収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第六話 「電波で伝わるメッセージ」

「横川、明山、無事だったか!」

「安坂さんこそよくご無事で」

「おれを誰だと思ってるんだ。調査チームも全員無事だ」

 

 俺達はラバンと名乗る少年に消防署へ案内された。

 

 そこでようやく、当初の目的だった警察3人と調査チーム5人と合流することができた。

 

 当初の目的では、この8人と合流した時点で任務完了だった。

 

 もちろん、当初と状況が変わった今では「はい終わり」というわけにはいかない。

 

「勝山の怪我の状況は?」

「良くないですね。アバラが折れていると思います。今は痛み止めで少し抑えられていますが」

 

 勝山というのは調査チームの負傷者だ。

 影の攻撃をもろに受けて負傷したらしい。

 

 ギリギリ歩くことはできるが、今も脂汗をかいており、顔色も良くない。

 内臓のどこかにもダメージがあるのかもしれない。

 

 衰弱している子供たちも心配だが、勝山さんの体調も看過できない。

 回復系能力者がいないのが残念でならない。

 

「これからどうするかについて、一度会議をしましょう」

 

 まずはお互い持っている情報を交換した上で、方針についてまとめたい。

 最悪、子供たちと勝山さんだけでも脱出させる方向で進めたいところだ。

 

「この消防署にはブリーフィングルームがある。そこを使おう」

 

 この消防署のリーダーというラバンが言った。

 

「俺たちも当然会議には参加する権利はあるんだろうな」

 

 こちらは俺たちが最初に会った剣士の笠取だ。

 同じく侍風の太田、ボウガンの射手である西原が続く。

 

「これからの方針にも関係します。是非とも出席してください」

 

 ラバンが何か言う前に俺が先んじて言った。

 

 どうもこのラバンという少年からは、笠取とその仲間たちに対して微妙に敵意のようなものを感じる。

 

 それだけではなく、俺たちや安坂刑事や他の警官たちに対しても若干「自分たちが助けてやった」と恩に着せるところがある。

 

 少し前までは普通の少年だっただろうに、運営が仕掛けたゲームのルールにはまり込んで振り回されている感がある。

 

 やたら自分がSSRで能力が高いと強調するあたり余計にそう感じる。

 

 SSRにはLimitedもあるし、更に上に元住宅公団があると知ったらどういう反応をするのかは気になる。

 

 この少年は、ここから解放されても元の生活に戻れるのだろうか?

 それだけは気になる。

 

「おれたちはどうするかね?」

「安坂さんは参加願えないでしょうか? あと、その会議中に明山さんには調査していただきたいことがあります」

「私がですか? さすがに外に出て調査は危険なので勘弁したいのですが」

 

 これは鑑識課として専門知識を持ち、電気工作にも詳しい明山さんにしかできない調査だ。

 

「この消防署内だけでいいです。おそらく他の民家も同じだと思いますので。ここの電気と水道の出所を、わかる範囲で調べてください」

「電気と水道?」

「この町には変電所も水道施設も、送電鉄塔もないんです」

 

 俺が空から確認して作った簡易地図を見せながら説明を始めると、まだ地図を渡していなかったラバンが興奮しながら詰め寄ってきた。

 

「その地図を見せてくれないか? この迷路のような町でも、それがあれば攻略ももっと効率よく進む」

「もちろん渡しますよ。ただ、その前に会議で方針を決めてからです」

「交換条件というわけか?」

「そういうことではなくて、作業は分担しようという話ですよ」

 

 やはりこの少年はどこか危なっかしい。

 

 そのラバンの後ろにいた仲間であろう眼鏡をかけた魔法使いの少女、ソーラが申し訳なさそうに頭を下げていた。

 

 もう一人の仲間のパインという格闘家の少女は我関せずという雰囲気だ。

 

 何らかの能力を使用して俺の使い魔の視覚から見つからないように隠れたのはこの人物。

 

 飄々(ひょうひょう)とした、とらえようのない楽観主義者を演じているようだが、たまに俺や和泉さんに向ける目つきは、猫系の猛獣が獲物に向けるのと同じような気配を感じる。

 

 とんだ猫かぶりだ。

 

 実質的なリーダーはこの少女で、リーダー風を吹かしているラバンはその先兵(パシリ)

 

 なんとかチームが成り立っているのは、ソーラという少女が参謀役として機能しているからか?

 

 以前に俺が立てたレアリティが高いほど危険人物説が信ぴょう性を帯びてきた。

 

 最初に出会った全員(レア)の若者3人がまず最初にキャラネームではなくて日本人名を名乗ったことも合わせると余計にだ。

 

「それはともかく、明山さんは調査をお願いします」

「配電盤や水道のメーターを見るくらいしかできなさそうだけど」

「成果はなくとも大丈夫です。なので、確認をお願いします」

「わかりました。たいした時間や手間もかからないだろうし、調べておきます」

 

 こちらは大丈夫そうだ。

 できることからコツコツと進めていくしかない。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 会議の参加者はラバンたち3人、笠取さん、安坂刑事。

 それに俺と和泉さんの7人だ。

 

「現在は負傷者が1人、そして衰弱した子供が2人がいます。この3人は最優先で医療機関に運ぶ必要があります」

 

 まずは今の状況説明を始める。

 

 最終的には、おそらく運営の仕業だと思われるこのゲームに強制参加させられた人々も含めた全員をこの閉ざされた空間から脱出させる必要があるのだが、それはすぐには出来ない。

 

 なので、最優先事項は負傷者を病院へ搬送することだ。

 

「ここからの脱出手段はあるのか? それを確認したい」

「脱出手段は3つあります。1つ目はこのゲームの運営が準備した方法で脱出すること」

「ゲーム運営の脱出方法というのは?」

「この町のどこかに最初の部屋にあったのと同じ形をした扉があります。そこにゲームの参加者3人が入ると、この世界のどこかに飛ばされます」

「なんでそんなことをあんたが知っているんだ?」

 

 ラバンが興奮して椅子から立ち上がった。

 

 本当に落ち着きがない。

 これは運営に扇動されても仕方がない。

 

 今までよく他のチームを攻撃しなかったものだ。

 

「私も過去に開催された同様のゲームの参加者だったからですよ」

 

 説明よりも見てもらうのが早いと考えて、鳥の使い魔を5羽喚び出した。

 

「私たちがゲームに参加させられたのは、ほぼ1年前のことです。そこで色々ありまして、ゲームの運営側は諦めて撤退したと思っていたのですが……」

「諦めていなかったと」

 

 ラバンは落ち着いたのか椅子に座った。

 

「ということは、あんたが警察だというのは嘘なのか?」

 

 今度は最初に出会った若者のうちの一人、笠取だ。

 

「警察そのものではないですが関係者です」

「私たちは来年度に政府主導で発足する対超常現象対策チームのメンバーです。構成員は警察官と同等の権利を与えられております」

 和泉さんが俺の説明の補足をしてくれた。

 

 厳密には、俺とカーターはチームにはアドバイザー兼民間の協力者として参加しているだけで、構成員ではない。

 

 和泉さんはもちろん、八頭さんや蘆名さんもドサクサで俺達をチームに引き込もうとしているが、正直勘弁してほしい。

 

 それはともかく、今は会議の方を進めよう。

 

「笠取さんには説明させていただきましたが、運営の用意したゴールは罠です。ランダムにここ以外の場所に転送されて、そこでまた運営が用意した別の敵と戦わされます。ここが予選会場で二回戦突入と言ったところでしょうか」

「それは問題外だ。なら、残り2つの方法を確認したい」

「では次の方法。内側から結界を無理矢理破壊する。当初はこの方法を取るつもりでしたが、今の町の状況を見て、それは不可能だということが分かりました」

「不可能とは?」

「皆さんだけではなく、この町中に溢れた影……こいつらもまとめて外の空間に解放されるからですよ」

 

 反応したのは安坂刑事と笠取、そしてソーラ。

 それぞれがゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 結界を内から破る危険について分かっていただけたようだ。

 

「ここは八王子の市街地から10キロ程度しか離れていません。そこに無数の影の化け物が現れたら、どうなると思います?」

「……影が人間の多い市街地へ移動する可能性が高いのか」

 

 やっとラバンが理解してくれた。

 

「ここを結界で閉じずに解放された空間のままゲームをされたら大惨事になるところでした。人口の多い多摩ニュータウンに影が押し寄せれば……それどころか、東京23区内にまで達する可能性もあります」

 

 人口密集地域にまで達すれば、犠牲者は数万……数十万に達するかもしれない。

 

 どれだけ速やかに警官隊……もしくは自衛隊が出動して封鎖出来るか次第だが、この影の発生を止めない限りは無限に湧き続けて数で押し負ける可能性すら考えられる。

 

「そこで第3の方法を取りたいと考えています。ただ、この方法で脱出できるのは数名です」

「その方法とは?」

 

 ここは術者でありキーマンでもある和泉さんに説明を任せる。

 

「私がこの空間へ突入する前に魔術で陣を組み上げました。安坂さんならば、パトカーを停めた場所と説明すればお判りでしょうか?」

 

 この方法は和泉さんが得意とする陰陽道由来の方法だ。

 もちろん、俺には出来ない。

 

 なので、和泉さんに全てが掛かっている。

 

「儀式を行うことで、ここと広場に設置した陣と繋げます……つまり、外の空間への出入り口が出来上がるわけです」

「最初からその方法で良いじゃないか。なんで他の手段を説明したんだ?」

「問題があるからです。外の空間と繋がるのは30秒程度です」

 

 和泉さんがそう説明すると、全員の表情が曇った。

 

 30秒では到底、この空間に閉じ込められている全員を脱出させることなど出来ない。

 

「そして、私は儀式を行っている間は動くことが出来ません。ですが、外にある陣は30秒ほどで負荷により崩壊するでしょう」

「じゃああんたが外に出て陣を張りなおす……のはダメなのか」

 

 ラバンも事態の深刻さが分かったようだ。

 

 外に出るためには和泉さんが結界内に留まって儀式を行わないといけない。

 なので、和泉さんは何をどうしても外に出て陣の再構築を出来ない。

 

 つまるところ、和泉さんはここから脱出できないし、出入り口は30秒制限のものを一度作ることができるだけだ。

 

「他にも問題があります。影が湧き続けるこの空間が消えるわけではないので、いずれ結界は破れて、結局八王子市内に敵が押し寄せることを避けられません」

「そこで皆さんにご協力いただきたいのです」

 

 俺はこの会議に集まった全員に頭を下げた。

 

「運営のゲームでは、エリア内のどこかに敵を次々と生み出す……どこかの世界から召喚する装置のようなものがあります。それを見つけ出して破壊すれば、敵の発生は収まります」

「参加は強制なのか?」

 

 笠取が手をあげて言った。

 

「強制ではありません。警察官3名と調査チーム5名。それに子供たちはこの結界から脱出していただくことを考えています。その際に笠取さんたち3人や、ラバンさんたち3人も脱出する時間は十分あると思います」

「おれたち警察はここに残って他の被害者を救出するつもりだが」

 

 戦力外扱いされた安坂刑事は不満そうだったが、ここは折れてもらいたい。

 

「安坂刑事にはレスキューヘリが到着するまでの民間人の護衛と、警察本部への報告をお願いします。これは他の人では出来ません」「そりゃ横川たち新人に任せるわけにはいかないな」

 

 正直、外の状況がどうなっているか分からない。

 護衛なしで戦闘力のない一般人と負傷者を外に放置するのはあまりに危険だ。

 

「そういうことなら俺たちも一緒に外に出たい。こんなよく分からないデスゲームに強制参加なんてまっぴらだ。降りれるならさっさと降ろさせてもらいたい」

 

 笠取は降参とばかりに両手を上げた。

 

「せっかく、こんな能力をもらったのに無駄にするつもりなのか? 退屈な生活に戻りたいのか?」

「退屈万歳。そういうのは専門家に任せるさ」

 

 ラバンに対して笠取は淡々と答えた。

 

「ならいい。俺たちだけでも敵と戦う。合田、梨本もそれでいいな!」

「あたしはどっちでもいいよー」

「毒食らわば皿までと言いますからね。チームを組んだ以上は一区切りつくまで付き合いますよ」

 

 一応は決まりのようだ。

 

 救助対象8名と子供2人。そして笠取たち3人は外へ脱出。

 

 俺と和泉さん、ラバンたち3人はこの空間に残って調査を継続。

 

 方針がまとまったところで会議は終了した。

 

   ◆ ◆ ◆

 

「上戸さん、見てください。この配電盤に付いている機械を」

 

 明山さんが配電盤に取り付けられた装置らしきものを、ドライバーの先で突いた。

 

 電気メーターボックスを開けた内部。

 外へ繋がる配管から伸びた高圧線を各部屋に分配している配電盤に、妙な形状の機械が取り付けられていた。

 

 たまに明滅する水晶のような、丸く透明な球体を固定する金具があり、そこから何本もの金属線が伸びている。

 

 その機械が蜘蛛のように配電盤に張り付いているという異様な光景だった。

 

「私には機械や電気の知識はないのですが、これは何ですか? 明山さんの見解を教えてください」

「私にも分かりません。ですが、配線と構造から何を意図した装置なのかはだいたいの予想はできます。外部から電波的な何かを受け取り、それを電力に変換する装置です」

 

 説明だけを聞くとオカルト的な荒唐無稽さだが、理屈としては通る気もする。

 

 水晶部分を固定している金具からは太い金属線が電源の入力部に伸びている。

 

 明山さんがそこに検電テスターを当てると、常時200Vが供給されていることがわかった。

 

 この200V電源が家庭用100Vに変換され、各部屋に分配されているわけだ。

 

「和泉さん、これ——」

「——原理も正体も不明ですが、魔術に関する装置であることは分かります。魔力反応があります」

 

 和泉さんは全てを聞くまでもなく、装置を見るなり即答した。

 

 明山さんも和泉さんも、どちらもプロとしての見解から、初見の装置の機能を当ててみせた。

 これがプロというものか。

 

「もしかして水の方も?」

「水は屋上の水タンクに溜められていますが、水道管からそこへ送り込むポンプが稼働していません」

「ということは、タンクの水を使い切ったら終わりですか?」

「それは間違いなく。各家屋も同じでしょう。そこらに設置されている水タンクを使い切れば終わりでしょう」

 

 明山さんの言う通り、各所……一区画に一定間隔で金属製の水タンクが設置されている。

 それを使い切れば水も尽きる。

 

「電気は時限式か、遠隔でオフにできるということでしょうか。そして水道の水にも限りがある」

「なんでそんなことを?」

「このゲームの参加者を追い込むためでしょう。最初は水も電気もあって現代と変わらない暮らしができる。籠城できると思わせておいて、そこから電気と水を順次止めていくと、どうなるか」

 

 俺たちが参加させられたゲームよりも、明らかに悪辣だ。

 

 モンスターを差し向けて直接的に追い込むのではなく、じわじわと精神的に追い詰める仕掛けになっている。

 

 最初から水も電気も使えないなら諦めもつくが、突然に使えなくなると諦めきれずに、電機と水がまだ使える場所にどんどん移動していくだろう。

 

 もちろん、まだどちらも使える地域に立てこもっている参加者は、襲撃者から身を守るために戦いを始める。

 

「明山さん、水と電気以外に何か気づいたことはありますか?」

「そうですね……テレビにも何か仕掛けられているかもしれません」

「テレビ? テレビが映るんですか?」

 

 さすがにそれはおかしい。

 衛星携帯ですら圏外になる環境で、テレビの電波だけが入るはずがない。

 

「ええ……消防署にもテレビがあるようですので、チェックしてみますか?」

 

 明山さんに案内され、部屋に備え付けられた古い型の液晶テレビの電源を入れた。

 

 テレビには、俺が生まれるよりもはるか昔のテレビドラマが映し出されていた。

 今も現役の俳優がやたら若い。故人まで出演しているあたり、相当古い。40年以上前のドラマだ。

 

 だが、やはりおかしい。

 腕時計を見ると時間は21時。再放送が流れる時間ではない。

 

「どこかの局でニュースを放映していませんか?」

「変えてみますか」

 

 明山さんがリモコンを操作してチャンネルを変えるも、どこもドラマしか放映されていない。

 もしかするとケーブルテレビか? あるいは、この町のどこかからテレビ用電波が送出されているのか?

 

「このドラマを全部観た方はいますか?」

「テレビどころではなかったのと、古いドラマだなとしか思わなかったので」

 

 ということは、このテレビ放映自体が何かのヒントだ。

 

 急いで撤収準備をしていた安坂刑事を呼びに行き、テレビの前へ連れてくる。

 

「この場にいるのは、ドラマ本放送よりも後に生まれた人間ばかりです」

「自分で若いなんて思っちゃいないが、そこまで年寄り扱いされるのはちょっとな……」

「それについては謝罪します。ですが、このドラマを視ていただけますか?」

「そんな安い謝罪をされてもな。それに、視るっつったって昔のドラマ——」

 

 安坂刑事は言葉を途中で切り、テレビの映像を注視し始めた。

 

「演技が違うな。役者の声も違う。それにセリフがデタラメだ。内容を無視して好きに喋っているだけだ」

「私は映画鑑賞が趣味で、サブスクで昔の映画をよく見るのですが、明らかに俳優の声が違うなと」

「だが、映像だけは当時のものだ。音声だけ別のものをアテレコしている」

 

 音声だけが違うとわかれば話は早い。

 流れているセリフには必ず意味があるはずだと信じて、すべてメモに記載していく。

 

 セリフはおよそ5分でループしているようだ。

 

 一通り書き出してみたものの、意味のない文章の羅列でしかない。

 

 おそらく何かのメッセージが含まれているはずだが、その意図を読み取れない。

 

 英単語に置き換える? 何か違う。

 

 パズルのようにアナグラム的にメッセージを組み替える? ならば漢字をカタカナに置き換えるのが正解か。

 でもその後はどうする?

 

 とりあえず全てのセリフをカタカナに置き換えて別のメモに書き取ってみるも、やはりわからない。

 

「その文章を8文字で改行してくれないか?」

 

 メモを覗き込んだ安坂刑事が妙な指示をしてきた。

 

「8文字? なぜです?」

「このドラマが放映されていた元々のチャンネルが8チャンだ」

「なるほど、カンテレですか」

「フジだよ。カンテレって一体どこの話をしているんだ?」

「扇町?」

「嬢ちゃんどこの生まれだよ」

「兵庫ですけど」

 

 安坂刑事の言う通り、8文字区切りで改行して横に長い文章に置き換える。

 

 一文字目を縦に読むと、意味のない羅列の中に一部メッセージが含まれていることに気づいた。

 

「よく気付きましたね」

「こういう暗号を使う連中を何度も相手に仕事してきたからな。経験ってもんだよ」

 

 和泉さんが言っていた通り、新組織には優秀な人間ばかりが集められている。

 俺だけでは、このメッセージの解析にもっと時間がかかっただろう。

 

「コウフクガオカダンチシイトウゴオル」

 

 幸福が丘はこのニュータウンの名前。

 ダンチとは東側にある団地のC棟のことだろう。

 

 この隠しメッセージは、そこにゴールがあると伝えている。

 

「テキハガツコウプウル」

 

 対して西の学校のプールには「敵」。

 影の敵が無限湧きする仕掛けが仕込まれている可能性が高い。

 

「シヌメダルデルアツメカイモノランクアツプ」

 

 死の際にメダルが現れる。

 それを集めると買い物——ランクアップ機能が使える。

 

 これは既知の情報だが、もちろん知らない参加者も多いだろう。

 

 テレビの電波はこの結界内全域に送信されている。

 

 ゆえに、参加者への条件は公平だ。

 どこかの建物でテレビを見て、ドラマの内容が怪しいと感じ、セリフをメモすれば気付ける。

 

 ただ、デスゲームの最中に、わざわざ建物に籠もって古いドラマを観て内容のおかしさに気付いてメモを取るという行動をとる者は少ないだろう。

 

 しかし、あえてその「無意味」な行動をとらなければ、この仕掛けには辿り着けない。

 

 その上で、おそらく時限式で電気は止まる。

 

 そうなればテレビは見られず、このヒントは闇に葬られる。

 

 もちろん、団地と学校という目立つランドマークだ。

 ノーヒントでも辿り着く参加者はいるだろう。

 

 だが、これらの情報を一気に得られるのは、圧倒的なアドバンテージだ。

 

「次の指針は決まりました。西方向にある学校です」

 

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