収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第八話 「校歌の秘密」

 俺達6人は町の西の端近くにある学校に到着した。

 

 正門には「幸福が丘小学校」の銘板がはまっている。

 

 鉄製の校門は開いており、土の玄関口には数人がブーツで踏み荒らした跡が残っている。

 誰かがこの学校にいたことは間違いないだろう。

 

「誰がここに来ていたことは間違いないですね」

「上戸さん、ここをライトで照らしていただけますか?」

 

 鑑識の明山さんがしゃがみ込んで足跡に目をこらしている。

 見やすいように懐中電灯で照らすと「ふむふむなるほど」とつぶやき始めた。

 

「ここにいたのは6人ですね。ブーツ2、靴3、サンダルのようなもの1でしょうか。比率は男性4女性2かな。全員外に出ていったようです」

「よくわかりますね」

「正解かどうかは分かりませんよ。体の大きな人を男性4と判断しただけですから」

「ここで重要なのは、中にまだ誰かがいるかという話です。中に人がいる可能性は?」

 

 和泉さんが明山さんに尋ねる。

 

「それは私にはわかりません。言えることは、外に出て行った足跡の上から中に入っていく足跡は付いていないということです。あの『影』のものですらありませんから」

「中に入ってみたけど、何もなくて引き返した?」

「武器か食料か、はたまたゴールを探しに来たのかもしれませんね」

 

 ラバン達の方を見ると、知識担当のソーラが首を横に振った。

 

「ここで立ち話をしていても、また影が寄ってくるだけだ。話すなら校舎の中に入ろう」

 

 それは賛成だ。

 道の真ん中で延々と話をしていたところで得られるものなどなにもない。

 

 正門を抜けて、未舗装の土の道を歩いていくと小学生用らしい小さい下駄箱がいくつも並んでいる玄関があった。

 

「これは靴のままで入って大丈夫なんですかね」

「どうせ偽物の学校ですからね」

 

 別に遠慮する必要などないと分かってはいるが若干の抵抗はある。

 

 だが、それでも靴のまま入らせてもらうことにする。

 素足やスリッパで動き回るのはマイナス要素しかない。

 

 玄関を抜けると、廊下のど真ん中に大きな金属製のレリーフが取り付けられていた。

 

 そこにはこの学校の校歌らしきものが彫り込まれている。

 

−−−−−−−−

1. 朝の空に 雲は燃え 学びの窓は 開かれたり 凛として光仰げ 賢く光求め ああ 幸福が丘

2. 歴史の息吹 胸に抱き 真理の道を 求めゆく 静かに光待てば 強く光放て ああ 幸福が丘

3. 平和の鐘は 遠く鳴り 未来の海へ 漕ぎ出さん まばゆき光を得て 描く光を目指し ああ 幸福が丘

 

1988年4月 幸福が丘小学校創立記念

−−−−−−−−

 

「テレビに仕込まれた暗号のことを考えると、ここにも何か仕込まれていそうですが」

 

 あとでチェックのためにここに戻ってくるのも面倒なので、スマホのカメラで撮影しておく。

 暗い場所なのでフラッシュが輝いてプレートに反射した。

 

 撮った写真をチェックしてみると、案の定、文字が半分以上反射して読み取れない。

 

「暗い場所だとうまく撮れないですね」

「ちょっと光量が強すぎましたね。フラッシュの設定を変えて、もう少し光を抑えて」

 

 明山さんはこういうスマホの構造にも詳しそうだ。

 

 カメラのフラッシュなんてオートでしか使ったことないな。

 そう思いながら、明山さんが画面を見ながら指で示す場所にあった設定ボタンを押そうとしたところ、この歌詞に隠された意味に気づいた。

 

「あっ、謎が解けました。理科室の前に何かあるようです」

 

 そう呼び掛けるとみんなが唖然とした顔をした。

 

「待ってください。どういうことですか?」

「この歌詞には『光』という文字が多すぎると思いませんか? これは『光』が入った個所をピックアップするためだと思われます」

 簡単に説明したつもりだが、まだ分かりにくかったようだ。

 

「光が含まれている文節の頭を拾って並べてください。音を拾えば凛賢静強ま描(りかしつまえ)になります」

 

 再度、分かりやすく説明したが、まだみんな納得していないようだ。

 

「まず、暗号を埋め込んだ出題者がどんな癖があるかを考えます。テレビの暗号で文節の頭文字を読むという法則は分かっていたので、同じように読みました。『あくまひりかあこ』。この時点だと『あくま』が目立つのでそっちに引っ張られがちです」

「同時に『りか』というワードがあったと」

「まだ確証は持てないので2行目を読みます。『れむしもしつあこ』。この時点で『りかしつ』というワードが浮かびます。なのでそこの文節を見ると全てに『光』が含まれています。なので3行目も光が含まれた場所を読んで『りかしつまえ』」

 

 校歌が書かれたレリーフの横にある校内のフロアマップを指し示す。

 

「この学校の構造は理科室が1階の一番端にあります。その先は何故か90度右側に曲がってしばらく歩かせた先に体育館があるようです。では、正面は何ですか?」

 

 地図を見ると、渡り廊下をまっすぐ進むと、何もない空間があって行き止まりになっている。

 中庭だとも考えられるが、同時に別のことも思い浮かぶ。

 

「この学校には元々プールがあったものの、何らかの理由で廃棄された……という設定だと考えられます」

「こじつけではないんですか?」

「どの道、学校内をしらみつぶしに全部探すつもりだったので、優先順位を変えるだけですよ」

「はぁ……」

 

 分かっていただけたようだ。

 

 謎なんてまともに解こうとするのは時間の無駄だぞ。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 廊下を歩く俺たちの前方から、地上を高速でのたうち回る黒い影がいた。

 ダメージを受けて苦しんでいるようではない。

 

 こちらに精神的な嫌悪感を示すための演出だろう。

 

「せ、戦闘は任せます」

 

 明山さんがまず後方に下がる。

 約束通りなのでそれは問題ない。

 

「気持ち悪いので私は無理です」

「わたしもー」

 

 ソーラとパインも戦闘を放棄。

 気持ちはわかる。

 

 俺も、こんなベターマンだかサイレントヒルだかで見たようなホラー演出の敵に触れたくはない。

 

 なるべく静かに敵を倒すという方針とは変わるが、遠隔攻撃で仕留めるかと思った直後にラバンが動いた。

 

「仕方ない、俺が行こう」

 

 ラバンが剣を肩に担いで前に飛び出し、一刀の下に切り伏せた。

 

 不意打ちで廊下横にあった部屋のドアが突然開いて別の個体が飛び出してきたが、それも返す刀で一撃。

 

 本人の性格は色々と残念なところもあるが、実際に戦闘となると確かに強い。

 これは勘違いしても仕方がない。

 

 影自体は外を徘徊しているのと同じで、単体の戦闘能力は低い。

 どちらかといえば数で押してきたり、時間を問わずに奇行を繰り返すというホラー的な演出が重視されている。

 

 そして倒してもメダルは出ない。

 

 これは俺たちが存在は示唆されていたものの、全く知らなかった「ショップ」を前面に押し出すあたり、メダルは人間を倒さないと出ないと思い込ませるための罠だろう。

 

 敵をいくら倒しても何も利益がないならば、人間を倒した方がお得という運営の罠である。

 

 明らかに前のゲームマスターが開催したゲームと内容が異なる。

 

 前のゲームマスター……アナザーカーターではなく、成り代わった小物よりも優秀な人物が演出に携わっているのはわかる。

 

「もう敵はいない。進んでも大丈夫だ」

「助かります」

 

 ラバンの言うことを信用していないわけではないが、それでも念のために注意して進む。

 

 どうやらここは職員室の前のようだ。

 

 廊下には書道の時間に書かれたであろう生徒の作品が飾られている。

 

 書かれた文字は「光」。これがヒントだったのかもしれない。

 

 職員室の先には調理室。

 

 ここの扉は開放されたままだ。

 

 門のところに足跡がいくつもあったのは、ここで何かを回収したのかもしれない。

 

 部屋をのぞき込むと棚などは軒並み開けられた上でかなり荒らされていた。

 食材などが保存されており、調理器具と共に持ち去られたのかもしれない。

 

 直接火にかけることが出来る鍋などがあれば、たき火で調理可能と考えると悪い選択ではないだろう。

 

 その隣が件の理科室。

 

 やはりこちらも荒らされている。

 狙いはアルコールやその他、民家などでは手に入りにくい化学薬品か。

 

 保健室はノーチェックだが、そちらからも医薬品や包帯などが持ち去られているかもしれない。

 

「道具が色々あるならここを拠点にすれば良かったのに」

「ガラス張りなせいで外から中に誰がいるのかすぐ分かる上に、あちこちに出入口があってどこから敵が入ってくるか分からない学校を拠点にするのは難しかったんでしょうね」

 

 最大6名がここから出て行ったのもそれが理由だろう。

 

 大きな建物にとりあえず集まってみたものの、ゴールはなく、敵はひっきりなしに攻めてくる。

 

 立てこもれるのは出入り口を階段のみに限定できる屋上くらいだが、出入口が一つしかないので、いざそこを塞がれると詰みかねないと。

 

 一見すると何もない理科室前の空間についても調べていないと考えられる。

 

「私たちも何か使える品がないか調べてみます?」

 

 ソーラが理科室の中を指さした。

 

「止めておきましょう。どうせ何も残っていないし、それにいくら偽物とはいえ、学校の中の備品を持ち去るのは火事場泥棒みたいなのもあまり気分は良くないです」

「精神的な話ですか?」

「精神的なものです」

 

 理屈で考えれば、所有者など誰もいないここで物を持ち去っても誰も困らないが、それでも小学校を荒らすのには抵抗がある。それだけの話だ。

 

 理科室を抜けて廊下の端にある扉を開ける。

 

 上に屋根がついた渡り廊下があり、出てすぐのところで90度曲がっている。

 先は体育館につながっているようだ。

 

 そして、直進方向にも伸びており、こちらは何もない広場に続いている。

 

 その渡り廊下の一番先にはコンクリで作られた小さな小屋が二つある。

 

 片方の建物には更衣室と書かれており、中で男女別に分かれているようだ。

 

 そしてもう一つの建物には何の説明も書かれていない。

 

「もしこの先の空き地が元プールだとすると、この小屋は何だと思います?」

「制御盤などが入った小屋ですかね。水道の開栓閉栓と消毒状況のチェックなどを行う」

 

 明山さんが中を覗き込む。

 

 扉には南京錠が取り付けられていた。四桁の数字を合わせると開くようだ。

 

「調べてみましょう」

 

 5295とダイヤルを回すと南京錠が開いた。

 

「その番号をどこで?」

「この学校は幸福が丘小学校ですよね。()29()(が丘)の語呂合わせです」

「あてずっぽう過ぎませんか?」

「その場合は破壊したので」

 

 ドアを開けると、中には正体不明の電子機器がビッシリと詰まっていた。

 

 中央にはモニタとキーボードのような形状のコンソールが付いている。

 とてもただのプールの制御小屋には見えない。

 

 同時に、小屋のすぐ横の広い空間の地面から、黒いもやのようなものが立ち上り始めた。

 

 それは空間に次々と集まり、直径3メートルほどの球を4つ作り出した。

 

 こいつらがボスキャラか?

 

「明山さんは一度下がってください。おそらく敵が出てきます」

 

 まずは非戦闘員の明山さんを下がらせる。

 

 とはいえ、校舎の中はまた「影」が出現する可能性がある。

 

 目の届く範囲にいてもらえる方がありがたい。

 

「ここには6人いるのに数は4……既定数でこの数なのか」

「それとも能力者の数をカウントしているのか」

 

 運営が換算する能力者は4人。

 

 ただの一般人である明山さんと、この世界の魔術師である和泉さんは含まれていない。

 

 こいつらが、敵の発生システムの防衛プログラムと考えると、後者の可能性は高そうだ。

 

「ここは俺たちに任せてもらおうか。パインも働け」

 

 ラバンが剣を鞘から抜きつつ前に出る。

 

「仕方ないなー。じゃあソーラちゃんは強化をお願い」

「分かりました。エンチャント!」

 

 ソーラが杖をかざすと、ラバンの剣とパインが持った棒に青い光が灯る。

 

 ソーラが杖を掲げると、青白い光が火花のように散り、ラバンの剣とパインの棒へ吸い込まれるように流れ込む。

 見たところ、攻撃力の強化系の能力だろうか。

 

「そちらの警察の2人は?」

「必要ないだろう。そこでおとなしく見ていてくれ」

 

 そうは言ってもここでラバンに負傷されては後味が悪い。

 一応1年先輩としては参加せざるを得ないだろう。

 

「和泉さんは明山さんの方に敵が向かわないよう護衛をお願いします。とりあえず援護には参加するつもりです」

「わかりました。要救助対象にも怪我や負荷を負わせないようお願いします」

「もちろんです」

 

そうして準備を整えているうちに、空間に浮かんだ黒い球体の輪郭が揺らぎ、ついにその正体が現れた。

 

 漆黒の球体——だが、ただの球ではない。

 黒い表面がぬめるように歪み、人間と動物の足が不規則に生え、あちこちに眼球や口腔のような器官が浮かび上がっては沈む。

 

 見た目もグロテスクな「それ」は一直線に突進してきた——

 

「圧縮極光!」

 

 ——とりあえず、先頭にいた1匹を粉微塵に吹き飛ばした。

 さすがに強化なしだと複数同時撃破は無理か。

 

 外に何匹も徘徊している「影」が一つに合体してできた集合体のようだが、さすがにゲームに参加させられて数日の能力者を対象にしているからか、そこまで強いということはなさそうだ。

 

(シールド)! 反射!」

 

 続く2匹目の突進を瞬時に展開した盾の斥力で弾き飛ばして、後ろにいた3匹目に叩きつける。

 

「今です!」

「なんかわからんがわかった!」

 

 ラバンとパインが一気に間合いを詰め、倒れた2匹へと飛び込む。

 

 パインの棒は六角形状で、青い光を帯びたまま唸りを上げる。

 

 ソーラの能力で青白い光が灯ったその棒をバトンのように振り回した後に叩きつける。

 

 更にそこへラバンが剣を振り下ろす。

 

 続けてラバンの剣が振り下ろされ、強化の光と本人のスキルが重なった刃が、1匹を真っ二つに断ち切る。

 

 これで残り2匹。

 

 鳥たちを一度移動させて、再度(シールド)を構築展開。

 4匹目の突進を防いでいるうちに、ラバンたちが3匹目にトドメを刺した。

 

「来いドラゴン! 残る敵を吹き飛ばせ!」

 

 更にラバンはドラゴン?を喚び出した。

 

 出現したドラゴン?は一度空高く舞い上がり、つむじ風をまといながら最後のグロ球体へと突進。

 鋭い爪でグロ球体の全身を切り刻んだ。

 

 倒された敵はそのまま霧のように宙に溶けて消えていった。

 

 そして予想に反してメダルは出現しない。

 

 どれだけ渋っているんだ、この運営は。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 プールの制御小屋内にあった機器を明山さんがチェックする。

 

 もちろん人類にとっては初見の機器だ。

 操作などがわかるわけもない。

 

「コンソールがある以上はこれで何かを制御できるはずなんですが」

「操作方法は不明ですか?」

「私に分かるのは機械の機能くらいですよ」

「それがわかれば十分です。教えてください」

 

 明山さんはコンソールから手を放してドライバーで機械を指し始めた。

 まず指したのは黒く四角いブロックのような何かだ。

 

「多分これが電源ユニット相当の動力源ですね。ここから各ユニットにパイプが繋がっていることからそうだと想定できます。となると、奥のタンクは何かの材料をどこかに送り込む仕組みではないかと」

「送り込むというと何を?」

「わかりません」

 

 正直でよろしい。

 

「横にあるメーター類はエネルギーと何かの残量かな? まだまだたっぷり残っています」

「これを暴走させずに壊す方法について何か思いつきますか?」

「現代の機械と同じと考えると、電池切れですね。どんな未来のテクノロジーでも、燃料がなければ何も出来なくなるでしょう」

「それもそうですね」

 

 次のアドバイザは和泉さんだ。

 黒く四角いブロックを鑑定してもらう。

 

「これはおそらく魔力の塊、電池的なものだと思いますけど」

「塊というよりも、どこかから魔力を吸い上げる装置かと思います。どこかから魔力が集まっているのがわかります」

「具体的にどこから集めているのかわかりますか?」

「わかりません」

 

 みんな正直すぎる。

 

 ただ、解体方法は分かった。

 

 黒いブロックにバルザイの偃月刀で小さく旧神の印(エルダーサイン)を刻み込む。

 これで魔力を集める機能は停止したはずだ。

 

 ブゥンという音と共に小屋の中に詰め込まれていた機器のランプが全て消灯した。

 

「あとは奥にあるタンクが町に湧いている魔物の燃料だと思うのですが」

「この小屋ごと陣で覆いましょう。本来は穢れを払うものですが、タンクの中に入っている『何か』にも効果があると思います」

 

 和泉さんが早速アタッシュケースの中から様々な道具を取り出すと、小屋の周囲の地面に金属の串のようなものを刺し始めた。

 

 キャンプの時にテントを固定するペグにしか見えないのだが、重要なのは形式ではないので、日本全国どこでも安価で調達しやすい道具を流用しているからそうなっているだけだろう。

 

 和泉さんが一通り儀式を終えたところで扉を閉めて南京錠をかけてロックした。

 

「時間経過で穢れは抜けていくはずなので、あとは放置で良いと思います」

 

 これで西の学校……敵の自然発生については処理完了だが。

 

「あとは何が残っているんだ?」

 

 俺たちの処理を見守っていたラバンたちが近寄ってきた。

 

「ボス的な敵は出てきたけど、さすがに手ごたえがなさすぎだろ」

「ここで結界を無理に破ることは出来ますが、今のところ新しい敵の発生を止めただけで、町に溢れている敵が消えたわけではありません」

「そうは言っても、町に溢れている敵を全部倒して回るのは無理だぞ」

 

 そこは大きな問題だ。

 

 だが、敵が残ったまま結界を破壊すると、敵が外にあふれ出す危険がある。

 

「こういうのってボスを倒せば全部消えるんじゃないの?」

 

 パインが地面に刺さった串をつま先でグリグリと押しながら言った。

 

「鉄杭には触らないでください。陣が崩れますので」

「はーい」

 

 和泉さんに叱責されるとパインは引き下がった。

 

 パインの行動は妙に怪しい時が多い。

 運営のスパイとまでは言わないが、何か裏があるかもしれない。

 動きには注意しておいた方が良さそうだ。

 

「でも、ボスを倒せば何かあるってのはありそうな気がする。ボスの居場所に心当たりは?」

「ゴールじゃないんですか? 外へ脱出しようとする参加者の前に立ちはだかる障害として」

 

 ソーラの予想はおそらく当たりだ。

 

 俺たちの場合は機関銃を備えたSFチックな二足歩行のロボットが転移の扉を護るように待ち受けていた。

 

 今回の場合も同じような構成になっている可能性は高い。

 

「ということは東の端?」

「そうです。東の端の団地がゴールとテレビの暗号で言っていたので」

「なら、次の目的地はそっちだ。今から行こう!」

 

 一人だけ元気なラバンだが、周りを見るとソーラや明山さんがかなり辛そうな顔をしている。

 

 時計を見ると午前2時。

 

 東の団地までの距離は推定14キロ。

 さすがに徹夜明けで歩いていくにはつらい距離だ。

 

「一度消防署に戻って休憩しませんか? さすがに真っ暗な中での捜索は困難です。続きは夜が明けて明るくなってからでもよいでしょう」

「そうだよーわたしも疲れた」

 

 俺の提案にパインが乗っかった。

 

「それなら仕方ない。一度引き返そう」

 

 元気そうなラバンもそう言うと手に持っていた剣を重そうに地面に刺すとふうとため息をついて座り込んだ。

 

 もしかして、俺たちに疲れていると思われるのが嫌で強がっていただけなのか?

 

 ともあれ、敵の発生については片付いた。

 残るはボスを撃破して結界を破壊するだけだ。

 

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