ゼンレスゾーンゼロ 〜隻腕の剣士〜   作:リュオネイル

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序章 〜商機×怪奇×仁義〜
第1話 始まりは舞い込んだ仕事から


新エリー都市内ヤヌス区六分街の街角にある、ビデオ屋『Random Play』の店内では、一人の青年が小型ロボット──ボンプと一緒に店番をしていた。

 

「今日も平和でござるなぁ……」

「ンナナ……(そうだね〜……)」

 

 現代風な新エリー都では珍しい、和装で短身痩躯の優男風の青年で髪は太陽のような橙の髪に右目に縦線の大きな傷。

そして右腕は火傷の跡を隠すように包帯でぐるぐる巻きにしている。

 青年とボンプはのんびりとした風でカウンターに立っており、平和で退屈な日常を謳歌────。

 

(つるぎ)!『パエトーン』はいるかしら!?」

 

 していた所に、店の扉から桃色ツインテールの女性が肩で息をしながら駆け込んできた。

 

「……ニコ殿。他に客がいないとはいえ、店内ではお二方の名前で呼んでほしいのでござるが……」

「分かってるわよ!他に客がいないのを確認した上で呼んでるんだから!それより、いるの!?いないの!?」

「お二方なら、奥の工房でテレビか依頼の確認でもしていると思うでござるよ」

「わかったわ!」

 

 剱と呼ばれた青年がカウンター横の扉に視線を向けながら言うとニコと呼ばれた女性は、一目散にその扉に入っていった。

 

「ンナナ?(ニコ、アキラたちに何の用なのかな?)」

「……恐らくだが、穏やかな内容でないことは確かでござるな」

 

 剱の隣りにいたボンプは扉の方を見ながら剱に問いかける。対する剣はというと、ニコの尋常ではない様子に相当厄介なことが起きると予想していた。

 そんな事を考えていると、ニコが入ってきた扉から三人の男女が出てきた。

 一人は20代前後の青年で、灰色のショートカットヘアーに剱とはまた違う優男風の青年。もう一人は男性と同じ20代前半程度の少女で、青と薄紫のショートカットヘアーで元気で明るい風の少女だ。そしてもう一人はニコの三人だ。

 

「好きなだけからかってくれていいから、この危機を乗り越えるために力を貸して!……お願い、伝説のプロキシ──パエトーン!」

「おや、アキラ殿にリン殿。ニコ殿からの話はどうでござる?」

「剱、どうやら仕事の時間だよ」

 

 アキラと呼ばれた青年が店の扉の前に立ち外の様子を眺め、リンと呼ばれた少女はその隣に立つ。

 

「「それで、今度は何をやらかしたの、ニコ?」」

 

 それはもう、息ぴったりに聞いてきた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「うん、確認したところ、店の外に不審者はいないみたいだ」

 

 工房に戻ったアキラは扉の外を確認し設置してある防犯カメラも確認して言った。

 

「安心して!後はつけられてないし、目もつけられてない。十四分街からやっとの思いで抜け出したのは、あたし一人よ!」

「それならいいけど」

 

 アキラが何故ここまで警戒しているのかと言えば……。

 

「もう、分かってるわよ!市政選挙が近いから、最近は特にピリついているんでしょ?プロキシ捜査の強化で、ホットラインまでできちゃったし、それに……」

「それで、ニコ殿?拙者たちに何の用できたのでござる?」

「そうだよニコ。ずいぶん慌ててるみたいだけど、今回はどの債権者に追われてるの?もしかして、()()剱の力を借りに来たの?」

「追われてもないし、今回は剱だけじゃなくてパエトーンたちの力も借りに来たの!……治安局とテレビエリーの暴れん坊記者に、してやられただけよ!」

「あぁ、あのやけに口の悪い記者殿のことでござるか……」

 

 ニコの言葉に今朝聞いたニュースの内容を脳裏に思い出す剱。

 それからニコは赤牙組との衝突を簡単に説明した。

 

「……それで、ビリーとアンビーがホロウに落ちたの。二人を助けて、依頼人から頼まれたモノを取り戻さないと!本当に緊急事態なの、あたしを助けてくれる人なんて、あんたたちしかいないのよ!」

「それなら、ホロウ調査協会に救援を申請したらどうだい?」

 

 アキラの提案にニコは顔を少し顰める。

 

「あたし……今はまだ協会に目をつけられるわけにはいかないの。ホロウレイダーをやったってバレたら、大変なことになるの。それに、あの強欲な連中を満足させるには、全財産の大半を投げ打っても足りないわ!うちの従業員を放っておくわけにはいかないでしょ?」

「従業員を放っておく……か。ニコならやりかねない気もするけど」

「いやいや、ニコ殿もそこまで薄情者では……」

「そうよ!あたしは収益の中から「社員事故救援予算」として大金を使ってるんだから!と!に!か!く!あたしの依頼は簡単よ!うちの人間と、あたしの依頼のモノをホロウから無事に出してくれればいいの!典型的な「プロキシ」の仕事よ、引き受けてくれるでしょ?「パエトーン」?この依頼が終わったら、これまでのツケを纏めて払うから!」

「よし、取引成立!」

 

 ニコの提案にリンは二つ返事に返す。

 

「まだダメ?じゃあ追加で……あれ?オッケーなの?」

「……残念、追加の報酬を聞いてから引き受けるべきだったね」

「アハハ……」

 

 リンの返事にニコは交渉を粘ろうとしたが、まさかの了承に戸惑い、アキラは少し残念そうにボヤいた。そんなアキラに剱は苦笑するしかなかった。

 

「よし!善は急げよ、早く出発しましょ!あたしは先にホロウの中で待って──」

「その前に、お主はまず怪我の治療を優先するでござるよ」

「うっ……!気づいてたのね……」

「まぁ、最初に店に訪れたときに違和感があったので……」

「ニコ、怪我してるの?そういうことなら、ここでしばらく休んでて」

「でも!……うん……」

「うちの妹の言うことを聞くんだ」

「それに、お主にはイアスと拙者をホロウの近くに連れてってほしいのでござるよ」

「えぇ、分かったわ!まかせて!」

「リンは先に、ニコの傷の手当てをしてくれないか?ホロウへの「潜入」に向けて、僕が代わりにH.D.Dシステムを調整しておくよ」

「では、拙者は身支度とイアスの準備をしてくるでござる」

「じゃあ……仕事を始めるか!」

 

 アキラの言葉に、各自はそれぞれの役目へと向かっていった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 それから1時間ほどして、ニコの運転でホロウの入口まで連れてきてもらった「01」と書かれたオレンジのスカーフを巻いたボンプ──イアスと剱。剱はイアスを抱えて車を降りる。

 

『どう、聞こえるかなニコ?イアスと剱を頼んだよ』

 

 その時、ニコの電話からアキラの声が聞こえる。

 

「オー・ケー!……剱、ビリーとアンビーのこと、頼んだわよ」

「任せるでござるよ」

 

 抱えたイアスを降ろすとイアスはホロウへと近づき、腰から特製の煙幕弾を取り出し(本当にどこにしまってたんだ……?)、ホロウへ入っていく。剱もそれに続くようにホロウへと入っていった。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 ホロウの中に入ったイアスと剱はボンプ用の作業台でホロウデータを調整し、付近に空間の裂け目があることを発見する。

 

『う~ん……裂け目の向こう側のデータにわずかな変動があるね……これって、人間の活動シグナルかな?』

「恐らくビリー殿たちの反応でござろう。十四分街の住民の避難は難航しているが、幸いにもホロウに巻き込まれたという話は今のところ無いでござるし」

『その可能性はあるね!それじゃあ、裂け目に行って確認しよ!』

 

 そう言ってイアス──リンと感覚を共有している──の案内に従い、裂け目を通っていく。

 

『あ!あれ、ビリーにアンビーじゃない!?』

 

 イアスが指し示す方向に剱が目を向けると、肌黒い身体中に鉱石を纏い、片腕が欠け、片腕が鋭利な剣のような形をしたエーテリアス──ティルヴィングと踏切板を武器にしたエーテリアス──サテュロスに追い立てられている赤いジャケットを羽織った機械人──ビリーと白髪にヘッドフォン、蓄電器のようなものを背負いナタを装備した少女──アンビーの姿があった。

 

「む……どうやら随分と追い込まれている様子……プロキシ殿、煙幕を張って妨害を。その隙に拙者が……」

『オッケー!それじゃあ……それっ』

 

 イアスは煙幕弾を数個ビリーたちの前に転がるようにして投げ、爆発して煙がビリー達とエーテリアス両者を包みこんだ。

 

「…………」

「ゲホッゲホッ……!ちょっ、俺じゃねぇって!?」

「二人とも、大丈夫でござるか」

 

 いきなり煙幕が発生し、エーテリアス達は唸り、アンビーは相方が空気を読まずに粗相をしたと思い見やり、ビリーは自分ではないと主張する。その二人の後ろから剱が声を掛ける。

 

「ん……?おぉ、剱じゃねぇか!」

「貴方がいるってことは……」

「あぁ、お主らの社長に頼まれてな。それより、積もる話は後にするでござる」

 

 三人が話しているうちに、煙幕が徐々に晴れていって視界に捉えたエーテリアス達が咆哮を上げる。

 

「そうだな!それじゃ、コイツらを倒して……」

「いや、お主らは下がっているでござる」

「何故?私たちはまだ戦えるわ」

「お主らは長い間ホロウにいたでござろう?アンビー殿は良いかもしれぬが、ビリー殿は……」

「……そうね、これ以上戦えばビリーの財布が危ないわね」

「剱、アンビー……俺をまるで弾代をケチってる風に言うの止めてくれねぇか……?」

 

 二人の悲しそうな目で見られているビリーは小さく零した。そんなビリーを見て剱は苦笑する。

 

「いや、すまぬ。拙者は良かれと思って言ったのだが……まぁそれより、二人は後ろの車両にいるでござる。プロキシ殿もそこにいるでござる」

 

 剱の言葉に二人は後ろを向く。後ろの車両の影から、イアスが手を振っていた。

 

「店長まで来てたのか!」

「プロキシ先生までいるのね……貴方がいるから、もしかしてと思ったけど」

「そういうわけだから、お主たちは下がっているでござる」

「そういうことなら……頼んだぜ、剱!」

「お願い、剱」

 

 二人はそう言って後ろの車両に向かっていく。

 

「「Gugaaaaa!」」

「おっと、お主らの相手は拙者がしよう」

 

 二人を逃さまいとエーテリアス達が咆哮を上げて走ってくるが、剱が刀を抜き立ち塞がる。それを見たエーテリアス達は一瞬立ち止まるが、咆哮を上げて剱に一斉に襲いかかる。

 まず最初に仕掛けたのはティルヴィングで、剣腕を振り上げて斬りかかり剱は半身をずらして避け、そこにサテュロスが踏み切り板を振り下ろす。剱は後ろに避け、踏み切り板を踏む。サテュロスは剱ごと振り上げようとするが、その隙に剱がサテュロスのコアを斬る。コアを深く斬られたサテュロスは力なく倒れ伏し、そのまま動かなくなった。

 

「Guooooo!」

「うぉぉぉっ!」

 

 ティルヴィングは剱の背後から斬りかかり、剱は横に回転しながら避け、すれ違いざまにコアを斬る。ティルヴィングはサテュロス同様に倒れ、二度と動かなかった。

 

「……終わったでござるよ」

『お疲れ〜、剱!』

「ヒュー!さすが剱、早かったし無駄な動きも無かったな!」

「えぇ……踊ってるように見えた……」

 

 動かなくなったのを確認した剱は、イアスたちのいる車両に歩き、労いの言葉をかけるイアスたち。

 

「……あの上級エーテリアスの声は、もう聞こえない」

「よ、良かった……走りすぎて足の油圧ロッドが折れるかと思ったぜ!」

「適度な休憩を取ることを提案する。いい?プロキシ先生」

『うん、二人は休んでて。見張りは私と剱でするから』

「あぁ、少しでも体力を回復するでござる」

「ありがとう……プロキシ先生、剱」

 

 見張りをする二人に礼を言い、その場に座り込んで休憩するビリーとアンビー。

 

「ふぅ……さっきは危なかったぜ。まさかあの赤牙組のおっさんが、あんなふうに異化しちまうとは。店長たちが俺たちを、あそこから連れ出してくれて助かったぜ。さすが"パエトーン"とその用心棒だな!相変わらず頼もしいぜ!」

『えっへへ〜!なんの、プロキシの役目を果たしたまでだよ!』

「そうでござる。ホロウで迷った者を出口へ導く……合法ではないとはいえ、これも立派な役目でござる」

「ニコのことだから、節約のために自力で対処するよう言ってくるかと思った。それがまさか、かの有名な"パエトーン"を探してくるなんて。プロキシ先生たちが駆け付けてくれなかったら、私たちはエーテリアスの領地から脱出できなかったはず。ありがとう」

 

 アンビーが改めて礼を言い、ビリーがふとイアスを見て疑問を口にした。

 

「ところでさ、最初に協力した時から聞きたかったんだけど、店長の店の設備って、ボンプと感覚を同期できる上に、ホロウ内部ともリアルタイムで通信できるんだろ?それって、治安局やホロウ調査協会より、よっぽどスゲェじゃねぇか!そんな切り札があるなら、なんで調査協会に加入しねぇんだ?それならもっと贅沢な暮らしができるのによ!俺らみたいなホロウレイダーと働いてたら、メリットよりリスクのほうが高いだろ?」

『あっはは、それは……』

 

 ビリーの質問に言いにくそうに苦笑するイアス。

 

「ビリー殿、そういうのは詮索しないのがマナーでござるよ」

「うぇっ!?そ、それはそうなんだけどよぉ……でも、実際そうじゃねぇか?」

「……店長殿には、店長殿なりに理由があるんでござる。……行き倒れで店の前で倒れていた、正体不明の拙者のように」

「あ〜……いや、そうだな。悪ぃ店長」

『う、ううん!大丈夫だよ!』

 

 と、気まずい雰囲気になっていたその時だった。

 

────Guoooooaaaaa!!!

 

 どこからか雄叫びが聞こえてきた。

 

「エーテリアスの声……それに近いわ」

「はやくね?横になったばっかだってのに!」

「すぐに撤退しなければならんでござるな」

「でもまぁ、ビリーが望むなら、ここで永遠に眠るのも良いかもね。来年のスターライトナイトの新作のベルトをあなたの墓前に供えてあげる」

「そういう事真顔で言うなよ、本気か冗談か分かんなくなるだろ!?」

「まぁまぁ……アンビー殿も、冗談で言ってるだけで……」

「…………」

「アンビー?なんで目を逸らすんだ?なぁ?なぁおい!?」

『はいはい、早く移動しよう。ちゃんとついてきてね』

「道中での戦闘は任せて貰うでござる」

「ありがとう。でも、私たちも戦うわ」

「あぁ!剱ばかりに戦わせるのも、悪いからな!」

 

 そうしてイアスの案内の下、三人はホロウの出口へと向かっていった。

 道中、エーテリアスの群れに襲われるも、アンビーたち三人の活躍によって滞りなく進んでいった。

 

「店長!次はどの方向に行けば良いんだ?」

『全速力で直進!』

「了解、全速力で直進!……ん?待てよ、直進だと!?この先は壁だぜ!?破れってか?壁をぶち破れってことなのか!?今の火力じゃ流石にキツイし……」

『剱に斬ってもらう?』

「……あのなぁ店長。相手が木とかならともかく、コンクリだぜ?いくらなんでも無理じゃ……」

「う~む……」

「……え?嘘だよな?剱、流石に嘘だよな!?本当にこの壁を斬ろうってわけじゃねぇよな!?なぁ!?」

 

 イアスが冗談交じりに言い、ビリーが呆れていると剱は考え込んでいて、本当に斬ろうとしているのかとビリーは慄いていた。するとそこに、イアスから別の声が聞こえてきた。

 

『心配しないで。リンの言う通りにすれば大丈夫だから』

「この声は……おぉ!もう一人の"パエトーン"だ!」

『遅いよお兄ちゃん。やっとログイン出来たんだね』

『悪かったよ。さっきまで、ホロウの出口の安定性を検証していたんだ。ビリー、アンビー、剱、聞こえているかい?とにかく、リンの言った進路については間違っていない。知っての通り、ホロウの中は秩序のない混沌、つまり──』

「──生への道が死に見えたり、死への道が地獄につながってたりする」

「アンビー、貴重な常識をシェアしてくれてありがとな……」

『それと、ホロウを出てからの脱出経路も手配してある、僕たちを信じて。リンも、そろそろ感覚同期を解除してもいいよ』

『それじゃ店で落ち合おう、グッドラック!』

 

 その言葉を最後に、イアスがシン……と静かになった。どうやら感覚同期を解除したのだろう。

 

「静かになった……普通のボンプに戻ってる」

「なんで肝心な時に"憑依"を解くんだよ!?」

「二人とも、直進するから衝撃に備えるでござる」

「えぇ、分かったわ」

「ぶつかるぶつかるぶつかるぅぅ!?」

 

 アンビーとビリー、そしてイアスを抱えた剱が()()()()壁に向かって走り出し、奇妙な開放感と共に、三人とボンプは壁をすり抜ける。

 

「エーテルの圧迫感が消えた……」

「やっと……出てこれたんだな、俺たち!よっしゃ!」

 

 ホロウから無事に脱出できた事に、ビリーとアンビーは喜んでいた。するとそこに邪兎屋の社用車──"玉手箱"が走ってきた。

 

「時間も場所も、全部"パエトーン"の予想通りね……ほら、三人とも乗って!」

「ニコの親分!」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 ホロウ脱出から一時間ほどして、ビデオ屋の駐車場に到着し、それとほぼ同時に裏口からアキラたちが出てきた。

 

「来たわね!ナイスタイミング!」

「ニコ、戻ってくるのが早すぎない?まさか、また信号を無視したんじゃないよね?」

「そんなこと無いわよ、普通の青信号と、R値255の青を通過しただけだから!あっ、それから……来る途中に確認したけど、尾行はされてなかったわよ!」

「なぁアンビー、R値255の青ってなんだ?」

「貴方のジャケットと同じ色」

「おろ〜……」

 

 よほど荒い運転だったのか、車から降りてきた剱は目を回していた。

 

「ニコ、従業員たちを助けてあげたんだ、そろそろツケを払ってもらえないか?」

「待って!まだ終わってないでしょ?あたしの依頼は、「人とモノ、どちらもホロウから出すこと」。まだ半分しか終わってないじゃん!」

「安心して、ニコ。今のはただの冗談だって。ちゃ~んと覚えてるよ」

「もう、"パエトーン"は頼りになるって信じてたわ!」

 

 それから、もう半分の「モノ」の情報について、アンビーは報告した。

 

「撤退前に目撃した情報だと、対象の金庫は危険度の高いエーテリアスの活動範囲内にある。ホワイトスター学会のエーテリアス図鑑だの登録名は「デュラハン」。上級エーテリアスよ」

「そう、それだ!赤牙組の親玉も運が悪いな。強烈なエーテル物質に侵蝕されて高危険度のエーテリアスになっちまった。俺とアンビーで金庫を奪おうとしたけど、あいつ尋常じゃないくらい強くてさ。撤退するのがやっとで回収まで手が回らなかった。……なぁ親分、あの中には一体何が入ってんだ?ここまで体を張る価値があんのかよ?」

 

 ビリーの質問にニコは得意げに話す。

 

「ふふん、早速答え合わせしましょ──「コレ」を見て!」

 

 ニコはポケットから牙の形をしたペンダントを取り出した。赤牙組というストリートギャングのシンボルらしい赤い牙のペンダントだ。ニコは牙を抜くと、そこにはUSB端子があった。

 

「これ……ちょっと変わったペンダントに見えるけど、ホントはメモリディスクだよね?」

「えぇ。これは小型のメモリディスク……"シルバーヘッド"の所有物よ。十四分街から抜け出す前に、あたしがビルの中で拾ったのよ!事前に調査した所によると……あのクソおやじ、これを肌身離さず持ってたらしいわ。きっと重要な何かが隠されているはずよ!金庫の暗証番号と関係があるに違いないわ!」

「……でも、少し破損してるみたい」

「本当だ、焦げちまってるぞ!」

 

 ペンダントをよく見てみると、USB端子の部分が少し焦げているように見えた。

 

「ねね、"パエトーン"!なんか方法はないの?あんたたちの店にある、あの複雑なコンピューターは使えないの?」

「H.D.Dのスペックは、ほぼホロウデータの処理に割いている。けど、内部のデータを取り出すくらいでいいなら……リン、僕がインターノットの演算パワーを拝借して復元してみるよ」

「……その前に、良いでござるか?」

 

 アキラが提案した時、快復した剱が待ったをかける。

 

「剱、もう気分は大丈夫かい?」

「あぁ、なんとか……そんなことよりアキラ殿、あまり出処が不明の端末を繋げるのは、危険ではないでござるか?」

「剱が言いたいことは分かるけど、他に方法がないからね。使う前に、色々と対策はしておくよ」

「……それなら、問題はないでござるが……」

 

 話が纏まったのを見届けたニコは締めに入る。

 

「よし、じゃあ約束ね!こっちは何とかしてホロウにある金庫の位置を確認するから、手がかりがあったらまた連絡するわ!あたしから金庫の回収作業の連絡が来るまでは、他の仕事をしててもいいわよ!あ、メモリディスクからデータを抽出するのも忘れずにね!」

「じゃあ、またな店長!」

「では、また」

 

 そう言って六人は解散した。




お久しぶりです!リュオネイルです!
今年最後の投稿になんとか間に合った……!いや本当に良かった!
書いてる途中で書きかけのデータが一部消えて焦りながら執筆してようやく投稿できた……!

これからも(更新は遅いかもしれませんが)続けて執筆していこうと思いますので、どうか応援の程よろしくお願いします!m(_ _)m

それでは皆様、良いお年を!
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