タブレット端末を左手に、右手に銀のメダルを持っていると、空中にメダルの投入口が現れた。
これは以前に検証した時と同じ動きだ。
「メダルを投入して――」
システム音声が終わる前に躊躇わず銀のメダルを投入する。
軽妙なBGMとSEが鳴った後にタブレットにメニュー欄が表示された。
ポップ体の文字といい、ふざけているとしか思えないが、ここで怒っても仕方ない。
画面上部には「5ポイント」の表示がある。
メインメニューには「アイテム」「特殊効果」「マニュアル」と並んでいるので「特殊効果」をタッチ。
ずらりと並んだメニューをスクロールしてチェックしていく。
端島がタブレットの画面をのぞき込んだ。
「この『傷の治療』じゃないか?」
端島が指したのは1ポイントで選択出来るメニューだ。
「いえ、こちらの3ポイントの『傷の治療』の方が、5人まで治療出来るようなのでお得です」
「傷の治療」機能は1ポイント、3ポイント、5ポイントにそれぞれある。
それぞれの説明を読むと、1ポイントだと「200メートル以内にいる1人」しか治療されないが、3ポイントだと「半径200メートル以内にいる最大で5人」に変化する。
5ポイントだと15人を治せるようだが、これは流石に無駄が多い。
「船木さんも松葉さんもこれを選ぶことに異論はないですね」
2人にタブレット端末の画面を向けて効果を説明する。
横では重傷を負った合田が苦しそうに荒い息を吐いている。
顔色も土気色で良くない。
梨本が心配そうに看ているが、現状では回復させる手段がない。
本当に辛そうだ。早く治療を済ませたい。
「俺だけ回復がベストだが、ポイントが2つ残るならまあいい」
松葉はこれでOK。
「5人というのはどういう計算で?」
「合田さん、船木さん、松葉さん、端島さん、梨本さんの5人です」
「反対する理由はない。早く治せ。こっちは無理してるんだ」
傷を負っているのは船木、松葉も同じなので反対意見は出なかった。
メニューをタッチした後に回復対象を選択する画面が表示されたので、説明通りの5人を選択する。
「本当によろしいですか?」の確認が出たので「はい」を押すと、画面上部のポイントが5から2になった。
選択した5人の全身が青い光に包まれ、目立つ個所にあった擦り傷や切り傷、打ち身で赤くなっていた箇所が健康な肌に戻っていく。
服で見えない場所や内臓系のダメージも治療されているのだろう。
効果は折り紙付きのようで、先ほどまで負傷のために辛そうに座り込んでいた船木と松葉が嘘のように立ち上がった。
「うう……助かったんですか?」
続いて、一番酷い重傷を負っていた合田が頭を振りながら身を起こした。
呼吸も安定しており、顔色もすっかり回復している。
「良かったよ。合田チャンが助かって本当に良かった……」
梨本が感極まったのか、合田に抱き着いた。
端島も抱き着きこそしないが、仲間の回復が嬉しかったようで、目からは涙が流れている。
「もう大丈夫なのか? 立てるか? もう少し寝ていてもいいんだぞ」
「大丈夫です。梨本さんも、端島さんもありがとうございます。上戸さんも、咄嗟に守ってくれたんですよね」
「完全に守り切れなくてすみません」
「いえ、それがなければ私は死んでいました。感謝しかありません」
大事がなくて良かった。今はそれしかない。
反省会は後でゆっくりやりたい。
「良かった良かった」と考えにふけっている端島の服の裾を船木が控えめに引っ張った。
「私も立ち上がれないほどの重傷だったんですけど、何かないの?」
「そうだ。アドバイス助かったぜ。ありがとう」
「心配する言葉は?」
「ああ、助かって良かったな。もう大丈夫か?」
「ついで感はあるけど大丈夫よ、ありがと」
「そんなことより、上戸さんが治っていないみたいだけど、そっちこそ大丈夫か?」
「そんなこと」扱いされた船木があからさまに不満の表情を見せた。
こいつ正気か?
なぜ立ちかけたフラグをいきなりバキバキに折っていくのか?
合田と梨本。
同年代の女子と長期間一緒にいて、しかも、仲は険悪ではないのに、恋人関係になれないどころか、フラグが一切立たないのもそういうところだぞ。
何が異世界ハーレムだ。
「私は大丈夫です。丈夫ですので」
「あの爆発で傷を負わないのは丈夫とかいう次元を超えているだろう」
松葉は俺がほぼ無傷なことに納得がいっていない様子だが、さすがにノーダメージではない。
コンディション的には無視できる程度の軽傷というだけなので、負傷者を優先しただけだ。
「それで残ったポイントをどうするんだ?」
「そうですね」
タブレットを操作して「アイテム」「特殊効果」の中身を一通りチェックしていく。
異世界電話は相変わらず売り切れ。
メニューにある説明を読んでいくうちに、良い使用方法を思いついた。
最後の確認ボタンさえ押さず、リストを見るだけならばポイントは消費されない。
この使い方がベストだろう。
「まずは1ポイントメニューにある『オブジェクトの修復』を使いたいと思います。この機能は、戦闘などで破壊された家や武装などを修復させる機能とあります」
「何を直すんだ?」
「貨物列車です。先程派手に爆発で壊されましたから」
これについて異論がないか確認したが、反対意見はなかった。
ポイントを使って効果を選択。
対象に貨物列車を指定すると、列車全体が青い光に包まれた。
破損した先頭車両の部品が、まるでビデオの逆再生のように一か所に集まり、どんどんと修復されていく。
1分も経たずに列車は破損前の状態に復元された。
壁に触ってみるが、どこが壊れていたのか分からないくらいだ。
試しに運転席にあるボタンを押すと、警笛が鳴った。
便利なものだ。
俺たちの世代にこれがあれば、色々と話は変わっていただろう。
「それで、まだ1ポイント残っていると」
「使い方について良い考えがあります。これです」
ショップ機能の1ポイントメニューの末尾に「離れた仲間との合流」があった。
試しに押してみると、グレー表示の名前が次々と表示される。
距離が離れた場所にいる相手は選択できないらしい。
ここで対象を誰も選択しないでキャンセルすればポイントは消費されず、トップメニューに戻る。
リストを上から順に見ていく。
モーリス、エリス、オウカ、ハセベ……メルク、ローラン、ミディールは誰なのか?
しばらく考えて、眼鏡マン、タイツマン、死んだ戦士の名前だと気付いた。
敵でも表示されるのか。
今更感があるが、この名前も心に刻んでおこう。
ウィリー、ガーネット、ソフィア……は
出会った順に懐かしい名前が並んでいる。
フォルテたちの名前がないのは、運営と関係ない現地人だからだろう。
ただ、ナタリオ、レイチェルという長崎で会った先輩までカウントされているのに、カーター、伊原さん、中村夕子の3人がすっぽ抜けていたりと謎も多い。
カーターは正規の参加者ではなく、伊原さんは自らシステムから離脱。
中村は……伊原さんの言葉が正しければ、邪神に関わった者の末路か……全ての記録から消えると。
モーリス……小森くんの名前は赤表示だった。
緑表示されている名前は最後の方に固まって表示された。
端島たちと、先ほど倒したばかりの武藤、高野の名前で全てだ。
「効果の説明を信じるならば、10キロ以内にいる相手の場所に4人まで瞬間移動できるようです」
「名前の表示の色が違うのは?」
「説明が正しければ、距離がどれくらい離れているかの目安です。緑は2キロ以内。黄色は2キロから5キロ。赤は5キロから10キロ。それ以上はグレー。距離によって色が変わるようですね」
「なるほど、タブレットを貸してみろ」
「松葉さんはいきなりタッチしそうなので貸しません。船木さん、どうぞ」
松葉と船木ならば、まだ船木の方が信用出来る。
船木にタブレットを操作してもらうと、すぐに逢坂が見つかったようだ。
「いたいた、このグッドフェローってやつが逢坂」
タブレットのリストの中には「グッドフェロー」の名前が緑表示で存在している。
「ロビン・グッドフェローでしょうか? イギリスの伝承に登場する妖精の名前ですね」
「そこまでは知らないけど」
「イタズラ好きの妖精で、現地だと色々な伝承に登場するらしいです。異名がホブゴブリン」
「ゴブリン? 確かにそれは的を射た名前だと思う」
ゴブリンも元はノームやドワーフなどと同じで単に妖精を指す言葉だったはずだ。
それが醜悪な雑魚モンスターの代名詞になっているのは、気の毒といえば気の毒である。
「まさか、これでキモ男のところに一気に瞬間移動して襲撃をかけるの?」
「いえ、違います。説明をよく読んでください。距離で名前表示の色が変わるとあります」
タブレットの画面を端島、合田、松葉が一斉に覗き込んだ。
「なるほど、名前の色でレーダーとして使えるのか」
「当たりです。近くだと緑表示、離れると色が変わるなら、相手の居場所を絞り込めます。どこへ逃げても、これがあればすぐに分かります」
「それでも2キロは結構広いぞ」
「そこでこちらを併用します。『コンディションの回復』は500メートル以内。『傷の治療』は200メートル以内。『ステータスの確認』は100メートル以内。何故か使用可能な距離が違うんです。これを利用します」
「効果を変えることで現在位置が分かるのか」
船木が操作して「コンディションの回復」を選択するが、グッドフェローの表示は出ない。
これで逢坂との距離は500メートル以上、2キロ未満離れていることが分かる。
スマホを取り出して地図アプリを表示させる。
現在位置から500メートル以上で2キロ未満の場所。
それでいて、地下鉄の路線上だ。
逢坂は地下鉄路線を使った貨物列車が荷を運んでくるのを待っているのだから、必然的に地下鉄の路線に面した建物にいることになる。
「場所は地下鉄神谷町から霞が関までの間です。この路線上にあるのは……」
地下鉄日比谷線の路線を辿っていく。
東京タワー最寄りの神谷町。
商業ビルが立ち並ぶ虎ノ門ヒルズ。
各省庁がある霞が関。
文科省は虎ノ門に近いし、端の警視庁は皇居の堀の手前だ。
2キロは外務省のビルがあるあたりまで。
日比谷線は警視庁手前でカーブするので、少し先にある桜田門方面へは行かない。
ちなみに、駅があるかどうかは関係ない。
この貨物列車は任意の場所に停めることが出来る。
地下鉄のあちこちには一般人が知らないメンテナンス用の通路が通っている。
それらを使って、近隣のビルへの出入りは可能だ。
「虎ノ門ヒルズには地下街がなかった?」
「ありますね。そこにテナントを借りて倉庫利用している可能性も0ではないですが……私が考える逢坂の拠点はここです」
俺が指したのは虎ノ門駅近くの建物。
文科省と文化庁舎。
「なんでそんなところに?」
「根拠としては、運営に協力し、逢坂を子飼いしている
縁もゆかりもない建物を借りていると考えるよりも、雇い主が利用している建物を活用していると考えた方が理屈は通る。
大臣クラスならば動かせる人間の数も多い。
官僚の守秘義務と合わせれば、情報の隠蔽もしやすいだろう。
「周防って総理の?」
「この世界だと文科省の大臣なんですよ」
「なるほど、それで文科省が怪しいと」
船木の疑問に合田が俺に代わって説明してくれた。
地下鉄日比谷線は桜田門駅には行かないが、路線自体は警視庁のビルに面している。
探偵たちの資金源は総務省ではあるが、活動内容は警察に親しいため、実質バックに居るのは警視庁だ。
本来、貨物列車は警視庁の倉庫へ向かい、そこで荷物を下ろす予定だったと考えるのが自然だ。
逢坂の計画は、警視庁に向かう途中の列車から荷を奪い、道中にある文科省で全部の荷を降ろしてしまうことだったのだろう。
文科省も警視庁も途中まで地下鉄のルートは同じなので、これならば計画も鉄道会社への申請内容の変更も必要がない。
「説が正しければ、逢坂がいるのは、文科省の地下倉庫です」
「その説をどうやって証明するんだ?」
「そこの運転手に聞いても良いですけど」
運転手とは、
既に拘束済みではあるが、こちらの質問に対しては黙秘を続けている。
具体的な話をすれば、何かしら反応があるかもしれないが、ここは確実を取りたい。
「文科省には、つてがあるので直接聞いています」
「どういう人生を辿れば省庁につてが?」
「たまたま友人がいるだけですよ」
時間は土曜……ではない、既に日曜日のAM2時だ。
普段だとこの時間に電話をするとキレられること請け合いではあるが緊急事態だ。
否応でも出てもらう。
架電すると、3コールで出た。
この速度での反応は間違いなく起きている。
土曜の深夜に残業とはなんという社畜……いや、公僕なのか。
「もしもし
『最初にオレオレ言うのは詐欺だぞ、上戸』
電話を掛けた先は、俺の高校時代の友人の
高校卒業後は東大卒業からの文科省入りというエリートコースをたどってはいるが、今はまだ入省したばかりの下っ端に過ぎない。
山のようにやってくる仕事を処理するために、毎日のように労働基準法ガン無視で楽しい残業を続けている。
過労死する前に早めの転職をお勧めしたい。
『こんな時間に電話とは、アメリカ支社に転勤したのか? 時差で分かりにくいだろうが、日本時間だと今は夜中の2時だぞ』
「知ってる。現在位置は東京タワーの近くだからな」
『切るぞ』
「待って、切らないで。多分、お前が現在進行形で絶賛残業中の文科省の建物についての話がある」
『……切るぞ』
今の会話で危険な雰囲気を感じ取ったのだろう。
電話を切ろうとしたので、会話を続けて興味を引くことにする。
「今日……じゃなくて昨日か。土曜の日中に、周防大臣と、そのお付きのゴロツキみたいなやつが施設内に来てなかったか? トラックもだ」
返事はない。
ただ、電話の先で唯野が「ちょっとコーヒー休憩に行ってきます」と言った声が聞こえた。
数人からの返事が聞こえたが、そこの部署はマゾか何かだろうか?
ややあって、返答があった。
『お前、そのうち消されるぞ。なんでそんなヤバい橋を渡っているんだ?』
「残念ながら、渡っているのは、お前がいるビルの少し先に建っている、桜のマークが付いた組織お墨付きの安全な橋だ」
『うちからは財務省が邪魔でそのビルは見えない』
「同棲中の彼女の話をしてるのか? もう財布を握られてんの?」
『我が家の財務省の話じゃねえよ。確かにもう財布は握られてるけど』
盛大なため息が聞こえた。
お互い、パートナーに金を吸われる問題については苦労しているようだ。
『マンションの頭金を貯めているせいで、月の小遣いが1万なんだけど愚痴ってもいいか?』
「最近は昼飯代も高くつくだろうに、普段は何を食ってんの?」
『ゼリー飲料を大量にまとめ買いしてる。なんと、1パック10秒で成人1食分のカロリーを摂取出来るんだぜ』
「歳暮に何か食えるものを送るから、それまで死ぬなよ」
『たすかる』
俺とは別の意味で命をかけて戦う
だから結婚は給料が増える20代後半まで待てと。
近くに住んでいたら、弁当くらい作ってやるのだが、さすがに兵庫の自宅から東京まではあまりに遠い。
『大きな声では言えないが、偉い人の一声で、新しく倉庫に運び込まれる品の目録が必要になったので、部署総出で休日出勤して急ピッチで作ってるんだ』
ありがとう。それが欲しかった情報だ。
「多分、その目録は使われることなく廃棄されるだろうけど、後でガッカリすんなよ」
『うちの部署全員に絶望を与えるのはやめろ。人の心とかないのか?』
「そこになかったらないですね」
仕事を個人に押し付けるのではなく、部全体で分け合って担当出来る職場で良かった。
多分ホワイトな証拠だ。
「あと、偉い人……周防大臣は半年以内に政界から消えるので、関連株は買わない方がいいぞ」
『インサイダーやめろ。俺のクビが飛ぶわ』
「飛んだら連絡してくれ。うちの上司に紹介するから」
『その時は頼むわ。じゃあ、消される運命の目録の作成に戻るからな』
「ああ、頑張ってくれ。あと、ビルが壊れない程度に地下で暴れるが、崩れ始めたら逃げてくれ」
『うちのビルの地下で何をする気だよ!?』
「第三次世界大戦だ」
これ以上仕事を引っ張っても仕方ないので通話を切った。
一応文科省のビルが崩れない程度でなんとか解決したい。
「確認が取れました。文科省に周防大臣と逢坂らしき人物がやってきて、新しく倉庫に入れる目録を作らせているようです」
「お前、本当に何者なんだ?」
松葉が怪訝な顔をして尋ねてきたので、自信を持って答える。
「通りすがりの魔女だ。覚えておけ」
◆ ◆ ◆
出発準備が整ったところで、武藤がようやく意識を取り戻した。
その横には運転手の土間と、重傷を負ってまともに動けないボンバーマン高野を連れてきている。
3人は武藤の盾から伸びた鎖でグルグル巻に拘束されている。
そう簡単に脱出は出来ないだろう。
「ようやく起きましたか?」
「ここは一体どこだ?」
「警視庁の地下倉庫です。あなた達が眠っている間に、列車を動かしてここまで連れてきました」
何をするにも、貨車に積んでいる探偵事務所から運び出された魔術関連の品と、塔の頂上階から運び出された機器が邪魔になる。
そのため、逢坂のところに攻め入る前に、先に警視庁の倉庫まで荷を運んできたのだ。
「俺たちがもう抵抗しないと思っているのか?」
「いえ、抵抗すると思っていますよ。だから、この機器を人質にします」
3人を縛り付けているのは、塔から運び出した機器だ。
もし高野がまた自爆芸をしたり、武藤が暴れると、この機器が真っ先に壊れる。
そうすれば、こいつらは目的を何一つとして達成できない。
「あなた達は何のためにこの機器を運び出そうとしていました?」
「それは、この機器を運び出すことが任務だからだ……ヤケになって壊すと思わないのか?」
「思いません。あなた達は戦闘前に覚悟という言葉を口にした。それは、たとえ自らが傷ついても必ず任務を成し遂げるという強い責任感があったからだと思います」
「つまり、破壊されたら任務失敗が確定するこの機器を俺たちには壊せないと考えている?」
「はい」
武藤はそれで黙った。
下を見て悔しそうな顔をしている。
「拘束されて動きに制限があると思いますが、
「一緒になって暴れると思わないのか?」
「ここは警視庁の地下ですよ。警官隊が押し寄せますよ」
念のためにそう脅したが、こいつらはもう暴れないだろう。
死なばもろともと無差別、無秩序に暴れて、無関係な警官に傷を負わせる人間ではないと考えている。
覚悟という言葉がそれを物語っている。
ポリシー……矜持のない人間はその言葉を口に出さない。
松葉の動きに制限をかけたのと同じ。
物理的に拘束するよりも、約束で縛り付けた方が拘束力は強い。
「他に荷物は倉庫に運んでおきます」
「お願いします」
待機していた警察官の
警察の中に運営のスパイがいるようだが、横川さんならば、身元の確認が出来ているので安心だ。
少し量は多いが、整理を頑張ってほしい。
「身内にスパイがいるとは信じたくないんだが」
さすがにそれほど長期間掛けるつもりはない。
逢坂を倒して、周防大臣の手駒を全部剥ぎ取るまでの間だけでいい。
探偵事務所から持ち出した品や、塔から運び出された機器を見張っていただくだけでいい。
あの人はここにはいない。理由は分かっている。
「上戸さん、ダミーの積み込みは終わったぞ」
端島が作業完了を呼びかけてきた。
本物の魔術関係の道具や機器をバカ正直に逢坂のところへ持っていくわけにはいかない。
なので、ダンボールでそれらしい形に作ったダミーをコンテナに積み込んで、貨物列車で殴り込みをかける。
これが俺たちの作戦だ。
「敵は能力者3人。逢坂と他2人です」
「それは間違いないと思う。このタブレットで確認済み」
船木が1ポイント残ったタブレットで様々な特殊効果を選択して、リストに表示される名前を確認した。
そこに出てこない以上は、能力者はそれで打ち止めだ。
「残ってるのは側近。実際に人を殺してメダルに変えた男が2人。騎士クリスと戦士グレイブの2人。本名は知らない」
名前はタブレットで確認出来る。
顔も、以前に和泉さんに見せていただいた写真に写っていた、周防議員の事務所に出入りしているの人物で間違いない。
あとは運営が、どれだけモンスターを逢坂に貸し与えているか次第だ。
「銀のメダルがここにもう1枚ある。さっきの要領で5人までは回復できるけど、過信はしないこと」
「さっきは不覚を取りましたけど、今度はミスしません」
「わたしが合田チャンを守るから大丈夫だよ」
合田と梨本は2人セットで行動する。
俺も油断はしない。
もう自爆攻撃に巻き込まれるような失態はおかさない。
「逢坂は俺が相手をする。お前たちは露払いだ」
「でも、逢坂さんは特に特殊能力が強いとかないんでしょう?」
「あいつは能力よりも、人を騙すテクニックがある。お前たちだと口車に乗せられるのがオチだ」
松葉の狙いは逢坂ただ1人のようだ。
それならそれで、こちらは露払いに徹せられるので良いのだが。
「いいですか、これから攻め入る先は文科省のビルです。あまり長時間戦闘すると、通報される可能性があります。そうなると不利になるのはこちらです」
「分かってる。速攻でカタをつける」
攻撃部隊である6人全員が貨物列車に乗り込む。
船木が喚び出したお猿の運転手がレバーを操作すると、貨物列車はゆっくりと動き始めた。
「出発進行、目標は文科省の地下倉庫!」
「ところで、なんで猿が運転してるんだよ?」
それは誰にも分からない。
何故猿に運転させているんだ?
謎を残したまま列車は進む。