収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第24話 「公園清掃ボランティア」

 東京へ新幹線で移動中に京都の魔術組織所属の桂から電話がかかってきた。

 

 今から裏東京の調査という段階で突然にこの電話とは嫌な予感しかしない。

 

 通話の内容次第では京都に戻る必要があるかもしれないが、車窓から外に流れている景色は愛知県の端。

 豊橋(負けヒロインの町)を抜けて静岡に入るところだ。

 

 ちょうどアナウンスで「東海道新幹線のぞみ東京行き……名古屋、の次は、新横浜、に停まります」と流れている。

 

「静岡で停車するひかりやこだまと違うので、今すぐ京都に戻れと言われてももう遅い!」のだが、無視も出来ないだろう。

 車両連結部に移動して通話に出る。

 

『上戸さんは、もう新幹線に乗られましたか?』

「もう名古屋を越えたので京都で降りるのは難しいですね。そろそろ浜名湖です」

 

 車窓の外ではうなぎパイの看板が高速で後方へ消えていった。

 宍道湖(しんじこ)でうなぎ丼を食べてもう1年経つのかと感慨にふけりながら答えた。

 

「探偵事務所への連絡ではダメでしたか?」

『上戸さんの周りに誰かおられますか?』

 

 逆に尋ねられて周りを見回すが、親子連れが後ろの通路を抜けてトイレに向かっていったくらいだ。

 客席からあぶれた客がたむろしている自由席との連結部とは異なり、指定席とグリーン車の間の連結部にいるのはトイレか俺のような通話をする人間くらいのものだ。

 

「今は誰もいません。探偵事務所には言えない話でしょうか?」

『はい。ですが、誰かに伝えておかないといけない内容です。本来は伊原様が良いかと考えておりましたものの……』

 

 桂がここで何か本音を言いかけたところで言葉を詰まらせた。

 

 気持ちはなんとなく理解できる。

 

 伊原さん本人は多分……一応……色々親身になって動いてくれているのは分かるが、本人の感覚が常人と絶望的にズレているので、惨事になることが多々ある。

 特に下手に本人の能力が高い故になんでもゴリ押しで解決しようとするところだ。

 

 ゴリ押しで勝利しても全く解決にならないどころか、むしろ社会的に敵が増えるだけなので勘弁して欲しいのだが。

 

「それは止めておいた方が良いと思います」

『そこで上戸さんに白羽の矢が立ったわけです』

「言い回しは気になりますが、私でよろしければ話を伺います」

 

 こちらはあくまでも個人なので、あまり大きな期待をされても困るだけなのだが、それでもやれることはやろうと考えている。

 判断は話を聞いてからでも良いだろう。

 

『「運営」が一部召喚者に対して召喚時に渡していた通信機の解析を行っておりました。その結果報告についての話です』

 

 通信機の話は俺も和泉さんから概要だけは聴いている。

 

 通信機は梨本が「運営」から渡されていたもので、そこからは定期的に様々な情報や指示などが飛んできていたらしい。

 

 流されていた情報について和泉さんが梨本から可能な限りヒアリングして記録したが、半分以上はデマであることが確定したという。

 残り半分についても検証中ではあるが、性質を考えるとやはりデマだろうという話だ。

 

 通信は一方通行。

 

 もし盗聴器の機能を兼ね備えていたとしても、梨本は端島たちと一緒に下宿の部屋か裏東京の調査に行っており、コアな情報が漏洩した可能性はないという。

 そのため、スパイと扱うほどではなく、処分は保留というところまでは聞いている。

 

 通信機を与えられて動いていた召喚者は他にも複数いてもおかしくないはずだと和泉さんは推測していたが、俺も同様の意見だ。

 

 だが、その調査結果をなぜ依頼主である探偵事務所の和泉さんではなく、俺に伝えてくるのか?

 

 理由を考えると、ろくでもない推論ばかり出てくるのであまり考えたくはないが、今は桂の話の続きを待つ。

 

『通信機を分解したところ、外装こそ未知のテクノロジーで作られた装置ですが、内部はただの携帯電話でした。つまり、これは現代の地球で作られた機器です』

 

 完全に予想外の答えが飛んできた。

 科学的にしろ、魔法的にしろ、てっきり未知のテクノロジーで作られた機械だと思っていたら現代の地球の機器とは拍子抜けにもほどがある。

 

「それは市販で買えるものですか? それとも少数だけ作成されたものでしょうか?」

『大きな声では言えませんが、手作りなのは外装だけで、内部のメカ部分は通販でも買えますし、なんなら関西ならば大阪の某所に行けば買えます』

「なるほど大阪日本ば——」

『——某所です』

 

 なるほど某所か。

 

 あそこはすっかりフィギュアとオタグッズとマンションの通りになったように見えて、秋葉原に比べるとまだ昔からの電気街が残っている。

 盗聴器として使える無線機器が売られていてもおかしくはない。

 

 ただ、一応は防犯用として販売されているが、盗聴器などいくらでも悪用できるので、あまり表立って販売できないのはわかる。

 

「動力はどうやって動いているんですか? 普通のバッテリーだとすぐに電池切れになりそうですが、そこに未知のテクノロジーが?」

『普通の電池ですよ。タイマーで決められた時間のみ電源が入る設定になっていて、それ以外は電波の送受信は行われないようになっているので、内蔵バッテリーで2か月ほど使用できるようです』

 

 桂の説明の後にスマホからピコンとメール着信の音が鳴った。

 

『メーカーの公式ページがありましたのでURLを送信しておきます。中国語と英語のみのサイトですが、自動翻訳でも内容は読めます』

 

 おそらくホームページのURLをメールで送ってくれたのだろう。ありがたい。

 

「でも、既成品ならば、なぜ誰も気付かなかったんでしょう」

『外装の加工が上手いのと心理的効果ですね。超科学力を持った謎の組織ならば道具もやはり相応の技術の産物であるという先入観が働いてしまった。探偵さんたちを擁護するならば、魔力探知にかからなかったこともあると思います』

「魔力探知を過信しすぎたと」

 

 やはり思い込みというのは怖いという話だ。

 

 魔力探知に引っかからなかった時点で、これは科学で作られた工業製品だと判断すればよかったのだが、先入観から誤認してしまった。

 思い込みでミスをするというのは自分にも当てはまるところがあるので注意していかないといけない。

 

『問題はこれが携帯電話ということです。個別の電話番号を持っていて既存の携帯電話網を利用しているということは、契約者がいるということです』

「そういうのってダミーの契約者で偽装されているのでは?」

『調べたところ、この回線契約者が問題だったんです。契約者は「星の智慧(ちえ)」。あの解散したはずのカルト宗教です』

 

 妙に懐かしい名前が出てきた。

 

 ただ、あの教団はリーダーと拠点を失ったことで半ば分解。

 警察の監視対象団体にもなったことで、今では小規模の事務所にわずかな信者が残っているだけのはずだ。

 

「もしかして教団が活動していた時期の遺産のようなものでしょうか?」

『契約時期からしてその可能性が高いですね。警察が星の智慧教団の事務所へ家宅捜索に入った際に様々な物を証拠として押収していますが、その中に「通信機」も含まれていたようです』

「今回調査を依頼されたのもそれだと?」

『おそらくは。誰かが警察の保管書から持ち出したんです』

 

 ほぼ機能停止している教団が再始動したと考えるよりも、警察の倉庫から盗み出されたものである可能性が高いだろう。

 いくらダミーとはいえ、今更警察の監視対象団体の名前で回線の新規契約が通ると思えない。

 

 とはいえ、警察の証拠保管庫へ侵入して物を盗むような怪盗がいるとは流石に思えない。

 

 警察の中にスパイが存在しており、通信機を密かに盗み出した可能性の方が高いだろう。

 

 政府内部に周防大臣のような「運営」のスパイが存在していることは判明している。

 同様に警察内部にもスパイが存在してもおかしくはない。

 敵はそれほどに強大で、かつ巧妙に日本の社会の深いところにまで入り込んでいるということだ。

 

『なぜ探偵事務所に連絡しなかったか、これでお分かりかと思います』

「はい……あまり考えたくはないですが」

 

 探偵事務所所長の蘆名(あしな)さんは警視庁OBであり、部長の八頭(やず)さんも警視庁に席を置いたまま、出向という形で管理職をしている。

 毎日のように報告書を作成して警察と密接に情報連携を行っている。

 

 一応閲覧には制限があるはずだが、元々権限を持っている人間がスパイになっていれば何の障害にもならないだろう。

 

 探偵に情報を出すと、そこから警察経由で工作員に情報がすぐに伝わる。

 

「警察も信用できない」に加えて「警察と親密な探偵も信用できない」なんて話を探偵事務所に伝えられるはずがない。

 道理で伊原さんや俺へ直接連絡してくるはずだ。

 

『その上で。私たちがこの通信機の分析結果を探偵に報告すると、当然警察にも保管庫から盗難があったということが伝わるわけです。当然、倉庫に保管されている品の棚卸しが始まるでしょう』

「当然、誰が盗み出したのか内部監査が始まると」

『その前に工作員は動くはずです。押収した品目を記載した書類の改ざんするか……もっと過激な隠蔽工作をするか、それとも……』

「先に逃げ出すか」

 

 新幹線は大井川を越えて焼津市に入ろうとしていた。

 そろそろ富士山と縁が薄い西日本からの旅客が、新幹線の左側の窓に張り付く時間だ。

 

『私たちも、調査報酬をいただいておりますので、この結果を報告しないという選択肢はありません。ただ、報告日を遅らせることはできます』

「いつ頃に報告を予定されていますか?」

『土日祝は事務所が休みなので、週明けに報告します。実際、今日はもう仕事をやめて自宅へ帰ろうと思います。つまり、この週末が勝負です』

「勝負をするのは私ですけどね」

『頑張ってください。私たちは部外者ですので頑張りません』

 

 桂が笑いながらぶっちゃけてきた。

 

 ただ、探偵事務所へ伝えるのではなく、先に俺へ連絡してきたことと、期限を来週に伸ばすという精一杯の配慮をしてくれた。

 感謝しかない。

 

『探偵事務所までグルだとは思いませんが、組織の性質上、入手した情報を警察に隠し通すのは無理でしょう。情報は基本的に敵に筒抜けだと考えてください』

「ご忠告ありがとうございます。敵は多いですが、なんとかやってみます」

『こちらでも他に策はないか調べてみます。何かあれば連絡します』

 

 通話はここで終わった。

 探偵に出した情報が警察を通じて敵に利用されるならば、こちらとしても別の動きをしなければ裏をかくことは出来ない。

 

 だからと言って今すぐに何か出来ることがあるかというと……。

 

 ここまで考えて、俺達の裏東京の調査以外に本日別の調査が同時に進行していることに気付いた。

 

 柿原さんたちが参加する保土ヶ谷の公園でのボランティア作業。

 

 あくまでも何も知らない高校生たちがたまたま近くの公園で清掃活動の様子を撮影していたら、偶然に「運営」が極秘理に建造した何らかの設備が映り込んでしまった。

 そういうシナリオで調査を進める予定だったが、その情報が事前に漏れているとなるとややこしいことになる。

 

 撮影は許可しませんというだけで追い出すだけなら良いが、武力行使に出てきたら?

 

 今の柿原さんや他の高校生達に抗うすべはない。

 

 急いで柿原さんに電話をかけるが、どうやら彼女も自宅から保土ヶ谷までの電車に乗っているのだろう。

 電話に出ることはなかった。

 

 車窓を見ると目の前には大きな富士山があった。

 あと30分ほどで新横浜の駅に到着する計算になる。

 

「裏をかくには……まずは柿原さんが公園に行くのを阻止しないといけない。もしかしたら公園の方に罠が仕掛けられているかもしれない」

 

 杞憂ならそれでいい。

 

 新横浜から東京までは、急行と新幹線の移動時間の差は30分ほどだ。

 それこそ体調不良だの、本業の仕事で支障があって対応しなければいけないなどの理由をでっちあげて、遅れると電話を一本入れたら済む話だ。

 

 その上で、警察側にいるであろう工作員の裏をかく形で行動しないといけない。

 

 もちろん情報が筒抜けになるのを回避するために探偵たちの力は借りることが出来ない。

 

 対処方法としては、信頼できる仲間たちだけで攻略を行うことだ。

 

「新幹線で途中下車ってやったことないけど出来るのか? とりあえず新横浜で下車だ。それから……とりあえず誰から連絡すべきか」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「えっ? こっちは別に何も起こってないですよ。今はゴミ袋を配ってるところです。参加者は1の2の3の……11人」

 

 私、柿原綾乃(かきはらあやの)が公園の管理事務所の前でボランティア活動の段取りを確認していたところ、急に上戸さんから電話がかかってきた。

 今の状況を聞かれたので、11人が集まって今日の予定について話していたところだと伝えた。

 

『今のところ危険な雰囲気はなし?』

「ないですね。公園の事務所の人から、工事現場は危ないから近寄るなと忠告はされましたけど」

『近寄るなと言われた場所はどのあたり?』

「運動公園の方。ロープを張った先で工事をやってるから近くには寄るなってことらしいです。まあ、さりげなく近付くつもりですけど」

 

 改めて公園の地図を見る。

 工事現場には防音のための壁が立てられているらしいので、近くから中の様子は見えないが、奥の方にある体育館の方に行けば見えるかもしれない。

 

『悪いけど、今日のところはボランティアの掃除だけやって帰って欲しい。調査はなしだ』

「でも、大丈夫なんですか、それで?」

『どうも、運営……敵に今回の調査がバレている可能性が出てきた。今も監視されているかもしれない』

 

 そう言われると急に不安になってきた。

 首を振って周りを見回す。

 

『向こうも目立ちたくはないはずだ。しかも、大勢の人の目がある公園の中。こちらからアクションを起こさなければ、何もしてこない……はずだ』

「こちらからアクションというのは?」

『カメラで撮影したりとか……』

「ダメですよ。部活と高校生グループの活動報告に載せる予定の写真と動画を撮影するつもりでカメラを持ってきて、もうライブ配信始めちゃってます」

『……えっ?』

 

 スマホの向こうで、上戸さんが絶句したのが分かった。

 さすがに隠しても仕方ないので上戸さんに説明をする。

 

 今は別の高校の子に小型のアクションカメラを渡して撮影をしてもらっているところだ。

 カメラは帽子にクリップで固定していて、彼女の視点で撮影出来るようになっている。

 

 撮影された動画はスマホに転送されて、そのままリアルタイムでネット上にライブ配信される仕組みだ。

 

 彼女は同じ学校の生徒たちとスマホを見ながらカメラのアングルの調整などを行っている。

 

 それを今更止めろと言われてももう手遅れだ。

 

 今のボランティア活動は地味ながらも県内の高校生や教師に支持されていて、それなりに視聴者数もいる。

 理由は言えないけど、危険かもしれないからライブ配信は禁止と言っても通じないだろう。

 

 中止にするなら、もっと早く言って欲しかった。

 

「さすがに撮影役は危険かもしれないので私が代わることにします」

『そうは言っても、今の柿原さんは何の能力もないだろ』

「だからって私のせいで何も知らない子が巻き込まれちゃ可哀想でしょ」

 

 これだけはハッキリ言っておきたい。

 

 確かにこの調査は上戸さんに頼まれたからというのはあるけど、町……東京がおかしくなろうとしている時に何もせずに安全なところで見ているだけというのは納得が出来ない。

 何よりそれは私らしくないし、そこは折れるつもりはない。

 

 上戸さんはしばらく唸っていたけど、すぐに折れた。

 

『わかった。俺も念のためにすぐに駆けつけるから、しばらくは間を持たせて欲しい』

「ダメですよ。敵の組織に狙われてる上戸さんが来たら余計に事態がややこしくなるでしょ。ここは任せてください」

『それでも』

「それよりも自分の仕事をこなしてください。ここは私がやり切りますから。友達のやることをなんですから信じてくださいよ。私だって百戦錬磨の経験があるんですよ」

 

 上戸さんはまだ何かを言いたそうだったが、後で状況を聞かせてくれと通話を切った。

 

「今の電話は?」

 

 私が声を荒らげて通話していたのを見ていたのか、服部達也(はっとりたつや)さんが心配げな顔で近付いてきた。

 

 彼は横浜の高校生のコミュニティグループの代表にして、隣の高校の元生徒会長。

 

 そして、私と同じく元能力者だ。

 もう能力は封印したので使えないが、その時の知識と経験は生きている。

 

 今日の参加者の中で、私以外に詳しい状況を理解しているのは彼しかいない。

 

「上戸さん……私の友達から。危険があるかもしれないから、今日のボランティア活動ついでの調査は止めておいた方が良いんじゃないかって」

「危険というのは?」

「私たちを排除するような動き……ただ、公衆の面前で騒ぎになるようなことは避けるはずなので、やるとしたら結界の中、異空間に引きずり込んで何か仕掛けてくると思います」

「異空間……あのモンスターが出る空間の話だな」

 

 彼は見た目こそ仕事が出来そうな冷静沈着なクールな男という感じだが、実はかなり気が小さい。

 

 顔にこそ出さないが、眼鏡のブリッジを押し上げる指先が小刻みに震えていた。

 今の説明だけでも、かなり動揺しているのが分かる。

 

 比べるのは悪いとは思っているけど、こういう状況で覚悟を決めきれないところは、やっぱり小森と比べてしまう。

 

 小森も悩んだり、動揺したりするけれど、そこからの気持ちの切り替えはとても早いし、指示も的確だ。

 異世界で色々あって成長したということらしいけど、何より心の成長が大きいと思う。

 

 ……本当に小森と付き合える赤土さんが羨ましい。

 

 だけど、服部さんも生徒会長をやっていただけあって誠実だし、正義感だけならば小森よりも強い。

 

 そして、一度覚悟を決めたら、あとはもう迷わず進める信念の強さと行動力もある。

 

 彼に足りないのは実戦経験だ。

 それが足りないからこそ、今回のような未知の事態への対処が遅れる。

 

 ならば、みんなと一緒に戦った経験を使える私がサポートをしてやればいいと思っている。

 

「最初の予定からコースを変更しましょう。管理事務所からも運動公園の周りは工事の車が出入りするから近寄るなと言われてますし、それを理由に説明すればみんなも納得してくれると思います」

 

 案内板を指差しながら提案すると、服部さんの指の震えが止まった。

 

 服部さんは目を閉じて何やら思考を巡らし始める。

 

 30秒ほど経ったところで目を開いた。考えがまとまったようだ。

 

 相変わらず表情は硬いが、目つきが先程までと違う。

 人を引っ張る力がある……生徒会長の目だ。

 

「コースの選択と説明については任せてほしい。あと、アクションカメラでの撮影係は引き続き彼女に頼もうと思う」

「でも、カメラで撮っていると危険かもしれないんですよ」

「いや、敵組織があくまでも秘密裏に事を進めたいのならば、ライブ配信に割り込んだり、中断させるような動きは避けるはずだ。つまり、カメラを持っていることが安全の保証になる」

「なるほど、理屈はあっています」

 

 服部さんの脳がようやく始動してくれたようだ。

 その理屈は私も思いつかなかった。

 

「その上で、工事現場の撮影も諦めたくはない。私も町でおかしな事件が起こって欲しくないという気持ちは同じだ。だけど、その方法は今すぐ思いつかない。柿原さん、良ければ知恵を貸して欲しい」

「分かりました。私で良ければ作戦を考えますよ」

 

 さすがに小森と上戸さんの組み合わせほどうまく作戦を考えたりは出来ない。

 経験も知識も足りていないのだから当然だ。

 

 だけど、2人で知恵を出し合えば、今のピンチを乗り越えるくらいは出来るはずだ。

 

 敵もこちらも目立ちたくないという条件は同じだ。

 

 なら、こちらがどう動けば相手が嫌がるかを考えればいい。

 

「超能力はもうないけど、それでも出来ることはあるって教えてやりましょう」

 

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