さてさて、遂にカイザーに攻め込む……
とお思いの方もいらっしゃったと思いますが、その前に2〜3話程間に入れます。
理由としては、今後に繋がりかつここでしか入れられない話があったので。
というわけで、早速決戦前夜の様子である本編をどうぞ。
ブリーフィングから数時間程経って日が沈みだした頃。
アビドス高校のグラウンドではB.O.Sの一部の隊員達と民間の有志による炊き出しが行われており、戦場となったアビドス市街地から避難してきた住人達や休憩に入った隊員達の腹を満たしていた。
「……はい、カレー四人前!配膳急いで!」
「野菜の下拵え間に合ってない!何やってるの!」
「柴関さんのほうが満席!こっちに流れてくる!」
「唐揚げとソーセージが全滅!追加の補給はまだなの!?」
「オラァ!買い出ししてきたぞコノヤロォ!」
「メンチ切ってる暇あんならそこのメンチカツでも揚げてろバァカッ!
こちとら仕事が捌けきってないんじゃボケェ!」
B.O.S側の炊き出しをしている厨房はまさにカオス。
もはや戦場とも称せる空間で割烹着姿の少女達があちらこちらと動き回り、次々にやって来る腹をすかせた避難民や食べ盛りの隊員達を撃破せんと必死の闘争をしていた。
一方民間側だが、B.O.Sの支援のもと調達された材料を用いて自主的に炊き出しを手伝っており、その中心となっているのはアビドス一番のラーメン屋「柴関ラーメン」だった。
「はい、セリカちゃん!この三つ配膳して!」
「分かりました!」
屋台のぐつぐつと煮える寸胴鍋から飛び出した麺たちが湯を飛ばしながら丼へと吸い込まれていき、流れるように注がれていくスープの表面が静まる頃にはトッピングがいつの間にやら盛られていった。
一滴たりともこぼすことなくカウンターに置かれたラーメンたちの姿はすぐに消え去り、次の瞬間には腹を空かせた者たちの前へと並べられていた。
「はい、バイトちゃんもお願いね!」
「あ、あぁ!……私はバイトなのか?」
しかし、ラーメンを並べているのは一人ではない。
セリカと違って柴関の制服は着ていないが、彼女が身に纏うのは肩に百合の花を象ったワッペンが付いたB.O.Sの隊員服……
オレンジと灰色のカラーリングのパイロットスーツのような見た目で、他のB.O.S隊員のものとは少し違う意匠の識別バッジを身につけていた。
それは現在のB.O.Sの中でもほんの一握りしかいないエリート兵士の証。
B.O.S所属「ナイト•Lilly*1」は現在、柴関の臨時バイトとして働いていた。
時は少し遡る。
ブリーフィングが終了して間もなく、B.O.Sの隊員達がグラウンドに急遽設置した防衛陣地の中で食事用の設備を用意しだした時だった。
アビドス高校へと急遽一時避難することになった住民たちが到着するのと同時に、どこからか屋台を引っ張り出してきた柴大将をセリカは手伝っていた。
大将曰くセイジにも既に話は通しており、使用する食材などの負担はすべてセイジのポケットマネーという契約のもとで彼ら有志の民間ボランティアが結成されたそうだった。
なおなぜセイジのポケットマネーで負担なのかというと、まだB.O.Sは公式には結成したてで予算が正式に降りておらず、B.O.Sや連邦生徒会から出すのは難しいからとのことだ。
とまぁそんな裏事情はさておき、屋台の設置や机と椅子の配置などで忙しなく二人が動いていたときのことだった。
「……私にも手伝わせてくれ」
そう二人に話しかける人物が現れたのは。
大将とセリカが声の主の方へと目を向けると、そこにはまだ見慣れないながらもちょくちょく視界に映っていた……
特にセリカにとっては先程のブリーフィングぶりに見たパイロットスーツの少女……
B.O.S所属らしい兵士の一人が話しかけてきていた。
「貴女、もしかしてあの軍隊の……?」
「B.O.Sナイト、リリーだ。
本当なら本名を名乗りたいけど、任務中は規則でコードネームだからな。
すまないが今はこれで勘弁してくれ」
「あぁ……えっと?
よ、よろしくナイト•リリーさん?」
セリカは困惑しつつも、手を差し伸ばしてきたナイト•リリーの手を取って握手を交わした。
「うーん、人手があるのはありがたいんだが……
お前さん、確かさっきの戦闘に参加してた子じゃないか?
セリカちゃんにも言ったが、明日に備えて休んだほうが……」
「いや、問題ない。
確かに私も明日は出撃だけど、何もせずにゴロゴロしてるよりは動いてたいから。
……それに、そこのアンタには謝りたいこともあったしな」
「……え?私?」
ナイト•リリーが向けた視線の先にはセリカがおり、どうやら本命の用があったのは彼女にらしい。
困惑するセリカの前へとナイト•リリーは歩みを進め、彼女の前まで来たところで大きく頭を下げた。
「……あの時はごめん!
雇われてたとはいえ、アンタを誘拐するために集団リンチみたいな事をしようとした!
許されないことなのはわかってるけど……もう二度と、あんなことはしない!」
「は?え……はぁぁッ!?」
一瞬セリカの脳みそは彼女の謝罪の言葉に混乱していたが、彼女の言った誘拐という言葉で心当たりがあることを思い出して彼女の正体に気がついた。
「アンタ……まさかあの時のカタカタヘルメット団!?
なんでアンタがこんなとこにいるの!?」
「私……というかあの時のヘルメット団はほとんど全員B.O.Sに入ったんだ。
私はちょっと違うけど、他のみんなも罪滅ぼしも兼ねて今回の作戦に参加してる」
そこからナイト•リリーはあの日の顛末と、今の元カタカタヘルメット団のメンバーたちの現状を語った。
あの日、彼女達カタカタヘルメット団はセイジの手により事実上壊滅したが、当時のナイト•リリーがB.O.Sに入ったことで他の皆が契約で見逃されたこと。
そんな彼女を追うように他の団員たちも次々にB.O.Sに入隊し、今ではその内の数人がスクライブやナイト候補として訓練を受けられるぐらいには実力や学力を身につけているらしい。
「……そういえば、先生もB.O.Sが不良の更生とかもしてるって言ってたわね。
うぅん……すっごい複雑……!複雑だけど……!」
うがーとひとしきり頭を抱えて悶えたあと、自分の中で色々と割り切れたのか改めてナイト•リリーへと向き直った。
「アンタ達がやったことは確かに許せない。
……でも、アンタたちにもアンタたちなりに私らを襲う理由はあったし、それももう無くなって今は反省して償おうとしてる。
これで今更ぐちぐちと嫌味を垂れるなんて私らしくないし、そんな嫌らしい事をしたくないもの」
一つため息を吐きつつ、セリカは改めて片手を差し出す。
「貸し一つ、それでチャラにしましょ?」
「……ッ!あのときは、本当にすまない……!」
ナイト•リリーは差し出された彼女の手を取り、挨拶のときの軽いものとはまた違う握手……
しっかりとした、誓いの握手を交わすのであった。
いかがでしたか?
ブルアカのブルー……
つまり青春要素を入れたかったのでこうなりました。
まぁこれが本当に青春なのかは私にもわかりません。
いかんせん、まともな青春というもの送った覚えが無いもので……
というわけで、また次の話をお楽しみに