収穫祭の魔女   作:れいてんし

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Chapter 6 「空も飛べるはず」

極光(きょっこう)!」

 

 極光と名付けた俺の3番目のスキル。

 箒の先から出る虹色の光の帯によって、遺跡の通路を塞いでいた子牛くらいのサイズの巨大な蜘蛛が吹き飛ばされ――

 

 ――吹き飛ばされ……

 いやなんか、一瞬だけ動きは止まったけど、元気に向かってくるな。

 

 鳥を何羽か出して追加攻撃でも入れるかと思ったところ、先にエリちゃんが飛び出した。

 鋭い回し蹴りを直撃させると、蜘蛛は遺跡側面の壁へと吹き飛ばされた。

 

 勢いよく壁に叩きつけられた蜘蛛は、べしゃりと音を立てて変な色の汁を噴出。

 ずるりと床に落ちて、それっきり動かなくなった。

 

 なお、メダルは出現しなかった。

 ワイバーンと何が違うのか? 基準がわからない。

 

「エリちゃんは虫の類は平気なタイプなのか?」

「田舎出身なので、虫は昔から平気で」

 

 ふと後ろを見ると、後方で援護に徹しているモリ君の方が巨大な虫に対して怯えている。

 

 もう蜘蛛は動かないというのに完全に腰が引けているし、苦虫を噛み潰したような酷い表情のままだ。

 モリ君はエリちゃんとは対照的に都会っ子で虫が苦手なのだろうか?

 

「モリ君は都会育ち? 東京とか?」

「端っこの方ですけど、一応横浜ですよ……ラビさんは?」

「俺は加古川。兵庫県ね」

 

 やはりモリ君は都会育ちだったようだ。

 ただ、虫が苦手なのは分かるが、しばらくはこの環境が続きそうなので、もう少し慣れてほしいところだ。

 

 俺の3番目のスキルは箒の先から極光(オーロラ)のような虹色の光の帯……レーザー光線が出るというもの。

 

 何の音や風も立てることなく、光速で届き、広範囲に衝撃と熱によるダメージを与える技である。

 事前動作なしで光速の攻撃を目視で避けられる相手はいないだろう。

 

 また10秒ほど出し続けることが可能だ。

 光を同じ対象に当て続けたり、出したまま光線を動かして複数の対象をなぎ払ったりすることも可能である。

 

 欠点はやはり攻撃力の低さ。

 

 先程のような巨大な蜘蛛相手だと一瞬怯むだけで終わりである。

 

 逃げてくれると良いのだが、だいたいの場合は先程のように攻撃を受けながらも反撃のために突進してくる。

 

 鳥を出す第1スキル――群鳥(むらどり)と名付けたそれも攻撃力はかなり低かった。

 5羽を全部当てたとしてもエリちゃんのスキルで攻撃した方がはるかに強いだろう。

 

 第1スキルを初めて使った時に鳥ではなく光の玉が出てきたのと同じで、使い方が何か違うのかもしれない。

 マニュアルなどはないので、思いついたことはトライアンドエラーで試していくしかない。

 

 現状でも、蜘蛛の巣のようなものならば、一瞬で跡形も残さずに焼き払うことができるというメリットもある。

 あとは威力さえ改善すれば、もっと戦闘でも便利に使えるのだが……。

 

「速度と攻撃範囲、持続時間と隙はないはずなんだ」

「万能すぎるから、その分攻撃力を落とされているのでは?」

「スキル1つの総合値が決まっていて、それを割り振っているという考え方か」

 

 ありそうな話ではあるので、可能ならばやってみたいことはある。

 

 範囲を絞ってレーザーカッターのように使う。

 時間を削って瞬間で爆発させる。

 

 ……もしくは、総合値自体を上げて、全ての威力を増す。

 

 もちろん、どうやったらスキルの効果を変更できるのかなどは分からない。

 

 通路を塞いでいた蜘蛛の巣を極光で払いながら廃墟の町を麓……ゴールへ向かって下っていく。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 モリ君とエリちゃんのザッザッというブーツで砂の混じった石畳の床を踏みしめる音に混じって、俺のミュールのような靴のトコトコという足音が響く。

 

 たまに小走りになるのは、俺の歩みが遅いためにモリ君とエリちゃんの2人から距離が離れてしまうためだ。

 

 2人が特に速く歩いているということはないだろう。

 俺が遅いのだ。

 

 体力の低下もあるだろうし、ラヴィが履いているミュールのような踵の高い靴が、石畳が敷かれた下り坂の道を歩くのには全く向いていないのもある。

 たまに踵が石畳の隙間に引っかかって、何もない平地で転倒しそうになることまである。

 

 筋力が落ちているために、箒もただ握っているだけだというのに、すぐに腕がだるくなってくる。

 

 少しでも負荷を減らすために胸の前に両手で抱えるように掴みなおす。

 

 さすがにここまで運動能力が低下していると、自分でも情けなくなってくる。

 

「ラビちゃん」

 

 エリちゃんが遅れ気味の俺の近くまで小走りで戻ってきてくれた。

 

 エリちゃんの方が、今の俺よりも身長は低いはずなのだが、さすが戦士系だけあって、歩くのも走るのも早くて羨ましい。

 

「中の人ってオッサンなんですよね」

「23歳ですけど」

 

 23歳はさすがに若者と呼んでも良いだろう。

 まだオッサンと呼ばれる年齢ではない……はずだ。多分。※要出典。

 

 ただ「中の人」と言われて、少し引っかかるものがあった。

 

 ワイバーンの戦闘中、明らかに意識に干渉してくる、俺とは別人の意識があった。

 今は完全に反応はなく、心の中で呼びかけても何の答えも返ってはこない。

 だが、俺の中には確実に、別の誰かがいる。

 これについても追跡調査をしたいところだ。

 

「実は男って嘘だったりします?」

「そんなメリットのない嘘をつく理由なんてある?」

「うん、まあ確かにそうかな。でも、たまに元から女子かなって思う時があって……」

「たまに?」

「ラビちゃんはユイって人を知ってる?」

 

 名前だけ言われても何ともコメントしようがない。

 とりあえず首を横に振っておく。

 

「モリ君が言ってたんですよ。もしかしたら君はユイじゃないかって」

「誰なんだ、ユイって?」

「分からない。だけど、真っ暗な中で2人っきりという状況で急に肩を掴まれて真面目な顔で大事な話があるなんて言われて」

「うん」

「それで出てきたのが知らない女の名前ってちょっと酷くない?」

 

 それは確かに嫌だ。

 

 下心があるにしろないにしろ、暗闇で体格の良い男性が鬼気迫る勢いで迫るのはダメだろう。

 思春期の少女ならば警戒心が沸いても仕方がないだろう。

 

 エリちゃんの気持ちは分かるところがある。

 

 その上で出てきたのが全く知らない女の名前。

 モリ君はエリちゃんのことなど何も見ていないのと言っているのと同じだ。

 

「だから私はユイとかいう人とは別人だ。ユイとかいう知らない人じゃなく私を、恵理子(えりこ)を見てくれって」

「まあ確かに目の前にいる相手を無視して別人を見るのは酷いな」

裕和(ひろかず)って真面目で頭が良くて優等生っぽくて……すごく優しいんですけど、たまにすごくバカなんですよ」

「うん、まあ確かにそれは見ていて分かる。悪いやつではなさそうなんだけど……」

 

 確かにモリ君は基本的には真面目で優しい善人だということはわかる。

 だけど、根っこの部分はちょっと思い込みが激しいアホの子だというのは、会ってからの言動でなんとなく察した。

 

 その場の感情で暴走しがちなところは、俺からしても若さゆえの危うさのようなものを感じてしまい、庇護欲にかられることはある。

 

「昔に何かあったのは分かりますけど、あんな必死な顔をするんだもん。勘違いしちゃったでしょ」

 

 勘違いしちゃったかー。それは仕方ないな。

 

「ラビちゃんも勘違いしちゃダメですよ。あいつ、すごい天然の女たらしですよ。たらされちゃいますよ」

 

 そうか、たらされちゃったのか。

 

 うん?

 ……うん?

 

「それはともかくとして、ラビちゃんって箒に乗って飛んだりできないの? 魔女なんだよね」

「魔女が箒で空を飛ぶ?」

「うん。走っているのは大変そうだし、箒に乗って移動できればもっと楽なんじゃないかって」

 

 エリちゃんの言葉に俺は膝を打った。

 なるほどその発想はなかった。

 

 俺のキャラクターの外見は古典的な魔女の姿である。

 

 実は単なるハロウィンのコスプレで、ラヴィは魔女とは何の関係もないキャラであるという可能性もある。

 だが、それでも、もしやということもある。

 

 どうせ、「ハロウィンなのでクッキーを配る」以外の情報など何も分からないのだ。

 試せることは何でも試してみる価値はある。

 

「箒よ飛べー!」

 

 箒に向かって声を出して呼びかけてみるが、何の反応もない。

 

「スカイ! フライ! 宙に浮け! フュージョンジャック! フュージョンジャック! フロート!」

 

 デタラメにそれっぽい語句を並べて叫ぶと、どれかが当たりだったようだ。

 箒が手も触れていないのにふわりと宙に浮かんだ。

 

 エリちゃんが信じられないと言わんばかりにこちらを見る。

 実際、俺も箒が浮遊しているのを目の当たりにしても全く現実感がない。

 

「とりあえず解除で。英語だと解除(リリース)?」

 

 適当に言った言葉で箒はゆっくりと地面に降りていく。

 

「箒が浮かんだ……浮かぶということは、浮遊(フロート)?かな?」

 

 言葉を投げかけると箒が再度浮かび上がった。

 

 フロートが浮遊でリリースが解除。

 「フロート」と「リリース」を繰り返し言うと箒が上がったり下がったりする。

 スキルと同じで、やはりこの上げ下げをしている分には、体力や精神の消耗などはないようだ。

 

 面白くなってきて、フロップだのリリーマルレーンだの、似たような感じの言葉を入れて色々と遊んでみる。

 だが、箒はわんこのようにフェイントに引っかかるということはなく、正しい命令以外は受け付けなかった。残念だ。

 

「えっ嘘? これギャグ? ラビちゃんの魔女ってただのコスプレですよね」

「君が言ったんだよね、魔女なら空も飛べるはずって」

 

 エリちゃんは誤魔化そうとしたのか、明後日の方向を向いた。

 

 魔女ならば箒で空を飛べるはずというのは完全に冗談のつもりだったようだ。

 

「女子2人で何を遊んでるんだ」

 

 俺とエリちゃんがいつまで経っても動かないことに気付いたのか、モリ君も俺の近くに小走りでやってきた。

 君は妹が心配なお兄ちゃんか?

 

「聞いてよモリ君。ラビちゃんが魔女だったの」

「ラビさんがクッキーの魔女なのは知ってるけど」

「いや待ってほしい。俺はハロウィンの魔女であってクッキーの魔女ではない。そんなことより見てほしい、この箒を……浮遊(フロート)!」

 

 箒に命令を出すと、宙にふわりと浮かび上がった。

 

「すごいですね。ラビさんに4つ目のスキルがあったんですか?」

「考えられる話ではあるんだよな。カードに載っている情報が全てではないってことだ」

 

 改めてカードを見る。

 キャラの外見のイラストにアイコンが3つ。

 下部には説明文が入っているが、俺の場合は「ハロウィンです。クッキーをどうぞ」のみだ。

 省略されている情報が他にあっても不思議ではない。

 

「メダルの件といい、まだまだ俺たちの知らない情報が相当あるのは間違いない」

「他のメンバーは気付いているんでしょうか」

「分からない。だからこそ、情報を得るためにも、少しでも早く仲間と合流したいところだ」

 

 石壁の向こう側から遠くの山々を見る。

 

 随分と日が高くなっているので、今の時間はおそらく正午から14時までの間だと推測できる。

 

 日没の正確な時間は分からないが、今のペースだと、日が暮れるまでに下山することは不可能だろう。

 明るいうちに安全地帯を見つけて、そこで夜を明かす必要がある。

 

 そのために急ぐ必要があるのだが、俺の足の遅さが2人の足を引っ張っている状況だ。

 戦闘能力に関してもそうだ。現状、俺は足手まといでしかない。

 

 モリ君とエリちゃんは、最初の部屋に3日閉じ込められていた。

 だが、その間にスキルの研鑽をかなりこなしていたので、いきなり実戦でもそこそこ戦えている。

 

 俺にはその訓練期間がない分だけ不利なのはあるが、それでも求められているのは即戦力だ。

 

 箒に乗って空を飛べるようになれば、その移動速度の遅さを解消できるかもしれない。

 試さない道理はない。

 

「というわけで、箒で空を飛んでみようと思います」

「すごいすごい」

 

 モリ君とエリちゃんに見守られる中、俺は箒にまたがる――

 

 ――膝下まである長いローブのおかげで足が上がらないことに気付いた。

 ローブの裾を掴んで股のあたりまで豪快に持ち上げる。

 

「ちょ、何して――って下にハーフパンツ穿いてたんですね」

 

 エリちゃんの言う通り、俺――ラヴィはローブの下にはブラウスとハーフパンツを着ているので、活発に動き回っても、見えてはいけないものがチラリすることはないのだ。

 

 ローブを腰まで捲っても太ももすら見えない。これは圧倒的に健全。

 謎の光に絶対領域を守ってもらう必要はないのだ。

 

 もしも、ローブの下が全裸だったり下着だけだったりしたならば、おそらく俺の精神は羞恥心に耐えきれず既に死んでいたと思われる。

 なので、そういう意味でも助かっている。

 

 片足を一生懸命上げて箒に跨がり、箒を更に高く飛ばす。

 そしてそのまま前進――

 ――前進させたところ、バランスを崩して箒から落下しそうになる。

 

 落下を阻止するために両腕で箒を強く握るが、残念なことに、ラヴィの握力では体を支えられるだけの筋力はない。

 落ちてたまるかと倒れる方向と逆に腰を捻って耐えようとするが、それがまずかったらしい。

 

 健闘むなしく、俺の体は箒を軸に半回転。腕と足だけで箒に逆さまの体勢でしがみついている状態になる。

 まるで動物園のナマケモノだ。

 

「たすけてー」

 

 重力に逆らえず帽子が床に落ちた。

 

 そして、ラヴィの弱々しい握力と太腿の挟み込みだけでは箒にしがみつく体勢すら維持できなくなり、俺も落ちた。

 

「大丈夫ラビちゃん!」

「肩を地面にぶつけた。あと掌と太腿が痛い」

 

 無理に箒にしがみついていたせいで、箒に接していた掌と太股に変な力がかかってしまったらしい。

 

 掌を見ると真っ赤な筋が付いている。おそらくハーフパンツの下の太腿も赤く腫れているだろう。

 

 ハーフパンツの裾をモリ君から見えないように少し捲ると、太腿に擦れた赤い筋が浮き上がっていた。

 あと、パンツはピンク色だった。やめてほしい。

 

「そんなに箒の上に乗るのって安定しないんですか?」

「だってどこにもつかめる所がない上に座れるところもない単なる棒なんだぞ」

 

 概ね理解した。

 箒は乗り物ではないので、バランスを維持するのは難しくて当然だ。

 

「バランス感覚が難しい。でも、これは自転車と同じで一度コツを掴めばあとは簡単に乗れるようになるかもしれない」

 

 再チャレンジだ。

 

 幼い子供が自転車に乗る時も、一度コツさえ掴めば以降はずっと乗れるのだ。おそらく箒もそれと同じだ。

 

「なら俺が箒を後ろで持ってるから安定したら言ってください。適当なタイミングで手を離すので」

 

 モリ君が箒の後ろ側、エリちゃんが前から支えてくれたので、左右にブレることなく安定して浮かぶことができた。

 

「私は前から支えるので、ゆっくり練習しよう」

「ありがとうモリ君、エリちゃん……いやモリパパ! そしてエリママ! わたしはやるよ! やってやるよ!」

 

 箒に再度飛び乗り飛行チャレンジだ。

 気分は自転車に初チャレンジする幼女だ。

 幼女の気持ちになるですよ。

 

 ゆっくりと箒を前に進める。左右に若干ふらつくが安定している。

 バランスだ、バランス感覚を維持しろ。自転車に乗る感覚だ。

 

「ラビさん、俺はもう手を離してますよ」

「すごい、まっすぐ飛べています。すごいよラビちゃん」

 

 2回目にして早くもコツが掴めてきた。

 これならばあと何回か練習すれば完璧に箒で空を――

 

 ――10メートルほど進んだところで、俺は解除(リリース)と唱えて無言で箒を降りた。

 

「ごめん、箒が食い込んでもう限界です」

 

   ◆ ◆ ◆

 

 鉄棒の上に跨ったことくらいは小学生の時にあるが、あれは鉄棒が固定されて動かないから成立している芸当だ。

 

 冷静に考えると、箒のようなクッション性のない細い棒に全体重をかけて座っているのだ。

 痛くないわけがないし、相当なバランス感覚も要求される。

 

 正直、短時間飛んだだけでも股間が痛い。すごく痛い。

 

 あまりの痛みに股に手を伸ばして擦ろうかと一瞬思うも、さすがにデリケートな場所。

 間違いなくエリちゃんから「変態!セクハラ魔神!」と罵倒が飛んでくるのは予想できる。

 なんとか気力で堪えた。

 

「世界的に有名な魔法学校の映画だと、みんな箒に乗って空を飛んでましたけど、あれは所詮お話ってことなんですかね」

「原作では説明されてるんだけど、箒に乗るときにはクッション魔法が発動してるはず」

 

 エリちゃんがモリ君に対して説明しているのを聞いて俺も驚いた。

 

 さすが世界レベルの魔法使いは違う。

 ちゃんとツッコミどころに対して細かいところまで考えている。角度とか。

 

「ヒールをかけなくて大丈夫ですか? 痛むんですよね」

 

 なるほど、この痛みが消えるならと膝を打つ。

 早速回復魔法をかけてもらうために……

 

「いやダメ。絶対ダメ! カズ君の変態! セクハラ魔神!」

 

 モリ君がヒールをかけてくれるという甘い言葉に一度は負けそうになったが、少し考えてそれは絶対にダメだということに気付いた。

 胸の前で両手で×の文字を作って拒否をする。

 

「なんで俺が急に罵倒されるんですか!」

「だってモリ君のヒールは患部に触れるタイプだろ」

「そうですけど」

「太股や股間に手を当てて『痛むのはここですか? 痛みなんてすぐに消えますよフフフ』とやるのか? 絵面が完全にアウトだよ! エッチなことするんでしょ、エロ同人誌みたいに!」

 

 モリ君もその光景が脳内で再生されたらしく、顔が赤くなっている。

 

 それはそうだ。いくら中身がオッサンの俺とはいえ、身体は完全に少女だ。中学生だ。

 誰がどう見てもセーフな要素が一切ない。これは完全にアウト。

 

「そんな発想が出てくる方が変態ですよ!」

「ちょっと男子ーデリカシー足りないんじゃないのー。ねー」

「ねー」

「おいそこの女子……じゃない、エリスとオッサン!」

 

 しばらく横乗り、体全体で体重分散などの方法を試してみたが、結局、箒に乗ってまともに空を飛ぶことは不可能という結論に落ち着いた。

 第3のスキルといい、何かが間違っているのだろう。

 時間さえあれば、これもトライアンドエラーで試したいところだが、そこまで時間を掛けていられない。

 

 日没も迫っている。

 俺たちは安全圏を求めて先を急いだ。

 

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