収穫祭の魔女   作:れいてんし

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――Part3 「第4世界の探偵たち」

 探偵事務所は横浜市の桜木町駅から少し山手の方、野毛方面に向かう途中にあるとのことだった。

 

 横浜の新聞部こと能力者チームと、端島たち異世界からの帰還者チームは、まずはJR桜木町駅で集まり、探偵事務所を目指すことにした。

 

 横浜側は部長の柿原綾乃(かきはらあやの)矢上恵太(やがみけいた)友瀬映子(ともせえいこ)と非能力者の小森裕和(こもりひろかず)の4人。

 

 帰還者チームは端島兵司(はしまへいじ)合田陽子(あいだようこ)梨本海(なしもとうみ)

 そして――

 

「こんなにゾロゾロと集まらなくても、代表だけで良かったんじゃない?」

 

 端島が呼んだ帰還者、船木小百合(ふなきさゆり)だ。

 

「端島さん、なんで呼んだんですか?」

「そうは言っても、調査をする上でこいつの動物を操るのと、召喚する能力は貴重だぞ」

「こいつ言うな」

 

 すかさず船木は端島を小突く。

 

 船木は学校の制服の上に、防具らしきケープを羽織っていた。

 普通に着ていてもコスプレ感はないどころか、ごく普通のファッションにも見える。

 

 3人の注目がケープに向いていることに気付いた船木がわざわざケープを翻し、ファッションモデルのようなポーズを取った。

 

「まあ、一部だけでも、装備しといた方が良いと思うよ。何があるかわかんないんだし」

「理屈は分かってるんだけど」

 

 端島の防具はファンタジー風の鎧なので、さすがに町中では身につけていられない。

 

 梨本は防具……服はカンフー服のようなもので、やはり町中で着るには目立つ。

 

 合田も装備品は黒い魔法使い風のローブで、やはり普段着には向かない。

 

 端島の剣、梨本の手甲はうまく大きめの布袋に入れて持ち歩いているものの、3人とも防具はない状態だ。

 

「松葉もなんかコソコソ動いてるみたいだし、できるだけ対策はしといた方が良いとは思うよ。忠告はしとく」

「あいつも?」

「私は昨日、保土ヶ谷の公園に行ったんだけど、その時にチラリと見かけた。向こうも私に気付いてはいたみたいだけど、お互い不干渉ってことでスルーした」

「そういや、あの公園に塔は?」

「なかった。これから未来に掛けて立つ予定なのか、それとも全然違う場所に立っているのかまでは分からないけど」

 

 船木は何もわからないとばかりに、両手を大きく広げて首を横に振った。

 

「松葉も含めて、昨日1日で、みんな多かれ少なかれ、動いたんだと思う。そして、向こうの世界の情報は、この世界では微妙に役に立たないと気付いたんじゃないかな?」

「俺たちが早いうちに、和泉さんたちに合流できたのは当たりなのか」

「多分ね。だから、手詰まりになった連中は、逢坂に連絡を取ることになると思う。何からどう始めればいいのか、わからないから」

「だから、私たちも、もっと積極的に動いた方がいいと思います。今のままだと、逢坂のチームは、第3世界にいた時よりも力を付ける可能性も出てきます」

 

 合田は事態を深刻に考えているようだった。

 手元のスマホにメモを入力しながら、何やら思案している。

 

「だから、あんたが誘ってくれたことには感謝してる。方針が見えたし」

「船木とは協力するって決めたからな。仲間は多い方がいい」

「もちろん私も情報提供の分くらいはちゃんと働くから」

 

 端島と船木は握手を交わし合う。

 それを不満そうに合田と梨本が見る。

 

「合田も梨本も、何が不満なんだ?」

「誘うことに問題はないんです。ただ、私たちにも事前に相談してくださいって」

「大丈夫。今のこいつに、そこまで興味はないから。3年コースって言ったでしょ。それはそれとして……」

 

 船木は柿原に視線を向けた。

 そのまま、柿原が制服の上に着ている薄手のコートを見た後に言った。

 

「今日はナースのコスプレじゃないの?」

「どういう意味?」

 

 柿原は船木に問い返す。

 まるで意味が分からないといった様子だ。

 

「だって、そっちの……背の高い男子とナースプレイしてたでしょ」

「はぁぁぁあああ?」

 

 柿原が突然大声を出した。

 

「付き合ってるんでしょ?」

「いやいやいや、全然記憶にないんですけど。どこでそれを見たの?」

「向こうの……第3世界だよ」

 

 端島が補足すると、柿原は顔を赤くしながら手を高速で左右に振った。

 

「付き合ってない、付き合ってない。小森は去年にちょっと色々あって、もう女子とは付き合えないって……」

「そんなに仲が良さそうなのに?」

「僕たち4……3人は幼馴染だったんだ。それで、落ち込んでいた小森君を励まして、交友関係を再開した。それだけ」

 

 答えに窮していた柿原に代わって、矢上が事情を説明した。

 

「もういいだろ。俺たちが知ってるのは第3世界の話だ。俺たちの世界とは別人。それだけだ」

 

 まだ追求を続けようとする船木を端島は制止した。

 

 小森も柿原も、第3世界で見たときとは完全に別人だ。

 特に小森の方は、どこかに影がちらつくような雰囲気がある。

 

 先ほど柿原がナースプレイをからかわれた時も、表面上は笑っていたものの、心の中では一切笑っていない。

 

 まるで、笑うこと、幸せになることを自ら拒否しているようだった。

 

 ただ、小森とは全く付き合いがない。

 何か悩みがあったとしても、それを打ち明けるほどの関係ではないのだと。

 

「これで全員かな」

「新坂って人がいないみたいなんだけど」

 

 端島は横浜組の面々を確認する。

 

 街の歴史に詳しいと言っていた小森が合流するのは聞いていたが、昨日紹介された新坂隼人(にいさかはやと)の姿がない。

 

「新坂君なら、例の杭を和泉さんに渡さないといけないから、学校に残ってるよ。後で車で合流するって話」

「あ、あれか。要するに駅には来ないってだけか」

「そういうこと。電車だと時間がかかるけど、車だとここからうちの高校まではすぐだからね」

 

 そこで、柿原が注意を集めるつもりなのか、パンと手を叩いて音を出した。

 

「じゃあ、そろそろ事務所へ行きましょうか。私たちが知りたい謎や、端島さんたちが知りたい謎……どちらも解けるかもしれないんだし」

 

 柿原は新聞部の部長らしい。

 ある程度、人の扱いには慣れているのだろう。

 

 端島も探偵事務所へ行くことに異論はない。

 

 横浜の土地勘があるという柿原の先導で、探偵事務所へと歩みを進めた。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 和泉から受け取った名刺の住所……探偵事務所に到着した。

 

 第3世界の探偵事務所は、東京都内の雑居ビルの中にあった。

 

 対してこちらの探偵事務所は大正か昭和初期に建てられた洋館といった雰囲気だった。

 

 同様の建物は横浜市内には複数あるのでさして珍しくはない。

 山手の西洋館やイギリス館のように、今では観光向けに一般開放されている施設も多い。

 

 個人や企業の所有物は一般公開されていないので現存する洋館にカウントされていないが、それらを含めると更に数は多いだろう。

 

 明治時代から貿易港だった横浜らしい特徴だ。

 

 この探偵事務所もそういった、昔の外国人や商家の居住先だったのだろう。

 

「ここも洋館か」

「でも、あの写真の建物とは違うみたいですね」

 

 合田がスマホで横浜に出現し、横浜の高校生たちが能力を得る切っ掛けとなった洋館と見比べる。

 

 洋風スレート瓦葺き、木造二階建てなのは同じだが、写真の洋館は四角い窓が中心だったのに対して、こちらの窓はアーチやバルコニーなどが多く使われている。

 

 それでいて、雨樋は過剰なくらいに付けられており、雨の多い日本の気候に対応している。

 

 屋根に小さいソーラーパネルが乗っていたり、電線や光ファイバーなどが電柱から伸びていたりと、現代風に手が入っているところも多い。

 

 最大の違いは、屋敷から渡り廊下を通じて繋がっている和風家屋と、漆喰塗りの和風の蔵だ。

 

 和洋折衷の建物は、洋一辺倒の写真の洋館と全く異なっている。

 

 更に、根本的に違うのは庭だ。

 

 隅の方に、申し訳程度のフラワースタンドがあり、そこにプランターや花が少し植えられている。

 かつて有ったであろう花壇などはほぼ撤去され、スペースの大半を来客用と従業員用の駐車場として使用している。

 

 駐車場に停まるのは、やたら大きなアメリカメーカーらしいSUVや実用性重視のバン。

 

 その横には雰囲気ある外観を台無しにするような自販機と、アルミ製の倉庫がでんと置かれている。

 見た目より実用性重視として使いたいというのが伝わってくる。

 

「見てください、この古い表札のところ。『片倉』って書いてありますよ」

 

 合田が門柱に付けられている「幸徳井興信所」の看板のすぐ近くに、古びた石の表札があるのを目ざとく見付けた。

 

「本当だ。ということは、ここは片倉さんの実家?」

「でも、片倉さんはどこかの家の養子に入ったって」

「ここは本家の元屋敷だよ」

 

 突然に声が聞こえた。

 

 声の主は、自販機にもたれかかり、タバコを吸っていたようだった。

 

 年齢は30代だろうか?

 

 髪はオールバックにしている長身のスーツを着た男。

 スーツや靴の素材は一目で高級品だと分かる。

 

 和泉が着ていたスーツも高級品だったのだろうが、色やデザインなどは派手で、染めた髪の色も相まってホストのような雰囲気だった。

 

 目の前の男はそれと対照的に色やデザインは落ち着いていて、エリートサラリーマンのようにも見える。

 

 だが、若干の猫背で、タバコをふかしている姿は、お世辞にも礼儀正しい男には見えず、どこか胡散臭さを感じる。

 

 端島たちはその男を何度か見覚えがあった。

 

 片倉という、和泉や上戸たちと面識があったらしい男だ。

 

「本家というのは?」

「文字通り。うちの先祖は横浜で貿易商をやっていてね。本家筋は跡継ぎが生まれず十年ほど前に消えちゃったが、それでも、こうやって豪邸や蔵なんかはこんな形で生き残ってるってわけ」

「ではあなたは本家の人間ではないと?」

「その通り。うちは分家筋。まあ、本家筋が途絶えちゃって、うちに相続されてきたので、相続税回避のためにこの通りってわけさ」

「それで探偵事務所に?」

「まあ、探偵なんてカモフラージュ用の肩書だがね」

 

 片倉はスーツのポケットから携帯用灰皿を取り出して、吸っていたタバコの吸い殻を中に入れた。

 

麻沼秀則(あぬまひでのり)……なんだけど、うちの嫁さんと名前が被るし、元片倉と呼んでくれや、スーパー高校生たち」

 

 元片倉は握手を求めてきた。

 柿原が代表して受ける。

 

「話は和泉さんから?」

「まあね。なんかのアニメの聖地巡礼でうちの洋館を見に来た連中とはちょっと違うし、それしかないだろ」

「アニメに使われてるんですか?」

「許可は貰ってないから違うよ。山下公園の南にあるイギリス館あたりと勘違いしてこっちに来るのはそれなりにいるからな。まあ、勝手に撮られた写真がネットに出回った後にフリー素材として使われていたら知らん」

 

 端島は改めて洋館を見る。

 変わった建物なので、アニメなどに出てきてもおかしくないだろう。

 

「アニメの舞台になるのも大変だな」

「地元の駅もそれだよ。アイスを食べてる子の後ろに一瞬映るだけなんだけど、それがオープニングだから毎回登場するし、真似してイオンのサーティーワンで4段くらい買って食べ歩くのが流行ると思う」

 

 柿原たちは新聞部らしく、地元情報のリサーチもよく行っているようだ。

 アニメのオープニングに一瞬映るのシーンにどれだけの影響力があるのか不明だというのに。

 

「まあ、入れよ。どうせ和泉もすぐに帰ってくる」

 

 元片倉の案内で、一同は洋館……探偵事務所に入る。

 中は玄関がなく、いきなり板張りの部屋が現れる。

 

 吹き抜けだったであろう天井は、3メートルほどの位置に新たな天井板が張られて塞がれており、天窓から入っていたであろう光の代わりに、LED照明が室内を照らす。

 

 室内には応接用のソファーセットが置かれており、すぐ奥は、やはり急造の板で塞がれていた。

 

 どことなく、洋風の豪邸の雰囲気は残っているが、内部は完全に事務所として改造されていた。

 

 一同がソファーに座ると、元片倉がカップを並べて始めた。

 

「コーヒーと紅茶とどっちがいい? まあ、どっちも安いやつしか常備してないが」

「接客業なのに安いやつしかないんですか?」

「上司はお茶が趣味で、色々と日本茶の茶葉を買ってるけど、全部高いやつだから、勝手に使うと怒るんだよ」

 

 元片倉はそれだけ言うと、インスタントコーヒーと紅茶パック、それに電気ポットを運んできた。

 

「本当に安いやつだ。いっそ清々しい」

「うちの事務所には、お茶にこだわってるのって上司しかいないからな。オレも、プライベートならコーヒーメーカーは持ってるけど来客用に家から持ってくるってのは違うだろ」

「それはそう」

 

 各々がコーヒーや紅茶パックをカップに入れ、ポットからお湯を注いで好きに作り始めたところで、外から車のエンジン音が聞こえてきた。

 

 ややあって、白い布に包まれた棒状の物を抱えた和泉と、新坂が入ってきた。

 

「遅かったな。もうみんな揃ってるぜ」

「すみません、皆さん待たせましたあああああああ」

 

 和泉は端島たちが飲んでいたコーヒーや紅茶を見て大声を上げた。

 

「来客時はお茶を出すよう言ったでしょう!」

 

 和泉は元片倉に詰め寄った。

 

 どうやら、元片倉が出したコーヒーや紅茶は来客用のものではなかったらしい。

 

「でも、あのお茶を勝手に使うと、上司は怒るだろ」

「来客時はいいんですよ! 紅茶も、奥の棚に来客用の良い茶葉があったのに……」

「俺たちは気にしていませんよ」

「そういうことじゃないんですよ……もう済んだことだからいいですけど、次から気を付けてください」

 

 和泉は愚痴るように呟くと、布に包まれた杭を担いで玄関前に移動した。

 

「これを保管したら、八頭を連れて戻ってきます。なので、少しだけ待っていてください」

 

 和泉はそれだけ言うとドアを開けて外に出て行った。

 

「あいつも無駄にストレスため込むやつだな。もっとゆとりをもって生きりゃいいのに」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「正直に申し上げると、まるで信じられる要素などない。だが、受け入れざるを得ない」

 

 和泉や元片倉の上司であり、探偵事務所の管理職である八頭黎人(やずれいと)の反応も、昨日の和泉とほぼ同じだった。

 

 言葉通り、とても信じられる内容ではない。

 だが、目の前に証拠とも言える能力者たちが8人揃っている現状では、信じざるを得ない。

 

 そんな雰囲気だ。

 

「では、第3世界との差異について確認しましょう。まず、(あずま)という議員の一族がいたということですが、この世界には存在していません」

「えっ?」

 

 合田が内容をチェックしていたメモアプリから顔を上げた。

 

「ここが第3世界との差異です。まず星の智慧(ちえ)教団や『神父』なる人物が存在していない。神父と手を組んで、政界でのし上がってきた東という一族がいないのはそれが原因でしょう」

「でも、真桑(まくわ)って人は何かの教団の協力者だって」

「確かに真桑はカルトと手を組んで、何かの工作をしていた。だが、そのカルトは星の智慧(ちえ)教団ではない。アルクトゥルス聖音教団という別の団体です」

 

 この話が正しければ、合田が第3世界で聞いた事件の情報がほぼ崩壊する。

 

 第3世界では、教団の神父から得た情報で、明治時代に神奈川県知事として成り上がった東啓輔(あずまけいすけ)や、元議員である東啓一郎(あずまけいいちろう)ら、東一族が、海底遺跡から宇宙人の円盤を掘り起こしたというのが事件の発端だ。

 

 円盤が撒き散らした汚染物質によって、テラフォーミングが行われて、そこに住んでいた人間は変異を起こし、地域は汚染された。

 それが世界崩壊の引き金だったはずだが、東一族がいないということであれば、前提が全て崩れる。

 

「異世界召喚を行い、別の世界でデスゲームとかいう見世物をやっている『運営』とやらが、私たちの世界に関与したのは極めて最近の話なのでしょう」

「なので、そいつらと手を組んだ教団がいないこの世界だと東一族なんて出てこなかったと?」

「はい。なので、必然的に、海底遺跡から円盤を引き上げるのは全く別の存在ということになる」

 

 ここで降り出しに戻るわけだ。

 調査を進める上でのヒントが一気に消えた。

 

 ただ、八頭の余裕ある表情からして、何かまだ公開していない情報を隠している様子ではある。

 

 そして、それを教えてもらえる様子はない。

 

 第4世界の八頭と端島たちは初対面だ。

 信頼関係などないので、重要な情報を出してもらえるわけなどない。 

 

「提案なのですが、分かる範囲から調査というのはいかがでしょうか?」

「分かる範囲というのは?」

「皆さんが発見された、あの杭です」

 

 これは、合田の能力で空き地から発見した、何らかの魔術的な効果を持つ杭の話で間違いないだろう。

 

「何らかの魔術的な効果がある杭は、自然に刺さるものではありません。必ず、何者かが、何らかの目的のために行っています」

「それを解明することが、世界崩壊の原因に繋がると?」

「中に入ったものに能力を与える幽霊屋敷は、第3世界における教団や『神父』と同じ立ち位置にあります。ならば、私たちの世界では、その謎が世界崩壊の要因に繋がっている可能性は高い」

「理屈は通っていますね」

 

 合田も八頭の話には納得せざるを得なかった。

 

 まずは信頼を勝ち取る。

 そうすれば、出してもらえる情報も増えて動きやすくなる。

 

「私たちは元から、幽霊屋敷や裏の世界の謎は追うつもりだったし、方向性は変わらない。しばらくは共同戦線ってことでどうかな?」

 

 柿原は幽霊屋敷と杭の謎を追うという方針に変わりはないようだ。

 

「どうします、端島さん?」

「理屈は通っている。とりあえず幽霊屋敷と杭について調べてみよう」

 

 端島も他に手掛かりがない以上は、分かる範囲から手を付けるしかないという意見には同意だった。

 

「調査のための情報収集には協力してくれるんだよな」

「もちろんです。我々も、その幽霊屋敷と、そこから生まれる能力者の関係は気になります。ネットや人々の噂などから入手した情報は提供していきましょう」

「でしたら、このメモアプリに情報をいただけませんか? なるべく多くで共有したいんです」

 

 合田がスマホにインストールしたメモアプリを見せた。

 合田が招待を許可した人間だけがアクセスすることが出来て、誰が情報を書き加えたかを履歴で追えるようになっている。

 

 利用勝手の良さと、ある程度のセキュリティは担保されている。

 

「では、情報にレベルを設けましょう。そのアプリに提供するのは、ネット上からでも調べ上げられる一般人もアクセス可能なレベル1の情報。そこから、個人や企業の情報などの機密情報はレベル2として、アプリではなく、皆さんに直接伝えます」

「それは、盗聴などで誰かに見られたら危険な情報……ということでしょうか?」

「もちろん、その通り。それに、私たちもまだ、みなさんを信じられないというのがあります。実績をあげていただければ、レベル3の情報を提供することを提供しましょう」

 

 八頭は淡々と情報提供と、そのレベルによって伝える内容に制限をかけると説明した。

 

 見た目では悪意があるかどうかは分からない。

 理屈も通っている。

 

 まずは信頼。そこからだ。 

 

「私たちが勝手に調べるのはありですか?」

「ダメです。きちんと報告をお願いします。何度も言いますが、魔術関係は危険なものが多いのです」

 

 柿原に対して和泉が釘を刺した。

 

「昨日の杭も、抜くことで何か悪い影響が発生する可能性がありました。ですので、杭を発見した際には、必ず私たちに伝えてください」

「でも、私たちも探偵の方を信じきれない……」

「俺は和泉さんの人柄は知っている。俺たちが学生だから、危険な目に遭わせるのを嫌がっている、大人の対応だ」

 

 懸念を示す柿原に端島は強く主張した。

 

「昨日は本当に悪かった。こちらの世界の和泉さんからはまだ、信頼されていないのも確かだ。だけど、俺たちを信じてほしい。情報はちゃんと伝える」

「それは……」

「信じてください」

「私も端島さんが変なことをしないよう見張っています。ですからお願いします」

「お願いします」

 

 端島の後に合田と梨本がそれに続く。

 

「随分と気に入られたものだな、第3世界の君は」

「私の体験ではないので、実感はないんですけどね」

 

 この熱意は八頭の方にも伝わったようだ。

 少しだけ表情を崩して、和泉に話しかけた。

 

 和泉の方も、完全に認めてはいないが、端島たちの熱意には負けたと言った顔だった。

 

「異世界帰還組はこうだが、君たちはどうだね?」

「僕は反対する理由はありません。大人の力は借りたいと感じていました」

 

 柿原に代わって矢上が答えた。

 

「新坂君も小森君もそれでいいよね」

「問題ない。君に任せる」

「俺は戦えないからな。危険に向かっては欲しくないけど、矢上君がそういうなら反対する理由はない」

 

 新坂、小森も同意のようだった。

 

「先輩、私も同意です」

 

 友瀬も矢上の意見に反対するつもりはないようだった。

 

「はいはい分かりました。私たちも全面協力します」

「では決まりだな。連絡体制を整理して、協力して事態の収拾に当たろう」

 

 八頭のこの一言で基本的方針は固まった。

 

 端島たち異世界帰還者と横浜の新聞部が協力して調査を行い、和泉と元片倉が報告を受けて現地での処理をする。

 細かい連絡体制やメモアプリでの情報連携の方法を決めたところで、この日の打ち合わせは終わった。

 

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