仮暮らしの成田さん   作:ぽぽんぽん

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3.ダンジョン

 1層専門冒険者の朝はダルい。

 スーパー銭湯行きてー。

 

 前日の内に当日行く予定のダンジョンへ移動してるので、出勤はスムーズだ。

 

 トーキョー25区はそれぞれひとつずつのダンジョンを有している。俺はそのときどきでこの25のダンジョンの1層をうろうろしている。だって毎日同じとこいると飽きるんだもん。

 

 今日は大東区の浅倉ダンジョン。

 ここは元々問屋街があり、土地の買収が進まなかったので比較的ダンジョンが狭い、らしい。すぐ近くに民家などもあって完全にダンジョンが地元に馴染んでるタイプだ。

 地元民のおじさんおばさんも店番の隙にダンジョンへ入っていく。

 

 ダンジョンというのは、魔物が湧く場所だ。

 中にいる魔物は時間経過で増える。

 増えた魔物を倒さないでいると、ダンジョンは侵略地をわずかに拡げる。

 侵略された土地はダンジョンとなり、魔物が湧くようになる。

 ダンジョンを殺すにはコアを潰す必要がある。

 

 これがダンジョンの原則だ。つまり増えた魔物を倒さなければダンジョンは侵食する。侵食させないために地元民が潜っている。

 

「あら、なっちゃんお久しぶり」

「っす」

 

 どーも成田のなっちゃんです。

 ギルド員も地元民のおばちゃんで顔見知りだ。

 

「まーた寒い格好して! いくらダンジョンは暖かいっていっても外出るのにそれじゃ風邪ひくわよ」

「はは、気をつけます」

 

 カプセルホテルからダンジョンまでは屋内移動で済むので、薄着でも問題ない。薄着っつってもちゃんと長袖だしベストも着てるけど。

 まあ外が寒いのは知ってる。昨日、銀谷ダンジョンからこっちへ来たから移動はヤバイほど寒かった。ダウン買うか悩んでるところだ。しかし荷物が増えるのは、仮暮らしにはよろしくない。

 

「なっちゃん来てくれると助かるわぁ。今25層アタックにかかりきりらしくてね」

「頑張らせてもらいます」

 

 無難に答えつつ、受付で冒険者パスをかざし、入場手続きを行う。

 ダンジョンはやたら高性能なので、冒険者パスはICカードのような動きを見せてすぐゲートが開かれる。

 行ってらっしゃい、気をつけて、と見送られるのは相変わらずちょっと照れる。

 

 ゲートを潜ると、視界は一転する。普通にビルの中の小綺麗な受付から、突然石造りの洞窟に変わるのだ。まるで工事途中のトンネルに入ってしまったかのような閉塞感。

 幸い、1層は不思議な明かりに照らされていて暗くない。これが下層になってくると明かりの確保が必要になるらしい。大変だね。

 

 アイテムボックスから10フィート棒を出す。さすがにダンジョン関連施設内を移動といっても、武器持ってると怒られるでは済まないので、出すのはダンジョン入場後、が鉄則だ。

 

「あー…、わいてる」

 

 ちょっと歩いただけで3匹もスライムがおる。相棒の10フィート棒に付与をかけ、ツンとつつくとスライムが弾ける。

 これが「魔法:エンチャント」の威力である。つよーい。

 

 効果は10分間攻撃力増加+10なんだけど、スライムには棒の打撃ではなくエンチャント武器による攻撃、つまり魔法攻撃と認識されているらしい。

 攻撃力+10についてどの程度の違いがあるかはわからないが、さすがに棒でつついただけで弾けるってのはおかしいし。

 

 3匹倒せば、魔石が3つ転がる。青色ゼリーはなしか。つんつんと棒でつついて魔石を回収。

 ダンジョン内であればアイテムボックスが使えるので、屈まずものが拾えて便利だ。

 

 おっと、またいる。今度は2匹。

 てことは天井もいつも以上に警戒が必要だな。

 

「25層アタックっていってたもんなー、影響出てるか」

 

 ダンジョンには魔物がわき、魔物が増えすぎるとダンジョンも増える。

 しかしそれとは別に、ダンジョンには時間経過で成長する側面がある。

 はっきりしたことはまだわかっていないらしいんだが(というかわかってるかもしれんが俺は知らんのだが)、ダンジョンが横へ広がることを押さえられている場合、ダンジョンはコアを潰されないために地下へ進んでいくという性質があるんだそうな。

 そのためダンジョンは地下何層という風に伸びていく。

 実に不思議なことに、地下鉄にはどうやってもぶつからない。つまりダンジョンの中は異空間、というのが通説だ。知らんけど。

 

 そんなわけで押さえ込まれているトーキョーダンジョンは、5年で5層ずつ伸びる。1年で1層ではなく、5年たつとドーンと5層増える。その増えた5層は5年かけて育ち、次の5年目でお披露目される。

 つまり5年目で現れる層は、10年前に出来た層らしい。新しく出来たはずの層は入り口が隠されていて入れない。おそらくダンジョンコアを守る層なんだろう、と言われている。

 そしてお披露目されている最新層まで攻略されると、ダンジョンも危機感を覚えるのか、新しい5年目が訪れても新層を公開しない。地下拡張が止まるのである。

 公開されない層で魔物が溢れるのでは、と問題視されてもいるが、今のところその兆候はないらしい。

 

 つまりだ。

 地下にあまり広がられると、魔物が倒しきれなくなる。だから、現在の最新層を攻略することで地下拡張を防ぐ――という攻防がトーキョーダンジョンでは5年毎に繰り広げられているのである。

 俺はペーペー冒険者なのでよく知らんのだけどね。

 

 そんな俺にもわかることがある。

 下層で攻略が激化してくると、なぜかスライムが増える。これはガチ。

 どういう理屈かは知らん。ダンジョンの抵抗で魔物全体が増量説とか、ポイント(?)の余りがスライムで排出されるのだとかネットではいろいろな憶測が飛び交ってる。

 

 そんなわけで今日は稼ぎ時だぞ、と。気を引き締めていかねば。

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