仮暮らしの成田さん   作:ぽぽんぽん

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4.冒険者パス

「お、青色ゼリー」

 

 スライムのレアドロップ、青色ゼリーは特に用途のないアイテムで、今のところ無価値。魔物素材はまだまだ未知数で、研究が進んで真価がわかれば価格がはねあがることも多い。

 ダンジョンとは一攫千金ドリームが眠る大地だ。

 なのでこれは1円玉貯金と思って貯めてる。999個までなら収納に入るし。

 

 それにしても73体目にしてようやくの青色ゼリーか。

 やっぱり、大量にわいたスライムからは青色ゼリーが出ない説は合ってる気がする。俺が勝手に思ってるだけだけどね。

 

 それにしても人がいない。まあ平日午後の1層なんてせいぜい2、3人しかおらんもんだけど、それにしても今日は誰にも会わない。

 スライムのことしか知らんけど、2層にいる洞窟ウリボーとかも増えているのかもしれない。

 

 ダンジョンは、基本的に3層までは洞窟型らしい。そこから個性出してきて、平原型とか迷路型とかいろいろ分岐する。もちろん4層以降も洞窟型のところもある。浅倉ダンジョンはたしか洞窟型だったはず。

 1層はだいたいスライムしか出ないが、2層からは4層以降の階層によって出てくる魔物が少しずつ異なる。

 洞窟ウリボーは名の通り洞窟型に出る子イノシシで、だいたい中型犬サイズ。

 うまく狩って解体すればいいお肉が手に入るとあって、人気の魔物だ。それだけにライバルは多いし、事故も多い。

 ウリボーも増えてるならそりゃ2層3層行く方が金になるだろう、腕が伴う冒険者ならば。

 

 あーはいはい、かなしーかなしー。

 ウリボー相手に棒なんか秒で折れますわあ。

 まあウリボー狩りにも問題は多々あるらしいが、それはそれ。うらやましいいい。

 

 おっとまたスライム。今日は1周する前に100体いきそう。大量だなー。

 

 年末、12月下旬ていうこの時期のも影響してるんだろな。

 元々ダンジョンは、ダンジョンパスの関係で月末の人手が少ない。

 

 俺たち「冒険者」という仕事は一応、免許制で、ダンジョンへの入場回数と討伐数、及び貢献度がランクごとに定められている。これ以下になると免許剥奪ってやつね。

 その代わり、ダンジョンに関するあらゆる補償を受けることが出来る。管理施設内のホテルに安価で優先的に泊まれるのも冒険者免許のおかげだ。

 

 もちろんダンジョンの入場にも冒険者パスはいる。しかし、なら免許なしの一般人はダンジョンに潜れないのか?というとそういうわけでもない。

 ダンジョンパスがあるからだ。

 

 ダンジョンパスは簡易講習を受けて取得する短期限定冒険者パスもどき。

 月5回までダンジョンに入場できる。

 兼業冒険者、というより、ダンジョンでちょっとバイトしたいな、という人が利用している。日曜冒険者ってやつ。

 更に世の中にはダンジョンデートなるものもあるらしい。正気か?

 ダンジョンパスだと障害補償なんかは最低限しかついてないんで、怪我したら大赤字だ。

 だから俺は最初に冒険者免許(パス)取ったんだけどね。講習めっちゃ高かったけど。

 

 3月に免許取ってるから、2月にはまた更新しないといけないんだよなあ。お金かかる。

 初心者ランクである緑証は毎年更新だ。青証以上になると3年更新。最高位の金証なら5年に1度。遠い遠い夢物語よ。

 

 青証に上がるにはLV3、スキル3つ以上が必要になる。あとD資産5万以上。とはいえ実はD、人に見せる機能はないので自己申告だったりする。

 ただポーションとか普通に必要になってくるから、このくらい持ってないと全然駄目ですよ、ていう指標としての数値らしい。

 もちろんサバ読んで受ける人も多いが、ちゃんと持ってる人の方が多いのだとか。世の中の青証冒険者は大抵、金持ちらしいですわよ。

 

 税金も青証と緑証では全然違う。というか緑のが高い。緑は兼業冒険者が大半だから、優遇がほぼないのだ。

 

 俺はといえばまだLVは2。スキルは「魔法:エンチャント」だけ、貯金は1000D(円は別)とかなりショボい。

 冒険者始めたときは来年には青証と思ってたけど、まあ、無理無理。無茶いうな。

 

 受付のおばちゃんに「なっちゃん、真面目だから来年には青ね~」とか言われて真に受けてしまった自分が恥ずかしいくらいだ。

 やだやだ。

 

 ぐるっと1周3時間の散歩で124体のスライムを倒した。いくらなんでも多すぎるだろ。

 昼休憩(きゅー)のために一度外へ出る。

 

「おかえり、どうだった?」

「多いっすねえ。換金お願いします」

「はーい、悪いけどゼリーも全部出してもらっていい? 売らなくてもいいけど、数を確かめたいとかで」

「あー…。ゼリーは前から持ってる分と混ざっちゃいました。たぶん5個くらいと思いますけど」

「あらら。ならいいわ、5個って書いとくわね」

「すんません」

「いいのよ~、無理いってるのこっちなんだから!」

 

 ぽんぽんと朗らかなおばちゃんの話を聞き流しつつ、カウンターの籠にじゃらじゃらと魔石を出す。

 スライムの魔石は、おはじきみたいに小さくて薄い水色をしている。強い魔物になると大きかったり、色が濃かったりするらしい。

 

「あらほんと多い」

「124個っす」

「はいはい、パスかざして」

 

 カードリーダーにかざせばピロリンと音が鳴ってDが入ってくる。

 

「換金はどうする?」

「30D分で」

 

 4500円也。

 さて、コンビニでご飯買ってくるかな。昼と夜と、明日の朝の分と。

 

「あ、なっちゃん、午後からはどうするの?」

「あー…、まだわいてたんでもっかい来ます」

「よっしゃ、ありがとね~、待ってるわぁ」

 

 ただのスライム狩りではあるが、喜ばれるとちょっと嬉しい。

 

 

 忘れてたけど外めっっっちゃ寒かった。

 カレー! カレー買ってカップ麺と、あとおでんにホットのお茶、カロリー足すのに菓子パン、ホットスナックのチキン。

 夜どうすっかなあ。買いにいくの寒い。

 

 2300円也。

 うへえ、食費が一番高くつく。

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