収穫祭の魔女   作:れいてんし

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―Part14 「非時香菓」

「こちらが香住エレクトロニクスの1年間の株価の動きです」

 

 合田が持ったタブレット端末に全員の視線が集まる。

 株価はほぼ横ばいに見えた。

 たまに下がる時もあるが、数日で持ち直してまた上がったり下がったりを繰り返している。

 

 1年単位で見るとほぼ変化がないと言っても間違いではない。

 

「明らかに下り坂ってわけじゃないんだな」

「でも、これが3年間になると……こうです」

 

 合田の操作でフィルタを切り替えると、一気にというわけではないが、じわじわと株価が落ちているのが見えた。

 更にフィルタを広げて過去5年となると、ずっと下り続けているのがハッキリと分かる。

 

「会社創業からずっと技術を売りにしてきた会社ですが、ここ最近は新技術もなく、業績もパッとしないのが株価に反映されていると記事には書かれていますね」

「宇宙人の遺産から手に入れられる技術も打ち止めってことか」

「上戸さんが言うように、数年で追浜の工場が閉鎖とかいう事態にはならないでしょうけど、何か新しいネタがないと先行きは暗いみたいです」

「その会社のピンチにやってきたのがジェームスなんとかか」

「ジェームス・ジョンソン氏が経営コンサルとして参加という記事は経済紙のバックナンバーにも載ってるみたいですね。有料なので買いませんけど」

 

 経済紙のページには「経営陣刷新で挑むこれからの10年」というタイトルに続いて「ここから先は有料記事です」の文字と月額支払い契約のリンクが表示されていた。

 

「買おうぜ」

「調査は探偵さんたちがしてくれるって言ったじゃないですか。買いません」

 

 無責任に煽る端島を合田はあっさり断った。

 

「ただ、何があったのかは予想はできます。会社の経営が不振なので新技術が欲しい。そんな時に総理大臣が連れてきた怪しいコンサルが『いいネタあるよ』とやってくる」

「いいネタってのは杭と幽霊屋敷か」

「多分、騙されているんでしょうけどね。ジェームス氏が黒幕の仲間か、黒幕そのものならば、香住が潰れようが何だろうが、どうでもいいはずです」

「それで塔の場所の見当はつくのか?」

 

 今までずっと無言で話を聞いていた松葉が突然に口を開いた。

 なかなか本題である塔の話が出てこないことに苛立っているようだ。

 

「いいえ、全然」

「なら、話は何も進んじゃいない。今からでも戻って、この公園の塔の制御を奪うことを考えた方が良いんじゃないのか?」

「この公園の塔は、第三世界の塔ですよ。多分向こうに行かないと制御はできないですよ」

 

 合田は素っ気なく答えた。

 

「ならどうする?」

「関係あるとしたら、やっぱりあの杭です。私たちは完全にランダムに刺していると思っていましたけど、多分何か法則があるんです」

 

 合田がタブレットの画面を切り替えた。

 探偵たちや横浜組と共有しているメモアプリだ。

 

 そこには今まで発見した杭の場所を記した地図が表示されている。

 

「今は横浜組が、まだ発見されていない杭を探しているはずです」

「でも、このアプリの地図は更新されていない」

「手当たり次第じゃ雲を掴むような話ですからね。法則を見つけて、ある程度絞り込みが必要なんです」

 

 合田が次に表示したのは変更履歴だった。

 横浜組と探偵との間に編集者不明の更新が間に挟まっている。

 

「これって、多分第三世界の上戸さんが編集したのが、こっちに反映されたって話だよな」

「そうです。どういうわけか、次元を越えて編集できているみたいなんです。つまり、上戸さんならある程度法則に気付いているはずなんですよ」

「ついさっきまでいたんだから、その時に聞いておけば良かったな」

 

 端島がそう言うが、時すでに遅しだ。

 今から裏の世界へ引き返しても、警告をしに来ただけという上戸たちはもう帰っているはずだ。

 

 しかも、次元を修復してお互いの世界を隔離している最中だという話なので、次に連絡が取れるかどうか怪しい。

 

「ただ、事件のことをあまり知らない上戸さんに解けたということは、法則さえ分かれば、私たちにも解けるはずなんです」

「なら、聞けばいいじゃないか、上戸さんに」

「でも、第三世界と第四世界はもうあまり連絡が……エシュのところに行くという手もありますけど」

「いや、そうじゃなくて……私たちの世界の上戸さんに聞いてみるんです。メールアドレスは分かっているんですよね」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「単純に香住の工場からの一定距離の道路上という話でもないのか」

 

 探偵との協力者という人物からのメール連絡を受けた上戸佑は、スマホ上に表示された地図を眺めていた。

 ただ、何も見えてこない。

 

 

「さすがに情報が足りなさすぎるな。並行世界の俺なら解けたって……前提の知識が違いすぎるんじゃないか」

 

 会社のPCで地図アプリを開いて、そこに同心円を書いてみる……一致せず。

 

 周期は安定せず、個数もバラバラ。

 特に法則性を見いだせない。

 

「逆に考えよう。俺も知らない魔術のプロが法則を見つけられなかった。ということは、魔術の知識では解けないということだ」

 

 点が打たれた地図のキャプチャを取得して、点にマスクを掛けて白で塗り潰し。

 それらの点が全て収まる正方形を書いて、起点を中心に設定。

 

 これで地図上に打たれた点は二次元上のグラフに変換された。

 

「魔術がダメというなら、科学的……というか、数学的な考え方なら解けるかもしれない。といっても単純な正弦曲線(サインカーブ)とかじゃないよな。もっと軌跡は複雑だ」

 

 上戸は手元のメモ用紙に斜め線の二次関数、波打った線の三次関数のグラフを描いた。

 

「これがもっと複雑なんだから四次関数以上……三次関数が三次元の縦横高さならば、四次関数は時間がプラスの四次元と考えていいはずだ」

 

 ヒントは魔術師には解けなかったということと、この世界には並行世界が存在しているということだ。

 数学、物理学的には、五次元が電子の世界なので、並行世界があるとしたら九次元……ひも理論のひも宇宙だ。

 

 AIにアップロードして、このグラフの法則性を出してくれ。九次関数で。

 もちろん、それだけで答えが出ないのは分かっている。

 

 メモ帳にデタラメに点を2つ打つ。

 それらを直線で繋ぐ。

 

 考えは間違っていない。

 

 入力するパラメーターはグラフの点と点を繋いだ線の傾きと長さ、並び順。

 いくら次元が増えても、二つの点を結ぶ線は二次元でしかないので、三角関数だけで角度と距離を割り出せる。

 

 あとはこの三角関数の計算をひたすら繰り返すだけだ。

 

 それでも、計算式が複雑すぎるためか、すぐに結論は表示されず、「思考中です」の文字が出たところで待機状態になった。

 結論が出るまで長くなりそうだったので、結果は確認せずに仕事に戻った。

 

 休憩を挟んで1時間後に確認すると、AIが複雑な計算式と共に、現実離れした計算式から出力されたとは思えない、五枚の花弁を持つ花のような幾何学模様が表示されていた。

 

 一見無秩序な線で構成されているとしか思えないが、その中に一定の法則が見られるフラクタルパターン。

 

 中心点から出発した方向は違うのに、何故か同じ場所に点が一か所に集まり、美しい幾何学模様を作り上げている。

 

 ただの線の組み合わせだというのに、何かのテーマを持った芸術のようにも見えるし、それでいて無秩序で法則性などない落書きのようでもある。

 

 並みの人間には描くことができない科学のアート。

 

「大学で受けた講義の内容を信じるなら、カオスから生まれるアトラクタフィールドの収束によるフラクタルパターンか……理屈はわかるけど、そうはならんやろ」

 

 雪の結晶が同じ綺麗な形を作るのと同じだ。

 特定の法則に従っているからこそ、規則正しいパターンを作り出し、整っているからこそ人間の脳はその形状を美しいと認識する。

 

 ただし、それを構成している数式が人間の能力を超えた複雑すぎる式のために、脳が理解を拒む。

 

 もちろん、数式が合っているかどうかなど分からない。

 計算もAIに丸投げしており、途中の計算がないので、途中でデタラメな計算をして近似値を出しているだけの可能性もある。

 

 だが、正しいと証明するための情報など何もない。

 

 それでも一応は調査結果だ。

 

 出力されたグラフと軌跡の予想。

 そして、計算式は九次元函数……ひも理論から生まれた画像であると報告をする。

 

 問題は、並行世界の自分なら、AIが時間をかけて解いた複雑な計算式を理解していたということだ。

 

 並行世界の自分が数学の天才であり、極端に能力に差があるとは思えない。

 

 ならば、考えられる違いは一つだ。

 

 人間が三次元の世界をわざわざ座標軸など意識することなく歩きまわったり、遠い近いの位置関係を把握できるのと同じだ。

 複数次元が存在して当たり前の世界に足を踏み込んだので、わざわざ計算など行わなくとも、感覚で多次元の位置関係を理解できる……はずだ。

 

「並行世界の俺はゲッター線にでも導かれたのか?」

 

   ◆ ◆ ◆

 

「ヒモ理論ってダメな男を女性が養っているという理論だよね」

「絶対に違うと思う」

 

 更新されたデータを見た柿原綾乃(かきはらあやの)は素っ頓狂な声を上げた後に、向かいの席のPCで調べ物をしている小森裕和(こもりひろかず)の顔を見たが、即座に否定された。

 

 矢上たち他の部員は今も杭を探して町を歩き回っているが、目ぼしい成果は上がっていない。

 そのため、柿原は小森と2人で部室に残って、杭のありそうな場所を、様々な資料から探ろうとしているところだった。

 

 丁度狙ったように、端島経由で上戸の分析がやってきたのだが、送られてきた内容は、地図以外が微妙に分からないというのが本音だった。

 

「ただ、この図自体が合っている可能性は高いと思う」

「根拠は?」

「昔の地図に書かれている柱の位置」

 

 小森がキーボードを叩くと、新聞部部室PCのモニタに色褪せた古い地図が表示された。

 そこにいくつもの「鎮」という文字が書かれている。

 

 多すぎてとても数えてはいられないが、最低でも百はあるだろう。

 

 かなりの密度で詰まっている場所もあるし、逆にほとんど何も書かれておらず、スカスカの場所もある。

 

「具体的には何なのこれ?」

「鎌倉時代に北条氏が、鎌倉とその周辺に作った鎮守の社とかいうやつの位置が書いてある地図。杭の場所と何か関係あるかと思って調べていたんだ」

 

 東は平潟湾(ひらかたわん)、西は藤沢市の柏尾川(かしおがわ)まで。

 鎌倉を中心とした関東の地図のようだった。

 

 地図は極端にデフォルメされており、地名も今と大幅に違う。

 そのために、今の地図と重ね合わせることはできないが、大仏や長谷寺、鶴岡八幡宮などの、鎌倉時代当時から現在まで残っている有名な寺や、円海山、六国峠などの山などから大雑把な位置関係は把握できる。

 

「杭の場所はたしかに道路沿いの空き地なんだけど、この古い地図の『鎮』の位置ともだいたい合っているから、関係あるかなって」

「平潟湾って今のどこ?」

「八景島がある辺り」

 

 柿原の脳内で、鎌倉武士がジェットコースターで遊んだり、水族館の見学をしている光景が展開された。

 

「鎌倉時代ってすごいね。進歩してたんだ」

「そりゃ、一時期は日本の中心だったんだから」

「おのれ足利尊氏め」

「鎌倉に直接攻めてきたのは新田義貞だよ」

「おのれ新田め」

「鎌倉を北条が奪還した時にトドメを差しに来た尊氏と最後まで戦ったのも新田」

「どういうこと?」

「分からない。俺たちは雰囲気で鎌倉周辺の歴史を調べている」

 

 画面に昔の地図と現在の地図を並べて表示させる。

 

「えっと……北条氏は鎌倉の鬼門……ようは北東だな。そこを守護するために荏柄天神社(えがらてんじんじゃ)を作ったらしい」

 

 柿原の指が現在の地図上の鎌倉駅に当てられた。

 そこから荏柄天神社、六国峠、大丸山、金沢動物園と進み、エシュの幽霊屋敷を見つけた金沢区の釜利谷(かまりや)で止まった。

 

 昔の地図で同じような動きをすると、社が並んだ場所が少し北にある。

 

「ちょっとズレてない?」

「なのでもう一つ別の説がある。もっと北、散在ガ池(さんざいがいけ)の近くに白山神社(はくさんじんじゃ)という神社がある。こっちは北条じゃなくて源頼朝が作った神社だ」

「なるほど」

 

 柿原の指が再度鎌倉駅から白山神社をスタートして北東へと上がる。

 

「白山神社……小森の家、最初に幽霊屋敷を見つけた場所、うちのマンション、円海山……なにこれ?」

 

 最初の白山神社までは良かったが、その後に今までの調査で怪しいとされたポイントや、関係者の住む家などが続いていた。

 偶然の一致にしてはできすぎている。

 

 指を止めずに先に進むと、更に別の白山神社を通り、杉田の根岸湾の方へ消えていった。

 

「ちなみに、この杉田駅の近くは前に新聞部で調査に行った幽霊屋敷があったところだ」

「あったあった……あれはどういうオチになったんだっけ?」

「昔は日本陸軍の施設があったらしいけど、その後は普通のアパート。住民は、単に近くにあった工場が移転したので引越ししたというオチで終わり」

 

 昔の地図を見ると、白山神社のルートには大量の社が並んでいるのが見えた。

 

 小森がマウスを操作して、昔の地図と現在の地図の更に横に、上戸から送られてきたひも理論に基づく予想図が表示された。

 更に横に、今まで見つかった杭の場所を並べると、不気味なくらい一致している。

 

 全ての位置が一致している。

 

「でも、社がうちの近くに大量にあるなら、普段から見ていてもおかしくないはずだけど」

「小さい社みたいだから、多分鎌倉幕府が滅んだ後は誰も手入れしなかったので、そのまま消えたんだと思う」

「そういうのって消えちゃっても大丈夫なのかな?」

「そこも分からない」

 

 そもそも、杭を打っている目的が幽霊屋敷を呼び寄せるらしいこと以上のことが分かっていない。

 わざわざ幽霊屋敷を呼び寄せるためにそんな手間を掛けている理屈も不明のままだ。

 

「だけど、確実に分かったことはある。カスエレは、どういうわけか、昔にこの社が立っていたところに近い場所にある空き地に杭を打っている。だから、上戸さんの予想を辿っていけば、未発見の杭は確実に見つかるはず」

「じゃあ、未発見の杭があるとすると……逗子の山奥か」

「今日はもう遅いし、一度帰ってきてもらおう。区内を歩き回るだけならともかく、逗子まで行くにはどの道時間もかかるし」

 

 柿原はスマホを取り出して、矢上に電話を掛けた。

 すぐに繋がったので、調査方針の変更を伝える。

 

「東京組はどうする? 一緒に探してもらう?」

「あっちは『塔』ってやつを探すらしい。多分、こっちも上戸さんの予想図が参考になるとは思うけど」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 横浜の探偵事務所でも、同じく上戸が出した予想図を和泉と元片倉がチェックしていた。

 

 上戸がAIに作成させたという図は、故意なのか偶然なのか、和泉と元片倉、どちらもが知識として知っている魔法陣に酷似していた。

 

 力のある魔術師が同じ図形を描いて力を注げば、かなり高度な魔術が発動するだろう。

 

 もちろん、一般人が描いても何も動作はしないし、コンピューター上のCGでは猶更発動しない。

 

「発想の転換だな。オレたちは魔術の知識、高校生組は古い文献から答えを探す中で、この上戸は魔術と全然関係ないところから答えを引っ張り出した」

「それが合っているというのが驚きですね」

「そういう『勘』が利くんだろう。ただ、途中の過程を全部すっ飛ばしているので、正しさの証明ができない。答えは合っているので、それっぽい嘘をつかれたら、騙されるかもしれないが」

 

 和泉はもう一度上戸が出してきた図形を見た。

 

 五枚の花弁を持つ花は橘の花に似ている。

 

 この花になる実は古事記では非時香菓(ときじくのかぐのみ)

 常世の国から持ち帰ったという、不老不死……時間を越えて存在する木の実だ。

 

 偶然にしてはできすぎている。

 

 だが、鎌倉時代に作られた社の位置が、量子論の計算式と同じ結論に至ったように、古代から伝わる伝説には何らかの意味がある。

 

 続いて和泉が開いたのは高校生組から送られてきた鎌倉時代に作られた社の地図だ。

 

「地図が存在するのは知っていました。13世紀に北条氏が作成させた地図ですが、当時の測量技術の限界で位置関係がハッキリしません。そのため、参考にはならないと見逃していました」

「それは仕方ない。オレだってこんな歪んだ地図を渡されてもスルーするわ」

「資料の再検証は助かります。多分、私たちが固定観念に囚われてしまっているせいで、見逃している資料がまだありそうですね」

「あるならどんどん送っておこうぜ。オレたちは別にやることがあるんだから」

「そうします。どれも大学や国会図書館の電子アーカイブから閲覧できるので、インターネットが見られる環境ならば大丈夫だと思います」

 

 和泉は机の上に布に包まれた金属の杭を置いた。

 

「こちらも横浜の高校生が調べていましたよね。大正時代の鎌倉で大規模な爆発事故が起きたと」

 

「小森が調べていた爆発事故か……」

 

 元片倉も、謎の爆発については興味を惹かれたので調べてみたのだが、ろくな資料がなく何も分からなかった。

 和泉の今の話も、何か具体的な資料を見つけたのではなく、状況証拠からの推測でしかないだろう。

 

「おそらく、爆発の原因は、鎌倉の地下に眠る古代遺跡で何かが起こったのです。そして、その爆発で貴重な宇宙人の遺産は失われてしまった」

「じゃあそれで終わりなんだろ」

「でも、時空を操作して、事故が起こる前の遺跡から宇宙人の遺産を回収できるとしたら?」

 

 和泉が立ち上がり、壁際に置かれているホワイトボードに計算式を書きつけた。

 上戸が参考資料として付けていた数式だ。

 

「ひもの張力×時間と空間、そして絶対座標……量子論の計算式です。現代科学では未知の数が多数含まれているために、この式だけでは解を出すことはできませんが、上戸氏が出してきた図には、その複数の値に固定値が入っており、解が出るようになっています」

「時間と空間か……」

「社の位置、量子論の計算式、香住の業績不振、そして大正時代に起こった爆発。推論ですが、香住は大規模な術を発動させることで、過去に事故で失われた鎌倉の遺跡から宇宙人の遺産を回収しようとしているのでは?」

「パズルのピースは確かに全部合っている。だけど、本当に時空を歪める術なんて可能なのか?」

「多分、術は失敗に終わるんでしょう……そして、12月25日にこの世界は滅ぶ」

「それを仕組んでいるのが、香住にコンサルとして入ったジェームス何某(なにがし)と」

「異世界からの帰還組は術の起点になる塔を探しています。横浜の高校生は術を発動させる下準備の杭を。ならば、私たちがやるべきことは?」

「術者潰し」

 

 元片倉はホワイトボードにプリンタで印刷した顔写真を張り付けた。

 経済紙のインタビュー記事に載っていたジェームス・ジョンソンと名乗る男の顔写真だ。

 

「香住は大企業。周防も総理大臣なのでおいそれと手を出すことはできないが、単に雇われのコンサルならば話は別だ」

「これは子供には任せられませんからね」

「もちろんだ。ここからは大人の……プロの戦いだ」

 

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