第1話 価値の証明、そのリスク
邪兎屋との金庫奪還作戦から数日後、プロキシ兄妹が剱を工房に呼んだ。
「どうしたでござるか?」
「来たね。剱、今日は君とリンで依頼をしてほしいんだ」
「依頼、でござるか……どういった内容で?」
「そこからは私が説明するね」
リンはアキラの説明を引き継いで剱に話す。
「今回の依頼は、ホロウで行方不明になった人たちの救助でね、本来は調査協会とか治安局の仕事のはずなんだけど……」
「最近は何かと忙しそうでござるからな……こうしてお鉢が回ってきたわけでござるか」
「そういうことだね。それで……行けそうかい?」
「承知したでござる。では、これから行くでござるか?」
「あぁ。ホロウへはイアスを連れて車で向かってほしい。僕たちは同期の準備をしておくから」
「分かったでござる。ではイアス、行くでござる」
「ンナ!」
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ホロウ内へと入った剱たちはエーテリアスを撃退した後、近くにポンプを発見した。
『あれ?あそこにいるのってボンプかな?見に行こう!』
ボンプの近くに行くと、地面に座り込んで軽く痙攣していた。その様子から察するに、エーテリアスの一撃をまともに受けたようだ。剱が軽く撫でても、イアスが声をかけて呼びかけてもボンプは全く反応しなかった。
『あ、このボンプ……救助用のボンプだよ!キャロットとか救援ビーコンもあるし、遭難者の情報も載ってるっぽい!』
「おぉ、それは心強いでござるな。……しかし、この様子では起きそうにないでござるが……」
『うん……どうも、エーテリアスの一撃で自動起動機能が壊れちゃってるっぽいんだよね。……ん?』
「どうしたでござる?」
『あ、いやね……この、ボンプの名前が載ってたんだけど……【10人の隊員】だって……』
「ず、随分と奇妙なセンスでござるな……」
『だね……。よし、じゃあ今からチャチャっと修理するから待ってて』
そうして待つこと数分、修理が終わったのかイアスが救助用ボンプから離れ、その後救助用ボンプも目覚めたのか立ち上がった。
「ンナ、ンンナン?(親切な人たち、あなた方が私を助けてくれたんですか?)」
「正確には、こちらのボンプがお主を直したのでござる」
『あんたはさっき、エーテリアスに襲われたんだよ』
「ンナ!ンナンナ!(ありがとうございます、親切な人たち!私は救助隊のボンプで、ここには人を助けに来たんです!)」
『それはそうと、なんであんたは【10人の隊員】って名前なの?』
「プロキシ殿、それは別にいいのでは……」
「ン、ナンナン!(それはマスターが言うには、これはいい名前なんだそうです。この名前を名乗れば、みんなが仕事を私たちに任せてくれるって!)」
『へ〜、そうなんだ。あ、そうそう、あんたを直すときに見たんだけど、遭難者の情報を持ってるようだけど』
『ンナ。ンナ、ンナ……(はい、そうです。でも、何か忘れているような……)』
ボンプは考える素振りをすると、思い出したのか手をポンと叩いた。
「ナン!ンナンナン……ンナナ。(思い出しました!さっき、最初の遭難者を見つけたところでエーテリアスに遭遇して……エーテリアスをこっちにおびき寄せたまではよかったのですが……その後気絶してしまったんです)」
「なるほど……それで、その遭難者はどこに?」
「ンナ、ナナ!(ついてきてください!場所は分かります!)」
ボンプについていくとそこにはヘルメットを被った一人の男性がこちらを見て興奮気味に剱たちに話しかけた。
「生きてるやつ!?えぇ!おっしゃ来い!エーテリアスがなあ!道塞いでてなあ!倒そう!な、倒そう!二人でよお!」
『体は元気そうだけど……』
「あまり正気ではなさそうでござるな……」
「乾杯!あんたに会えて良かった!このままずっと、死ぬまで幸福だ!」
「このままでは話が進まぬな……仕方あるまい」
剱がそう言うと納刀したままの刀を振り上げ、軽く男性のヘルメットを小突くように叩く。
「痛ってえ!?……あれっ、あ、アンタら……ホロウ救助隊の人か!?」
「その通りでござる。気分はどうでござる?」
「えっと……キツいのをもらったから、目は覚めたよ。ただ、まだ……頭がくらくらするが……」
『ねぇ、どのくらいの間ホロウに閉じ込められてたのか覚えてる?』
イアスの質問に男性は少し考えたが、申し訳なさそうに話す。
「よく覚えてなくてな……おたくらの隣りにいるボンプが見つけてくれたときには、まだ意識がはっきりしてたんだが……一緒にホロウの出口に向かう途中で、エーテリアスに出くわしてな。ボンプがエーテリアスを引き離してくれたあと……そうだな、少なくとも【ホロウ内安全活動推奨時間】を3倍くらい超過した。そのせいか、意識がだんだんなくなっていったんだ」
「なるほど……あの興奮気味な様子からして、軽い酩酊状態だった理由がこれでござったか……」
『えっ、そんなに長く閉じ込められてたの?救助隊が呼ばれたのは、つい1時間前だって聞いたけど……』
男性からの情報にイアスは驚いていた。
「……恐らく、事態を大きくしたくなかった依頼者が、リスクを最小限にするよう細工していた可能性があるでござるな……なるほど、どうりで調査協会や治安局には回ってこないわけでござるな」
『まったくだね……これからまた一旗揚げようという所に、こんな依頼が転がり込んでくるとは……まったくツイてるな。とにかく、他の要救助者の猶予が無いことはこれで分かったね』
『でも、救助用ボンプが発見したのはこの人だけだし……データベースが使えないなかで、出口までのルートを割り出して短時間でみんなを助けるとなると……』
「確か、救助者は3名でござったな?それなら、拙者にしがみついてくれれば、運べなくはないでござるが……」
『いや、流石に3人とボンプ2体はキツイんじゃ……』
と、予想以上の切迫した状況にどうしたものかと頭を捻っていると、イアスから機械音声が流れた。
『マスター、私であれば生体信号の分析および捜索が可能です。新エリー都の全知能設備を80%を利用し、リアルタイムでホロウ内ルートを分析することができます』
『Fairy、今は邪魔しないでくれると……待った、なんだって?残りの要救助者をすぐに探し出せるのか?』
『肯定。マスター、私は今回の依頼を通じて、貴方様方に価値を証明したいのです』
「……どうするでござる、プロキシ殿?」
プロキシ(兄)からの質問を肯定し、剱はプロキシ(妹)に問いかける。プロキシ(妹)は少しだけ考え、決心したのか口を開いた。
『……分かったよ、Fairy。緊急事態だからチャンスをあげる!私たちに、アンタの力を見せつけてみて!』
『マスター、救援ビーコンを携帯する救助用ボンプを検知しました。ここからは救助用ボンプとの分業を推奨します』
Fairyが提案した内容は至ってシンプルだった。剱たちが要救助者と出口を捜索し、救助用ボンプには出口までの誘導をするというものだ。
『……うん、理にかなってるように思えるよ。お兄ちゃん、剱、これで行ってみよ!』
「うむ。……では隊員殿、ビーコンの設置を」
「ンナ!(分かりました!)」
救助用ボンプは携帯していた救援ビーコンを設置し、剱たちはすぐ近くに生体反応を検知したとFairyから報告を受け、早速向かうことにした。
Fairyが検知した場所に向かうと、そこには苦しんでいる様子の男性がいた。
「う……うぐ……」
『起きて!しっかりして!』
「う……あ……あうあ……」
その男性は意思疎通ができないだけでなく、初期の侵蝕症状も現れていた。
「
「あぁ……うあぁ……」
エーテル助剤を男性に打ち、ビーコンを設置して次の救助者のところへ向かう途中、ホロウの裂け目が現れ、そこに入り別の場所に出ると、すぐ近くに怯えている様子の女性がいた。
「わああ!?なんですか、これ!?ち、近寄らないでください!!」
「落ち着くでござる。拙者たちはお主を助けに来たのでござる」
突然現れた剱たちに女性は驚いて騒ぎ始め、剱は女性を落ち着かせるように優しく声を掛ける。
「……え?あ、あなたたちは……もしかして救助隊員?救助隊員ですよね!間違いないですよね!?」
『そうだよ、貴方は助かったよ』
「よ、よかった!以前、ホロウ生存ガイドを十数冊読んでいて、この隅にずっと隠れていたから、近くのエーテリアスに見つからずに済んだんです!あ、ここにもう2人、同僚が閉じ込められて……!」
「安心するでござる。その2人ならもう見つけているし、救助用ボンプが回収しているでござる」
「そ、そうですか!ふぅ……助かりました。それでは、今はどうすればいいですか?」
『救助用ボンプがもうすぐ到着するから、ここで待ってて!』
「分かりました、ではここで待ってます!」
女性との会話を終え、ビーコンを設置してホロウの出口を目指し、途中で現れたエーテリアスを蹴散らして出口らしきホロウの裂け目へと到着した。
裂け目に到着したあと、三人の救助者を連れた救助用ボンプがやってきた。
「ンン、ンナン!(遭難者を全員連れてきました!)」
「この裂け目がホロウの出口なのですか?やった、ついに助かりました!」
「では、ホロウを離れよう」
こうして、Fairyの活躍もあってプロキシとしての再スタートしての初の依頼は、成功に終わった。
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救援依頼から数日後、アキラはリンと剱を【Random Play】の裏の駐車場に呼んだ。
「リン、剱、いい所に来たね。ほら、おいで」
「アキラ殿、また依頼でござるか?」
「……そのゴミ袋は何?怪しい儀式でもするの?」
リンはアキラの横においてあるゴミ袋を訝しげに見た。
「あぁ、このゴミ袋のこと?中身は廃棄されたボンプの信号発信機だよ。これだけあれば、小型の信号遮断器数台分の働きが見込めるよ」
「……なぜそれを?電波妨害する依頼でも受けたでござるか?」
「違うよ。これがあるのは、"ある話"をするためだよ」
アキラの言葉に首を傾げる剱だが、リンは思い当たることがあるのか「あっ!」と気づいた。
「もしかして、Fairyのこと?」
「その通りだよ、リン。あの千里眼かつ地獄耳の人工知能──Fairyに内緒で話ができるよ。彼女について、一度3人で話し合う必要があると思うんだ」
「え?これって、よくある新入りの悪口言う展開?なんかワクワクしてきたよ!」
「ワクワクするものでござるか、それ……?」
妙な展開を期待するリンに不思議に思う剱。しかしアキラはアキラはリンのその楽観さに呆れていた。
「楽観的なのはいいけど、この話題に関しては慎重にね」
「それで、Fairyに関する話とは?」
「うん、Fairyがプロキシ活動に関わるようになって、しばらく経つけど……近頃のリンのホロウ脱出ルートは、全て彼女一人で導き出したものだ」
「うん、そうだね」
「リンも気づいているだろうけど、彼女はローカルデータに一切頼っていない。何のサポートもないのに、以前の僕たちより270倍も速くルートを算出してるんだ」
「それは凄いでござるな……Fairyもアキラ殿達も」
剱は専門外のことで何のことか分からないが、アキラとリン達も凄いしFairyも凄いということは分かった。
「彼女はホロウのデータを瞬時に取得できるんだ。以前、「全都市80%以上の知能設備にアクセスできる権限を持っている」と言ってたけど、どうやら本当のようだね。これまでの僕たちは、せいぜいホロウの一角しか見えていなかった。それが今や彼女のおかげで、ホロウの全貌さえ掴めるようになったんだ」
「……普通にいいことなんじゃないの?そりゃ、「パエトーン」のアカウントはなくなっちゃったし、プロキシとしての仕事を半分くらい取られちゃってるけどさ。内緒で話す内容でも──」
「もしや、何か重大なリスクが……?」
剱の言葉にアキラは頷いた。
「彼女は、新エリー都の上位勢力が夢にまで見た力を持っている。とても僕たちの手には負えない代物だ。それと、彼女は半ば強制的に君と主従関係を結ばせたんだろ?「その時」まで、「規約」に則り……とかなんとか言ってたけど……具体的なことは一切口にしなかった。これにも、裏がある気がするんだ」
「だけど、Fairyの力をうまく利用すれば、ずっと調べてきた"あの件"も、真相に近づけるかも……?それに、先生の悲願だって……」
「("あの件"?それに先生とは……?)」
リンの言葉に剱は首を傾げるが、ひとまず話を聞くことにした。
「かもしれないな。とにかく、何とかしてFairyの正体を突き止めないと。とはいえ、急いでも仕方がない。Fairyに関しては、焦らず地道に調査しよう。幸い、彼女の隠蔽能力はそれなりに高いみたいだ。ハッカーの件の二の舞いにはならないだろう」
「そうだね、Fairyとは一旦平和に共存しよう」
「「平和に」と言っても……時々、彼女は僕に容赦がないんだ……何はともあれ、今はそうするしかない。以前、邪兎屋にもFairyの調査を頼んだけど……これといって進展はないみたいだ」
アキラが言うには、邪兎屋は匿名の下請け業者から金庫の依頼を受けたから、関係者とは一切会っておらず、社長のニコは同じく金庫に関与した赤牙組を糸口に手がかりを探すといっていたが、音沙汰がないようだ。
「どうも当てにならない気がするな。せめて、面倒事に巻き込まれてないといいんだが……」
「大事は小事より起こると言うけど、ニコたちの場合さらに大事を凶事にしちゃうからね〜……」
「(酷い言われようでござるな……否定はできないが)」
アキラたちの言葉に剱は苦笑いを浮かべるが、彼も彼で邪兎屋のメンバーと仕事をする時が度々あり、大体の頻度で小事から大事、大事から凶事になって巻き込まれているから否定はできなかった。
「さて、ずいぶん話せたし、今日はここまでにしようか。リンも剱も最近、インターノットの新アカウントの名声を上げたり、ビデオ屋の経営だったりで、あまり休めてないだろう?今日はテレビでも観て、リラックスしようか」
そう言ってアキラたち3人は解散したのだった。
皆さん、お久し振りです。リュオネイルです。
元旦の投稿から早2週間近くが経過しましたね……。
ゼンゼロの公式からver1.5の生放送でアストラとイヴリンの大まかな性能情報、そしてエレンと青衣の復刻、スキンの発売と様々な情報が飛び込んできましたね〜。皆さんはアストラたち新規を引きますか?それともエレンや青衣の復刻を引きますか?はたまた両方?自分ですか?全員持ってないんで全員引きますね。(真顔)
早めに出てくれれば凸も検討して、必要ならば課金も辞さないですね()
さて、今年も亀更新ではありますが、応援していただけるととても嬉しいです!