仮暮らしの成田さん 作:ぽぽんぽん
今日も東丘ダンジョン。せっかく来たので…というか疲労(主に気疲れ)からか、起きるのが遅くなって移動が面倒になったのだ。
今日の部越えたら明日明後日は土日だし、ダンジョン休んでゆっくり移動する予定。
東丘ダンジョンは、というか都外のダンジョンは、防災指定区域として整備されちゃってるので近場にコンビニとかなくてかなり不便だ。
まあトーキョーダンジョンの方が異常というのは理解した上でね。やはり都内に慣れると、それ以外のダンジョンは全部不便なんすわ。
そして人いなーい。一層が過疎なのはわかりきった話だけど、それにしてもいない。やはりトーキョーダンジョンの人口が異常。
そんな当たり前のことを再認識した上で、ちょっと実験。取り出しましたるはホウキとチリトリ。
いやね、どこのダンジョンでも取れちゃうのかちょっと気になっちゃって。
ササッと辺りを見回し、ササッと付与してササッと掃く。回収………おや?
なにも取れないな?
トーキョーダンジョンしかこの方法では取れない、か、何らかの条件があったか、か?
てことはこの方法で無限に砂を生み出す錬金術は無理かー。
いや、ちょっとだけ夢見たけどむしろ叶わなくてよかったわ。無限に手に入ったらダメ人間になっちゃうわ俺。
もしかして、というか十中八九、砂は条件入手だったんだろう。じゃなきゃダンジョン破壊する前にホウキとチリトリくらい試すだろ?
マジでダンジョンの大掃除だったりして。ハハッ。………ハハッ。
いやあ、もう過ぎたことは気にしても仕方ないっすね!
ぐるぐる回って今日の部の営業終了。いちいち昼に外でるのがめんどくさすぎるけど腹減りには勝てず、悔しい思いをした。やはりトーキョーダンジョンしか勝たん。
タイパとか別に細かく考えてないが(考えてたらスライム専門なんかやらん)、飯のためにウロウロすると虚しい気がしてしまう。改めて、すぐ入れる店があるって素晴らしいことだな。
俺は島京に帰るぞ!!
帰って土日だらだらマンガ見て過ごして、月曜日。お仕事よー。
今日はいろいろ悩んだ挙げ句、千枝との県境に近いトーキョーダンジョン、井川ダンジョンへ来た。
井川ダンジョン、他の地区から離れてるからちょっと広いんだよな。ここもドブネズミが出ます。川近いっていうか、半分川に飲まれてるからね。仕方ないね。蚊じゃないだけマシ。
井川ダンジョンは半水棲ダンジョンだ。どういうわけか中に渓流がある。どういうわけだよ。
淡水魚が釣れるとかで、釣り人に人気のダンジョンだったりする。まあ俺は一層しか行かないので、その辺は縁がないんだけど。
一定層に人気のあるマニアックなダンジョンというのは、一層にも結構、人が多い。なんていうの、自分の使うダンジョンは自分で管理しましょうみたいな、自治っぽい層が出てくるっていうか。
そんなわけでこのダンジョンのスライムはいつもぷにぷにと柔らかい。人多いし、俺も滅多にこのダンジョンには来ていなかった。
「お? 久しぶりだな坊主」
「っす」
このように顔見知り程度でも気軽に話しかけられてしまうので避けてきたのだ…!
「相変わらず器用に棒、使うなあ。前よりうまくなったんじゃないか?」
「スキル生えたっす」
「おー! てかスキルなしで使ってたのかよ」
「っす」
めでてえ、と肩を叩かれる。おっちゃん力強い、痛い。
「そういや坊主は知ってるか、ほれ、在原ダンジョンの」
「迷宮鳴動っすか」
「そう! いや~、まさかトーキョーダンジョンでやらかすバカが出るとはなあ」
俺は関係ないけど心なしか胃が痛い!
いや、でもその話を聞きに来たのだ。おばちゃんは守秘義務が関わるから、迷宮鳴動は教えてくれてもその前後の話は教えてくれなかったもんで。
そんなわけで聞き出したおっちゃんの話をまとめると、こう。
まずやらかしたクランは『迷宮調査団』。クラン情報にまったく明るくない俺でも知ってる有名クラン。ダンジョンが出来始めた頃からあるような、かなり老舗だ。それだけにやらかしたのには驚きが大きいらしい。
理由についてはやはり黙秘中……というかたぶんすでに吐いてるんだろうけど秘匿情報があるんじゃないかってことで、一切その辺が出てこないらしい。おそらく、何らかの新規アイテムが関わってるんじゃないかという噂だ。そしてそれは鉱石だろう、というおっちゃんの予想。ウグッ。
どうもそのアイテムはかなり重要らしく、情状酌量の余地もある、とかで、それほど大きい処分にはならないのではないか、と噂されてるそうな。
いや、俺はもう売り抜けたし関係ないね! 入手条件も結局謎になったしな!
「まあしかし在原ダンジョンで不幸中の幸いだったな」
「っすね」
「元々洞窟タイプで人気なかったし、在原ではいっそ確変来たかもつって歓迎の向きが出てきたって話だぞ」
「確変」
元気だな近隣住民。まあ地元を守るためにダンジョン入ってるような住民だもんな。嘆いても仕方ないか。
「俺としてはあの辺、黒田川もあるし、水棲ダンジョンがもうひとつ出てきてくれると大歓迎だがな!」
「っすか」
「そろそろ目新しいもんって気持ちもわからんではないよなあ」
ガハハ!とおっちゃんは笑い、釣竿を担いで去っていった。これでも食えと魚を10匹ほどもらってしまった。
おっちゃん…ダンジョンの魚は食えないって知ってるでしょ! 処理めんどくさがったのバレてるからな! 俺の収納が空いてるからまだいいけど、押し付けよくない!
……とはいえない俺のコミュ力の低さよ。
しかし、目新しいもんを、か。
まあ、そういう見方も出来るよな。