収穫祭の魔女   作:れいてんし

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第10話 「世界間の誤差」

 廃集落を一度脱出した後に、最寄りのホームセンターに立ち寄った。

 

 鉛板を購入して、集落地下で発見した赤い宝石を包むことで、一応のミッション完了ではある。

 

 赤い宝石の写真はスマホで撮影済みなので、それをカーターと和泉さんへ同時に送信する。

 

「――というわけで、岡山の山中にあった村の跡から赤い宝石のようなものを見つけた。ちゃんと鉛板で力が漏れ出さないように固めてある」

 

 まずは調査結果についてカーターに報告するところから始めた。

 通話をスピーカーにして、エリちゃんと2人で聞けるようにする。

 

「集落地下には赤い宝石と謎の木以外に怪しいものはなかった。これで時間逆行現象が収まって欲しいところなんだけど」

『念のために確認するが、次元の境目みたいなのはなかったんだよな』

「それはなかった……はずだ。横浜の地下遺跡のように、祭壇はあったけど、肝心の次元の穴みたいなのはなくて、単にデカい木が生えてるだけだった」

 

 写真を撮り忘れていたが、巨大な木についてカーターになるべく伝わるように説明を行った。

 それで伝わると良かったのだが、回答は「全然見当がつかない」だった。

 

「他には霊らしきものがいた……んだと思う。何も見えなかったが、成仏出来ない霊だと思って、線香を立ててナムナムナムしたら消えた」

『成仏させんな、邪悪な巫女め』

「良いことをして文句を言われるパターンは初めて聞いた」

『多分、それは霊が何か訴えてきて、そこから過去が分かるムービーが流れて、村の秘密がわかる奴だったんだと思うぞ』

「そんな、ゲームじゃあるまいし」

 

 何にせよ終わりである。

 

 もし霊が空気を読んであの世から戻ってきてくれたとしても、俺達には、何も見えないのだから、結局のところ何も出来ない。

 

 一応、古い白骨死体も埋まっているのだが、それを埋葬するのにまた地下に戻ったり、警察に連絡するのも何か違う気がする。

 

「もしかして、ここって因習村だったりした? 祠壊した?」

 

 エリちゃんが、また悪いインターネットの影響を受けたような発言をした。

 

「古代遺跡を代々守ってきた村みたいだから、独自ルールは有ったと思うけど、さすがに因習ではないと思う」

『因習はあったみたいだぞ』

 

 俺の予想がカーターに即、覆された。

 

『香住の集落についての歴史を調べてるけど、江戸時代には色々表沙汰には出来ないことをやっていたみたいだ』

「そうなの?」

『中国地方の深い山の中で、先祖代々の秘密を守っていた連中だからな。独特の風習も出てくるだろう。まあ、何十年も前に全滅したんだけど』

 

 カーターの説明の後に、電話の向こう側で何やら騒ぐ声が聞こえた後に、別の――探偵の和泉さん――の声が聞こえた。

 

『香住の集落の生き残り……無人島のオーナーですね。彼らにも連絡を取ってみましたが、先祖からは何も聞いていないということでした』

「今のところ情報はなしということですか」

『こちらでも可能な限り調べてみます。ただ、解決しない可能性も考えて、今日のところはその赤い宝石を守り抜いてください』

「私の手元に宝石がある限りは、時間が逆行したとしても、岡山の地下で宝石が復活することはない……そういうことですね」

『申し訳ありませんが、はい。今のところは打つ手なしです。これで解決してくれることを祈りましょう』

 

 結局、何も分からない。

 結論も出ないまま、通話は終わった。

  

「仕方ないし、とりあえず帰ろうか」

「そういえばラビちゃん、彼女さんは放置で大丈夫なの?」

「一応、事情は話してはいるけど……」

 

 本当ならば、今頃の時間は鳥取砂丘で牛骨ラーメンを食べて、その後はコナンミュージアムで楽しむはずだった。

 俺のスマホの中にも、楽しんだ記憶は写真として残っている。

 

 だが、それは全部なかったことになったのだ。

 もうどの周回で何を言ったのかハッキリしなくなっている。

 

「私から言うのも何だけど、早く行ってあげた方がいいと思うよ」

「そうだな……一応片付いたと信じて、行くことにするよ。今日はありがとう。もしかしたら、明日もまた会うことになるかもしれないけど」

「そうならないように願いたい」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 エリちゃんを自宅に送り届ける途中の山中で妙なものを見つけた。

 

 一見すると、何もない空き地なのだが、空気が揺らいでいる。

 

 最初は陽炎のようにうっすらと。

 時間が経つにつれて、ハッキリと輪郭を帯びていき、やがて何もない空き地に古びた洋館が姿を現した。

 

 急いで近くの待避所に引き返した。

 白い融雪剤が撒かれて中途半端に溶けたシャーベット状の路面を歩いて洋館の前まで戻る。

 

 入り口には立派な門柱があり、少し入ったところには、荒れ果てた庭園がある。

 その敷地の奥には、古びた木造二階建ての洋館が建っているのは以前と同じだ。

 

「もしかして、あれがラビちゃんの言っていた洋館?」

「ああ、間違いない」

 

 断言した理由は、中央の扉には、以前に俺が鳥取砂丘で攻撃した穴が開いたままだということだ。

 修理はされていない。

 

 慌てず急がず、冷静にスマホのカメラで撮影。

 GPSデータを添付した上で、カーターに電話を掛けた。

 

「目の前にまた例の洋館が出現した。鳥取砂丘に出てきたやつだ」

『なんだと?』

 

 通話を継続しつつ、腕時計で時間を確認する。

 時間は12時過ぎ。俺が鳥取砂丘近くで洋館を見つけたのとほぼ同じ時間だ。

 

「またすぐに消えるかもしれないから、見解を聞かせて欲しい」

『念のために確認する。出現時間は同じなんだな』

「初日……じゃない、初回ループの正確な出現時間は記録を取っていないが、時間はほぼ同じだと思う」

 

 体感だと2日前の話なのだが、暦の上では同日だ。

 つまり、この現象には再現性がある程度あるということになる。

 

『もしかすると、その洋館はお前を狙ってきているのかもしれない』

「どういうことだ?」

『時間逆行現象や時系列は無視して考えるとだな。12月25日の12時にお前は赤い宝石を持っているんだ』

 

 一瞬、意味が分からなかったので、カーターの言葉を反芻する。

 初回ループ時には俺はまだ赤い宝石を持っていなかった。

 だが「12月25日の12時現在に、俺は赤い宝石を持っている」という運命に合わせて、洋館が襲撃してくるとしたら?

 

『これで、赤土がなんでループに捕らわれていないかのカラクリも見えてきたな』

「俺にも分かった。12月25日23時59分59秒の時点で時間逆行の影響を受けない条件を満たしていたからだ」

 

 今のところ出せる結論はそれしかない。

 時間逆行を起こしている存在自体も、時間逆行の影響を受けていた。

 なので、相対的な時間ではなくて、絶対的な時間軸での時系列を参照して「こいつは影響から逃れる」と処理をしていた。

 

「絶対的な時間では未来だけど、相対的には過去。テネット並みにややこしい時間逆行現象だな」

 

 映画テネットは、SF的な設定は棚に置いて、フル武装で敵の本陣に殴り込み。「USA!USA! 火力は正義!」したら全部解決していたが、この事件は違う。

 

 まだ倒すべき敵もギミックも判明していない。

 

『仮説の域を出ていないけどな。ともかく、お前たち2人はこの事件を未来で解決する。地下遺跡でもう解決したのかもしれない』

「そうなると、この屋敷はどう評価すればいい?」

『赤い宝石を狙ってきたか、それとも時間逆行に関係しているのか……分からん』

 

 俺は改めて洋館を見た。

 外観から、何か情報が得られないか見ているが、それらしい特徴は見当たらない。

 

「いや、待てよ」

 

 洋館に「門柱」があることが気になった。

 

 これが完全独自の謎オブジェクトならば、門柱はただの飾りでしかないだろう。

 

 だが、元々は誰かが住む建物として作られていたのならば、この門柱は表札であり、郵便ポストがあったはずだ。

 

「極光!」

 

 門柱に向けて熱と衝撃を伴う光線を放った。

 スキルの攻撃力自体は弱いものの、草を刈ったりと地味な作業にはかなり効果的だ。

 

 茂った雑草や、その上に降り積もった落ち葉、雪、砂などの堆積物の層をまとめて吹き飛ばすと、予想通り、埋まっていたものが姿を現した。

 

 スピーカーを解除した後に、スマホを持って門柱の前へ移動した。

 

 門柱の前に埋まっていたのは石の表札だった。

 門柱から落下した時に3つに割れたようだが、パーツの破損はない。

 

 パズルのように組み合わせれば、元々石に彫られていた文字が浮かび上がる。

 

「霞」

 

 岡山の廃集落、民家の跡地で見つけたものと同じだ。

 

 異変のあった集落。そして、この洋館に共通する文字。

 

 文字通り、霞……ぼんやりと真実を覆い隠すベールのようだ。

 この謎を解けるものならば解いてみろと挑発しているようにも感じる。

 

「洋館の前に『霞』と書かれた表札が落ちていた。この洋館は霞家のものじゃないのか?」

『そんな、まさか』 

 

 カーターが疑うようだったので、スマホのカメラでその表札を撮影した後にメールで送りつけた。

 

「岡山山中の謎の集落、赤い宝石、そしてこの謎の洋館。全部が繋がっているんじゃないか?」

『だとしたら、謎の解明には、中の調査は避けて通れないが……』

 

 カーターの心配は理解できる。

 

 洋館は謎が多すぎる上に、突然に消滅するという現象を目撃している。

 

 建物の中へ調査のために踏み込んだところ、いきなり消滅。

 いずこかへ屋敷ごと連れていかれる可能性は0ではない。

 

「リスクは承知の上だ。それでも、虎穴に入らずんば虎子を得ずだろう。やれることは全部やっておきたい」

『焦る気持ちはわかるが、もう少し慎重にだな』

「心配してくれてありがとう。だけど、次はいつ現れるか分からないのだから、この機は逃せない。出たらまた電話する」

『おい、ちょっと――』

 

 カーターとの通話を切って、洋館の敷地内に入った。

 

 中央に大きな穴が開いたため、玄関の扉は若干崩れかけている。

 そのため、何もしていないというのに、わずかな風が吹いただけで、前後にグラグラと揺れて動いている。

 

「俺一人で中に入ってみる。エリちゃんは外で待機を」

「私も行くよ。一人で入るよりも安全でしょう」

「念のために外で待っていて欲しいんだけど。何かあった時に、連絡をする役割は必要だし」

 

 エリちゃんとそう話していると、館の輪郭がグラリと揺らいだ。

 もしかして、また消えようとしているのだろうか?

 

 あまり館の前で議論している時間はなさそうだ。

 

「エリちゃんは、やっぱり外で待っていて欲しい。俺だけでも行ってくる」

 

 俺は意を決して、崩れかけた玄関扉を開き、洋館の中へと踏み込んだ。

 

「待って、私も行くよ」

「えっ? 待って!」

 

 エリちゃんが急に俺に続いて屋敷に飛び込み……そして扉が閉じた。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 洋館に入ってすぐの場所で出会った男に案内された応接室は、「豪華な富豪の住まい」をイメージして連想される部屋と、表面上はよく似ていた。

 

 広さもある。

 調度品も質が良く、高価そうだ。

 

 だが、どこか違和感がある。

 

 客をもてなすというよりも、客を驚かせる、あるいは不快にさせるために調度品を選んでいるようにしか見えない。

 

 床には赤い絨毯、壁には紫色を主体にした抽象画がいくつも掛けられている。

 

 タッチも独特で、何を題材にした絵なのかはうかがい知れない。

 

 壁際の収納棚――サイドボードの上には、いかにも高そうな花瓶が飾られているが、生けられているのは、色が悪いドライフラワーの出来損ないだ。

 

 天井から吊るされたシャンデリアも、金具には悪魔を象った彫刻が施されている。

 中世の時代には魔避けの意味で悪魔を象ったガーゴイルが彫られることがあったらしいが、その時代の物を調達したのだろう。

 

 部屋の中心には、唯一まとも……というより無機質な長ソファーが、テーブルを挟んで設置されている。

 

 そこだけを見るなら、妙に無機質で現実的だった。

 だからこそ、逆に浮いて見える。

 

「まあ、掛けたまえ」

 

 胡散臭い、歌劇(オペラ)で使いそうな白い半仮面を付けた黒いスーツの男は、ソファーに当然のように腰を下ろした。

 

 同時に、もうもうと埃が舞い上がるのを見て遠慮した。

 

 玄関の扉を開けてすぐの場所で、まるで俺達が来ることを知っていたかのように待ち構えていたのが、この男だ。

 

 最初に連想したのはゲームマスター……あのゲームの運営の現場指揮官だった男だ。

 それと同じような、どこかとらえどころがない、それでいて何かを企んでいるような気配がする。

 

 警戒は解かない。

 

「あなたは何と呼べば良いでしょうか?」

「エシュ」

 

 仮面の男は端的に名乗った。

 

 肩書も経歴も何もなし。

 俺が名前しか聞かなかったので、それを語っただけだ。

 自分語りは嫌いなタイプらしい。

 

「それで、この洋館は何なんですか? 表に霞という表札があるのを見ましたが」

「この屋敷は、とある場所で行われた実験により、次元の狭間に飲み込まれた。それ以降は色々な時空を彷徨っている。たまたま時空が不安定になっている場所に短時間だけ出現することもあるが、すぐにまた次元の狭間に戻される。それを延々と繰り返している」

「もしかして、実験に失敗したせいで、古代に封印していた怪物のミイラが蘇って暴れだした――そんな話だったりします?」

「その通りだ。そこの山には次元の境界があったが、事故により失われた」

 

 仮面の男から予想通りの回答が返ってきた。

 男の正体は不明ではあるが、話の辻褄は合っている。

 

 岡山の集落が滅んだ理由が少しだけ分かった。

 これだけでも、洋館に踏み込んだ価値はあるというものだ。

 

「実験は、百年前の鎌倉で行われた。霞という一族が隠れ住んでいた集落が――」

「――待って、ちょっと待って。待ってください」

 

 仮面の男の口から突然「鎌倉」という名前が出たので、慌てて話に割り込んだ。

 

 途中まで話は同じだった。「霞」という一族が関係しているのも同じ。

 

 なのに、場所が岡山から鎌倉にすり替わっているし、事件の発生も八十年と百年だ。

 二十年のタイムラグは、誤差として切り捨てられる許容範囲を大きく逸脱している。

 

「八十年前の岡山の集落で起こった事件とは関係ないんですよね」

「違う。岡山でもなければ、八十年前でもない。百年前の鎌倉だ」

 

 よく考えると、岡山の廃集落に落ちていたのは和風の瓦の残骸だった。

 そこから推測するに、建っていたのは和風建築であった可能性が高い。

 

 この洋館とは少し性質が異なる。

 

 今のところ確定している情報は、岡山には廃集落があり、実際に事件が発生したということだけだ。

 鎌倉うんぬんは、仮面の男が言っているだけで、物証は何も提示されていない。

 

「あれじゃないの? パラレルワールド。私は会ってないけど、違う世界から来た人達がいるって」

 

 エリちゃんが言うのは、端島たちがいる第四世界の話だろう。

 

 この世界には並行した似たようで微妙に違う世界が多数存在しているという話だ。

 

「もしかして、第四世界と繋がりかけた影響がまだ残っているのか?」

「第四世界?」

 

 エシュが俺の言葉を拾い上げて首を傾げた。

 

「もしや、この世界は第三世界と呼ばれているのか?」

「ご存じなんですか?」

 

 第三世界、第四世界というのは、伊原さんが、並行世界の概念を話した時に、便宜上区別するために付けた仮の名前だ。

 

 もちろん「第三世界」なんて呼び方はありふれた名詞でしかないので、違う内容の話の可能性もある。

 だが、エシュが端島達と接触した可能性も十分ありうる。

 

 少し話を振ってみて判断することにした。

 

「私達の世界は第三世界です。もしかして、最近、高校生達がこの屋敷にやってきませんでしたか?」

「ああ、確かに訪れた。六人ほどいた」

「それは第四世界に帰っていった私達の友人です」

 

 やはり、端島達もこの屋敷を訪れたようだ。

 

 端島達は、元々住んでいた第四世界に帰って、世界崩壊の原因を調べると言っていた。

 その過程で、この屋敷に辿り着いたのだろう。

 

 エシュは六人ほど来たということだが、端島たちと船木で四人。

 あとは松葉と誰かだと予想は出来る。

 

「なるほど、世界は狭いものだ」

「狭いというか、縁があるというか……」

 

 ただ、エシュが端島達に接触したという話でようやく話が理解出来た。

 

 並行世界は似ているようで微妙に異なる。

 違う事件が発生することもあるし、同じ事件でも発生する時間が違ったりする。

 

 第三世界では八十年前に岡山で起こった事故が、第四世界では百年前の鎌倉で起こった。

 世界により、事件の内容が異なる。

 ただ、それだけの話だ。

 

「それで、これからどうするの?」

 

 エリちゃんが不安そうな顔で俺に尋ねてきた。

 内容が不穏ということではなく、話がよく理解できないという顔だった。

 

「この屋敷で暴れても何も解決しないみたいだし、とりあえず帰ろう」

 

「暴れても」と言ったところで、仮面で表情など分かるはずもない男が少し慌てたのが見えた。

 

 もちろん暴れるつもりはない。

 

 洋館にいるエシュが全ての原因であり、悪事を全部喋ったところで二人で殴れば解決というならば、いくらでもそうするつもりだったが、別にそんなことをする理由はないようだ。

 

 殴っても別に何も解決しないどころか、むしろ、事態がより悪化するならば意味がない。

 

「この屋敷は、もしかしてまた第四世界のどこかに行ったりしますか?」

「おそらくは。何者かが、何らかの方法を使って、屋敷の移動ルートを制御している。だから、次もその第四世界と呼ぶ世界のどこかに出現するのだろう」

「ルートを固定? まあ、ともかく移動するならそれでいいです」

「それでいいのか」

 

 上着のポケットから手帳を取り出して、そこにメモを書いていく。

 内容は主に端島への連絡内容だ。

 

「今日のところは私たちは引き上げます。次に端島……第四世界の高校生達が来たら、何かメモを残すようお願いします」

「私はメッセンジャーではない。それは約束出来ない」

「ならば、この部屋のどこかにメモを張り付けておいても良いですか?」

「そこの棚に置くくらいならば」

「ありがとうございます」

 

 許可をいただけたので、サイドボードの埃を払いのけ、その上にメモを置いた。

 

「第三世界でも異変が起こっている。共同作戦をしないといけないかもしれない。情報交換をしたい。上戸」

 

 これが伝われば、もう少し事態は動かせるだろう。

 

「とりあえず、この館はもう出よう」

「うん、それがいいかもね」

「ではそういうことです。お邪魔しました」

 

 俺達は仮面の男に背を向けてそそくさと退散した。

 

 玄関の扉を開けて外に出ると、まだそこは岡山の山中だった。

 少し先には車も停まっている。

 

 そして、振り返ると、洋館は跡形も残さずに消滅していた。

 

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