仮暮らしの成田さん   作:ぽぽんぽん

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50.クラフトジンジャエール

「ちなみにどのくらい回復?」

「200mlで15回復ですね」

「おっ、いいじゃん」

 

 そうでしょうそうでしょう。

 

「どうする、ヨシカワ」

「も、もらいます…」

 

 ヨシカワは顔を歪めて苦渋の決断といった様子。

 ……そんなに劣化ポーション飲むのって屈辱的なもんか?

 ちょっと冒険者の常識わかんない。

 

 クラフトジンジャエールは使いきってしまえと思って作ったら2L分になった。そのまま収納に入れてある。

 カップに注ぐとなぜかギョッとされた。

 

「は…? 収納から直接出した?」

「リットルあるんで」

「めっちゃ買ってるな?」

 

 そう、か? 飲み物ならリットル買い普通じゃね?

 

「冷て! やっぱりクーラーボックス持ちか成田!」

「マジで!?」

 

 あ、しまった。

 まあいい、別に持ち物くらい個人の自由だろ!

 

「なにこれシュワシュワしてる」

「ジンジャエールっすから」

「ジンジャエール!?」

 

 いいから飲め。

 

「…あ、うま…!」

 

 ぱっとヨシカワの顔が明るくなる。

 あ、もしかしてあれか。劣化ポーションは不味いと思ってたやつ!? それで嫌そうな顔してたのか。

 

 ごくごくとあっという間に飲み干したヨシカワの傷が、逆再生で消えていく。完治とまではいかないが、瘡蓋がはってるくらいには回復したようだ。

 ジンジャエール試飲はしたけど、別に怪我してなかったからポーションとしての能力があるかは疑問だったんだよな。人体実験してしまった。

 

「はー…、劣化ポーションってそんなのもあんのか」

「いろいろあるっすよ。烏龍茶とか」

 

 市場眺めてると時間が溶けるもんな。ほんといろいろある。飯は全然人気過ぎて買えないけど。飲み物もまともそうなのは全然買えない。

 こないだ烏龍茶見つけて購入したらなんか本格的な中国茶のやつだった。美味かったけど、これじゃないやつ。みんな価格適当につけてるんだろうなーて感じで、その辺は価格の上下では判断つかなかったりする。

 しかし素材が間違いなく買えるようになっただけでも、鑑定の価値はある。

 

 ヨシカワがまともに動ける程度には回復したので、階段を目指してまた進む。

 またメイジが3匹出たりしたが、ヨシカワを下がらせた3人が強くて全然問題にならなかった。

 

「とうちゃーく。この道は速いけどメイジが多かったな」

「利用はレベル帯によりけりか」

 

 4人が話し合ってるのをジンジャエール飲みつつ聞く。人が飲んでるの見ると飲みたくなるよな。

 

「って成田はなんでジンジャエール飲んでんだ」

「水分補給に」

「水分なの!? いや水分だろうけどさ!」

 

 そもそも飲むために持ってきたし。

 ポーションとしての機能ももちろん視野には入れてきたが、分けるとかじゃなくて自分の怪我を予想してのものだった。

 でも予想外にがっちり護衛されちゃってるもんで、分ける気にもなったというか。

 

 しかしジンジャエール、次に作るときはもう少し辛口にしたいな。ショウガパウダーの量を増やしたらいいんだろうか。

 ちなみに普通のジンジャエールはぷにもちが食った。ポーションで白色ゼリー生んだし、これならどうだと思って食わせてみたんだけど、ゼリーは生まなかった。おいしー、と言ってたのでまあよし。

 

「…飲みます?」

「飲む!」

 

 ヤマモトに聞いたら全員飲むことになった。ヨシカワも2杯目だ。まあこいつは怪我してるのである意味正しい消費。

 

「まじで冷てえ!」

「甘い…染みる…」

「あー……いいなこれ」

 

 好評なようで何よりである。

 

「これ市場で買えんの? いくらくらい?」

「買えるかどうかは運次第っすねー。価格もピンキリ」

 

 自家製クラフトジンジャエールの価格は時価である。

 しかしジンジャーパウダーもレモンも砂糖もスパイスもそこまで高くない。炭酸水だけちょい高いんだよね。水でよければもっと安くなる。しかし炭酸は譲れない。

 シロップだけならたぶん1Lで10Dくらいじゃないか? 炭酸水が20Dくらいするので、30Dか。

 販売する場合は材料費の3倍、なんていうけどどうなんだろな。

 

「これは90Dで買ったやつっすね」

「意外と羽振りがいいよな成田」

「大ハズレだけどスキルオーブ当てたんす」

 

 砂のことがばれる方が大問題なので、そういうことにしておく!

 

「あー、宝箱か! なるほどなー」

 

 ヤマモトがうなずきつつ、収納からメイジの杖を出した。

 

「バイト代は戻ってから渡すけど、とりまメイジの杖、これ1個120Dくらいだから渡しとくなー、ポーション代」

「っす」

 

 メイジの杖ってそんな高値なのか。

 もらえるものはもらっておこう。

 

「なのでもし残ってたら残りも欲しい」

「いっすよ」

 

 そういう話だったか。あと4杯だけどな。

 

「今飲むっす?」

「いや、後でもらう、でもいいか?」

「いっすよ」

「やっぱり冷えてる方がいいもんな!」

 

 ヤマモトたちはクーラーボックスは持ってないのか。いや、あえて隠してるってこともあるか。まあ、冒険者のスキルやアイテムは飯の種だ。なんでもかんでも明かすのはよろしくないのだろう。

 俺も気をつけた方がいいのかもだが、下手に隠してボロが出る方が問題になりそうだしな。まあヒールは隠しておくけど。期待されても困るショボさなので。

 

 9層を2周して、2日目午後の探索を終えた。8層階段前で今夜は休むことに。

 HPは全快なので肉体的疲労は大したことないのだが、精神的にやはりずっとダンジョンの中というのは堪える。これが草原エリアとかだと多少は気が紛れるんだろうか。いや、やはりダンジョンの中なら同じか。

 カプホもダンジョンといえばダンジョンだが、矢とか魔法が飛んできたりしないもんな。

 ちょっと慣れたとはいえ、やはりびっくりする。

 寝る前にぷにもちにMPを食わせてやり、おやすみなさい。

 

 翌日は8層からの帰還だ。最短ルートを通ってどれくらいで帰れるかを確かめるらしい。

 特に何事もなく、5時間ほどかけて帰還した。

 

「5時間か」

「まあまあいいタイムじゃないか?」

「30分縮んだな」

 

 こういう話聞いてると、ダンジョンに深く潜るって大変なんだなーってしみじみする。

 それから清算。といっても俺のバイト代は先に決まっていたので、40万を受け取った。多いよなあ…!

 

「どう考えてもバイト代で赤じゃないっすか?」

「いんや、そうでもない。いろいろあんのよ」

 

 ヤマモトはニヤニヤ笑っていた。

 単純な魔石とかの収支ではマイナスに見えるが、情報料とかいろいろでプラスにするってことだろうか。そういうのもあるんだな。

 

「鑑定助かったわ。またよろしくなー」

「っす」

 

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