仮暮らしの成田さん   作:ぽぽんぽん

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37.連日の

「なっちゃんすぐ帰っちゃったから、あの子なっちゃんのこと探してたのよ。お礼を言いたいって」

「っす……」

「まあなっちゃんシャイだから、そういうの苦手なんだろうけど。いや~まさかなっちゃんがねえ。私も鼻が高いわあ」

 

 なんで親戚目線なんだおばちゃん…!

 いや、まあたしかにピカピカの初心者の頃には受付のおばちゃんたちにはめちゃくちゃお世話になったけども!

 在原と浅倉ダンジョンの受付のおばちゃんたちには謎のネットワークがあり、攻撃スキルも武器も持ってない無謀な冒険者なっちゃんの存在は早々に共有されていたのである。

 マジで金のない頃にはご飯差し入れてもらったりもしていたのでほんとに世話になったのである。

 でも恥ずかしいからやめてほしい……。

 

「でもなっちゃん、あまり無茶なことはしちゃだめよ!」

「っす…」

 

 受付おばちゃんは俺のレベルがわかってるわけで、そういわれるのも仕方ない。

 

「あ、それでね。お礼がしたいってんで、あの子からゴブリンの納品分預かってるのよぉ」

「いらないんで戻してやってください」

 

 ゴブリン倒せる子だったんかい。

 完全不意打ちの天井トラップにはまっちゃった感じだったんかな。てことはもしかして50HP回復じゃ全快しなかったんじゃない?

 

「了解しました。まああの子もまだ怪我残ってるしね」

 

 やはりレベル1ではなかったか。最近の中学生つよい。

 

「目は大丈夫でしたか」

「失明分は昨日で治ったよぉ! よかったわぁ。やっぱり小さい子がああなるのは寝覚めが悪いものね」

 

 少年はしばらくは20D治療が受けられるように在原ダンジョン併設のホテルに泊まってるらしい。もちろん重傷者がいれば優先されるので必ず受けられるとは限らないが、それでも他のダンジョンよりは可能性が高いだろうし。

 

 ちなみにダンジョンで負った怪我はダンジョンから出ない限りはすべてポーション治療が可能だ。ダンジョンから出てしまうと怪我が少しずつ固定されて、ポーションでは治療できない部分が出てくると言われている。

 あの少年も治るまではホテル暮らしだろう。まあ病院いくより安く楽に済むはずだ。ダンジョンでの怪我とはそういうものなので…。

 

 おばちゃんと別れて午後の部。

 少年に会うのも気まずいので、別のダンジョンに移動するかなー。

 

「あ、どうも」

「…ども」

 

 なぜか昨日のおっさんに会ってしまった。これはこれで気まずい。

 

「今日も潜られますか」

「いえ、別のとこ行こうかと」

「はは、この混雑ですしね」

 

 特に弾む会話もなく、おっさんとは別れる。

 おっさん週末冒険者っつってたのにド平日に2日もダンジョンきていいものなのか?となんとなく振り向くと、おっさんは受付の向こうへ入っていった。

 ダンジョン職員だったのかよ!?

 なんとなく目が合うとぎこちないウィンクなどされた。おい。

 道理で6層でへばってた割に健脚だったわけだ。

 たぶんへばってたわけじゃなくて事故防止に来てたんだろうなあ。あの迷路、わりと入り組んでたしな。

 

 

 今日は初心に帰ってスライムと戯れるぞ、ということで浅倉ダンジョンへやってきた。だって近かったから…。

 そろそろ中央から西側のダンジョン巡りもしようと思いつつ後回しになりがちだ。電車移動長いと、めんどくさくなる。

 

 そういえば浅倉ダンジョンも貸切あったけど、こっちのクランは何事もなかったんだよな。

 途中で飯食ったのでもう15時近い。最近、Dあると思ってサボり気味でいかんな…。いや、だいたい解体のせい。

 いつも通りさくさくと手続きして中へ。

 

 思ったよりスライムが多い。壁に床に天井にとやたら張りついているのを、付与棒で丁寧につついて落としていく。

 落ちる魔石が小さいので、いちいち拾う方がめんどくさいまである。拾わなくなるやつがいるっていうのもわかるわ。

 まあ魔石は必ず拾えというのがダンジョン協会の鉄則なんだが。魔物とダンジョンが魔力で出来ている以上、魔石放置はよくないだろうって思われるのもまあわからんでもない。

 

 落とした魔石をチマチマ棒で拾っているとざわざわとした話し声と慌ただしい足音が遠くに聞こえた。こっちにくる、わけじゃないな。入り口へ向かっているのか?

 この時間なら学生とかだろう。元気なこった。門限あるから急いで帰るとかかもしれんな。

 いや、まだ16時だけど。早いとこは早いかもしれんし。

 

 ……なんか嫌な予感がするけど、気のせい、気のせい。昨日の今日で怪我人とかやめてくれよ本当。

 

 と思ってたのに発見しちゃうんだよなあ。

 

 右手右足が広範囲に焼けただれた推定中学生。男。ぐったりとして動かないが息はしている。

 スライムは一度酸を吐くと二度目に吐くまで結構時間がかかる。てことで酸を溜めてそうなこいつは遠くへ放り投げて、ぺいっと。

 スライムはリンクする魔物ではないので、怪我しても焦らず対処すれば死ぬことはまずない、と冒険者のはじめの頃に教わるんだけど、動転すると忘れちゃうんだろう。

 例外としてスライムの吐いた酸を払ったときに別のスライムにかかっちゃうとそいつが襲いかかってくるときはあり、そういうのが動転の原因にもなるとか、なんとか。

 

「生きてる?」

「……」

 

 返事がない。気絶かな。

 ロビーまで連れて帰るのはいいが、20D回復は過疎地のここじゃやってないだろうしなあ。

 

 ……。

 ちょっと気になることがあるし、ポーションかけとくか…。

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