仮暮らしの成田さん 作:ぽぽんぽん
ようやく3層である。
すでに15時をまわってしまった。寄り道しすぎ。
目の前に広がる春の麗らかな草原。ダンジョンの不思議、なぜか青空がある。太陽はなく、天井(空)自体が明るいのだ。
草の香りがして、いい風が吹いている。まるっきり屋外っぽくて違和感が激しい。
そこかしこできゃっきゃはしゃぐ声が聞こえるのも、なんかダンジョン感薄い。
ここは鳥に襲われないらしいので、ぷにもちを出してそっとパーカーのフードに入れる。
ええー?とかぷにもちは言ったが、お前がフードに入りたいって言ったんやろがい。そうだったっけー?とか言ってる(気がする)。
そのくせ、しまおうとすると、そんなーとふるえるので、そのままフードで過ごしてもらうことにした。
ぷにもち、せっせと分離するので重さ自体は生まれたてスライムくらいしかない。つまりやわらかくて軽い。たぶん200gもないのでは。なのでフードにいれても負担にはならない。
ぐるっと見回して、人がいない方へ行く。人が集まってるところはたぶん、安全地帯なんじゃないかな?
まあ噂通り採取しなけりゃノンアクティブなら、安全地帯も何もないけども。
さりげなく足元にこんにちはしたスライムを踏み潰し、遠くで耳を動かしている野兎を眺める。
……でかい。
ここから見てあのサイズってことはなかなかでかいぞアレ。アレが襲ってくるのを秘密裏に処理するの?仕事人過ぎじゃない採取する人?
青色ゼリーと魔石を拾うついでにしゃがむ。2層もそうだったけど、土じゃないんだよなあ。なんか芝生が深い感じというか。硬く芝生が編まれた上に芝生が生えてる…みたいな?
草はつるっと抜けるし、小石も土も絡んでこない。不思議な感触。まあダンジョンのすることだからね。
普通に歩く分にはふかふか、小石もなくて歩きやすいハイキングだ。
抜いた草をぷにもちが欲しいと言うので、後でな、といなして分けておく。メイビーこれは特に何も効果のない雑草。ぷにもちいらないものが好き説を俺は支持している。
草刈りナイフを手に、付与してザクザクと草を買っていく。途中シャーッときた蛇もうっかり草刈り鎌で刈ってしまった。
ぷにもち、頭いる? いらないの? ええ…素材あるのかよこれ。仕方なく収納に入れる。胴体もいらんらしい。ええ…。
ぷにもちが欲しいという草が溜まってきたので、いったんフードからやつを収納して、草を敷いた地面に出す。嬉しそうにシュワシュワと食べ始めるのを見守り、食べ終わったら同じ方法でフードに戻す。
うーむ。
適当に刈ってるようでは雑草ばかりだな。アイテムボックスの中に七草はナズナくらいしか集まってない。ペンペン草はね、わかってたよ。
俗にホトケノザと呼ばれる赤紫の花のアレは実は七草のホトケノザではないんだよね。だからぷにもちに食われました。
ツクシは手間の割にあまり美味しくない(主観)のでパス。
あとスギナとヨモギ、両方とも昔ばあちゃんがお茶にしてたっけなー。あれたしか乾燥させただけだったと思うけど、うん、草の味がするやつ。ヨモギはお浸しにしてもよい。
こちらも特に旨いものではなかったが、ひたすらになつかしい。多めに採っていくかな。
そういえばばあちゃんは、軟膏とかも作ってたっけ。何にでも効くのよってよく塗ってもらった、草の匂いがする緑のネトネト。あれもヨモギっていってたような?
いや思い出は今は封印だ。
セリと大根とカブをよこせ!
場所を変えることにして立ち上がる。アレ…あのウサギ、怪しいよな。
安全地帯で説明を受けていた人々が説明タイムを終え自由時間になったらしく、三々五々散らばっていく。キャーって子どもが野兎に突進していくけど、案内人は止める様子もない。大丈夫なのか。
ウサギは逃げた。
なるほど、近づくと逃げるのか。
安全地帯から人が減ったので、この隙に安全地帯へ寄って麦茶を飲む。
ぷにもちが自分にもごはんとふるえてきたが、おじいちゃんさっきごはん食べたでしょ。そんなー。
お腹いっぱいなのは見てわかるのでぷにもち送還。
さっき最後尾にいた案内人が寄ってきて、改めてお礼を言われた。
「ちょっと転んだ方がいて、走り抜けるタイミングがずれてしまったんですよ」
「役立ったようでよかったっす」
そういうこともあるよね。
カラスが近づきすぎたときは案内人が魔法で処理するんだけど、すぐそばで魔物を倒すと苦情が出たりするらしい。危ないじゃないか!とか、死体がグロかった!とか。
お前はダンジョンで何を言っているんだ?てやつだな。お疲れさまである。
雑談ついでにセリとか大根がどの辺に生えてるのかの情報をもらえた。
草のリポップはかなり早いので、気にせず刈ってよいらしい。採取に来る人も少ないのだとか。
そうなの? キャンペーンやってるのに?
……ああ、なるほど、ダンジョン観光するような層は金持ちが多いのか。理解、理解。チッ。
野草だしあまり高く売れるものでもなく、専属で採ってる人も元々そんなにいないらしい。特に観光客で混雑する時期は小動物の駆除に手間取るので、そういう人も来ないのだそうだ。
やはり小動物は採取してると襲ってくるのか聞くと、採る量や種類に寄るけど襲ってくるそうだ。
なるべく穏便に対処をと言われた。…頑張ります、さりげない処理。
休憩を終えたツアー客の一部がほんとにライオンな5層へ旅立つのを見送る。個人というかグループで来てる人もいるようだが、なんとなくついていくっぽい。
ああいうのタダ乗りみたいにならんなかな。まあ、警護の範囲外ではあるんだろうけども。
だいぶ人口密度が減ったので今のうちに草を刈ろう。
教えてもらった地点には、だいたいなんか大きめの小動物がいる。…大きめの小動物とは? 3倍サイズですよ。
またお前かウサギ。
しかし近づくと逃げるとわかったのでズイズイと近づく。逃げていった。