普段はログインユーザーとして活動してるものです。
諸事情により今回は匿名で出させていただきます。
それではプロローグをどうぞ
「人は、過ちを繰り返す。」
それは核戦争により荒廃したアメリカを題材とした作品、「Fallout」シリーズを代表するキーワードである。
Falloutの世界では第二次世界大戦後、核の力をただの武力としてだけではなく様々な分野で使用できる画期的なエネルギーとして活用していた。
大型機械やロボットのジェネレータ、車等の身近な乗り物への動力、そして発電所至るまでもが核の力によって稼働していた。
いわゆるレトロフューチャーを体現したこの世界は、核の力によって大きな繁栄をもたらした。
だが、その核は世界を崩壊させる直接の原因となった。
2050年の石油枯渇によるエネルギー危機の発生を皮切りに、世界のいたるところで資源を求めての戦争が勃発。
そして2077年10月23日……
世界は核兵器による最終戦争を持って文明を崩壊し、世界の終末とともに戦争が終結した。
「……我々は……一つ……!!」
「敵だ…!!敵だ…!!」
「殺せ…!!殺せ…!!」
『ちぃっ、数だけは多い!!』
薄暗い廃墟の中、雪崩のように駆け込んでくる皮膚が焼けたかのような見た目のゾンビのような生物「スコーチ」を一体のロボット…ではなく、パワーアーマーを着た一人の男が薙ぎ払っていた。
『おらぁッ!!』
掛け声一発、男はそこら辺から拾ってきていた大斧「グロッグナックの斧」を振りかぶってぶん投げた。
元から鍛え抜かれた肉体の弩力に加えてパワーアーマーからの出力も加わり、ぶん投げられたグロッグナックの斧の回転に巻き込まれてしまった哀れなスコーチたちは、悲鳴を上げることなくまとめて肉塊へとその姿を変えた。
『おまけにもらっとけ、このクソったれども!!』
男はどこからか取り出した、いかにも何かを射出するかのようなカタパルトらしき武器を構え、そこに乗っている大きな爆弾のようなものを部屋の向こうにたむろしているスコーチへとぶっ放した。
打ち出された瞬間、どういうわけか二つに増えて飛んで行った爆弾は先頭にいたスコーチたちを吹き飛ばしながら部屋の奥へ着弾。
「「「「ギャアアアァァァァァッ!?」」」」
とてつもない爆風と光を伴いながら爆発したそれは、着弾地点付近だけではなく男の前に躍り出ようとしていたスコーチたちを含めて盛大に吹き飛ばした。
だがそれでもなお、爆風を逃れたらしいスコーチたちが大量に押し寄せてきていた。
『…ったく、どんだけここに集まってたんだか。』
男はそうぼやきながらも、またどこからか武器を取り出して構える。
『スコーチども!!お前たちでベリー・ウェルダンのステーキを焼いてやるぞ!!』
そういいながら手に持った武器「聖火」のトリガーを引き、押し寄せるスコーチを調理し始めた。
『ハァ………終わったか。』
青く澄んだ空の下。
周辺に比べて比較的きれいながらも、明らかに廃墟であると感じさせるビルの屋上で彼はそう呟いていた。
彼は先ほどまで使っていた銃火器のようにどこからともなくヌカコーラを取り出すと、その場に座り込みながらパワーアーマーのヘルメットを外して一気に中身を煽りはじめた。
「んぐ…んぐ……プハァァァァァッ……!!仕事の後の一杯は効くな。」
まるで仕事終わりの中年男性が酒をがぶ飲みしたかのような声を出す男……と、いうよりは少年というべきかもしれない程若く見える青年は空を見上げる。
空には今日も元気に仲間を遠征に連行していくベルチバードや、多分また素材集めでもしたくなったのだろう仲間が打ち上げた核ミサイルが飛び交っていた。
「はぁ……、今日もアパラチアは平和だ。」
どこからか聞こえてくる銃声とスパミュやフェラルの断末魔を聞きながら、彼はそんなことを呟いていた。
彼が暮らすこの大地はアパラチア。
直接的な核攻撃こそなかったものの、流入してきた放射能等によってかろうじてほかの場所よりはマシ程度の被害を受けていた地域だった。
…まぁ最も、それは過去の話だ。
今では核戦争の時よりも多い量の核兵器が飛び交い、各地で無法者や略奪者…さらには放射能で変異したクリーチャーに加えてたまに宇宙人やUMAまで入り混じっている混沌とした地獄である。
『〈ビープー〉よぉ掃除屋!!そっちの仕事は順調か!?』
「あ?さっき最後のビルの始末をしたところだが……そっちのほうはまだ終わってないみたいだな。」
『仕方ねえだろ!?こちとら急に湧いてきたスコーチビーストの残党どもを駆除してんだ…『しゃべってる暇あったら手を動かせ!!死にてぇのか!!』チッ、うるせぇッ!!こちとら援軍呼んでんだよ!!つぅわけだ!!依頼人の死体探してキャップを取る羽目になりたくなきゃこっちに手を回せ!!通信、アウト!!』
「…ハァ、めんどくさい。」
そういいながら彼は持ってたヌカコーラの瓶を投げ捨て、パワーアーマーのヘルメットを装着して立ち上がる。
『あいつらは…ホワイトスプリング近くの裂け目担当か。んじゃ、ちょいと急ぎ目のマラソンでもするかねぇ。』
そういいながらビルを飛び降り、倒壊したビルの間を爆走していくのであった。
……数時間後……
「「「「「乾ぱ~い!!」」」」」
ホワイトスプリングの元はゴルフ場だった大きな芝生の上で、酒やヌカコーラを持った多数の男女がバーベキューパーティを開いていた。
「ひゃははははッ!!飲め飲めぇ!!」
「ゴラァ!!それは俺の肉だァ!!」
「あ?んだとこの玉無し野郎が!!こいつは私の肉だよ!!」
「うぃ~あんた、俺とヤラナイカ?」
「いや、俺はノンケだって…おい、何下半身見てやがる⁉や、やめ…!?」
「ヒィィィィィハァァァァァァァッ!!俺様のガトリングは最強だぜぇぇぇぇぇ!!」
「んだとぉ、俺のパワーフィストのほうがもっとすげぇぞぉ!!」
「へッ、その程度で最強か?俺のこのミサイルランチャーのほうが……」
「「いや、スコビに全然効いてなかったじゃねえか、そのミサイル」」
「うあああああああッ!!言うんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」
「「「「「「ギャハハハハハハッ!!」」」」」」
まさに混沌。
そういわざるを得ない光景が広がっていた。
「…ったく、まだ制圧も終わってねぇうちにのんきなもんだな。」
「まぁまぁ……それでもアパラチアのスコーチはほとんど駆除されたんだし、今ぐらいは喜びましょ?」
パーティ会場の端の木陰にて、青年と若い女性が混沌とした光景を肴にビールを煽っていた。
「…んで、例のヤツに関してはなんか分かったか?」
「ああ、あのよくわかんないゲート状の機械でしょ?」
彼は彼女との話の中で、数日前に発見したものを頭に思い浮かばせていた。
数日前のモスマン教団の拠点
「あぁ……、聖モスマン……。あなたの元へ……」グシャツ
『ハァ、コイツで最後か。』
生き残りだったカルト信者の女の頭を踏みつぶし、青年は手に持つ血塗れになったオートアックスの血をはらう。
青年はいつも通りに依頼を受けて仕事をしていた。
今日の依頼はモスマン教団の支部を壊滅。
同時にほかの教団の拠点も一斉に襲撃し、モスマン教団をアパラチアから駆逐する計画らしい。
まぁ確かに彼らは生かしといても利のない害虫のようなものであるため、この扱いも妥当だろう。
『…ったく、ずいぶんとまあ手こずらせてくれたなぁ?』
青年は死体を蹴って転ばせ、何か有用そうなものがないか死体を漁り始めた。
死者への冒涜にも等しいが、殺された状態で前衛的オブジェにされたり食肉として扱われたり、最悪性処理道具にされるよりかは遥かにマシだろう。
アパラチア住民の倫理観はまさに世紀末であった。
『……ん?これは……鍵か?』
死体から鍵、それもこの拠点の責任者的立ち位置だったらしいこの死体が持っていたことを考えると何かしら重要なもの……もしくは、そこそこ旨い物資がここにあると考えるべきだろう。
そうしていろいろと探索したところ、部屋の奥に隠された鍵穴を発見した。
『ふむ、こいつはずいぶんと臭いな…。こんなところに巧妙に隠すとはよほど知られたくないんだろうなぁ?』
そんなことを宣いながら躊躇なく鍵穴にぶっさすあたり、彼もまた立派なウェイストランド人だった。
鍵が開けられ、開かれた隠し扉。
パワーアーマーのライトを点灯して中をクリアリングした。
…隠し部屋には誰もいなかった。
ただ一つ、部屋の中央に謎のゲート状の機械が安置されているのみだった。
ターミナルを調べてみたがパスコードを入力しないと何も動かせないどころか内部情報へのアクセスもできないらしく、そのパスワードも近くにあったよくわからないホロテープを解析しないといけないというクソっぷり。
おまけに、ハッキングを仕掛けても全然歯が立たなかった。
と、いうわけで発見したこの機械について依頼主であるVault-76出身者の組合に報告。
この手の解析業務に長けたチーム+B.O.Sのほうから回された技術者によって解析が行われた。
ちなみに第一発見者である彼にも情報共有は行われており、覚えが良いらしいB.O.Sのナイト・シンからは接収せずに一応の管理を任せられている。
と、いうこともあってその解析チームの責任者である彼女から報告を聞いていた。
「……で、結局あの機械のターミナルは結局どうにもできなかったと。」
「ええ、あのホロテープも私たちができる範囲ではそこまで大きな収穫はなかったわ。」
まあ、結果は芳しくなかったようだが。
「……でも、ひとつだけわかったことがあるの。」
「あのホロテープの中に記録されてたプログラムのうちセキュリティ部分のプログラムを解析したら、戦前にロブコ社が開発してた[特定のPip-Boyに読みこませるとセキュリティが解除される記録用ホロテープ]に使われていたプログラムと同じものだったらしいの。」
「開発していた……ってことは、普及はしなかったのか?」
「ええ。なんでも、そのセキュリティプログラムが重すぎてホロテープで保存できるのがパスワードコードみたいな短文ぐらいだったそうよ?」
青年は納得した。
確かにその程度しか保存できないのでは使い道はあまりないだろう。
そもそも特定のPip-Boyという時点で個人の端末への使用となるわけだが、設定した本人が忘れでもしない限りは読み込ませる必要性もない。
備忘メモ感覚でホロテープを使うというのも、コスト的に微妙なところだ。
「つまるところ、あのホロテープの解析もできないからこれ以上はあの機械の解析もできない、ということか。」
「まあね。私たちのPip-Boyだけじゃなく、63の人達やエンクレイブのとこの76の連中にも調べてもらったけど、全部だめだったわ。」
となると、あの施設は現状維持のままB.O.Sの方へと管理を委託したほうが良いだろう。
やってることはレイダーと変わらないが、文明や技術の保護を行うあそこに引き渡すのが賢明だ。
「…でもね、一つだけまだ可能性があるわ。」
「まだ解析をやる気なのか?」
「もちろんよ。その可能性が今目の前にいるんだもの。」
「…どういうことだ?」
彼はいぶかしんだ。
なぜ、そこで己が出てくるのかわからなかった。
「…あなたのことは風のうわさで聞いてるわ。
「76でも63でもないのに戦前の機械であるPip-Boyを持っていて、しかもその出で立ちも一切がわかってない流れ者の掃除屋。」
「スコーチビーストクイーン討伐戦で、取り巻きの伝説級個体を三体まとめて相手にして生き残った英雄」
「そんなオカルトもびっくりな超人様のPip-Boyなら可能性があるんじゃないかしら?」
「…別にあのコウモリを複数相手してひきつけてたのは俺だけじゃない。」
「知ってるわ。でもね、スコーチをあそこまで狩りながらあそこまでビーストを弱らせれたあなたは私たちと同じかそれ以上の化け物よ?」
そういいながら彼女は手に持っていたビールを飲みほした。
「…明日、あなたのPip-Boyで試させてもらえないかしら?報酬はこれでいいでしょ?」
そういって彼女は懐から取り出した紙袋を投げ渡してきた。
受け取って中を確認すると、100キャップ程入れられていた。
「…いいだろう。どうせ明日は連中も休暇だとかで依頼がないからな。」
「決まりね。じゃ、私は料理でも取ってくるわ。」
そういいながら彼女は喧噪あふれるパーティ会場へと消えていった。
道中でセクハラでもしたのだろうバカが、ヌカランチャーで飛ばされたミニニュークのようにぶっ飛んでいたが気にすることでもない。
翌日
青年の姿は元モスマン教団支部だった建築物の前にあった。
「…で、なんであんたがここにいる?」
「今回の件の監視だ。」
同時に、その横にはB.O.Sのナイト・シンがいつものパワーアーマーを着こんで威圧的な空気を醸し出していた。
「ずいぶんと仕事熱心なこったなぁ。用途も何もかもがわかってない機械一つを見に来るとは。」
「口を慎め。正直に言えば、私としてもお前に管理を任せるのは苦渋の選択だったんだ。」
相も変わらずの様子で軽い口を叩いてると、解析班の奴に呼ばれたのでシンとともに彼は隠し部屋へと向かう。
発見した時から部屋の様子は様変わりしており、いたるところに解析に使ったらしい研究用ターミナル等が所狭しと置かれていた。
「やあ、昨日ぶりね。早速だけどこれを読み込んでちょうだい。」
解析班リーダーの女は青年が入ってくるのを確認するや否や、あいさつ一つで手に持っていたホロテープを早速押し付けてきた。
無駄な会話をすることもなく、彼女は記録用のメモ用紙を構えていた。
まあ、特にもったいぶることもないのでPip-Boyのスロットへとホロテープを差し込んだ。
すると……
「これは…何かしら?」
「言語…なんだろうが…」
結果から言うと、ホロテープのセキュリティは解除された。
解除はされたのだが…そこに書かれていたのはアルファベットの羅列ではなかった。
「…日本語だ。」
「日本…?あの島国の?」
彼には分った。
それは、己の故郷である日本の言語だと。
「…そうか、お前は流れ者だったな。なんと書いてるのか報告しろ」
「それは良いが…意味は全く分からんぞ?」
そういって彼はその文章を読み上げた
―我々は望む、七つの嘆きを
―我々は覚えている、ジェリコの古則を
「…何が言いたいのかさっぱりね。」
「…なぜ、お前のPip-Boyでそれの解除ができたのかも分らんのだがな。」
「俺に聞くな。一番わからんのは俺だぞ。」
三者三様だが、それぞれ頭を悩ませた。
「…こちらとしては、お前のPip-Boyを接収し保護したいところなのだが…」
「喧嘩を売るとはいい度胸だな、え?」
青年はどこからともなく黒色火薬ピストルを取り出し、ナイト・シンの額へと銃口を向ける。
この間0.1秒ほどである。
「…貴様を敵に回すのはこちらとしても本意ではない。」
「賢明だな。」
冷や汗を流すナイト・シンの傍ら、青年はパスワードを機械のターミナルへと打ち込む。
よくよく見るとターミナルの操作キーがかつての日本のパソコンのような入力方式であった。
いまさらになって気づいたが、問題なく日本語でそれらのパスワードは入力された。
すると……
「…ッ!?装置が起動した!!」
ゲートの枠に光が灯され、何やら光の壁のようにも見える渦を巻いた何かがゲートに張られる。
「総員、退避ぃぃッ!!」
ナイト・シンの号令を聞き、彼らは即座に部屋を脱出しようとした。
…が、しかし。
青年は何かに足をつかまれた。
「なッ!?」
そのまま彼はゲートへと引きずり込まれだした。
だが、青年はどこからかナイフを取り出して地面に突き刺し、抵抗を試みた。
…そしてその一瞬だけだが、己を引きずりこむものを見た。
途端に、強く引っ張られて彼はナイフから手を離してしまった。
青年が完全に引きずり込まれるのと同時にゲートは光を失い……
隠し部屋は、完全に倒壊した。
報告書
内容:モスマン教団の拠点で見つかった謎の装置について
モスマン教団の支部の拠点にて見つかった装置は、あの日完全に壊れてしまった。
ターミナルへのアクセスと同時に装置が起動し、起動者である掃除屋「セイジ」を巻き添えにして部屋ごと崩壊してしまった。
後に事故現場を掘り起こしたが、機械の残骸はあれど彼の遺体は見つからなかった。
あの装置が何だったのかは不明だが、解析班やB.O.Sの技術者の見立てだと戦前からいまだ実現には至っていなかったテレポート装置ではないのかという仮説が立てられた。
なんにせよ、彼の損失でアパラチアの復興計画は大きな遅滞が発生することとなった。
実力的に彼と同レベルの76は何人もいるが、彼らはかなり自由人気質なものが多い故に協力は得づらい。
私たちが前線に動員される日も、そう遠くないだろう。
新年あけましておめでとうございます。
そして、不定期ながらも今年からよろしくお願いします。