ゼンレスゾーンゼロ 〜隻腕の剣士〜   作:リュオネイル

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第2話 邪兎屋と書いてトラブルメーカー

 

 アキラ達との密会からすぐ、3人は工房でテレビのニュースを見ていた。

 

『市政選挙が近づくにつれ、待望の民生プロジェクト──旧都地下鉄の改修が、本格的に動き出しました!工事を請け負ったヴィジョンコーポレーションの代表にインタビューする機会をいただき、光栄です。チャールズ・パールマンさん!』

 

 インタビュアーがマイクを動かすと、カメラも動き白髪に低身長の太──豊かな体型をした妙齢の男性が映った。

 

『本日中に旧都付近の工事エリア、通称「カンバス通り」で爆破解体が行われるそうですね。工事の全体的な流れを、簡単にご説明いただけますでしょうか?』

『若者よ、良い質問だ!旧都陥落後、崩壊した地下鉄路線は、新エリー都の交通と発展を阻む大きな問題となった。この問題を解決するには、壊れた古い地下鉄の残骸を完全に除去した上で、新しい地下鉄を造らねばならん。そこで、爆破解体を行うべく、我が社は採算を度外視し、高純度の工業用エーテル爆薬を大量に発注した』

『なるほど。ですが現在、カンバス通りと都市部の間は通行不能となっています。どのように爆薬を輸送するおつもりでしょうか?』

 

 記者の疑問はもっともだ。カンバス通りと都市部を繋ぐトンネルは現在、ホロウに飲み込まれており通行は不可能になっているはずだ。その中で、どうやって運ぶつもりなのか。

 そんなインタビュアーの疑問にパールマンは笑って答えた。

 

『ははははっ、ごもっとも!しかし、我が社には文字通りヴィジョンがあるのだ。その点についても織り込み済みである。このデジタルマップを見たまえ』

 

 そう言ってパールマンは後ろにあるマップに指をさす。

 

『我々は現在、デッドエンドホロウ入り口に設けられた爆破解体本部にいる。マップ上の赤い箇所が工事における爆破エリアだ。新エリー都と爆破エリアを繋ぐトンネルは、共生ホロウである「デッドエンドホロウ」の存在により、完全にホロウに飲み込まれている。幸い、一部ではあるが「デッドエンドホロウ」内にはまだ使える路線が残っている。よって我が社は爆薬を特製の列車に積み、ホロウ経由で輸送することにした。そして、エーテリアスを回避するために細心の注意と工夫を重ね、爆薬の大部分を爆破エリアへ輸送することに成功したのである!』

 

 パールマンは説明しながら爆薬を積んだ場所に案内する。

 

『……ん?ははははっ、安心したまえ。特別な起爆装置や外部からの強力な干渉がない限り、決して爆発はせんよ!現場をお見せしたいところだが、あいにく爆破エリア全体で民間の信号を遮断していてな。干渉による誤爆を防ぐためには、やむを得ん。今もなお通信が可能なのは、我々専用の周波数帯を使う設備のみだ』

()()()()()()()()()()()()()()()だけでなく、さらに保険として信号の遮断まで行うとは!御社の深謀遠慮ぶりには、感心するばかりです!』

『そうだろうとも!我々ヴィジョンが目指すのは、新エリー都すべての住民の幸福なのだからな!』

 

 ここで、映像がパールマンたちから会見会場のような場所に切り替わった。

 

『数ヶ月前、ヴィジョンは競争入札により、この度の旧地下鉄関連工事の請負を勝ち取りました。ヴィジョンはより短期間、低コストでの完成を約束し、下馬評で勝っていた(はく)()重工に大差をつけて落札したのです。我々の特派員も白祁重工の関係者に連絡を試みましたが、残念ながらお話を伺うことはできませんでした』

 

 映像はまたパールマン達に切り替わる。

 

『パールマンさん。今回、業界の新星である白祁重工に見事入札で勝利されました。何かコメントありますか?』

『あぁ、白祁重工は我々も非常に尊敬している相手であり、見習うべき同業者でもある。彼らもきっと、次回は良い結果を出せるだろう』

『ありがとうございました!では次に、プロジェクトにおけるコスト削減の秘訣をお聞かせください』

 

 この質問に、さっきまでにこやかだったパールマンの表情は崩れ始める。

 

『……こ、今回のインタビューに……そんな質問はないはずだが……!?』

『どういうことでしょう?』

『い、いや……私が貰ったカンペに、そんな質問は──』

『パールマンさん、これは生中継です。パールマンが申し上げたいのは、ヴィジョンがこのプロジェクトにおいて決して不正なコスト削減を行っていないということです。今回の爆破解体にはパールマン直々に現場に向かい、市民の皆様の代わりに最後の瞬間まで立ち会う予定でございます』

『あ……あぁ、そうとも!これから技術スタッフと共に、列車で爆破エリアの監視拠点に向かうつもりだ』

 

 そう言ってパールマンは秘書らしき女性と一緒に列車に乗り、トンネルの奥へと消えていった。

 

「工事が行われる場所はホロウの近くで、しかも大勢の人員を移動させる必要がある……」

「やっぱり、TOPS財政ユニオン入りを目指す企業はやることが違うね」

「……本当に避難できていればよいでござるが」

 

 テレビのニュースを見て、3人はそれぞれの反応をする。そこに、モニターからFairyの声が聞こえた。

 

『警報。街道カメラにて、何者かが本店へ急速に接近しているのを確認。推測──トイレを借りたい、レンタルしたビデオの期限が迫っている、本店に対し悪さを企んでいる』

「トイレならば他に141等もあるし、ビデオもレンタル期限が迫っているお客もいないでござるな。……店に悪さを企てているのならば、拙者が対応するが……」

「いや、その必要はないだろう。お客さんが来ただけだ、僕が出よう。……もし本当に悪さを企んでいるんだったら、剱に頼むけどね」

「なによ、変な言い方しちゃって」

 

 アキラは工房の扉を開け、接客に向かおうとした時だった。

 

「ふみゃー!?」

 

 突然、ネコのシリオンの少女とが緑色のボンプ──アミリオンと一緒に飛び込んできた。

 

「……ん?」

「えっ……?」

「おろ?」

「いたたた……は、鼻が……はっ!このだるまみたいなオッサンを信じちゃダメだ!コイツは嘘をついている!」

 

 少女はテレビに映るパールマンを指差しながら、そんな事を言っていた。

 

 

 

「あ、アンタたち、ドアを開けるならちゃんとニャーって声をかけて!すっ転んじゃったぞ……」

 

 いまだに痛む鼻を擦りながら少女は恨めし気味にボヤく。

 

「今からニャーって言っても遅いよね……六分街で一番のビデオ屋へようこそ」

「お客さんはどんなビデオを探してるの?新しいのだと、『7710と彼の猫』が入荷してるよ!」

「それってどんな映画、面白いの?……って、違う!そんなことしてる場合じゃないぞ!分かってる……アンタたちは"パエトーン"!プロキシのアンタたちに、依頼がしたいんだ!」

 

 ビデオ屋の店長モードの2人に少女は一瞬ノリ気になったが、すぐに真剣な顔になって2人に言ってきた。

 

「お客さん、何かの間違いじゃないですか?我々は見ての通り、至って普通のレンタルビデオ屋ですよ」

「待って!警戒しなくていい、あたしは猫又!ニコに言われて、アンタたちを探してきた。悪いやつじゃないぞ!」

「その方が誰か、分かりかねます。店を間違われたのではないですか?」

「アキラ殿、もう隠す必要はないでござろう。ニコ殿の名前が出て、さらに邪兎屋のボンプを連れている時点で、何かあったのは自明の理でござる」

 

 少女──猫又──の自己紹介にアキラはあくまでシラを切ろうとしたが、剱の言葉に猫又は顔を輝かせた。

 

「おぉ!流石"パエトーン"の専属護衛エージェント!見る目が違うな!」

「ふむ……このボンプは、確かにニコがいつも持ってるやつだ。本当に、ニコが君にここへ来るように頼んだの?彼女たちは今、どこにいるんだ?」

「さっきのニュースで言ってるとこ──ヴィジョンの爆破エリアにいる!あのオッサンは()()()()()させたって言ってたけど、本当はそうじゃないんだ!」

「うわぁ、言ったそばから面倒事に巻き込まれてるよ……早すぎない?」

「言ってる場合ではないでござるよ……しかし、ニコ殿たちはヴィジョンの工事現場で何をしているのでござるか?」

 

 剱の疑問に猫又が答える。

 

「探しものだ!……依頼したのはあたし!それに赤牙組がケチを付けてきて、もみくちゃになって……とにかく!人がぎゅうぎゅうで、魚の缶詰みたいだった!」

「落ち着いて、ゆっくり順を追って話してくれ。今の説明だと、デパートの初売りにしか聞こえないよ」

「(まぁ魚の缶詰の例えだと、そうなるでござるよなぁ……)」

 

 猫又の所々を端折った説明にアキラは宥めるように言う。

 

「えっと……その……ぐう、うまく説明できないぞ!……そうだ!ニコのボンプ!あの中に、ここ数日の視覚データが保存されてるはずだ!それを見ればきっと分かる!」

 

 猫又はどう説明すればいいか悩み、視界にボンプが入った途端、視覚データを見るように促す。

 

「残念だけど、ボンプ内部の視覚データを出力するには、所有者であるニコ自身がやるか、メーカーのマルセルグループに問い合わせるしかないんだ」

「……アキラ殿」

 

 猫又の提案にアキラは残念そうに棄却しようとするが、その後ろから剱が小声で声を掛ける。

 

「ん?どうしたんだい?」

「Fairyならば、何か方法があるのではないでござるか?」

「Fairyに?……一応、聞いてみるか。Fairy、ボンプの内部にあるデータを強制的に取り出す方法はない?」

『確認。指示の内容ですが、「ボンプ内部の視覚記録を出力する」ことで間違いありませんか?』

「にゃ?今、誰か喋ったような……他にも誰かいるの?」

 

 猫又が突然聞こえた第三者の声に不思議に思っていると剱が答える。

 

「あぁ、最近新しくインストールしたPCアシスタント……と言うやつでござる。気にしなくてよいでござる」

「ん……?まぁ、いいけど」

「……それで、Fairyデータは取り出せる?」

『ポンプ内部で直接数日間の視覚データを検索中。「自分がバカだった、もっと早くFairyを頼るべきだった」と仰ってください』

「あぁ、僕がバカだった。もっと早くFairyをs──」

「拙者がバガでござった。もっとFairyを頼るべきでござった……」

「……ノッてあげるのかい、剱?」

「いや、変に返して拗ねられても困るでござるし……」

「あんまり彼女を調子づかせることはしないでほしいんだけどね……」

『……助手2号の音声認識を確認。Fairyは大変満足です。では、ボンプをモニターの前に出してください』

 

 Fairyの指示通りに、アミリオンをモニターの前の椅子に座らせる。

 

「Fairy、後はよろしくね」

『ボンプと接続中、視覚データを取得します』

 

 それから少しの間、機械的なロード音が静かな工房を包んだ。そしてアミリオンが急にぐったりしたように座り込んだ。

 

『取得完了、再生します』

 

 Fairyがそう言うとモニターの画面が変わり、映像が流れる。

 

「お、画面に出たね」

「お、どれどれ……あ、ニコと出会った日のだ!」

 

 ──そして、彼らは知る由もなかった。この映像を見て、彼らはまた一歩、一連の事件に巻き込まれそして───

 

 

 

 

 

 

 

 

事件の『闇』に踏み込むことになろうとは。




はい、作者のリュオネイルです。

今回は少し短いかもしれませんが、展開的にここで区切ったほうがいいかなと思って区切らせてもらいました。

さて、いよいよ第一章に入り込んできましたね!この章から出来る限りオリジナル要素を出していきたいと思っていますので、皆さんぜひ楽しみにしてください!
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