領主の家族たちを兵士の詰所へ連れていった。
そこのトップである司令官に事情を説明した後に、生存者の保護を頼む。
2階の部屋から救出した剣を持った少年……領主の長男の証言を受けて、兵士が領主の屋敷に確認に向かった。
やはり領主からの指示待ちで動くことができなかったようだ。
緊急時の権限に何かしらの制限があり、動けないというのは司令官の表情から読み取れた。
領主の館はすぐ近くなのだから確認すれば良いのにと思ったのだが、2時間ほど前に人を送ってはいたらしい。
その人が未だに未帰還ということは……まあそういうことだ。
そして、正式に領主の死亡が正式に確定された。
やはり、玄関にあった首なし死体が領主だったようだ。
家族と使用人の危機ということで自ら剣を抜いて玄関前で敵を迎え撃ったのだろう。
領主が玄関で時間を稼いだおかげで、階段にバリケードを作る時間が確保できた。
結果として子供たち3人と使用人2人が救われたのだから、無駄ではなかったと信じたい。
ホールで亡くなっていたのは領主夫人と末弟。
2階への避難が遅れた幼い子供を夫人が単身助けに向かったところをやられてしまったようだ。
領主や使用人たちの遺体も、兵士や俺たちのような一般人が埋葬や葬儀などはできないらしい。
なので、とりあえず屋外にあった遺体は野生動物に荒らされないように屋内へ運び込まれた。
屋敷は火事場泥棒に荒らされないように封鎖だけが行われた。
領主の家族たちは情勢が落ち着くまでこの詰所で保護されることになった。
簡略ではあるが、領主の息子への権限引継ぎの手続きが行われ、更に息子から命令が出たことで、ようやく兵士が動き出した。
色々なルールが多すぎてかなり面倒なことになっていたのは分かる。
もし、これで領主の息子を助けられなかったらどうなっていたのやら。
ここまでが領主の屋敷襲撃事件の顛末だ。
そして、これからが、町を解放するための本当の作戦だ。
「見ての通り、私は鳥の使い魔が空から得た町の情報を知ることができます」
まずはデモンストレーションだ。
兵士詰所にいた、司令官に、空からリアルタイムで得られる情報の有用性を説明する。
「町のどこに人が集まっているか、どこでボクラグが動いているかが分かりますので、活用していただけると幸いです」
「君が全身光っているのは、その魔術の影響かね?」
「まあ、そういうことです」
ヒュドラを倒した時に使った魔女の呪いの影響で、俺の全身に浮かんだ紋様はまだ光ったままだ。
多少怪しくはあるが、今は信用してもらうしかない。
「彼女の能力については僕たちが保証します。領主の屋敷の異変について知ることができたのも、その能力のおかげです」
「そのようだな。我々が町のいたるところにいる人々の波に阻まれて移動できないというのに、君たちは迷わず領主の屋敷へたどり着けている。認めざるを得ない」
俺だけだと能力を信用してもらえなかったかもしれないが、フォルテが説明してくれて助かった。
一応は、フォルテをリーダーとする冒険者集団が、領主の屋敷にいたボクラグを倒して、家族を救出したということにしている。
俺たちはその仲間たちだ。
第一印象を決めるのは、やはり見た目だ。
なので、いかにも誠実かつ、実績を上げたフォルテが前に出てくれたことが助かった。
当初はモリ君にこの役目を頼む予定だったが、フォルテがいたおかげで、
その点でも感謝しきれない。
「人の流れが多いところには、避難、誘導のための兵士を向かわせる。町のどこに人が集まっているか教えてほしい」
司令官が机の上に地図を広げた。
俺が空から確認して、人が多く集まっている場所と、そこに行くまでの渋滞回避ルートを指し示していく。
「まず最優先は城門なのだな」
「はい。城門を塞いでいた事故車両……2台の馬車は我々の仲間が撤去しました。ですが、素人の集まりですので、避難誘導はうまくいっていません」
「では城門へ何人か送ろう。他には?」
「大通りの屋根のない競技場のような施設に多くの観光客が逃げ込んでいるようです。何とか中へ入ろうとしているボクラグ数体がいます」
「祭りのメイン会場だな。そこにも誘導係を送った方が良さそうだ」
改めて確認していくとボクラグの総数自体はかなり少ない。
今までは相当の数のボクラグが町のあちこちで暴れていると思っていた。
町に溢れかえる観光客が、その混乱に拍車をかけていたのだろう。
だが、冷静になって空から動きを追うと、同じ集団が町に張り巡らされた水路を移動して各所で暴れているだけである。
つまり、奴らのかく乱に惑わされず着実に位置を特定していけば大した敵ではない。
今からやることはテロスの町で戦ったヘルハウンドの時と何ら変わらない。
こちらの最大の武器である「情報」を有効活用するだけだ。
「僕たちも力になりたいのですが」
フォルテが司令官に尋ねた。
「君たちは軍属ではないので私から直接命令はできない。ただし、自主的に動いてもらえるのならば話は別だ」
司令官はそう答えた。
軍隊とはそういうものなので仕方ないとは分かるが、制約が多すぎるというのも困りものだ。
「そういうことならば、ラヴィさんが指示を出してくれ。僕たちはそのように動こう」
「ありがとうございます。では、フォルテさんたちにとっては二度手間になるかもしれませんが、町の水門へ行っていただけないでしょうか?」
水門を制御するためのハンドルは司令官に渡した。
しばらくは水門は閉まったままなので、ボクラグは援軍を町の中へ送りにくい状況にはなっているが、完全なシャットアウトはできていない。
ボクラグは水陸両用なので、水門の手前で一度陸に上がり、陸路から町の中に入る方法を取れるからだ。
「ボクラグ数体が、また水門近くに集まっています。ハンドルがなくとも、何か代わりに使えそうなものを見つけられたら、水門を開放されるでしょう」
「またか! あいつら懲りねぇな」
マルスが素直な感想を吐露した。
「水門周辺の敵を倒したら、次は城壁沿いに城門の方へ回り込もうとしている連中を倒していただけると助かります。今度は出入口周辺の人が狙われかねないので」
「では、兵士5人を水門の防衛へ向かわせよう。君たちは遊撃部隊として動いていただけるとありがたい」
「承知しました。僕たちは、水門周辺の防衛へ向かいます」
フォルテたちが司令官に答えた。
これで援軍については大丈夫だろう。
大変だろうが、彼らの奮戦に期待したい。
「でも、連絡はどうしたら?」
「私が使い魔を定期的に飛ばします。手を振っていただけたら紙で書いた状況報告を届けます」
「あの、私は……」
その時、今まで無言で話を聞いていたガトリング少女が言った。
すっかり失念していた。
「えっと……そう言えばまだ名前を聞いていませんでしたね」
「アデレイド」
少女……アデレイドはシンプルに名乗った。
「はい、アデレイドさんですね。覚えました。今は1人で旅をしているってわけじゃないですよね」
「ええ、仲間は宿にいる」
それを聞くと、少しだけ羨ましい。
俺たちは結局宿にありつけずに野宿の予定だった。
最近はご無沙汰のふかふかのベッドで寝たい。
いや、今はベッドの話はいい。
仲間も含めてゆっくりと話をしたいところだが、まずはこの状況が落ち着いてからだ。
「一度仲間と合流した後に、城門にいる私の仲間と合流いただけないでしょうか? 住民の避難など人手が足りていないようですので」
「戦闘はどうなの? 私たちはそれなりに戦えるけど」
「ボクラグは単体の戦闘力はさほどではありません。今は戦力よりも、いかに住民の避難誘導を行うかが重要です」
「なるほど、戦いより人助けね……それは私の方針にも合っている」
そう言ってもらえると助かる。
アデレイドが友好的で、無闇に戦いたがる人物ではなくてよかった。
同じ日本人同士なのだから、助け合いの心でいきたいところだ。
アデレイドは近くの屋根へよじ登ろうとしていた。
最初に鳥の視点で空から見た時と同じく、路地を塞いでいる人混みを避けて、屋根沿いに宿へ戻るためだろう。
「そうだ、あなたの名前は?」
アデレイドが尋ねてきた時、ここで初めて俺がまだ自己紹介をしていなかったことに気づいた。
うかつだった。色々あって忘れていた。
「ラヴィと申します。見ての通り魔女です」
「あなたが?」
俺の名前を聞いた少女は一瞬、何やら驚いたような顔をした。
頭の上から足の先までなめまわすような視線を送った後に、再度「あなたが?」と言った。
その後に少しだけ笑顔を見せた。
誰かから俺のことを聞いていたのだろうか?
どこか別のルートでサンディエゴを目指しているハセベさんたちに会ったのか?
それともマサトランやテロスの町を通ったのかもしれない。
まあ、そういった話は後回しだ。
まずは、お互いに、事件解決を優先したい。
町の状況が落ち着けば、ゆっくり話す時間もあるだろう。
「ラヴィさん、また会いましょう」
「はい。私もまだ話したいことは色々ありますが、まずはこの町を解放しましょう」
「ええ。助けられる命は助けないと」
アデレイドは建物の屋根の上へ器用によじ登ると、そのまま屋根伝いに走っていった。
正義感だけでここまで行動できるあたり、決して悪い人間ではなさそうだ。
兵士たちも司令官から指示を受けて武器を手に指示された場所へと向かっていく。
「さて、水路を移動するボクラグたちをどう撃破していくかだが」
どうやれば効率良く倒せるかを考えていると、詰所を出ていった兵士の1人がおかしな行動を取っていることに気づいた。
司令官の指示通りに移動する兵士と違い、1人だけ周囲の様子をキョロキョロと何かに怯えるような動きをしている。
他の兵士と隊を組むわけでもなく、1人だけで人通りの少ない方へと駆けだしていく。
「司令官、1人だけ変な動きをしている兵士を見たのですが、何か特別な命令を出されましたか?」
念のために今の男の挙動を説明した上で確認を行う。
「いや、今は5人で1チームを組ませて行動させている。1人だけで動く兵士はいないはずだが」
俺の話を聞いた司令官は怪訝な顔をした。
何か個別の命令を出したというわけではないようだ。
「その兵士の特徴は?」
「空から見ているので、あまり顔などは見えないのですが……今はこの詰所を離れるようにして、北方向に歩いています」
「確認させよう。誰がいなくなったかはすぐに分かるはずだ」
司令官が眉をしかめて、口を一文字に結んだ。
町が襲撃されていて、1人でも人手が必要な今の状況で、独断行動を取る兵士に対して、違和感を持ったようだ。
「特定はするとして、その兵士がどこに向かおうとしているのか追跡できるかね?」
「はい、任せてください」
2羽以上の使い魔を視覚共有した上で、バラバラに動かすのは、俺の体力と精神的な負荷が大きい。
なるべくならやりたくなかったが、仕方がない。
手元で待機させていた4羽の鳥のうち、1羽を不審な兵士の追跡のために空へ放った。
「お前たちもついていけ。いざとなれば戦ってもらう」
残り3羽の鳥には、追跡のために放った鳥を自主的に追跡させることにした。
使い魔モードではないので、視覚の共有はできない。
自動操縦なので、あまり複雑な動きもさせられないが、いざとなれば敵に突撃させたり
水門の制圧。
領主の館への攻撃。
人々の分断。
ボクラグの陰に人間が動いている可能性を考えていたが、もしかすると大当たりなのかもしれない。
兵士は、誰かが尾行していないかを警戒して、何度も振り返ったり、突然道を曲がったりとあからさまに怪しい動きを見せ続けている。
だが、さすがに、上空を鳥が尾行していることまでは気づいていないようだ。
尾行を続けていると、副官らしい人が部屋に入ってきて、司令官に耳打ちをした。
「その怪しい兵士の外見を確認したのだが、よろしいかね?」
「はい、その兵士の特徴は……」
鳥の視覚から得られた情報を伝えると、司令官と、横に立っていた副官が何度か頷いた。
「嘘はないようだ」
どうやら俺の話を聞いても半信半疑だったようだ。
俺が出した男の外見が一致していたことで、ようやく情報の信ぴょう性を認めてくれたらしい。
「今はどこに向かっている?」
「そうですね」
兵士の動きを見ていると、あからさまな証拠を見つけた。
町の角に立っていた、帽子を目深にかぶった男に接触して、何かの書類らしきものを渡している。
その後に、兵士は踵を返して、来た道を戻り始めた。
帽子を被った男の方は、逆方向へ歩いていく。
早速司令官に伝える。
「その兵士は、ある人物の推薦で採用したのだが、少し前から不審な行動が目立つので、内部で監査を進めていた」
「なるほど。帽子の男が向かう方向に、かなり豪勢で大きな屋敷がありますが、関係ありますかね?」
俺が地図の一点を指すと、司令官は無言で頷いた。
「それでどうします? この帽子の男について」
「そうだな……」
◆ ◆ ◆
帽子の男を追ってやってきた町外れにある豪邸では、屋根まで聞こえるほどの大きな口論が聞こえてきた。
鳥の目で窓から中を見ると、帽子の男とフードを被った男の姿が見えた。
そして、2人のやり取りを黙って聞いている老人が1人。
何も発言していないが、明らかに不満気な表情を見せている。
「おいどうなっている! 話が違うぞ!」
「それを言いたいのはこちらだ。なんで兵士や冒険者どもが自由に動き回っている! 動きを封じるはずだろう」
「ボクラグどもの動きが悪いのはお前のせいだろう! それに虎の子のヒュドラはどうした?」
「呼び掛けているが、何故か応じない。倒されたとは思えないが」
「ヒュドラなんて最初からいなかったんだろう!」
なぜ悪党は今更になって分かりやすく全部セリフで悪事を説明してくれるのだろうか?
今の口論の内容を信じるならば、下の部屋にいる連中が、ボクラグを招き入れた首謀者ということになる。
動機などは不明だが、間違いなく悪人と断言してもいい。
こいつらが町へボクラグを呼び込んだせいで、祭りは台無しになるし、負傷者や死者も出ている。
箒で空を飛んで、豪邸の屋根の上で待ち伏せをした結果がこれだ。
どのタイミングで突撃して、どうやって話を聞き出そうか思案していたのだが、全部話してくれたのはありがたい。
ヒュドラなど最初からいなかったという話以外に一切同意できる点などない。
繰り返しになるがあえてもう一度だ。
「ヒュドラなどいなかった」
まだ口論は続いているが、どうも、事の始まりは、老人が2人に作戦失敗の理由を求めたことのようだ。
そこから、責任のなすりつけ合いが始まったというところか。
この豪邸の持ち主は、家のサイズから考えて、町ではそれなりの権力と資金を持っているのだろう。
それだけに、祭りや町を台無しにする今回の凶行の動機が理解できない。
地道な証拠集めなどを行えばそこらの動機についても解明できるかもしれない。
だが、それにはかなりの手間も時間もかかりそうだし、悪党の動機など、どうせろくでもないものだろう。
まあ、残念なことに、この場所は司令官にはしっかり伝えて貰った。
あとは彼らに任せよう。
俺は司令官から預かった発煙筒を屋根の上で焚き始めた。
モクモクと煙が立ち上るのを黙って見守っていると、副官が引き連れた兵士たちが、次々と屋敷の中へ踏み込んでいくのが屋根の上から見えた。
さらにしばらく待つと、下の部屋から「私を誰だと思っている」と老人が叫んでいる声が聞こえてきたが、それは俺の知った話ではない。
マジで誰だよこのジジイ。
◆ ◆ ◆
豪邸から詰所に戻る前に、カーターとレルム君、ドロシーちゃんの状況を確認することにした。
拠点にした建物の屋根の上に戻ると、カーターの指示でレルム君が電撃を飛ばして敵を倒しているところだった。
最初はカーターとレルム君は険悪だったのに、俺が不在のわずかな時間で打ち解けていた。
カーターの指示を聞きながら、電撃を飛ばして、拠点の防衛をしっかり行ってくれていたようだ。
やはり話し合いは大切だ。
人はわだかまりを捨てて分かり合えるのだ。多分。
「師匠、お帰りなさい」
レルム君が近寄ってきたので、頭を撫でてやると腕に顔を寄せてきた。
君は犬か。
クッキーを取り出して渡すと、美味しそうに食べた。
「そっちの首尾は?」
カーターに尋ねられたので、今の状況を簡単に説明する。
領主は手遅れだったが兵士たちは動き始めて町の誘導を始めたこと。
水門へはフォルテたちが向かっている。
黒幕らしい奴のところへ兵士たちが踏み込んだことなどだ。
「こちらも、ひと段落ってところだな。近寄ってくる敵も今倒したやつで打ち止めだ」
「ボクラグは撤退に入った感じか?」
「ああ。屋根の上から見てると分かるが、道を塞いでいた観光客や住民の誘導が進んでいる。そのおかげか兵士の動きもだんだんと良くなっている」
カーターの言うとおり、人混みは時間と共に緩和されつつあるようだ。
それに比例するように、地上を歩いているボクラグの姿はほぼ見かけなくなってきた。
たまに見つけても、小走りで移動しては水路に飛び込むという奇行を繰り返している。
そして、一度水の中へ潜られると暗いのも相まってほぼ追跡できなくなる。
空から見ている俺ですらこれなのだから、実際に走って追い回している兵士たちに追跡はなおさら無理だろう。
兵士たちも、やはり水路にボクラグが潜んで移動しているのは分かっているようではある。
松明を掲げて水路を覗き込んでいるのだが、成果は上がっていなさそうだ。
どうやら、ボクラグも、作戦が失敗に終わり、これ以上の交戦は無意味だと理解したのだろう。
「それでドロシーちゃんは?」
「電池が切れたので今は寝てる。起こすか?」
「いやいい。兵士たちが動き始めた段階で、俺たちの仕事は終わりだ。一区切りついたら、また戻ってくる」
「ああ、ガキどもの面倒はみてるから、そっちはそっちで頑張れ」
カーターも仕事をしてくれて本当に助かる。
残る仕事は少ない。
最後の締めを終わらせに、詰所へ戻ろう。
◆ ◆ ◆
詰所に戻った俺は、司令官に鳥の視点で確認できた情報をありのままに伝えた。
「ボクラグは水路に潜ったまま地上には出てこなくなりました。水中は暗くて確認できないので、まだ同じ場所に潜んでいるのか、それとも撤退を始めたのかは分かりません」
「相手が人間ならば心理を読めるが、野生動物と大差ない相手だと困るな」
ここで司令官は町の水路地図を広げた。
ランタンの薄明りで確認する。
「水門とは別に、水を逃がすための排水路があるのだが、そこをボクラグどもの逃走経路としてあえて開けている」
司令官が指した先には湖に通じる小さな水路があるようだった。
船も通ることができる取水門よりははるかに小さいが、水路は湖に面している。
「普段は、雨がよく降ったときの水量調整用として使用している。かなり狭いので小さいボートでも通行は難しい」
「でも水を泳ぎ回ることができるボクラグならば通過できると」
司令官は頷いた。
つまりここの状況を確認しろということだろう。
説明された場所へ鳥の使い魔を向かわせると、その近くにはフォルテ、マルス、スーリアの3人がいた。
暗い闇夜の中で光を放つ俺の使い魔が目立つのか、すぐにこちらに気づいたようだ。
何やらジェスチャーで訴えている。
使い魔は音声を伝えないので言葉は伝わらないが、今のように身振り手振りで伝えてもらえると意味は分かる。
水路からボクラグが飛び出て、湖に逃げていったという内容だ。
「その水路のところに仲間がいます。ボクラグはそこから逃走を始めているようですね」
司令官にそう説明をするやいなや、1体のボクラグがウォータースライダーのように勢いよく水路から飛び出してきて、湖の中へと消えていった。
フォルテたちがその様子を指差して、鳥の使い魔に訴えている。
「たった今、逃走しているボクラグを目視で確認いたしました」
「では、今日のところは勝利ということでよさそうだな」
司令官からのお墨付きだ。
本日のお仕事はこれで終わりで良いようだ。
「我々は、これ以上警戒を続けても体力を消耗するだけということで、休息に入ります。何日かはこの町に滞在予定ですので、何かあれば連絡をください」
「承知した。本日協力いただいた件については報酬を出すよう手続きを行っておく。後日取りに来られたし」
「ご厚意痛み入ります。それでは私たちはこれにて」
とりあえず一段落だ。
仲間にも作戦の終了を伝えに行こう。