仮暮らしの成田さん   作:ぽぽんぽん

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59.オークメイジ

 名状しがたい声を上げてオークメイジが頭を押さえた。

 

 有効!

 ゴブリンに効いてたからどうかと思ったが、オークにも効くらしい。

 

 俺は床湧きしてるスライムを次々にオークメイジへ放り投げた。たまに酸が出ない個体もいるようだが、床湧きしてるだけあって山ほどいるので弾は大量にある。

 

 このまま倒せてくれ! という俺の希望は無情にも叶わず、オークメイジはジリジリと後退してはいくが、まだまだ元気そうだ。

 さすがにスライムでジャイアントキリングは無理か!

 

 しかし顔面は焼けただれ、視力は失ったらしくふらふらしている。

 せめてここで杖を奪えれば、だいぶ脅威は下がるんじゃないか?

 

 弱化を腕を目標にかける、まさにディザームを試みる。ついでに10フィート棒でも腕を思い切り叩く。

 手離したところを収納!

 

「――成田、しゃがめェ!!」

 

 背後から聞き覚えのある声がして、指示通りにしゃがむ。

 

 ドッとオークメイジの頭に矢が突き刺さった。

 ゆっくりと後ろへ倒れていく。

 

 た、倒した?

 

「無事か!?」

「っす」

「て、スライムまみれじゃねえか!?」

「あー…」

 

 だいたい酸吐き終えてるから安全だけど、潰しておくか。

 

 駆けつけてきたのはヤマモトたちだった。止めをさしたのはニシノの弓。

 シノノメがスライム潰しをつきあってくれる。ヨシカワがいないのはレベルが低いから置いてきたんだろう。

 

 たぶん下の階層を攻略中だったのを、情報を聞いたか見たかして上がってきてくれたんだろな。助かったわ。

 

「助かったっす」

「いやほとんど倒せてただろ。やけに手応えなかったし、止めだけもらったようなもんだ」

「その止めが無理だったんで」

 

 もう打つ手なしだったから、マジで助かったわ。

 

「ポーション開けてるなら飲んどけよ、足」

「っす」

 

 足。

 動かないと思ったら、最初のやつで避けきれてなかったのか。あと、スライムの酸の余波もかなり食らってるな。HP見たら100切っててびびった。危ねえ!!

 ステータスを見つつ、ポーションを飲む。5口で全快。あと3口分。クーラーボックスに入れておこう。

 

 ヤマモトがオークメイジの死体を仕舞った。あれはさすがに持って帰るのか。

 

「6層からオークメイジのワンダリング出るんじゃ、在原中層も人気なくなるなあ」

「その分レベル上げに使えて効率いいっしょ」

「まあな~」

 

 帰り道が一緒なので連れだって歩いている。というか下の階段のところで集まってた人も合流しているので、結構な団体だ。

 ヨシカワが階段のところで待っていたそうで、彼と連絡を取って倒したことを伝えたのだ。同ダンジョン内ならスマホが通じる不思議。

 

 そのままどんどん上へ上がってロビー到着。

 

 受付のおばちゃんにめちゃくちゃ心配されてちょっと恥ずかしかった。

 そしてそのまま受付の奥へ連れていかれる。二度目!

 

「やはりワンダリングで確定ですかぁ…」

「オークメイジはきっついよな」

「まだオークナイトなら見学ツアーとか組めたかもですが」

「いやいや、誰が盾するのそれ。さすがにマスター泣いちゃうよ」

 

 ヤマモトとおっさんが話しつつ、奥にあるやたら広い解体室のような部屋へ案内される。

 俺も行かないとならんの? ヤマモトたちだけでよくない? 駄目? そう……。

 

 そこでヤマモトがオークメイジを出して、あーだのこーだの見聞が始まった。

 

「ずいぶん爛れてますけど」

「あー、それは成田がやった? よな?」

「っす」

「何か薬品でも持ち込まれてます?」

「いや、スライム投げつけたんで」

「ああ! なるほどそういうことでしたか」

「器用だよな成田」

 

 器用極なのでね!

 

「無手オークメイジだったんです?」

「あ、それも成田」

「っす」

 

 オークメイジの杖を出す。ちなみに鑑定によると魔力+7の杖だ。これって俺のものになる?ならん?どっち?

 

「魔力杖ですね。なるほどなるほど。あ、仕舞って結構です」

「これって俺のでいいんすか?」

「そら成田のだよ」

「あそこでぶん捕ってくれたから俺らも割って入れたわけだしな」

 

 そうだったのか。

 もし魔法の動作に入ってたら助けには入れなかったらしい。まあ直撃のリスクがあるのに前には出てこれないよな。それはわかる。

 誰だって自分の身がいちばん大事だ。

 

「使ってた魔法は何かわかります? なんか熱かったとしかみんな言わないんですけど」

 

 皆の視線が俺に向くが、俺にもわからん。

 

「見えない熱の塊みたいな感じ?すね。炎ではないけど熱かったっす」

「光のレベル2か3?」

「それか火の3以降でしょうねえ。どなたか情報出してくれると助かるんですけど」

 

 光魔法はそもそも人気がない。そして使用機会も少ないので、レベル2以降の情報がまちまちだ。

 光の範囲がでっかくなるだけの魔法を覚える人が多い一方、攻撃魔法を覚えたという噂もある。たしかな情報ではないので、あくまでも噂っていう。

 火魔法の3レベルも到達してる人が少ないので、情報が少ないらしい。

 

 エンチャントみたいに2レベルで覚える魔法が複数という魔法がある一方、攻撃魔法は2レベルでも1つしか覚えられない関係か、人それぞれ覚える魔法が違う。といってもレベル2では3種類あるうちの1つ、というように決まっているようだが。

 3以降になるとデータが少なすぎて種類がわからないらしい。そのくらいのレベルになると秘匿も増えてくる。

 

 その後はワンダリングモンスターの討伐金というのをもらえることになった。

 俺じゃ倒せてないからと言ったんだけど、ニシノが弱化されてるから刺さったと主張するので、半々で分けた。

 

「半々でも多いんだが」

「俺は杖もらってるっす」

「それはそうだけど、こっちは魔石手に入るし、オークメイジは死体もあれこれ使えて高いからトントンくらいだぞ?」

 

 オークメイジの死体はそんなに高いのか。ゴブリンとは違うらしい。解体されるのかね。ヒト型を解体するのはいくら金になるとしても俺には無理だな。

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