仮暮らしの成田さん 作:ぽぽんぽん
さてカプホに帰ろう、と思ったらまだいたのか君ら。中学生たちがロビーにいた。
受付のおばちゃんがこちらへ目配せしてさっさと帰るように言っている。んえ、嫌な予感。
「あの、ポーションを譲ってください!」
あー…。そういうやつね。
「もう開封してるポーションがありますよね!?」
「怪我してないみたいだし、どうせ消えちゃうんだし、分けてください!お願いします!!」
「20Dですよね!? 払いますんで!」
頭下げられてもなあ。
「嫌っす」
「そんな!!」
「やめなさい! 救助要請費用は本来なら300Dです。無償で連れ帰ってくれただけでも感謝すべきことだって言ったでしょう!」
おばちゃんの掩護射撃。
その隙に俺はカプホへ逃げます。
やっぱり余計なことはするもんじゃないなー。反省、反省。まあこういうこともあるぞ、という戒めになった。
別にポーションあげてもよかったけどさ。
あいつら、一度はトモダチ見捨てて逃げてるわけじゃん? それを治してあげようみたいなのが気にくわない。あと待ち伏せされてたのも嫌だ。
二度あることは三度ある、なんてならないようにしたい。
全快させればよかったのか? ヒールのレベル上げにって考えもあるかもだけど、俺の場合は付与も弱化も使うからヒールばかり人に使っていられない。回復量少ないし。
金持ちになるのも考えものだ。手段があるというのは、その手段を使わない選択をするということになる。
見捨てるのも勇気、かー。
結局、浅倉ダンジョンも居づらくて1日で移動。
ああいう子たちはいつも同じダンジョン潜るんだろうし。まあ昨日の今日でいないだろうとは思うけども。
今日は西坂ダンジョンに行くことにした。ゲンキノコの採取が目的だ。あとは肉も手に入ればいいなと。
「あっ、成田さん」
「…ちわっす」
うお、スライムバイトしたときの人だ。名前覚えられてるが残念ながら俺は覚えていない。しまった。
用件は土日バイトしないかというお誘いだった。土日かー。休むつもりだったんだよな……。
「インフルで欠員が出ちゃって」
「あー」
インフルかー。残念ながらダンジョンの中にいても風邪は引く。人から人へうつるもんだから仕方ない。
「いっすよ」
「ほんとかい! ありがとう!」
俺はこういうの、頼まれると断れないタイプ…。
土日働いて、月火休もう。
今日も午前中で切り上げて午後解体室の予定だったし。
詳しく聞いてみるとインフルで1人ではなく3人沈没してるらしく、なかなかのハードな職場になりそうだった。先に言え!
とりあえず今日は予定どおりゲンキノコを取りに来た。ありました。ここって案外、穴場なのかね?
そういえば以前拾ったカラスの巣は特になにもなくぷにもちに食われた。調べてみると、カラスのいる地形によってはお宝が入っているケースもあるらしい。
ここではそういうのは望めないかな。
ダンジョンが断崖絶壁の地形とかの場合は結構いいもの入っているという噂。行きたくない…。
キノコ取ったらさくさく3層へ。お肉と菜っ葉を刈ってすぐ戻る。
お肉もといウサギは弱化したらあっけなく倒せたので、調子にのって何匹か倒した。いや、魚もあるのに倒しすぎたな。でも魚はそろそろ消費期限が近い。
別のダンジョンの素材でも買取はしてくれるから、捌いて売ってしまってもいいかもしれない。
午後からは解体室。
麦茶と炊飯器を仕込んで、まずは魚を解体。売るなら弱化する必要はないので(ペット用の餌になったりするらしい)、MP節約出来てさくさく。
それでも残り5匹もあったのでなかなか大変ではあった。
次にウサギの解体。ゴブリンに比べれば全然マシ! 毛皮を剥ぐのは相変わらず難しかったが、前回よりは綺麗に出来た。ランクD。うるせえわ。
ウサギの毛皮は市場で売る方がいい値がつく。市場枠、今空いてるから出しておくか。
肉は取っておくとして、内臓はぷにもち行き。受付に出すのは尻尾と魔石だけだ。
しかし解体した途端、普通の食材と同じ消費期限になるのは解せぬ…。しかも収納、常温だしな。肉を食べるのに毎回さばかないといけないのは不便だ。
マジックバッグが欲しい。100万ないから無理だけど! あったとしたら買っちゃってたかもしれない。
資産になるから、冒険者引退するときに売却すれば結構な値段で売れるしさ。
いや~でもさすがにこの前みたいな変なアイテムを入手できることはないだろうから、100万に資産が届くことはないだろう。
でも夢見るのは自由よ。
……まあ、地道にいこう。
ウサギ、シチュー的なものを作りたいが材料が全然足りない。今度スーパー行ってシチューの素買ってこよう。
収納には入らなくなるが、その場で食べる飯としては使える。そうじゃないと外で飯食ってダンジョンに帰ることが出来なくなる。
今日のところはニンニクパウダーと醤油で焼いて食べた。魚もいいけど、肉もやはりよい…!
内臓を処理した後、解体室をうろついてたぷにもちがやたらキラキラしてる。おまけになんだか上下にぶるんぶるん揺れてるので、ちょっと呼び寄せる。
どうしたどうした。
え? なんか出来そう? なにが?
〈従魔が進化可能です〉
おあ!?
あわてて調べてみると、ペットが進化した話を見つけた。それは犬だったが、ウルフハウンドに進化したらしい。全然姿が変わってしまってちょっと悲しかった、という話だった。
ああー、ペットはな…。姿が変わっちゃうとちょっと困るよな、散歩とかも…。
当然のようにスライムの進化報告なんてないわけで、さてどうするか。
いや進化させるしかないんだけども。
〈進化先→マジックスライム〉
1種類だけか。選択肢がないなら逆に安心でさえある。失敗がないということだからな!
マジックスライムが何かわからないのが難点ではあるが、まあ、なにかしらマジックなんだろう。
魔法使えるとかだったらすごいが、そこまで優秀なものになるとは思えない。だってぷにもちだし。そんなー。
うん。お前が進化しても俺の扶養家族なことには違いない。頼むからあまりでかくはなってくれるなよ。
進化ぽちー。