収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第六話 「終わらないクリスマス2」

 12月25日。クリスマス1日目。

 

 私、赤土恵理子(あかつちえりこ)はいつものように5時30分に起床した。

 

 朝食を食べて、歯を磨いて、着替え。

 家で飼っている4歳の土佐犬のわんちゃん(名前)を散歩へ連れていく。

 

 普段ならば、雨が降っていても30分約2キロほど散歩するところだ。

 

 だけど、この日は珍しく朝から雪が降っていた。

 寒いのでもう散歩から帰りたいと、本人(本犬)から要望があったので、5分ほどで引き返して、一緒にこたつに入った。

 

 授業は12月24日の午前中に終わったので、年内はもう登校する必要はない。

 

 1時間ほど、わんちゃん(名前)と玩具を引っ張り合ったり、ゴロゴロしたりした後、自分の部屋に戻って受験勉強を始めることにした。

 

 せっかくのホワイトクリスマス。

 裕和(ひろかず)やラビちゃん、横浜の友達、クラスの友達……一緒に遊びたい人は多いけど我慢だ。

 

 年が明けたら大学の共通テストが待っている。

 

 そこをクリア出来ないと、二次試験にも行けない。

 二次試験も、最終模試では結局B判定までしか行けなかった。

 

 8割方大丈夫かもしれないけど、2割は落ちる。

 

 一応、滑り止め用の地元私立大学看護科は合格しているものの、本命の横浜の看護科に合格するには、まだまだ勉強が必要だ。

 

 テンションを上げるために友達からのメールを見る。

 

 裕和からのメールは25日の7時になってから届いた。

 

「メリークリスマス。恵理子は勉強しているか? 俺も最後の追い込みを頑張るので、恵理子も頑張れ。来年のクリスマスは一緒にすごそう」

 

 24日の晩じゃなくて、25日の朝に来るのが彼らしい。

 でも、頑張ろうという気になれる。

 

 ラビちゃんからは昨晩寝る前にメールを送ってきてくれていたらしい。

 

 メッセージは「蟹光線」

 カニのハサミを両手に持って遊んでいる写真付きだった。

 小学生みたいだ。

 

 プロレタリア文学の小林多喜二なのは覚えた。

 カニレーザー光線や溶解液を出す。

 

 井伏鱒二はサンショウウオ怪人だ。

「寒いほど独りぼっちだ」と言って口から火を吐く。

 

 その小学生、ドロシーちゃんとレルム君からも、メールが届いた。

 今からクリスマスプレゼントを買いに、両親と京都まで行くらしい。

 楽しそうだ。

 

 タルタロスさんは今は大阪にいるらしい。

 富山石川の魚を夜中のうちに卸売市場に運んできたところで、少し休憩した後に戻るとかなんとか。

 長距離トラックの運転手は大変だ。

 

 カーターさんからは「結婚しました」みたいな感じのメールが届いた。

 でも書いてある文章は「婚約しました」だ。

 よくわからない。

 

 学校や横浜の友達からも昨晩や朝になってから次々と届く。

 柿原さんからメールが来ないのは、多分昼まで寝ているからだ。

 

 何度も開いてボロボロになった過去問題集を解いているうちに、冬休み中に使う新しい問題集と参考書が欲しくなってきた。

 自分へのクリスマスプレゼントを買うついでに丁度良いかもしれない。

 

「雪道だし、自転車でゆっくり走って片道2時間くらいかな?」

 

 さすがに全力ダッシュで走っていくと、目立って仕方ないので、最近は自転車に乗っている。

 少しくらい速度を出しても怪しまれない。

 

「おばあちゃん、ちょっと岡山の丸善に行くけぇ、お昼はいらんで。夕方には帰る」

「そうなんか、雪が降っとるけぇ、気を付けていきんしゃい」

「わかっちょるよ。ほな」

 

 わんちゃん(名前)が散歩に行くのと勘違いして、尻尾を振りながら近寄ってきたが、窓の外はまだ雪が降っているのを見て、情けない顔をしてこたつに戻っていった。

 顔のたるんだ部分を引っ張って少し遊ぶ。

 

 ずっと土佐犬だと思っていたけど、実はポメラニアンなのかもしれない。

 

 雪が降っているようなので、厚着した後にスノーシューズを履いて外に出た。

 

 私の自転車は昔に新聞配達に使っていたという丈夫な鉄製自転車だ。

 少々漕いでも壊れないので助かる。

 

 家の前は、かなり雪が積もっていた。

 うちは県道や市街地と少し離れた場所にあるからか、除雪車が来ていない。

 

「とりあえず、山の向こうまでは自転車を担いでいくか」

 

 自転車を小脇に抱えて軽く飛び出した。

 

 国道に出ると、予想通り除雪と融雪剤のおかげで雪はなかった。

 汽車の線路沿いの道をひたすら自転車を漕いでいく。

 

 あまりスピードは出さない。

 自転車ならば、時速40キロほど出ることもあるらしいので、大丈夫だろう。

 

 丈夫な鉄製自転車でも、さすがに負荷が大きいのか、ミシミシと悲鳴を上げている。

 

 やっぱり全部が鉄製の丈夫なのが取り柄の自転車くらいが丁度いい。

 

 国道に出てから雪はなかったので、結局1時間ほどで到着した。

 

 1時間ほど粘って、良さそうな参考書と問題集と、息抜きに読む小説を3冊買った。

 

 ネットの評判は見ない。

 ネタバレがあると楽しみが減るし、他人の評価よりも自分の感性を信じたい。

 

 冷やかしで天満屋を覗いた後に、駅前のイオンモールに寄って、フードコートでうどんを食べた。

 

 その後に、自分へのクリスマスプレゼントとして、ちょっとしたアクセサリを。

 家族へは大手まんじゅうを。

 わんちゃん(名前)へは新しいガムを買って店を後にした。

 

 また1時間ほどかけて家に帰ると、宅配便がいくつか届いていた。

 

 裕和からのクリスマスプレゼントはマフラーだった。

 少し空気を読めていなくて、ペアマフラーではないのが彼らしい。

 

 ラビちゃんからは、贈答用のお菓子の詰め合わせだった。

 

 相変わらず神戸銘菓なのは、嫌がらせなのかどうか少し悩む。

 味が美味しい有名ブランドなのは知っている。

 

 その後は小説を少しだけ読んだ後に、新しい参考書を片手に問題集を解き始めた。

 

 夕食後もまた勉強。

 21時くらいで勉強を一区切りして小説を読み、23時には寝た。

 

 明日からも冬休みだけど、最後の追い上げを頑張ろう。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 12月25日。クリスマス2日目。

 

 いつものように5時30分に起床した。

 

 朝食を食べて、歯を磨いて、着替えて、家で飼っている4歳の土佐犬のわんちゃん(名前)を散歩へ連れていく。

 

 この日も朝から雪が降っていた。

 寒いので散歩から帰りたいと、本人(本犬)から要望があったので、5分ほどで帰宅。

 引き返して、一緒にこたつに入って、1時間ほど、わんちゃん(名前)と玩具を引っ張り合っている時に異変に気付いた。

 

 流れているテレビも、おばあちゃんも、新聞も、全てが今日は25日と言っている。

 

 こんな時に相談できる相手は……1人しかない。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 だいたい分かった。

 

 今の電話の内容には、どこにも次元の歪み的なものに遭遇したという情報はなかった。

 

 つまり、俺たち能力者が何らかの理由により、時間逆行現象から除外されているということだ。

 異世界から日本に帰還したメンバーのうち3人までもが含まれているということは、他の4人も同等と考えるべきだろう。

 

 子供たちは良いが、長距離トラック運転手のタルタロスさんが一番困っていそうだ。

 この通話が終わったら電話してみたい……いや、下手すると電話も26日時点の場所に取り残されて、どこか不明な場所に投げ出されている場合すらあるのか。

 

 早急に状況を確認したい。

 

「あと、神戸銘菓を送ったのは嫌がらせではなく、美味しいお菓子を食べて欲しいという気持ちなので、そこは勘違いしないでほしい」

『それは分かっているんだけど』

「おそらく、小森くんも同じ状況に投げ出されていると思うけど、そちらはエリちゃんの方から確認を取ってほしい。あと、横浜組はどうなっているのかも」

『それなんだけど』

 

 エリちゃんが言葉を濁した。

 

『矢上君と友瀬さんからは、ごく当然のように昨日……じゃない、今日……じゃない……えっと』

「ややこしい。昨日を1周目、今日を2周目としよう」

『そうそう1周目と2周目で全く同じ文面でメールが届いたから、多分気付いていないんだと思う。さすがに本人が認識していたら気付くでしょ』

「それもそうだ」

 

 これは参考になるかもしれない。

 

 25日と同じ文面のメールを送ってきたら、その人物は前に送ったメールの存在を忘れている=時間逆行の影響を受けている可能性が高い。

 

「念のために確認だが、昨晩スマホを持ったまま寝たということはなかった?」

『ないよ。スマホはいつも充電台の上に置いてから寝てる』

「ということは、今の時間よりも未来のメールは届いていない?」

『多分、スマホは私と違って25日に戻ったんだと思う』

 

 ややこしくなってきた。少し整理したい。

 

 俺はスマホを持ったまま寝たので、スマホも26日の状態をキープしている。

 エリちゃんはスマホを机の上に置いて寝たので、25日0時の時点に戻っている。

 

 ここで、スマホのメールの仕組みを整理しておきたい。

 

・誰かが送信したメールは、宛先のメールサーバに保存される。

・スマホは定期的にサーバに問い合わせる。

・スマホはサーバ内データに未読メールがある場合、新着メールとしてダウンロードする。

・スマホが「新着メールあり」と通知を出す。

 

 基本的にはこの流れだ。

 通常のメールやショートメールも基本的に同じ仕組みのはずだ。

 

 なので、26日までのメールを受信している俺のスマホは、それが同じ時間、同じ文面のメールならば、既読メールとして認識してダウンロードを行わない。

 

 タイムスタンプ、文面が違っている場合のみ、初めて別メールとして認識されるはずだ。

 

 ただし、それもメールアプリは自動的に着信時間順に並び替えを行う。

 メールアプリは、サーバからダウンロードした時間ではなく、あくまでもサーバに届いた時間順に並び替えを行う。

 

 俺のスマホに矢上君と友瀬さんからの新着メールが届かないのは当然だ。

 未来で既に受信済。スマホから既読だとサーバに伝えているからだ。

 

 逆に言うと、俺のスマホに新着メールが届かない人は、時間逆行の影響を受けている。

 つまり、横浜の元能力者たちは、この時間逆行を認識出来ていない。

 事件解決への協力は頼めそうにないということだ。

 

「今日……2周目は俺とカーターで動いてみる。新しい情報が入ったら、みんなにも動いてもらわないといけないかもしれない」

『ありがとう。私の方は1周目は勉強して、今日のノルマは終わってるから』

「ノルマというか、1日勉強を多くできてお得と考えた方が良いんじゃないかな。調査はこちらでやるので、エリちゃんは今日も受験勉強頑張って」

『うん、まあ、そういう考え方もあるかな』

「じゃあ、小森くんへの確認連絡はよろしく」

 

 状況の確認は出来たので、一度通話を切った。

 

 まずはタルタロスさんや子供たちの安否を確認したい。

 

「現在位置はどこですか?」とフックのメールを送る。

 これで「大阪」と返ってきたら、アウトなのだが。

 

 そう考えていた時に、俺を更に混乱させるメールが届いた。

 タルタロスさんからの返答メールは「何かありましたか? 今は大阪です」だった。

 

 予想通り、メールアプリでは、昨日に届いた「今は大阪です」のメールの前に配置されて、最新メール扱いにはなっていない。

 

「どういうことだ、これは」

 

 少し分からなくなってきた。

 タルタロスさんは時間逆行を認識出来ていない。

 

 異世界帰りの能力者が時間逆行に抗えているとの予想が、覆る可能性が出てきた。

 嫌な予感がする。

 

 タルタロスさんが心配しないように、適当に誤魔化すメールを送っておいた。

 

 次は子供たちに「クリスマスプレゼントが今日届くよ。誰が家族で受け取れる人はいる?」とメールを送った。

 時間はまだ6時30分。まだ京都へ出発する前のはずである。

 

 既に25日を体験しているならば、異常が発生している旨を記したメールが返ってくるはずなので、それを待つ。

 

 しばらく待つと返事があった。

 

 レルム君は「残念。今日は1日京都に出かけてます。後で受け取ります」

 ドロシーちゃんは「今日は出かけるから1日誰も家にいない」

 

 内容からして、やはり2人とも、2周目であることを認識できていない。

 

 7時になって、優紀がもぞもぞと布団から這い出してきたタイミングでエリちゃんから再度電話があった。

 

『やっぱり裕和も気づいてないみたい。今のところ私とラビちゃんだけ?』

「あとはカーター。探偵たちも全滅。横浜組で確認が取れていないのはあとは柿原さんと木島君だけど、おそらくダメだと思う」

 

 これで全く分からなくなった。

 

 どういう基準で時間逆行に抗えるのか、基準が分からない。

 

 もし俺とカーターだけならば、うちの神さんの加護のおかげで時間変動への耐性がありましたで片づけてしまえたのだが、エリちゃんが含まれるのに、小森くんは含まれないとなると、途端に意味が分からなくなる。

 

「念のため確認したいんだけど、昨日は昼くらいに買い物に出かけたんだよね」

『そうそう、岡山市内までちょっと買い物を』

「距離は40キロくらいない?」

『40キロは自転車で1時間でしょ』

「途中には信号や一時停止待ちがあるんだから、最低60キロくらいで走らないと1時間では着かないと思うよ。交通規制してからやるレースじゃないんだから」

『じゃあそれで』

 

 おそらく、ロードバイクの世界チャンピオンをぶっちぎる速度で走る謎の新聞配達用自転車が岡山の都市伝説として生まれていそうだが、もういいや。

 どうにでもなーれ。

 

 最後の頼みの綱は、京都の組織だ。

 あそこは御本尊と呼ばれているペンギンもいるので、さすがにこの異変に全く気付いていないということはないだろう。

 

 何度か電話をかけると、京都の組織の桂さんから返信の電話があった。

 手早く状況を伝える。

 

『すみません、こちらも何も検知はしていませんし、誰も時間逆行があったということには気付いていません』

 

 やはりというか、まあ当然の返答があった。

 

『朝から御本尊がおかしかったのは、それと関係しているのかもしれません』

「やはり、神様は異変に気付いていましたか」

『必要とあれば、またセッティングを致しますが』

「いえ、以前にも言った通りで、この問題は人間の手で解決したいと思います。神頼みは本当に最後にどうしようもなくなった時だけにしたいです」

 

 これも前に説明した通りだ。

 全ての決着は人間が付ける。

 一度神頼みしてしまうと、また次も神頼みになりかねない。

 

 そもそも、割と最近にペンギンの仲間のトナカイが問題を起こしたばかりだ。

 人間というものをあまり理解していない超常的な存在が動くと、また別の問題が起こりかねないという懸念もある。

 

『こちらでも調べてみます。何かわかれば連絡します』

 

 やはり京都の組織も実態を掴めていなかった。

 そうなってくると、今の異変を検知しているメンバーがいかに動くかが重要になってくる。

 

 まずは一度会議をしたい。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 電話だとキリがないので、持っていたタブレット端末でWeb会議を招集することにした。

 

 参加メンバーはこの時間逆行現象を認識出来ている俺とカーターとエリちゃんの3人だ。

 手早く既知の情報共有を行い、今度の対策を考える。

 

「今のところ怪しいのは、ラビ助が昼間に遭遇したという謎の洋館だ。赤土は昼頃に買い物に出たらしいが、その道中に何か見たか?」

「覚えてないよ、急いでいたし」

 

 曖昧な回答が返ってきたが、25日は雪が降っていて視界が悪い状態だった。

 

 道の脇に怪しい洋館があっても、気付かずに素通りした可能性は高い。

 この件ではエリちゃんを責められない。

 

「カーターの方はどうなんだ?」

「24日夜は酒も飲んだので東京のホテルに泊まって、朝一で望美(のぞみ)と一緒に、地元の山梨まで帰ってきたんだ。25日は朝から定時までは日勤。業後は直帰。その間、特に怪しい建物を見た記憶はない……あっても、ずっと車移動だったので、見逃しているな」

 

 カーターの方もこれといった情報はなし。

 こちらも条件はほぼ同じで、視界が悪い雪道での車移動だ。

 道の脇に洋館が有ったとしても、同じ条件で見過ごしても仕方がない。

 

「それはともかくとして、今も車が東京のホテルに取り残されたままなのか?」

「望美に電話で事情を話して車を運んで貰うように頼んだよ。高速に乗れば2時間程度だから、もう着くんじゃないかな。だから、そっちの心配はいらない」

 

 カーターが駐車料金の延長料金を取られないことは理解出来た。

 それならば安心ではある。

 

「つまり、お前の他に車には麻沼(あぬま)さんも乗っていたということか?」

「ラビ助も車の横に春日(かすが)さんを乗せていたんだろう。その点ではオレと条件はほぼ同じだ。だけど、お互いに巻き込まれたのは一人だけ」

「麻沼さんも代々魔術師一家で魔力持ちだろう。一般人の優紀とは全く条件が違う」

「そこだよ、問題点は。これ、分かりやすく表に出来ないか?」

 

 要点整理のためにWeb会議のメモに書いていこう。

 

・異世界帰り?:× 7人中3人だけ

・異世界帰り、コピーは否?:× 小森が除外

・魔力あるなし?:× 魔力なし上戸赤土が対象、ありの麻沼和泉が除外

・位置:× 鳥取-兵庫、岡山、山梨-東京で共通点なし

・洋館に遭遇:△ 上戸のみ。赤土片倉は不明

 

「今の状況を簡単にまとめるとこんなところか」

「共通点がなさすぎて何も分からないな。オレと赤土が洋館を探すことに全てが掛かっていそうな気がする。ラビ助は鳥取砂丘の洋館をもう一度詳しく調べてくれ」

 

 これからは一応洋館の調査という方針で良い気はする。

 だが、それだと微妙に足りないかもしれない。

 

「あまり考えたくはないが、この2周目で解決出来ない可能性を考慮に入れて動きたい。2人とも、俺の指定するアプリをスマホに入れておいてくれないか。あと、今日の0時を迎える時は、必ずスマホを持ったままにしておいて欲しい」

「アプリ?」

「アプリは3つ。ストップウォッチ、GPSのログ、地磁気データを取得するアプリだ。23時55分になったら、一度電話を掛けるから、そこで時間合わせをしたい」

「時間合わせをしたらどうなるって言うんだ? 同じデータが記録されるだけじゃないのか?」

「念のためだよ。もしも、時間逆行現象が洋館と関係ない場合は、起点になった『どこか』を特定したい。それには、少しでもデータが必要だから、出来ることだけはやっておきたい」

 

 今回の2周目のおかげで、身に着けていた服や、手に持っていた物は次の周回に持ち込めるということがわかった。

 ならば、それを利用して、少しでも多くの情報を次の周回へ持ち込みたい。

 

 時間逆行がどのように発動するかは不明だが、3人分の情報が揃えば何か特定出来るかもしれない。

 

「それで、私はその『洋館』を見つけたらどうしたらいい?」

「すぐに俺に電話を。鳥取からなら、岡山までは2時間もあれば行けると思う」

 

 エリちゃんはそれでいいだろう。

 なるべく単独行動は避けたい。

 

「オレは見つけたら、望美と……あとは和泉のやつにも声を掛けるから大丈夫だ」

 

 カーターはそれで大丈夫だろう。

 むしろ、魔術知識に詳しいカーターがこの事件の解決を握っているかもしれない。

 

「では、新しい情報を入手したら、なるべく早く連絡を」

 

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