収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第九話 「岡山地下遺跡」

 廃集落の最奥。

 

 かつて領主か地主の館が建っていたであろう、空き地に生えていた雑草と雪を極光で薙ぎ払った。

 

 露出した地面を見ると、一部だけに不自然な凹みを見付けた。

 

 おそらく屋敷の中央部分だったのだろう。

 他の場所はほぼ土に還っており、ただの平地になっているが、そこの一箇所だけが、地面が大きくすり鉢状に沈み込んでいる。

 

 それでいて水が溜まっていない。

 一部凹んだ箇所があれば、そこに水が流れていって集まり、水たまりのようになるか、水がたいして降らなくとも、苔などが生えるはずだが、それが見当たらない。

 

 鳥の使い魔を喚び出して、人間よりはるかに良い眼で確認してみると、どうやら凹んでいる箇所は、元々地下へ向かうための階段か何かがあったようだ。

 

 ただ、その天井部分が崩落したことで、その階段が埋まってしまったようだ。

 

 それにより、階段があったスペース分だけ地面が沈下したというわけだ。

 

「一応、地下への通路が生きているか、潜行させてみるか」

 

 鳥の使い魔に命令を出して、人間では通れない、わずかな隙間にねじ込んでいく。

 どこかで地下の空間に繋がっていれば良いのだがと期待してみたものの、地下に入ってすぐのところで、大きな石塊が完全に通路を塞いでおり、先には進めなかった。

 

 隙間から水が流れている痕跡はあるので、地下の空洞自体は生きているようだが、さすがにどうしようもない。

 

 だからといって「魔女の呪い」はダメだ。

 

 容赦なく地下2キロまで掘り進むし、熱で溶けた岩が溶岩のようになって下に溜まるので、それらが冷えて固まるまで、調査も何も出来なくなる。

 

 環境破壊などというレベルではない。

 

「ちょっと考え方を変えてみるか」

 

 ここで考えたのは、横浜の地下遺跡に閉じ込められた際に脱出するために使用したルートだ。

 

 あの時は、正規の入口が落盤で塞がったが、メンテナンス用の通路を発見して、そこから脱出することが出来た。

 

 昔、ピラミッドにも正規の通路以外にメンテナンス用の通路があったという話が載っている本を読んだことがある。

 

 大規模な建物……遺跡もそれに含まれるが、あくまでも人間が使う施設だ。

 

 一度作ったら、それっきりということはないはずなので、必ずメンテナンス用の通路はあるはずなのだ。

 

 その場所のヒントを探るべく、屋敷が建っていたであろう場所を少し離れて、近くにあった変電設備跡に向かった。

 

 変電設備らしき装置は、長期放置されていたために、半ば崩壊していたが、目的はその機械そのものではない。

 

 目当ては、変電施設から伸びている金属製の配管だ。

 表面は錆びてボロボロだが、なんとなく形は残っている。

 

 配管をたどっていくと、屋敷があった広場をグルリと半周した後に、裏手の方で地面の中へと消えていた。

 

「目印はこいつか」

 

 空中に増幅魔法陣を二重で形成した。

 

「もしかしたら、ちょっとした落盤が起きるかもしれないから、ちょっと下がっていて」

「分かった」

 

 2人とも少し距離を取ったところで、二重の増幅魔法陣で強化した鳥を、配管近くの地面へ突撃させると、爆音と大きな振動が起こった後に、人間が十分に通ることが出来る竪穴が開いた。

 

 マンホールよりも少し大きく、そこには金属製の配管が底の方まで続いていた。

 

 底まではわずかに光が届いている。10メートルほどだろうか?

 

 こちらも、隙間から浸水していたのか、穴の奥からは、むせ返るようなカビと埃の臭いが流れ出してきていた。

 しかも、その中に、微かにツンとする、人工的な薬品の臭いが漂ってくる。

 

 あまり健康的に良い環境とは言えない。

 

 端には一応、金属製のハシゴが付いているが、こちらは錆だらけでボロボロであり、とても体重を預ける気はしない。

 

「こんなところに穴が?」

「多分、ここの地下には、わざわざ変電設備が必要になるくらい大きな『何か』の施設が埋まっていると予想したんだ。そこへ電力供給するための配管と、それのメンテナンス用の通路は必ず近くにあると考えた」

「そんなものなんだ。降りてみる?」

「まずは使い魔に先行調査させてからね」

 

 地下は当然光などないだろう。

 使い魔を5羽追加で喚び出した。

 鳥の1羽にLEDライトを持たせて、残り4羽を、発見した竪穴に潜り込ませた。

 

 人間が通行できるスペースは十分にある。

 底まで下降したところ、今度は横向きの通路が現れた。

 

 天井は2メートルほどで幅は1メートル弱。

 人間が通行するにはちと狭いが、まあなんとかなるだろう。

 

 行く手を錆びた金属製のシャッターに阻まれたが、こちらも錆びてボロボロだ。

 鳥たちの爪やクチバシだけでも容易に引き剥がせた。

 

 更に先へと進んでいくと、今度は鍾乳洞のような場所に着いた。

 

 天井からは石灰分を含んだ滴が垂れ、微かな光を反射して白く輝いている。

 かなり広い空間だ。

 

 LEDライトであちこち照らすと、目の前には天井が崩落して埋まった階段が見えた。

 ここから正規の通路に繋がっていたようだ。

 

 階段の周囲はひどく黒ずんでおり、強烈な爆風と高熱に晒されたような焼け焦げの痕跡が生々しく残っている。

 どうやら過去に、出入り口を塞ぐための意図的な爆破が行われたらしい。

 

 これはおそらく、「いにしえのもの」を制圧し、宇宙人の円盤を持ち去ったという、米軍の仕業だろう。

 

 必要なものは手に入れたので、後で混乱の元になる施設の出入り口は吹き飛ばしてしまおうという考えが見える。

 

 だが、米軍が塞いだのは正規の出入り口だけで、こちらのメンテナンス通路には気付かなかったようだ。

 

 否、気付いていたが、そこまでの必要はないと考えたのか。

 

 この鍾乳洞全てを爆破しなかったのは、戦後すぐの日本で、それほど大きな騒ぎを起こしたくなかったのか?

 

 それとも、未知の技術が溢れる場所で、下手に発破したら、何が起こるか分からないので、入口だけ塞げば良しとしたかったのか?

 

 事件発生から月日が経ちすぎているので、それを知る術はない。

 

 なお、破壊は出入り口だけに留まってくれたおかげで、地下空間がいきなり崩落してくる気配はない。

 

 地下空間で派手に暴れるとどうなるかは不明だが、この地下施設が戦後すぐに放棄されたとするならば、今で80年だ。

 

 その期間、ずっと崩落せずに残っていたものが、今日このタイミングでいきなり崩落して埋まるということはないだろう。

 

「一応、順路はこれに沿って進めばいいのか?」

 

 地面には、一部何かを運搬するためであろうレールがまだ残っていた。

 こちらも錆びついてはいるものの、地上よりは比較的保存状態が良い。

 

 そこから一通り鍾乳洞の中を調べてみた。

 

 何かが有ったであろう意味深な空間や、無茶苦茶に破壊された何かの設備の残骸などは見つかるが、これというものは見当たらない。

 

 おそらく米軍もそれ以上は見付けられなかったのだろう。

 

 だが、時間逆行現象の発生源があるとしたら、この施設の中のどこかにあるはずだ。

 

 それを発見しないといけない。

 

「使い魔の捜索だとここらが限界か。あとはエリちゃんの五感と俺の勘で調査をしていくしかない。覚悟はOK?」

「大丈夫だよ。何回もクリスマスを続けるってのも変だし、これで終わらせる」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 使い魔に探らせているのと、実際に地下に降りて自分たちの足で歩いて探すのは、また違った感じだ。

 

 床はどこからか入り込んだ水でぬかるんでいるし、その湿度によって生えた苔のせいで色々と滑って歩きにくい。

 

 照明は当然のごとく存在せず、持ってきたLEDライトだけが唯一の光源だ。

 これで地下を調べる必要がある。

 

「米軍でも見付けられなかったということかな。魔術的なものを全部奪ってやろうとやってきたのに、持ち帰ったのは宇宙船だけだった」

 

 ここでふと気付いた。

 

 東京湾の海底遺跡に埋まっていた宇宙船は全長が数キロほどあったが、この地下空洞にそんな巨大なものが収まっていた痕跡などない。

 

 宇宙船が置かれていたらしきスペースはあるが、そこはせいぜい、長さ20メートルほどの物を置くのが精一杯だ。

 

「横浜のものが母艦的なもので、こちらは子機だったのか?」

 

 理屈としてはあり得る。

 

 巨大な宇宙船が日本列島のあちこちに降り立ったのではなく、母艦が東京湾に着陸……着水したものだけで、日本各地に降りたのは子機のみという可能性だ。

 

 宇宙船の目的は、次元の境界からエネルギーを得ることであり、子機はそれを探すのが役目だった。

 

 それは『いにしえのもの』が眠る場所とたまたま一致していた。

 

 話としては繋がる。

 

『いにしえのもの』が眠る遺跡の構造は、日本各地にあるが、どれも基本的に同じだと考えると、一気に話は分かりやすくなる。

 

 出入り口は岩壁にカモフラージュさせた幻影で誤魔化しており、その先に地下へ下る階段があるはずだ。

 

 視覚だけで出入り口を見つけるのは困難だが、方法はある。

 

「何かヒントとかない?」

 

 エリちゃんが尋ねてきたので、過去の経験からの推論を説明する。

 

「いくらカモフラージュしたとしても、実際には穴が開いているはずだから、風や水の動きまでは誤魔化せない。だから、風の流れを追ってほしい」

「分かった、やってみる」

 

 エリちゃんが目を閉じて、大きく息を吸った後に呼吸を止めた。

 

 全神経を尖らせて風の流れを追っているようだ。

 邪魔はしてはいけないと、俺も動きを止めて様子を見守る。

 

「入口がこちらだから……」

 

 ややあって、目を閉じたまま歩き始めた。

 俺は無言でその後を付いていく。

 

「そこのところに人っぽい何かがいるみたい。何か見える?」

 

 エリちゃんが唐突に立ち止まって、壁の方を指さした。

 

 使い魔の鳥の眼を通してすら何も見えない。

 魔力の塊か、それとも霊的なものか?

 

「いや、何も。エリちゃんは何か見えたりする?」

「全然。ただ、風の流れを感じただけ。その場所だけ空気の流れがおかしい」

 

 エリちゃんの目はまだ閉じられていた。

 

 霊感的なもので見ているわけではない。

 

 皮膚感覚と聴覚でわずかな風……空気の動きから、そこに何かあるのかを把握しているだけなのだから。

 

 どちらにしても、俺たちには何も見ることも感じることもできない。

 

「何のイベントも起きないんだけど、本当にここで合ってるのかな?」

「さすがに村で事件が起きてから80年も経っちゃったので、みんな賞味期限切れなんだと思う」

 

 もしかしたら、この空洞に踏み入ったところで、霊的なものが見えたり襲ってきたり、過去の映像というイベントムービーが流れたかもしれない。

 

 ただ、残念なことに俺たちには魔力も霊感も何もない。

 

 そのくせ、抵抗力だけは人一倍あるので、少々悪霊的なものが何か悪夢のようなものを見せようとしても、そもそも見えないのだろう。

 

 魔力だか霊力だかが0……というかnull……存在しないことによる弊害だ。

 

 地面を見ると、若干黒く汚れていた。

 普通に考えると、ただの苔だ。

 

 だが、もしかしたら、ここで誰かが亡くなったのかもしれない。

 そして、その霊的なものが、80年以上経ってもまだ成仏出来ずに、ここに残されている……かもしれない。

 

 何も見えないし、何も感じないのだから、これは単なる想像に過ぎない。

 

「霊的なものが、ここにいると考えよう。間違っていたらごめんなさい。悪霊でもごめんなさい」

 

 一応は(邪)神の巫女として、やるべきことはやっておきたい。

 

 鞄から線香を取り出して、何かがいるであろう、そこに立てた。

 こういうことに宗教宗派は関係ない。

 

 手を合わせて、うろ覚えのお経と祝詞をナムナムナムと唱えると、ほんのわずかだが風が吹いた気がした。

 多分成仏したと思いたい。

 

「消えた?」

「消えた……かな?」

 

 全てが曖昧なままだが、これで救われた人がいたと信じたい。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 長い階段を下って、最深部に到達した。

 

 今までは狭い正方形の玄室のような小さい部屋の奥に次元境界が開き、そこの手前に祭壇があるという構造だった。

 

 だが、この最深部は明らかに異なっていた。

 

 相当広い空間の中心部には水が溜まった地底湖があり、その湖の中心には不気味に明滅する紫色の光を放つ巨大な木が生えている。

 

 幹の太さは数人がかりで抱えても足りないほどだろう。

 

 表面は樹皮というよりも、黒く変色した黒曜石か、あるいは硬質化した筋肉を思わせる質感で覆われており、内側から溢れ出す紫色の光が心臓の鼓動に合わせてゆっくりと明滅していた。

 

 特筆すべきはその枝ぶりだった。

 

 数えきれないほどの枝が、複雑な幾何学模様を描いて伸びている。

 

 ただ、その先に葉は一切生えていない。

 

 もちろん、枯れ木ではない。

 

 魔力も霊感もない俺にも、何らかの強い生命エネルギーの奔流のようなものを感じられるからだ。

 

 その湖を取り囲むように何かの機械が設置されており、機械の周辺には白骨化した死体が3体ほど転がっていた。

 

 機械はやはりというか、当然というか、あちこち錆びて朽ちており、機能しているようには見えない。

 

「うっ嫌だな」

 

 小森くんならば取り乱していた状況ではあるが、エリちゃんは嫌悪感こそ露わにしているが、特段騒ぎ立てるということはない。

 

「木に見えるけど、当然木じゃないんだろうな」

「木じゃないなら話が通じたりしない?」

「その発想はなかった。話しかけてみるか」

 

 もちろん警戒は怠らない。

 

 いつでも(シールド)を展開出来るように使い魔を肩の上にキープした上で、バルザイの偃月刀を左手に握った。

「初めまして。わたくし、通りすがりの魔女をやっているものです」

 

 本名は出さない。

 もしかしたら、自己紹介することが何かのデメリットになるかもしれないからだ。

 

 こちらから呼びかけると、巨木が大きく震えた。

 幹のどこか、あるいは根のどこかから、軋んだような、濁ったような音が連なって響く。

 

 だが、何を言っているのか理解できない。

 少なくとも日本語ではない。

 

 仕方ないのでスマホを取り出して翻訳アプリを起動しようとするが、できない。

 スマホ上部の「圏外」アイコンが虚しく映る。

 

「日本語でおk」

 

 木が気を利かせて日本語変換してくれないものか様子を見守った。木だけに。

 

 だが、その気配はない。

 

 それどころか、巨木の枝が一斉にしなった。

 次の瞬間、槍のように尖った枝先が何十本もこちらへ殺到する。

 

「敵かよぉ!」

「任せて!」

 

 すかさずエリちゃんが俺の前に飛び出してきた。

 

 右手を上、左手を下。空手の天地上下の構え。

 

 両腕にスキルの青白い光を灯らせ、弾き、受け流し、手刀で断つ、掴み、引き千切る。

 様々な手で迎撃していく。

 

 だが、あまりに数が多い。

 

 今のところは迎撃出来ているが、スキルの持続時間切れで一気に押し込まれるだろう。

 

「やむを得ない。仕留める!」

 

 使い魔を追加で5羽召喚。

 9羽の鳥たちで増幅魔法陣と2枚の盾を形成した。

 

 盾をうまく位置を調整して並べたところに向かって極光を放つと、盾の斥力によって光線がねじ曲がり、シャワーのように降り注ぐ。

 

 そのシャワーの口を増幅魔法陣で強化する。

 

増幅極光(ブーストオーロラ)! 拡散!」

 

 盾で拡散された光線が強化されることで、無数のレーザー光線となって、巨木へと降り注いだ。

 

 いくら枝が多くとも、それ以上の数のレーザー光線で焼き払えば、必ずどこかで尽きる瞬間が来る。

 

 無数と思えた枝が一瞬刈り尽くされて、丸坊主になった幹だけが残った。

 

「任せた!」

「任されたっ!」

 

 レーザーの効果時間終了直後にエリちゃんが跳躍した。

 発動させるのは3つのスキル全ての威力を集めた必殺技。

 

「すごーいパーンチ! わんっ!」

 

 ネーミングセンスと比較して圧倒的な破壊力を込めたパンチが巨木の幹に突き刺さった。

 

 音が来るのは一拍遅い。空洞全体を揺らす爆音と衝撃が、あとからまとめて押し寄せる。

 

 床が震え、地底湖の水面が荒れ狂う。

 幹を砕かれた衝撃を、巨木は根へ、地面へ、空間全体へ逃がして耐えたのだ。

 

 だが、俺たちの連携はこれだけで終わらない。

 

 わずかに残った増幅魔法陣に向けて、1羽だけ肩の上に残しておいた鳥の使い魔を突撃させた。

 

 増幅により強化された使い魔は円錐状の矢となり、巨木の後方を削り取る。

 

 巨木を切断するための木こりの技。

 倒れる方向に切り込みを入れておくと、巨木は自重で容易に折れる!

 

「ツーっ!」

 

 エリちゃんのスキルは別にパンチ一発で消えるわけではない。

 持続時間は約3分。

 

 その間は何度でも(・・・・)すごいパンチを打てる。

 

 すごいパンチ2発目が巨大な亀裂を走らせた。

 

「スリーっ!」

 

 最後は右。

 全身を使って捻り込んだ一撃が、すでに割れかけた幹の芯を完全に砕く。

 

 巨木はついに限界を迎えたようで、メリメリと音を立ててへし折れた。

 

「以上、ありがとうございました!」

 

 エリちゃんが拳を納め、ぺこりと頭を下げる。

 巨木は完全に分断され、爆音と共に倒壊した。

 

 明滅していた不気味な光は既にない。

 もう動くことはないだろう。

 

「終わったのか?」

 

 空間内に他に異変はない。

 

 巨木が発していた明かりが消えたために、再度LEDライトだけが光源の暗闇が戻ってきた。

 

「これで時間逆行現象が収まってくれたのか?」

 

 巨木の正体も不明なままだ。

 謎の敵を倒しただけで、現象も収まったとは到底思えない。

 

「待って、折れた木の中に何か埋まってるみたい」

 

 エリちゃんの言う通り、折れた木の切り株に何か宝石のようなものが埋まっているようだ。

 

 LEDライトの明かりに照らされてキラリと光る。

 

 エリちゃんが不用意に近づこうとしたが、手を出して止めた。

 どんな危険があるか不明だからだ。

 

 使い魔を喚び出して、木にめりこんだ「それ」を回収した。

 

 形状自体は、横浜の事件でも複数個確認出来た「輝く(シャイニング)トラペゾヘドロン」に酷似している赤い宝石だ。

 

 ただし、同一のものなのか、この場での判別は不明だ。

 

 実際に確かめるには、カーターか東京の和泉さん、もしくは京都の組織に持ち込むしかないだろう。

 

「一応持ち帰るか。確か、鉛板で包めば効果は遮断出来たはずだ」

「大丈夫なのかな?」

「最悪、次のループに持ち込んで確認だな」

 

 しばらく地下空間を探してみたが、他にめぼしいものは見当たらなかった。

 

 仕方ないので、唯一の成果である赤い宝石をビニール袋に入れ、使い魔に持たせた状態で地上へ戻った。

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