仮暮らしの成田さん   作:ぽぽんぽん

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名称未設定鉱物

「うーーん、やっぱり出てないですねー」

 

 今日も市場を延々と眺めていた弓削は、目を押さえて呻いた。

 はー疲れ目。はーしんどい。ダンジョンのシステムはスマホを見るよりはまだ楽だけど、それでもやはり字を追い続けるのは疲れる。

 

 弓削が探しているのは、「名称未設定鉱物:礫」。そのなかでも末尾が0001という、特殊なナンバーを持つアイテムだ。

 年末から年始に掛けて突如現れ、そのすべてを売り抜けて消えた。

 

 弓削たち迷宮調査団が買えたのは、年始に出た礫だった。ほんの匙1杯にも満たないほどの、細かな砂。

 それがいま各種クランが血眼になって探しているアイテムとなっている。

 

 なぜか。

 それは、災害指定区域と成り果てたダンジョンを再生する一手となり得るからだ。

 

 この「名称未設定鉱物:礫:0001」は、ダンジョン特区に()()()()()()()()()()()()()

 ダンジョンが溢れて特区を作り出すのと逆。あふれたダンジョンを収集し、階層型ダンジョンを再生してしまう。

 

 この効果によって、実験的に()()()()()()()()()が犠牲になった。

 

 ひとつは浅倉ダンジョン。

 ダンジョンの中に新しいダンジョンが生まれ、そのダンジョンは秘密裏にコアを取り除かれた。このダンジョンの分裂ともいえる出来事によって、浅倉ダンジョンは最下層が()()()()()。ダンジョンが消失したのだ。

 

 そしてもうひとつは在原ダンジョン。

 こちらもまたダンジョン内に新しいダンジョンが生まれ、コア破壊時に元のダンジョンを傷つけた。結果、迷宮鳴動が起きてしまった。

 今はまだ伏せられているが、こちらもおそらく最下層が浅くなっていることが予想されている。

 

 ダンジョンを栄養に、新たなダンジョンを作成する力を持つ砂。

 これはダンジョン社会において光明であり、同時に闇でもあった。

 

 世界からダンジョン災害区域がなくなることは歓迎すべきことだ。しかし同時に、もしすべてのダンジョンが消えてしまったら?

 我々はすでに、あまりにもダンジョンを受け入れ過ぎてしまっている。

 

 

 かの事件において迷宮調査団は大いに泥を被った。この危険物質の性能を表に出すよりは、ひとつのクランが負える範囲のバッドニュースを出す方がマシだと政府は考えたらしい。

 そして迷宮調査団のマスターはそれを承諾した。

 

「L55だって多少は被るべきだったとは思いますけどねー

 

 同調査に辺り、浅倉ダンジョンを担当したクラン「L55」が済ました顔をしているのが弓削には気にくわない。

 こっちが在原ダンジョンにかかりきりになっている隙に、新しい情報を出し抜かれるんじゃないかと気が気ではないのだ。

 

 一縷の望みをかけて市場を探しているが「名称未設定鉱物:礫」はあれからまったく姿を見せなくなった。

 

「売り主さんは今ごろ、ウハウハでしょうねー」

 

 初めは1粒1Dで売られていた礫は、最終的には1粒300Dにまで価格が上がった。

 クラン資産からすれば、傾くほどの金ではなかったが。

 それでも300Dに上がった礫に腹を立てたのは記憶に新しい。まるでこちらの足元を見るみたいにして。

 

「ダンジョン災害区域のために自腹を切った我々を褒めてもらいたいくらいですよねー」

 

 マスターいわく、資金は日本円で多少補填されたというが。

 Dの価値は、今や円では代えられない。

 

「うーーんん、まったく腹立たしいですーー」

 

 弓削の頭を今もっとも悩ませているのは、在原ダンジョンの中層が暗闇エリアであるという情報だった。

 攻略には「魔法:ライト」が必須。けれど、こんな光るだけの魔法、取っているものはクランにもほとんどいないのだ。いてもすでに引退したご隠居ばかり。

 

 スキルオーブは換金や物々交換に便利なので保管している。しかし人によってはメモリを全破壊するようなアイテム、そうそう使ってみろなんて言えないわけで。

 

「あああーー」

 

 このままだと弓削がダンジョンへ行く羽目になってしまう。「魔法:ヒール」と「魔法:アクア」を持つ、しがないクラフターでしかない弓削が!

 スキルリストに「魔法:ライト」が出ていることをこんなに悔やむ日が来るとは思わなかった。

 

「風呂無しむさい野郎の集団と真っ暗闇なんて最悪ですーー!!」

 

 




成田とは関係ないところで起きていたアレコレ。
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