アパラチア帰りの外道の先生生活日記   作:SCOPEWOLF

101 / 101
さて、本日二話目です。
感想でも言ってましたが、とある生徒にとって今回のこの一件は地獄への片道切符……
まだ原作のほうがマシだったかもしれない悪夢への入り口に過ぎません。
もちろんセイジは曲がりなりにも先生ではあるので、生徒の願いを聞いてそれを叶えるために動いてはくれます。
……しかしそれは本当に彼女が望んだことだったのでしょうか?
というわけで本編をどうぞ


間話:策士策におぼれる

完璧な計画のはずだった。

 

あの大人がいくら強かろうと、キヴォトスでも屈指のエリート部隊であるFOX小隊であれば制圧が出来ずとも多少の手傷を負わせ、適当な理由をつけてヴァルキューレ主導で逮捕にこじつけることもできたはずだった。

 

なのに、なのにだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぜ……!?」

 

 

 

今、私は窮地に立たされている。

 

FOX小隊の向けた銃口の先にいるのはあの大人……連邦生徒会顧問教師のセイジではない。

 

彼女達が向ける銃口の先に立たされていたのは……私だった。

 

 

 

「何故……か。

その疑問が出る辺り、どうやら全く気がついてなかったみたいだな?」

 

「い、一体……貴方は何をしたんですか!?」

 

「なに、簡単な話だ。

歪な形になった権力を修正してあるべき形に直した……

俺がやったことなんぞそれぐらいだ」

 

彼はソファから立ち上がり、先ほどまで私がやっていたような仕草で語りだした。

 

「そもそもだ。

SRTのような特殊部隊がたった一人の一存のみで動かせたというのがおかしな話だ。

こういう組織はワンマンで責任云々を抱えるにはリスクもデカい上、例え抱えられたとしてもそいつがいなくなればただの金食い虫だ」

 

「……だからこそ、俺はそれを書き換えて修整してやった。

責任は一人ではなく特定の数人に。

たとえ責任者の一人が居なくなろうが管理や維持、活用ができるように。

特殊部隊……軍というものが本来あるべき形になるようにしてやったというわけだ」

 

目の前の男が語るその内容……

 

それはまさに、私が危惧しつつ利用しようとしていた連邦生徒会とSRT間での責任をめぐった軋轢。

 

本来SRTは連邦生徒会長直轄の部隊。

 

あの超人以外の生徒会メンバーでは権限的に動かすことが難しく、動かすにしても誰がその責任を取るのだという厄介事の押し付け合いによって、彼女たちの立場は宙ぶらりんになっていた。

 

そのままにしておくのは忍びないとヴァルキューレへの統合案こそ出ていたが、防衛室としてはそんな事をされても困るというのが本音。

 

そもそもSRTとヴァルキューレでは運用方針や使用する装備等が大きく違い、統合するとなるとその分こちら側も手続きやら運用マニュアルの教育やらで余計に人を取られる。

 

確かに後には人が増えるだろうが、今の不安定なキヴォトスの情勢でヴァルキューレの人手を割いてまでやることかといえばそれは否である。

 

そういうのはもっと落ち着いている時に時間をかけてやることだ。

 

つまるところ……私としてはヴァルキューレへの編入自体には反対の立場であった。

 

しかし、この統合案を進めてるのはリン代行のシンパ。

 

リン自体は特にSRTの方については意識していないようであり、実態はリン派の議員達が彼女自身の意向を確認することなく進めているのが現状であった。

 

……だからこそ、私はカイザーと手を組んでまで色々と手を回していた。

 

ヴァルキューレの装備の拡充、FOX小隊を抱き込んでリン派の一部議員の排除、その他にも表には出せないようなアレやコレや……

 

全ては少しでもあの超人に追いつき、自分こそが彼女の変わりに相応しいと証明するため。

 

自分こそが新しい超人と世に知らしめ、キヴォトスを導く。

 

 

……そのはずだった。

 

 

そんな私の悲願も、これまでの努力も、何もかもをこの男は踏みにじり、皮肉にも自分の目的通りのことを成し遂げてみせたのだ。

 

「ふ、ふざ……ふざけるんじゃないですよッ!?

私が……私が何のためにここまでやったと……ッ!!!」

 

「ふむ?カイザーの駒として働いて、奴らの思い通りの世界にしてやる事がそんなに上等なことなのか?」

 

「………は?貴方、一体何を言って………」

 

「まだ気づかんのか………

奴らは別に連邦生徒会のトップがどうなろうが知ったことじゃない。

結局その全てを奪ってしまえば大して変わりはないんだからな?」

 

……この男は、一体何を言っている?

 

それじゃあまるで……

 

「……私がカイザーの手のひらで踊ってるとでも言うんですか?」

 

「そう聞こえなかったのか?

むしろ今まで気が付かなかった辺り、お前が鈍いのかあいつらの服芸が上手かったのか分かったもんじゃないな」

 

そう言いつつ、彼はどこからともなく書類の束を取り出して机に叩きつけるように置いた。

 

その書類には見慣れたカイザーのものと思われる報告書が……は?

 

「……なんですか……何なんですかこれは……!?」

 

私は思わず書類の束へとかじりつくかのごとく目を走らせ、その内容に絶句した。

 

その内容は……今の私には到底受け入れられないものだった。

 

 

――連邦生徒会制圧作戦草案

 

 

――シャーレビル内部のオーパーツの確保について

 

 

――防衛室長不知火カヤへの対応と作戦後の処遇

 

 

捲くれば捲くるほどカイザーの闇が噴き出し、自身も計画のための捨て駒として利用されているという真実に頭を殴られる。

 

「そんな……!こんな……こんなはずでは……!」

 

「下手な野心を持った奴はみんなそう言う」

 

私が呆然とする中、彼は……セイジ先生は私へと一歩歩み寄る。

 

「ヒッ……!?」

 

思わず、私は小さく悲鳴を上げながら後ろに下がり……

 

何かに引っかかって床に尻もちをつくように倒れる。

 

「野心とその心意気は随分と立派だったが……

最後は全員、社会という名の怪物に喰われた」

 

「こ、来ないで……来ないでください……!?」

 

私は腰を抜かしたまま後ろへと下がるが……下がったすぐそこには逃げ道はなく、無情にも壁しかなかった。

 

「「自分はこうならない」「同じミスは犯さない」

……そいつらはそんな事を言っていたが、身の丈に合わん事に首を突っ込んで身を滅ぼした」

 

逃げ道を無くした私に一歩で大きく近づき、彼は目の前でしゃがみ込むと私の目にその恐ろしい双眸を映し込んだ。

 

「だが、お前は運が良い。

代償を払う事にはなるが……お前のその望み、叶えてやろうか」

 

そう言って差し出された右手。

 

恐怖と絶望に支配された私にとって、その手はまるで仏の御手のようにも見えた。

 

……しかし、私の本能は理解している。

 

その手は仏の手などという慈悲に満ちたものではない。

 

それを掴むということ……それは悪魔に魂を売るも同然の行為であると。

 

目の前の男は神などという神聖なものではなく、地獄から這い寄ってきた悪魔のような人間なのだと。

 

だが、だが………

 

 

 

 

 

私は、自身の欲と我が身の可愛さに負けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この場に立っておきながら、今更私は後悔した。

 

確かに私は望みを叶えた。

 

………しかし、それは偽りで塗り固められたもの。

 

風に煽られて化けの皮が剥がれかねない、ハリボテの栄光だった。

 

……結局、私は超人にはなれなかった。

 

カイザーに踊らされ、嵌めたつもりになっていた男に救われ……

 

そして、その男によって神輿として担がれる人形へと成り果てた。

 

ならば……ならばせめて私は全うしなければならない。

 

欺瞞と虚構で塗り固められた、偽りの超人としての私を。

 

 

「この度はキヴォトスの皆様に多大なるご迷惑と安全保障上の不安を与えてしまい、誠に申し訳ございませんでした」

 

 

……しかし、この時だけは私は心から謝るしかない。

 

全ては私が蒔いてしまった種なのだから。




いかがでしたか?
私なりの見解ではあるんですが、多分カヤは色々と迂闊だったり言葉に乗せられやすいだけでそれなりに頭自体は回ると思うんですよね。
故に悪くはない線を行く策を講じて実行し、半ばぐらいまでは成功させたりもできるとは思います。
……が、想定もしてなかったような事態が起きてしまったことによって地獄を見るぐらいには不憫な星がついてるんだろうなぁとも思っております。
ま、半分自業自得みたいなものなので仕方ありませんね。
というわけで、また次の話をお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

巡る探索者、青き青春の果てを見る(作者:抹茶3939)(原作:ブルーアーカイブ)

自分から首を突っ込んだり、勝手に巻き込まれたり、探究心、はたまた死した人を蘇らせる為に、狂気の世界へと足を踏み入れる者「探索者」▼彼らは狂気から逃れる事は出来ない、世界はそれを許してはくれない▼そしてその果にある物は凄惨な死である。▼そんなクソったれの世界で平穏な暮らしを求め、狂気を追い、狂気に抗い続ける。そうすれば何もしないよりも少しは良い結末になると信じ…


総合評価:626/評価:7.69/連載:37話/更新日時:2026年06月18日(木) 06:00 小説情報

なんかジェイソンの見た目と能力持って転生したのでハッピーエンド目指して頑張ります(作者:YONATSU)(原作:ブルーアーカイブ)

不慮の事故で死んでしまった主人公▼次に目を覚ますとそこは砂漠だった!▼ついでに身体がジェイソン(の見た目)になって、【13日の金曜日】のゲームの能力を得ていた。▼そんな彼がドシドシ原作に介入してハッピーエンドを目指すお話▼どうも初めてまして、YONATSUです。今回初めて小説を投稿してみました。駄文、ご都合主義、エミュ下手な部分が多々あるのでご注意ください。…


総合評価:403/評価:6.39/連載:12話/更新日時:2026年05月07日(木) 21:54 小説情報

blue sky archive(作者:subnautica)(原作:ブルーアーカイブ)

アトラスの導きで銀河を再編した一人のトラベラー”コースト”▼役目を果たした後は自由気ままに宇宙を飛び回っていた。▼一人銀河を渡り歩くコーストは、偶然にもキヴォトスの存在する惑星Earthを発見する。▼好奇心に駆られ降り立った砂漠で彼が見つけたのは、倒れ伏す一人の生徒だった……▼Blue Archive×No Man's Skyのクロスオーバー▼No …


総合評価:317/評価:7.86/連載:29話/更新日時:2026年06月17日(水) 17:05 小説情報

ACを作りたい少年とセミナー書記(作者:雨垂れ石)(原作:ブルーアーカイブ)

ひょんなことからキヴォトスに流れ着いた少年『境井 仁』もとい『レイヴン』▼彼が目指すのは人型機動兵器『アーマード・コア』を開発する事▼そしてそれを見守るセミナー書記とエンジニア部など様々な人物▼果たして彼は『AC』を作る事ができるのか▼そんな物語です▼※俺が書いているもうひとつの小説『無名のリンクス 先生になる』の世界とは別の世界線です▼それと、ストーリー流…


総合評価:853/評価:7.42/連載:30話/更新日時:2026年06月17日(水) 20:09 小説情報

知らない天井は独房だった。(作者:鋼蛙)(原作:ブルーアーカイブ)

黒いコートを羽織り、銀のリボルバーを携えた青年は気が付くと、神秘に満ちた透き通るような超銃器社会「キヴォトス」…………にある独房にいた。▼多くの謎や苦難の中、彼はシャーレの一員として、先生や生徒達関わりながら、確かな”青春”と”奇跡”を体験していく。▼※宜しければ、活動報告のチェックもお願いします。▼※タグ・あらすじは展開に合わせて変更がある場合があります。…


総合評価:813/評価:6.81/連載:66話/更新日時:2026年05月29日(金) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>