はい、ここからはアビドス編EXステージ。
まさかのビナー戦の開幕でございます。
なんでここでビナーが出てくるのか……
それは、本作におけるビナーの設定にも関わるので今は言えません。
ですがあえて言えることがあるとすれば……
さすがのセイジも、こんな事態は想定していないということ。
ただそれだけですね。
というわけで、本編をどうぞ。
基地の南側、一面に広がるアビドス砂漠方面。
包囲網を解いて基地の方向へと退却するB.O.Sの隊員達をいくつものミサイルが襲いかかった。
「うぉぉわぁぁぁッ!?」
「ヒィィィッ!?!?た、助けてくれぇぇぇッ!?」
「チクショォォッ!!なんで私らまたこんな目にぃぃッ!!」
絶叫を上げながらもジープのアクセルをベタ踏みして逃走するイニシエイト二名とスクライブ一名。
運転するスクライブの腕前のおかげでなんとかミサイルの直撃は避けられているが、それでも着弾時の衝撃や爆風が彼女達を襲っている。
故に天井すらない車内からは少女達の悲鳴が響き続けており、彼女達自身も爆発で舞い上がった砂煙やミサイルの破片などでズタボロだったり砂まみれだったりとひどい惨状だった。
――バキッ!!ガガガガガガガッ!!
「あぁ、クソッ!!このオンボロこんな時にイカれやがった!!」
「嘘だろ!?これ確か私らから押収したカイザー製のだろ!?」
「やっぱりアイツらカスみたいな不良品を押し付けやがったなチクショウめッ!
おい、あとどんだけ走れる!」
「もう無理だ!アクセルが効かねぇ!
全員飛び降りろぉぉぉぉッ!」
運転手のスクライブの声に合わせ、三人は一斉にジープから飛び降りた。
その直後……
――ドゴォォォォォンッ!!!!
上空から飛来したミサイルがジープのど真ん中へと突き刺さって爆発。
もはや原型ものこってないレベルのスクラップと化したジープを振り返り、スクライブは絶望の声を上げた。
「いぃぃぃやぁぁぁああぁぁぁッッッ!?!?!?
私のジープがぁぁぁぁぁッ!?!?」
「言ってる場合かおバカ!早く逃げるぞ!!」
叫ぶスクライブを無理やり担ぎあげ、イニシエイトは相方と共に全力で走り出した。
そしてそんな彼女たちへと無慈悲にも追加のミサイルが襲いかかってきていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉッ!?!?
助けてパラディン!ナイト!チユリィィィッ!!!」
「ヒィッ、ヒィッ!?!?し、死ぬぅぅッ死んじゃぅぅッ!?!?」
例え元ヘルメット団の彼女たちとはいえど一応はキヴォトス人。
本気を出せば当然そこらの車と大差ないぐらいの速度で走れるが、慣れない全力のダッシュは体力的にかなりの負担となってしまっていた。
それ故にか……
――ズリッ!
「あっ、ヤバ……」
――ズサーーッ!
「みっちゃん!?」
イニシエイトの一人が足を砂に取られ、そのままコケてしまった。
突然の事にスクライブを担いでいたイニシエイトも思わずその場に止まってしまう。
そして、そんな彼女達を狙ったかのように一本のミサイルが……
『やぁぁらぁぁせぇぇるぅぅかぁぁッッッ!!!!!!』
飛来してきていたが、勢いよく飛び出してきたナイト•Lillyのスーパースレッジにぶん殴られて明後日の方向へと弾き飛ばされた。
「「チユリ!」」
『今はLillyだっていってるでしょうがおバカ!早く逃げろ!』
更に追い打ちで飛んでくるミサイル数発ををスーパースレッジの連撃で弾き飛ばしつつ、ナイト•Lillyはかつてのヘルメット団の仲間達へと逃げるように促した。
「だ、だけど!アンタ一人じゃ……」
『フハハハハハッ!案ずるな、元ヘルメット団の!』
かつての仲間であったが故に二人のイニシエイトはナイト•Lillyを置いてただ逃げるということを受け入れられなかった。
……しかし、そう間もなくして高らかな笑い声とともに二機のパワーアーマーが彼女のすぐ近くへと飛んできた。
『私が来たぁぁッ!』
『それ言いたいだけでしょ姉さん……。
まぁとにかく、アンタらは早く下がって?』
その二機は腕の識別マーカーこそイニシエイトのそれだが、その立ち振舞はそれなりに実戦経験があるらしい実力者のものであった。
更に後ろからも四機のパワーアーマーが駆けつけて来ており、その先頭にいるのはキヴォトスB.O.Sのトップであるパラディン。
他がT-60やその改造品であるのに対して一人だけT-51に乗っている大人、セイジであった。
『そこのイニシエイトとスクライブ!無事か!』
「ぱ、パラディン!は、はい無事です!無事ですけど……」
「やつのミサイルのせいでジープが……」
「わ、わた………わたし、の……ジープ……」
『あー…まぁ、ジープについては後でどうにかしてやる!
お前たちはアビドス高校の陣地までベルチバードだか基地に残されてたヘリだかで撤退しろ!』
「Yes, sir!!……大丈夫、なんだよな?」
『任せな、三人とも。もう私は、前までの逃げてばっかの私じゃない……!
今ここにいるのは……B.O.Sのナイト!ナイト•Lillyだ!』
そうナイト•Lillyが啖呵を切ると同時に彼女の前方にあった砂丘の砂が盛り上がり、中から真っ白で長い無機質な巨体が鎌首を持ち上げるかのように現れた。
「"それは……信じていいんだね、黒服?"」
『えぇ、今回に関しては信じていただかなければ私としても困ります。
貴方方がここで退場してしまうこと、それは今の私にとっても不利益ですから』
基地の一角、先ほどまでカイザーのオペレーターたちが陣取っていた中央司令室兼通信室であった一部屋。
〇〇先生は生徒たちが現場へと急行している中、突然かかってきた電話の応答をしていた。
電話をかけてきた相手はゲマトリアの黒服。
〇〇先生も面識こそあるが、思想的に根本から相容れない相手として嫌悪感を抱いている相手だ。
しかし、今この状況においてはそうも言っていられなかった。
「"……貴方を信じるのはとても嫌だけど、今回はセイジさんに免じて信じるよ。
でも、貴方が生徒に手を出すなら……"」
『クックック……そこはご安心ください。
下手に生徒に手を出せば貴方だけではなくセイジ先生からも命を狙われてしまいますので』
不気味に笑う黒服だが、命を狙われる発言をした時の彼の顔はどのようなものだったのだろうか?
少なくとも、常人であれば彼に狙われるということそのものが恐怖でしかないのは間違いないだろう。
『……私からお伝えできるデカグラマトン「ビナー」についての情報は以上です。
先生、どうかくれぐれもお気をつけください。
アレは本来、このような形で会うはずのない不可解な行動をとっていますから……』
それだけを言い残し、黒服からの通話が切れた。
先生はため息を吐きつつ、頭の中で黒服から伝えられた情報を整理していく。
かつてのキヴォトスの住人が作り上げた神の模造品。
神名十文字……デカグラマトン。
その名にもある十の名前の一つを与えられ、機械でありながら神秘の力を持った異常な存在……第三の預言者「BINAH」
一応先生はセイジからデカグラマトンという謎の機械の怪物がいるとは聞いていた。
……しかしその真相はただの怪物と片付けていいものではないように〇〇先生は感じていた。
第三、ということはまだ上にも二つの預言者と呼ばれる怪物がいる事になる。
しかも名前の通りであるならば、そんな怪物が全部で十もいる……
正直黒服からの情報でなくとも信じたくはなかった。
オマケに黒服からはビナーの武装も教えられたが……
大道の劫火とかいう大層な名前のミサイルだけでなく、砂がガラス化するほど高温の極太レーザー*1を放てるというのはただただ驚異でしかなかった。
レーザーそのものはアサルトロンのチャージレーザーを知ってはいるが、黒服いわくそれの完全な上位互換だそうだ。
正直そんなものを聞かされて頭を抱えずにはいられなかった。
生徒たちの身の安全もそうだが、一番の懸念材料はセイジだ。
彼はパワーアーマーを着てるとはいえ、中身は"恐らく"ただの人間。
もし、パワーアーマーの装甲がそのレーザーに溶かされるようなことがあれば……
〇〇先生としてはゾッとするしかない話だった。
しかし、今の戦力で前線を抑えられるのは彼と彼の率いるB.O.Sの隊員……
そして、自分の指揮する愛すべき生徒たちだけだ。
……自分も戦えれば、こんな気持ちにはならないのだろうか?
ただの的外れな考えとは切り捨てがたい悩みを胸にしまい込み、〇〇先生はシッテムの箱とセイジたちとの通信が繋がっている無線機へと向かい合った。
いかがでしたか?
因みにですが、B.O.Sの隊員はナイトやそれに限りなく近いくらいの立場にいるキャラには名前や軽い設定がついてます。
因みにナイト•Lillyはお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、二十六話でセイジに最後の足掻きを仕掛けた元ヘルメット団員です。
あの後何があったのか、ヘルメット団にいたとは思えないほどに彼の手によって鍛えられて強くなってます。
まぁB.O.Sの訓練風景はいつか描写しますけど……
簡単に申し上げるなら、「地獄」ですね。
というわけで、また次の話をお楽しみに