仮暮らしの成田さん 作:ぽぽんぽん
今日も井川ダンジョンにいる。午前中から解体室を借りているところである。めちゃくちゃ歓迎された。おっちゃんたち、ちゃんと解体したげなよぉ。
まあそのおかげで俺は魚にありつけたわけだが。
いつも通り清掃して付与して炊飯器セットして準備完了。今日は緑のネトネトを作ってみるぞい。
ばあちゃんのレシピは謎だが、それっぽいものを検索して油とミツロウの分量は調べてきた。簡易調合キットには小型の秤もついているので、これで計量も完璧だ。
ヨモギポーション1回分に合うように材料を計測したら、まずは湯煎で油とミツロウを溶かす。
ミツロウが油に溶けきったら、少しずつヨモギポーションを混ぜていき、ネトネトになったら完成だ。
ひたすら足しては混ぜ、足しては混ぜていたばあちゃんを思い出す。
火を使ってるときは危ないから近寄らせてもらえなかったから、あんまり詳しいことはわからないのだが。出来立ての温かいネトネトを、ちょんと手の上に乗っけてもらうのが好きだった。草の匂いがしてなー。
そんなことを考えつつ練っていたら完成した。
ヨモギ軟膏。外用の傷薬。20回分出来て、1回分で1HP回復。微妙な性能。
クラフトジンジャーシロップに劣るのは遺憾の意。
残念だが、思い出はあくまで思い出ということだなー。
しかし緑のドロドロ中途半端に残すより、ぜんぶ軟膏にして使いきってしまおう。と思ったら材料が微妙に足らない。
買い足してもいいけど、ここはちょっとファンタジー材料を使ってみようと思う。いや、魔物蜂のミツロウも十分ファンタジーだけどさ。
気になるアイテムは俺の収納にずっと眠っている。
青色ゼリーである…!
青色ゼリーは薄い膜に包まれていて、破くと中身がドロッと出る。この中身は99%が水で、1%に未知の物質が含まれている、らしい。詳しくは知らん。
今のところ性質としてはほぼ水。特に有効活用はされていない。水の少ない地域では水袋として使われたりもするそうだが、水魔石のが出せる水量が多いのでそれほどメジャーでもない。
そう、青色ゼリー、食べられるのである。
俺としてはよほどの緊急時を除いて食べたくないけどね!
食べられるだけあって触っても無害。酸はない。そして粘度は全然なくサラサラなので、ゼリー的な用途には使えない。
そんな青色ゼリー、たくさんあるのでちょっと実験してみよう。というのも、鯉に弱化とか清掃とか掛けたから、素材に付与って出来るんかな?と思った次第。
ちょっと危ないのでぷにもちはしまいます。そんなー。
まずはとりあえず清掃。キラキラ。
次に実験で弱化。お、破れて水が溢れた。たぶんただの水になったんじゃないかな? 知らんけど。
これは拭いといて。
新しい青色ゼリーを出して清掃、そして本命の付与。
……見た目には変化ないな。
あ、触るとちょっと弾力が増えた?
この状態で割ってビーカーに入れてみる。お、かなりもったりしている。まさにスライムって感じの弾力だ。
ここに緑のドロドロを1回分入れて混ぜる。ぐるぐる……なぜかどんどんもったりしてくるな…。エタノールを混ぜてるのに固くなっていくのおかしいだろ。
何かに反応してるんだろうな。しらんけど。
混ぜても固さが変わらなくなってきたあたりで手を止める。緑のネトネト(改)の完成だ。
収納に入れて鑑定。
ヒール軟膏(劣)。なんか出来た。
効果としては1回分でHP5回復。1回分の容量がヨモギ軟膏より少ないようで、全部で50回分らしい。
うーん、微妙…? 1回分の容量を超えて使ってもいいのであれば、この感じならスライムの酸の治療も視野に入るのでまあ、ありか?
しかしポーションならちょんとかけたり飲んだりするだけで済むと考えると微妙なような。
いや、それを手作り出来てるんだからすごいことか。無法地帯だけどな。
たぶんポーションから作ると効果の高いヒール軟膏が出来上がるんだろう。
〈これまでの経験により「調合」を習得しました〉
お。
料理より時間がかかったけど、薬剤師的なものと思うとこんな簡単に習得してしまっていいのか不安になるな。ダンジョンは無法国家だよ……。
まあ自分にしか使わんからええか。
というかこんな中途半端なポーションでは不安になるので自分も普通のポーションが手離せませんわ。
残りの緑のドロドロもヒール軟膏(劣)にして使いきり。
調合取れたし、今日の実験は終了よー。
……いや、料理にも付与出来るよな、て思いはしたんだけど、食べるものに付与するのはちょっと覚悟が決まらない。
ダンジョンでしか暮らせなくなったら困るじゃん?
高レベル冒険者にはわりとよくあるらしいんだよな…。
まあ、料理は料理で、手軽にご飯食べたいだけだから。別に特別なバフ飯になっていなくっても構わない。
清掃して麦茶を沸かして、一服。
炊けたご飯を握り飯にして収納に放り込んだ。