを浴びて下水の臭いを落とした後に向かった先は食堂。もちろんおばちゃん達の手伝いのためだ。

 

 食材がない問題は解決したものの、だからと言って突然に食材が生えてきて全て解決とはいかない。

 

 この日は疑似肉ハンバーガーで乗り切るしかない。

 

 泣いても笑ってもこの食堂で働けるのは残り2日だ。

 その間にやれることはやりきってしまおう。

 

 作業内容はひたすら大豆油の絞り滓からハンバーグを作るだけという、料理というより工場での手作業に近い。

 

 ただ、焼き上げたハンバーグを葉物野菜やピクルス、ケチャップ代わりの煮詰めたトマトソースと一緒にパンに挟むと見慣れたハンバーガーの形になるのはなかなか面白い。

 

「食堂の客はこっちでさばくよ。エクセルちゃんは注文されてる弁当の方を頼む」

 

 芋おばちゃんに注文表を渡されて確認すると、生徒会に渡す分だけにしては随分と数が多い。

 

「朝から兵士達が随分ここにやってきていただろう。あいつらの分が増えたんだってさ」

「それでこの数か」

 

 さすがに作り置きの分では足りないので、ハンバーグを捏ねるところから始めていると、早くもアイリスが弁当を受け取りに食堂にやってきた。

 

「エクセルさん、お弁当を取りに来たんですけど」

「ええ、少し待ってくださいね。すぐに焼き上げてしまいますので」

「はい。では少しそこで待っていますね」

 

 流石にあまり待たせることは出来ない。

 手早く調理を進めて、完成したハンバーガーからどんどんとバスケットに詰めていく。

 

 規定数作ったところで再度、注文との数が相違ないことを確認する。

 指さし確認ヨシっ!

 

「こちら数は揃っています。ただ、念の為に確認してくださいね」

 

 そう説明するとアイリスは数を数えていき、バスケットの中からハンバーガーを1つ取り出した。

 

「1人分多いですね」

 

 何を見てヨシと言ったんですか状態だったのかと反省しつつ、またも数を確認するが、注文票と相違ない。

 

「注文いただいた数は合っているはずですけど」

「ロータスさんが昨日から登校してきていないのでその分かもしれません」

 

 それならば数が合わないのも道理だ。

 

 ロータスは屈強なお兄さん達にハイエースされていってそれっきりだ。

 流石に解放はされないと思うが、今後、生徒会の書記職はどうするのだろう?

 

「ところでアイリスさんの分は含まれているのですか?」

「私の分?」

 

 アイリスは少し考えて手を叩いた。

 

「確かに私の分がないですね。食堂で食べるつもりだったのでこの数には入っていません」

「でも、弁当を生徒会に届けた後にそこで話をしていたら、あなたが食事する時間がなくなるでしょう。なら、これはあなたの分です。生徒会の方々と一緒に食事なさい」

 

 アイリスが取り出したハンバーガーを詰め直して持たせる。

 

「私が頂いても良いのでしょうか?」

「大丈夫ですよ。生徒会の中にあなたを嫌う人は居ません。さあ、行ってきなさい」

「エクセルさんはどうするんですか?」

「私はまだ厨房がしばらく忙しいので、時間をズラして食べるつもりです。私に無理につき合わなくても大丈夫ですよ」

「分かりました。夕食こそは一緒に食べましょうね」

 

 そう言うとアイリスはハンバーガーが詰まったバスケットを持って走り去っていった。

 

「さて、協力していただいた兵士さん達の分20人前も作らないとな」

 

 兵士たちは肉体労働で腹も減るだろう。

 そう考えて、ハンバーグの肉の量は生徒のものより若干多めにサービスしておく。

 

 どの道、食材を余らせても仕方がない。

 

 そこからしばらくはひたすら疑似肉を作ったり、焼いたりする地味な作業が続いた。

 

 一心不乱にフライパンを振っていると、いつの間にか食堂の客足は途絶えていた。

 どうやら昼休みが終わり、生徒たちは午後の授業のために教室へ引き上げていったようだ。

 

「おつかれさん。今日も頑張ったね」

「後は食器洗いと片付けです。手早く済ませましょう」

「そうだね。今日はいつもより使った皿の枚数は少ないからすぐに片付くよ」

 

 この日の料理はハンバーガー。

 1人あたり使う皿は1枚だけなので、洗う皿の数も少なくて済む。

 

 3人がかりで手分けするとすぐに終了した。

 

 流石に疲れたので椅子へ座り込み、残った食材でまかない料理を作って食べる。

 

「それでは明日の仕込みですが……どうします?」

「どうしようかねぇ、予算もないし」

 

 豆おばちゃんと頭を悩ませる。

 

 大豆油の絞り滓は安価なためにまだ量の余裕はあるが、他の食材を買う予算はない。

 

 勝手に魔物の餌を食材として注文されていた件については解決したものの、だからと言って急に予算や魔物へ与えた食材が生えてくるわけもない。

 

 朝にマントの集団が持ち出した肉の塊については、まだ魔物に提供こそされてはいなかったが、流石に下水道内に持ち込まれた時点で衛生的にアウトなので処分している。

 実に勿体ない。

 

 豆おばちゃんとかさ増し出来るスープやシチューなどはどうだろうかと翌日のメニューについて話していると、芋おばちゃんが血相を変えて厨房へ走って戻ってきた。

 

 手には大きな革袋が握られている。

 

「何なんです、その袋は?」

「弁当を取りに来た兵士さん達が食事の代金と言って渡してくれたんだが、ちょっと見てくれよ」

 

 芋おばちゃんがテーブルの上に袋の中身をぶちまけた。

 

 それは20人前のハンバーガーには明らかに多すぎる金額の金貨と銀貨の山。

 

 そして一枚の手紙だった。

 

 手紙には、

 

 これは兵士20人分の昼食代である。

 2日分なので明日の式典警護の兵士の分も作るように。

 浪費癖のある男が豪遊しただけなので金の出所は気にするな。

 民が腹いっぱい食えるように国を維持するのが王としての責務である。

 

 シンプルに必要最低限の内容が箇条書きにされていた。

 

 内容については120点を出したいところだ。

 

 こういうのをさらりと出せるあたり、やはり第二王子が王になるべきではないかと思う。

 第三王子が宰相なり何なりのポジションに付いてサポートすれば、良い国になるのではないだろうか。

 

「殿下から昼食代ってことなんだけど、どうするんだいこれ?」

「折角のご好意ですのでありがたく頂戴致しましょう。これだけあれば何日分の食材を買えそうですか?」

「1ヶ月は十分持つね。明日からは通常メニューに戻せるよ」

 

 本当に朗報だ。

 

 せっかくなので、王子の偉功が多くの人に伝わるように手紙は食堂の目立つところに張り出しておく。

 

「それよりも、学校の事務員からの聞き取りに参考人として参加しろと言われているんだが」

「例の食材横領の件ですね。知っていることを全部話してもらえればそれで済むと思います。あとは、食堂側から出した注文表の控えみたいなものがあればなお良いと思いますね」

「なら、こちらの帳簿とメニューの記録だね。これなら何日に何を注文したのかハッキリ記録されている」

 

 記録についてはそれで良さそうだ。

 

 かくして芋おばちゃんと一緒に学校側の事務員への聞き取りの参考人として参加することになった。

 

   ◆ ◆ ◆

 

「ありがとうございます。こちらについては数日預からせていただいてよろしいでしょうか?」

「ああ。私らが不正をしてないって証明されるならそれでいいよ」

 

 芋おばちゃんが第二王子が連れてきた次官へ資料提出を済ませた時点で参考人聴取については完了だ。

 

 食堂側はむしろ被害者側なのだから、それ以上突っ込まれるわけがないのは当然の話なのだが。

 

「じゃあ私は食堂に戻って明日の仕込みをするよ」

「なら私も」

「いえ、エクセルさんは殿下よりここに残るように言付けを預かっております」

「えっ?」

 

 王子が用事とは何だろう?

 

 まさか何か他の証拠が見つかったのだろうか?

 

「なら私だけでも戻るよ。あとはこっちに任せてもらえばいい」

「すみません、お願いします」

 

 しばらく椅子に座って待っていると、兵士が1人やってきた。

 

「殿下がお待ちです。こちらへ」

 

 兵士達に案内された先には生徒指導室となっていた。

 

「この中で殿下がお待ちです」

 

 兵士に礼を言って中に入ると、渋い顔の第二王子が座っていた。

 

「エクセルか……まあ、その椅子にかけろ」

 

 王子に言われるとおりに椅子に座る。

 生徒指導室なので、ちょうど王子に対面の形になった。

 

「ここならば誰にも聞かれることはないから安心してくれ」

「……これは食堂関係者への聞き取り調査とは別件ですよね」

 

 最初は事務員から学長に関する情報が出てきたのかと思ったが、どうも違う。

 

 これは自分への聞き取り調査だ。

 

「エクセル……お前は何者だ?」

「私は私です。他に何だと思ったんですか?」

 

 王子は何やら紐で閉じられた書類の束を取り出した。

 

「この学校の五年間の入学記録だ。この記録の中にエクセル、お前の名前はどこにもなかった」

 

 なるほど、流石にハッタリで回避できるような状況ではないようだ。

 

「不思議に思って成績表も調べてみたが、何故かそちらには記録が残っていた。ただその成績は綺麗に平均値。他の成績に全く影響を与えないように平均値で記録されている」

「珍しい偶然もあるものですね」

「全ての科目で中央値ではなく平均値を取るような生徒は成績上位者だ。私や生徒会がその存在を全く知らないというのはありえない」

 

 これは運営の仕事だろう。

 

 他に一切影響を与えないように成績が完全に平均値の生徒の記録を1人割り込ませた。

 それならば平均値の値が変わることはない。

 

 だが、そのせいで明らかに不自然な存在が産まれてしまったということか。

 

「お前はここの学生ではないな」

「それは私が退学通知を――」

「わからないのはそこだ」

 

 王子が睨みつけるようにこちらを見てきた。

 

「工作員が入学や編入の書類を偽装して学校に入るならば分かる。だが、わざわざ手間をかけて退学通知書を用意して学校を出て行くというのがよく分からない。さも当然のように学生寮の部屋が用意されていて、その退去通知まで出ている件も不自然すぎる」

 

 王子が次に出したのは学生寮の退去通知だった。

 

 こちらは完全に初見だが、2日後の昼には部屋を出ていくように書かれている。

 

「予算の横領に手を貸していた事務員や生徒会書紀のこともあったから、魔法学校に在籍中の全ての生徒と職員の記録を洗わせたんだよ。入学通知を誤魔化した工作員だと思われる連中が複数見つかったが、その過程で不自然すぎるお前の経歴が見つかった」

 

 なるほど、これは流石にもはや言い逃れは不可能のようだ。

 

 最終日にアイリスだけに事実を告げてこの世界を去るつもりだったが、ここは計画を変更する必要があるだろう。

 

「エクセル、お前は何者だ?」

「何者と言われましても」

「何度も私を助けてくれたことから敵ではないことは理解している。だからお前を咎めるつもりもない。ただ、どこの勢力に所属しているのかくらいは知りたい」

 

 また適当に「雇われ主を裏切れない」「真実を告げられない」などと適当なハッタリで誤魔化すかと考えたが、王子の真摯な目を見て止めた。

 

 さすがに潮時だ。

 誤魔化さずに真実を告げることにした。

 

 もはや不要になった退学通知書を机の上へ叩き付ける。

 

「私は異世界から来ました。本来、この世界に来るはずの人間の代わりに間違って連れてこられた異世界人です」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「私は異世界人です」

 

 それを聞いた王子の眉がピクリと上がった。

 

「異世界というのは? 近隣諸国とは違うのだな」

「全く違います。世界の法則すら異なる別の世界のことです」

「それは神や天使が住む天界とは別のものなのか?」

「天界でもないですし、悪魔がいる地獄でもないですね。あくまで普通に人間が住んでいる別の世界のことです」

 

 正直に話すと、王子が頭を抱えた。

 

「海の向こうでもないのだな」

「海は海でも次元の海ですね。天に浮かぶ月よりも太陽よりも遠い場所です」

「次元の海……」

 

 次元の概念は流石に言葉で簡単には伝えようがない。

 今の自分にはこのようにしか表現できない。

 

「てっきり兄上か、公爵あたりの雇われ工作員か何かだと思って鞍替えを薦めるつもりだったのだが……」

「兄上ということは第一王子ですか?」

「ああ。本来の王位継承者。兄上が病臥で伏せることなどなければ、私や弟が王位継承権なるものに振り回されることはなかった」

「本当に残念です」

 

 何が残念なのかは分からないが、とりあえず言うだけ言っておく。

 

 状況からすると、病気で余命僅かなので代わりとして第二王子と第三王子に次期国王の話が回ってきたのだろう。

 

「それで、その異世界人が何の用でここに来たんだ?」

「だから人違いです。私は人違いでここに喚ばれました」

「いや、その人違いというのがよく分からないのだが……本来喚ばれるはずの人間は何のためにここへ来るはずだったんだ?」

「私にも分からん」

「えっ?」

「えっ?」

 

 会話が完全に途切れた。

 正直、この件は誰にも分からないのだから答えようがない。

 

「人違いで呼ばれたので何も聞いていないんですよ。だから本来この世界でやるべき役割なんて何も知りません」

「では、何の目的があって私や弟に接触した? 元々喚ばれる人物の代わりに動いていたのではないのか?」

「殿下と会ったのは完全に偶然ですね。夜に寝ようとしたら、窓から誰かが人に追われている光景が見えたので、助けに入ったら、それがたまたま殿下でした」

「それだけ?」

「それだけですが何か?」

「すまん、頭が痛くなってきた。つまり、私を助けたのは打算や何かの計画というわけではなくて、単におせっかいでしかないと」

「はい」

 

 王子の顔が「何かを追求してやろう」という顔から、どんどんと呆れたような顔へと変わっていく。

 

 だが実際、単なるおせっかいだったのでどうしようもない。

 

「逆に言うと私でなくとも助けたということか」

「はい。相手が悪人ならばその場で叩きのめすことも考えましたが、それ以外は助けるつもりでした」

「メリットもないのに人を助けるのか」

「人を助けるのに理由が必要ですか?」

「それが自らを危険に晒す行為だったとしても?」

「危険は回避できます。みんな助かるのが一番です」

 

 王子はここで大きくため息を付いた。

 

「では弟に接触したのは?」

「逆です。中庭の壁の亀裂やら食堂の予算の不正流用やら調べていたら、会長の方から接触がありましたので学校側に予算の見直しを頼みました。それだけの関係です」

「では従姉妹は?」

「何故か突っかかってきたので学校の平和のためにやっているんだと説明したら協力者になってくれました」

 

 それを聞いた王子は机に突っ伏して、そのまま動かなくなった。

 

「うちの従姉妹はアホなのか?」

「残念ながら失礼を承知で申し上げると細かいことを何も気にせず、頭で考えるより先に身体が動くタイプなので。決して悪い人間ではないのですが」

「確かに悪人でもないし、能力も高いのは知っているが……」

 

 気持ちは分かるが、きっと将来的には成長してくれると信じたい。

 

「では、もう帰っていいですか?」

「いや待て……本当に何の私達に対して下心はないのか? 取り入って何か利益を得たいとか」

 

 王子がゆっくりと顔を起こしてこちらを見たので正直に答える。

 

「一切ないですね」

「本当に? 私や弟は王族だぞ。恩を売れば得られるメリットは大きい」

「すみません、明後日には元の世界に帰るので、この世界での権力とかお金とか正直全く意味がありません」

「えっ?」

「だから、私は人違いなので明後日には元の世界に強制送還されます」

「そんな急に帰らないといけないのか?」

「元々5日間の滞在でしたので。異世界魔法学校4泊5日の旅です」

「それで、5日以内に退去というわけか」

 

 王子は頭を抑えたまま動かない。

 

「日程を……伸ばせないのか?」

「自分の意思ではないんですよ、この日程は。それにこの世界では私は場違いなので、長期滞在をするつもりもありませんでした。5日間で帰すという約束がなければ、自力で初日のうちに帰宅していたと思います」

「場違い? この世界に留まろうという意思もないのか?」

「ないですね。元の世界で待っている友人もいるので、友人がいないこの世界に留まる理由はありません」

「友人がいない? お前の中で私はどういう扱いなんだ?」

「不敬を承知で申し上げますが、よろしいでしょうか?」

「今更不敬も何もあったものではないだろう。怒らないからハッキリと言え」

 

 流石に失礼だと思ったが、怒らないらしいので、希望通りにハッキリ言おう。

 

「旅先に行った時に――」

「――そこでたまたま出会っただけの人物か?」

「いえ、旅先で景色を堪能していたら、そこで茂みの中から餌をねだって出てきた野良猫が出てきたとします」

「まあ、そういうこともあるな。海沿いだと野良猫はよく見る」

「殿下はその猫と同じ扱いです」

「待て!」

 

 王子は机を大きくバンと叩いて立ち上がった。

 

「いや、猫って……猫はないだろう、猫は」

「でも、こちらからするとそういう感覚なんですよ。わずか5日の滞在期間中に偶然出会った現地の生き物。撫でたり餌くらいはあげても良いが、家に連れ帰るほどでもない。その程度の関係」

「私の名前を一度も呼ばないのもそういうことか」

「はい。殿下も会長も……この世界で出会った人物の大半の方の名前を私は知りません。5日間の関係なのでそれで十分だと思いました」

「そうか、私は人としてすら見られていなかったのか」

 

 王子は猫扱いが気に入らなかったのか、明後日の方向を向いてしまった。

 こちらを一切見ようともしない。

 

「お前にとってこの世界は何なんだ?」

「旅の途中で立ち寄った旅先です。こちらはあくまで間違えて喚ばれただけの通りすがりですので」

「なら、誰にも近寄らずにさっさと通り過ぎろ!」

「そうですね。今後、異世界に喚ばれた時は、誰にも近寄らずに通り過ぎるだけにするようにします」

「ああ。この事件については全てこちらで解決する。その同室のアイリスとやらにも便宜をはかるようにしておく。だから、お前も、もうこの学校に近付くな」

 

 王子を怒らせてしまったかもしれない。

 だが、これくらいで丁度良いのだ。

 どうせこの世界には5日間しか滞在できない。

 

 この世界の人間と仲良くなっても、別れが辛くなるだけだ。

 

どうせ住む世界が違うし、一度別れたらもう今生会うことはない。

 

 これくらいドライな関係の方が後腐れなく縁を切ることが出来る。

 もう辛い別れは簡便だ。

 

 お辞儀をして部屋を出ると、後方からドカンと何かを扉に投げつける音と王子の叫び声が聞こえたが、振り返らずにその場を後にした。

 

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