収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第九話 「もう謎解きゲームはおしまい」

 無人の町の東の端に広がる団地群は思っているよりも新しく、白い外装が朝の光を反射して輝いていた。

 

 俺たちの世代は「団地」といえば全盛期からある灰色にくすんだ小さくて古い建物のイメージしかない。

 だが、この偽物の町は今から40〜50年前に作られたニュータウンを模している新しい骨董品だ。

 

 昭和の人が書いた回顧録などには「団地」は輝く時代を象徴する最先端の集合住宅施設などと紹介されるが、それが少しわかった気がする。

 

 もちろん、それは建物だけの話だ。

 

 まるで生活——人の営みが感じられない真新しい白亜の建物群からは不気味さしか感じられない。

 

 くたびれてはいるものの、何度も補修されて今もなお多くの人たちに使われ続けている横浜の町の団地群とは比べ物にならない。

 

 あの教団の事務所になっていた古い団地の方がまだ町の一部だった。

 

 団地の入り口、案内図を6人で見る。

 

 先の学校のことがあったので、もしかして何かしらの暗号が埋め込まれたメッセージがここに記されているかもしれないとチェックしてみたが、今のところそれらしい文章はない。

 

 単純に敷地内の図面のみだ。

 

「TVの謎だと何なんだっけか?」

「CですよC」

「Cという建物があるのか」

 

 ラバンが案内図に手をかざして「C号棟」を探し始めた。

 

「違いますよ。アルファベットは区画です。この図だとAからDまであるようですね」

 

 案内図によると、一区画に団地は8棟から12棟建っている。

 

 団地の形は全て同じ長方形型。

 道路も綺麗に碁盤の升目のようになっている。

 

 ただし区画分けだけは異なる。

 

 それぞれの区画がデコボコ不規則な形をしており、A−5とA−6に隣接する団地がC−3やB−1だったりする、

 

 気を付けて歩かないと、すぐに現在位置が分からなくなりそうだ。

 

「困ったことに、団地の側面には棟の番号表示がありますが、現在位置がどの区画なのかを示す表示はないようです」

 

 わかりやすい出入口すぐの場所に見えるA−1とA−2を指す。

 

 団地側面には大きく1と2の数字が書かれているが、「A」を示す表示はどこにもない。

 

「じゃあ、この案内図をメモしないとな」

「そうですね」

 

 俺、和泉さん、明山さんの3人がそれぞれスマホを取り出して案内図をカメラで撮影する。

 

 この偽物の町にどこかから連れてこられた3人はなくても仕方ないが、あるものは有効活用していきたい。

 

「こうやって3人で撮っていれば、流石に目的場所を間違えることはないでしょう。多分」

「多分?」

「気のせいです」

「今、多分って言った!」

 

 細かいことを気にするやつだ。

 重箱の隅をつつくようなやつはモテないぞ。

 

「それよりも、私はスマホを2台持ち歩いています。そのうち1台をお貸しします。モバイルルーターにWIFIで接続すれば、携帯の電波が入らない地域でもチャット通話ならば、できますので、必要な時はこれで連絡をお願いします」

「そういうものがあるなら、もっと早く貸してほしかった」

 

 ラバンが手を出してきたが、それは無視して後ろにいたソーラの方にスマホを渡す。

 

「連絡が必要な時はこちらを使用してください」

「はい、ありがとうございます」

「なんでリーダーの俺じゃないんだ?」

 

 ソーラが早速スマホアプリを起動させて確認を始めた横でラバンがぼやき始めた。

 

 そういう性格からして、うまく活用できないからとぶっちゃけると支障がありそうだ。

 

「前衛のラバンさんが持つと戦闘時に落下させて壊しかねないですよね。同じく前衛のパインさんも条件は同じです。ですので、後衛のソーラさんが持つのが一番だと判断いたしました」

「……まあ、そういう理由があるなら仕方ない」

 

 しぶしぶながら納得してくれたようだ。

 

「C棟の団地は全部で8棟あるようです。ヒントはC棟だけで、どの棟なのかは分かりませんでしたので、1棟ずつ調べていきたいと思います」

 

 では、東の団地の調査開始だ。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 C棟団地の調査は何もないまま6棟まで済んだ。

 団地は4階建てで各フロア4部屋ずつ。

 

 鍵は全て開放されているので室内には入り放題だが、めぼしいものは何もない。

 

 時間は昼になったが、今のところ何の成果も上がっていない。

 

 出てくる敵も町中と同じく黒い影のみだし、団地内を拠点に潜伏している他の要救助者の姿もない。

 鳥の使い魔を先行させて調査してみたが、残り2棟にもボスの気配はない。

 

 人間がくまなく調べたら、また違う結果が出る可能性は0ではないが、確実に見つかるということもない。

 何か根本的なところで調査内容をミスっているとしか思えない。

 

 団地の前に出て一度相談をする。

 

「多分、このまま7棟と8棟を調べても成果は出ないと思います」

「何かヒントのようなものがあるのではないですか?」

 

 和泉さんがスマホの画像ビューワーを表示させた。

 最近撮影したばかりの写真がいくつも表示される。

 

 そこに表示されているのは小学校にあった歌詞が刻まれたレリーフだ。

 

「最初にヒントはテレビ放映、次のヒントは校歌の歌詞。となるとここにも文字のヒントがある可能性が考えられますね」

「ヒント通りの場所を探さないと見つけられないということですね」

 

 この町に入ってからは俺たちはリアル脱出ゲームのように様々な謎解きをさせられている。

 

 その脱出ゲームの「ゴール」と言われているこの団地だ。

 

 たまたまこの団地を訪れたら、たまたまゴールが見つかって、たまたま脱出できた。

 という甘い設計にはなっていない可能性は高い。

 

 何かしらの謎解きをしないと、ゴールを発見できないように作られているというのは十分あり得る。

 

「上戸さん、少しお願いできますか? この団地敷地内にまた、メッセージが記された何かがあるかもしれません」

「わかりました。調べてみます」

 

 すかさず鳥の使い魔を四方へ放つ。

 

 同じような構造の建物、道路、街路樹。

 団地の敷地内にこれといって変わった建造物などはない。

 

 他の地域の団地にはあるはずの管理事務所や掲示板などを探してみるも見つからず。

 

 この団地を迷路化するために、位置を特定出来るようなオブジェクトは極力排除しているのだろう。

 

「まだ行ったことがない警察の方に何か仕込まれているのかも」

「それなら消防署にも何か謎があっていいはずだ。だけど、俺たちは謎には気付かなかった」

 

 テレビの電波に隠されたメッセージでも消防署と警察についての話がなかったことから、消防署と警察署は同じく謎がない可能性の方が高い。

 

 実際、数日消防署を拠点に活動していたラバンやソーラが言っているのだから、何もないのだろう。

 

「校歌の歌詞の未解読部分、そこにまだヒントが隠れているんじゃないですか?」

 

 和泉さんと同じくスマホで画像を見ていた明山さんが言った。

 

「あの時は光が含まれている部分の頭を続けて読みました。だから、今度は光がない部分を読んでみるというのは?」

「朝の空に雲は燃え学びの窓は……なるほど、あくまになりますね」

 

 和泉さんも同じようにスマホの画像を見ながら頭文字を読み上げ始めた。

 

「あくま、れむし、ひとみ」

「れむしは意味不明ですが、悪魔の瞳ですか」

 

 どうも違う気がする。

 

 俺のスマホをチェックしようとして……撮影したスマホはソーラへ渡したことに気付いた。

 

「すみません、ソーラさん。写真のチェックをお願いします」

 

 仕方なく自分の分は手帳を見ることにする。

 

 あれひ

 くむと

 ましみ

 ひもこ

 

 縦読みも横読みも微妙に意味が通らない言葉になる。

 悪魔の瞳はありそうだが、間の「れむし」が意味不明だ。

 

「これってもしかして、頭文字を拾うんじゃなくて、文字通りに読み取れってことじゃないですか?」

「文字通り?」

「朝の空に雲は燃えってそのまんま朝焼けのことだと思うんです」

 

 なるほど、頭文字だけに囚われていてその発想はなかった。

 

 校歌の歌詞の1番をチェックし直す。

 

「朝の空に雲は燃え、学びの窓は開かれり……これはもしかして、窓が東の空、朝焼けを見られる場所ということか?」

 

 改めて地図をチェックする。

 C群のうち、窓が東を向いている棟はC−3、C−4、C−5だ。

 

 歌詞の2番を再チェック。

 

「歴史の息吹、胸に抱き、真理の道を求め行く?」

「歴史というからには古い?」

「わからない。後回しだ。次は3番。平和の鐘は遠く鳴り、未来の海へ漕ぎ出さん」

「この町で鐘に値するものって学校のチャイムじゃないですか?」

「学校のチャイムか。となると、学校が遠くにある……学校から最も距離が離れているのはC−5か」

 

 解けそうで解けない。

 何かヒントが足りない。

 

「逆に考えてみましょうよ。1番が団地の号数の話をしているなら、2番は階数、3番は部屋番号を表しているのかってことかもしれませんよ」

 

 明山さんの発言もヒントになるかもしれない。

 

 もしこの考えが正しくて、本当に階数を表しているだけならば、もっとシンプルな話だ。

 何しろ1から4までの数字のうちの1つを示せば良いだけなのだから。

 

「分かったかもしれない」

 

 歌詞とにらめっこしていて、なんとなく答えが見えてきた。

 

「歴史の息吹。これはかなり伝統ある学校のようですが、あの小学校はニュータウンに1988年4月に建てられたという設定です。つまり伝統も歴史もない真新しい学校なんですよ」

「プールは廃止されたのに?」

「プールは建設時にあったプランで途中でなくなったのかもしれない。ともかく、このニュータウンは新しい町という設定で歴史なんてないんです。これからスタートの学校なんです」

 

 一度言葉を切った。

 答えは非常にシンプルだ。

 

「歴史はゼロからスタート。これから真理の道を求めていく……つまり上っていく。1階の階段部分ってことです」

「なるほど。それで次は?」

「2番の歌詞がシンプルだったので、3番もシンプルな回答のはずです。あとは現地を実際に見てから考えましょう」

 

 法則がわかればあとは簡単だ。

 

 実際にC−3棟に行って1階上り階段部分をチェックする。

 振り返るとそこには街路樹があった。ここはハズレだ。

 

 C−4棟。

 階段部分から振り返ると街路樹がなくて、遠くの町が見える。

 

 C−5棟。

 階段部分から振り返ると背後にはD棟が見える。

 

 C−4棟で決まりだ。

 

「平和の鐘はソーラさんの予想通り学校のチャイムだと思います。そこから未来への海へ漕ぎ出します」

「未来の海というのは?」

「それは調べてみてのお楽しみです」

 

 ここは一応は八王子市のはずだ。

 つまり海というのは相模湾。南の話。

 

 真正面が東、後ろが西。

 南にあるのは右手側の……共用部分にある配電盤。

 

 配電盤に秘密があるのは学校と同じだ。

 

 扉を開けると、配電盤の中に学校にあったのと同じ水晶に金属線がついたような謎の装置……おそらく給電装置があった。

 

 ここは別にいい。

 

 問題はその配電盤の下部。

 ダイヤル式でロックされるキーボックスが配管らしき鉄パイプに引っ掛けられていた。

 

 ダイヤルは4桁。

 悩むことなく学校と同じく5295で開錠すると、中から鍵が一本出てきた。

 

 鍵に付けられたキーホルダーの番号は「102」

 

「102号室ならもう調べましたよね。鍵もかかっていないはずです」

「じゃあこの鍵は何かというと? 鍵がかかる何かがないかを調べます」

 

 C−4棟、1階2号室。

 

 重い金属製のドアを開けて室内に入る。

 

 中は新しいフローリングと畳の部屋で靴のまま入ることに若干抵抗はあったが、この後にボス戦が控えているならば、靴を脱ぐわけにはいかない。

 

「失礼します」と言いながら室内に入る。

 

 室内に入ってすぐに玄関からのキッチン。右手はトイレと風呂。奥には3部屋。

 

「皆さん、鍵がかかる何かがないか調べてください!」

「わかった、任せろ!」

 

 ラバンがキッチンの棚や冷蔵庫などを開け始めた。

 パインは我関せずとばかりに何もせず。

 

 和泉さんはベッドルームらしき奥の部屋。

 明山さんは居間らしきベッドルームの隣の部屋。

 ソーラは一番端の部屋にそれぞれ向かった。

 

 俺は少し考えて居間に向かうと、明山さんは特に何もせず、居間の中心で腕組みして目を閉じて何やら考え事をしているようだった。

 

「明山さんは鑑識課なんですよね」

「まあその通り。なので、昔の事件で物を隠すのはどこが多かったかを思い出してるよ」

「でも、明山さんは警察に入ってまだそれほど時期が経っていないのでは」

「おっしゃる通り。でも、過去の事件の資料はたっぷり読んでるので、そこを記憶から頑張って引っ張り出すところ」

 

 明山さんは目を閉じたまま答えた。

 思考の邪魔をしない方が良いだろう。

 

 黙って見守っていると、目を開けておもむろに隣の部屋に繋がる襖を開けた。

 

 押入れの襖をあけて、そこから天井裏のチェックをしている和泉さんと目が合った。

 

「もしや何か見つけましたか?」

 

 和泉さんの問いには答えず、足早に居間に戻り、更にまたベッドルームをのぞき込む。

 

「見つかったようですね」

「過去の事件の資料を調べてといて良かった」

 

 そう言うと、部屋の隅にあるクローゼットの扉を開いた。

 

 中には何もない。

 

 何もないのだが、さすがに俺にもこの意味が分かった。

 

「もしかして、クローゼットの奥行きが浅すぎるんですか?」

「その通り。隣の部屋の間取りと比較すると、ここに一辺1メートルくらいの空間がないとおかしい」

 明山さんはそう言うとクローゼットの奥の「壁」に爪先を立てた。

 

「リフォームして2部屋をぶち抜いて広いLDKなんかを作った部屋だと、撤去出来ない大黒柱を隠しているだけの場合もあるけど、ここはただの団地!」

 

 そのまま横にスライドさせると、ギギギと唸る音を立てて「壁」……「引き戸」が開いていく。

 

 そこには地下への大きな穴が開いており、金属製の梯子が暗闇の底に続いていた。

 

「私の役目はここで終わり。バトルは任せましたよ」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 おそらくボスがいるのは分かっているが、バカ正直に真正面から戦う必要はない。

 

 戦いたがっているラバンには悪いが、ここは安全策を取りたい。

 

 まずは使い魔の鳥たちを5羽召喚。

 

 しばらく待機して更に追加で5羽召喚。

 

 10羽の鳥たちを次々と地下へ送り出して先に進ませると、巨大な金属の扉を発見した。

 

「増幅魔法陣を形成。増幅(ブースト)!」

 

 3羽で扉の前に魔法陣を形成後に鳥を1羽突撃させて、金属扉を破壊する。

 

 足元からズンと衝撃が響く。

 

 扉の先にある空間には、巨大漆黒の球体があった。

 学校のプール跡に存在した球体との共通点は見受けられるが、最大の違いは大きさ。

 

 学校に出現した球体は3メートルほどだったが、今度は10メートルほどあるだろう。

 

増幅射矢(ブーストアロー)×(かける)3」

 

 増幅により強化した鳥は高速回転。

 ドリルのような形状となって、球体を3方向から同時に貫いた。

 

 意外に狭い空間なのでターンはできない。

 

「後続行け!」

 

 残る3体もドリルのような飛翔体へと変えて球体を貫く。

 

 球体はそのまま虚空へと溶けていき、後には銀色のメダルだけが残った。

 

「メダルを回収して持ってこい!」

 

 鳥を追加召喚。1羽にメダルを回収に行かせる。

 

 そのまま地下通路を逆戻り。

 鞄からコンビニのレジ袋を取り出して、その中にメダルを入れさせた。

 

 鳥を解放(リリース)して任務完了だ。

 

「以上です。ありがとうございました」

「さすがの手際です」

「いえいえ、こんなところで負傷者を出すのも馬鹿馬鹿しいですから」

 

 さて、ボスは滅んだ。

 

 町の中にそれなりの敵は残っているかもしれないが、ここはこの町を作っている結界を破って終了で良いだろう。

 

「偵察は終わったか?」

 

 ラバンが剣を抜きながら俺の方へ近付いてきた。

 

「それでボスはどんなやつだ? 広い空間でないと俺のドラゴンは呼び出せないから戦い辛いんだが」

「わたしもボスくらいは頑張らせてもらうよ」

 

 パインも戦闘が始まると感じたのか、ようやくやる気を見せた。

 

 ただ、ソーラはだいたい俺や和泉さんの表情を見て察したようだ。

 

「あの、端島(はしま)さん……じゃなかった、ラバンさん。言いにくいことなんですけど」

「どうしたソーラ? 臆したのか?」

「違います。多分、上戸さんが全部説明してくれると思いますけど」

「ボスはもう倒しました」

「えっ?」

「えっ?」

 

 ラバンとパインが揃って間抜けな声をあげた。

 

「今から結界を破壊して通常空間に復帰します。ただ、それなりの衝撃があるかもしれないので、出来れば姿勢を低くして備えてください」

「ちょっと待った、何を言っているのか分からないんだが。ボスがいたんだよな」

「もういないので大丈夫です」

「一人で倒せるものなのか?」

「さすがに二周目なので、どうとでもなりますね」

 

 結界を破壊する段取りは2種類。

 

 魔女の呪いのパワーで無理矢理穴を空けて破壊するか、増幅で強化した鳥にバルザイの偃月刀を持たせて、結界を形成している魔術をやはり力技で破壊する。

 

 ゴリ押しとも言う。

 

 今回使うのは、当然ながら現実空間に与える影響が少ない後者だ。

 

 さすがのクイズ大好き運営もランクアップ+限界超越した能力者がこの結界内に入り込んでいるのは想定外だろう。

 

「では行きます。皆さん、備えてください」

「ボスはーっ!?」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 空間の壁を破壊した直後に、俺たちは八王子の山中に戻ってきた。

 

 周囲は落葉が始まった樫やブナの木。

 

 半径30メートルくらいの広場になっており、足元には「幸福が丘ニュータウン建設予定地」の古びた立札が転がっている。

 

 遠くからはヘリが飛ぶ音が聞こえる。

 通常空間への復帰に成功したようだ。

 

「全員揃っていますか?」

 

 和泉さんがすかさず声をあげた。

 

 明山さんはすぐ近くにいる。

 ラバン、ソーラ、パインもいる。

 

 近くには突然森の中に転移したことで困惑している武装した能力者らしき人間が13人超。

 

 倒れている人間が5人……これは助かるか助からないかは素人には判断できない。救急隊を呼ぶしかない。

 

 最大で18?

 既に離脱した6人とラバンたち3人を除けば、ここに39人がいないとおかしいはずだが、他の21人はどこに消えた?

 

 いや、今はそんなことを考えている余裕はない。

 

 周囲には町を徘徊していた漆黒の人型の怪物たちも共に投げ出されている。

 

 それなりの数がいる。

 最低でも30。

 100以下ではあるが、この数の敵が町に雪崩れ込むと間違いなく惨事が起こる。

 

「みんな協力してくれ!」

 

 ラバンが近くにいた敵に剣を振り下ろしながら叫んだ!

 

「俺たちがクリアした途端にこの山の中に投げ出された。麓には八王子の町がある!」

「八王子?」

「俺たちの知ってる八王子はこんなド田舎じゃないぞ!」

「青梅と間違ってるんじゃないの?」

 

 どこかで聞いたやり取りのリフレイン。

 

「ここは八王子でも神奈川の近くです。相模湖とかあります」

「なんだ」

「そんなところにいるのか」

 

 みんな納得してくれたようだ。

 それぞれ武器を片手に近くにいる影へと立ち向かっていく。

 

「上戸さん、私たちも参加しましょうか」

「そうですね。明山さんはその間に連絡をお願いします。安坂さんに通常空間に復帰したことと、警察、救急への連絡を」

「もうかけてます!」

 

 スマホを耳に当てながら明山さんが答えた。

 仕事が早い。

 

「では行きましょう。こいつらを一匹たりと町へ行かしてはなりません」

「もちろんです。俺たちの戦いはこれからだ!」

 

 

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