さて、今回でビナーとの戦いに大きな変化が訪れます。
そして、ここから先からFallout要素とそれを基にしたオリジナル要素がさらに濃ゆくなってきます。
最後にはここまでちらちらと存在を匂わせていた兵器も……?
というわけで、本編をどうぞ。
それは突然放たれた。
『……!!ビナーの頭部……口の辺りから高エネルギー反応!』
『"マズイ……!!みんな、回避か防御態勢!"』
先生の指示にその場の全員がすぐに反応し、パワーアーマーを着ているB.O.Sの隊員たちは一か所に固まると同時にナイト•Mumの指示で何らかの装置を起動。
アビドス生達もすぐに防御姿勢を取ったB.O.Sの隊員たちの下へと駆け寄り、彼女たちの後ろへと隠れるように身を寄せた。
その直後……
――ビシャーーーーッ!!!!!!
まるで咆哮のようにも聞こえる音と共に砂漠へと一筋の閃光が走った。
その閃光はビナーと戦っていた少女たちを飲み込むかと思われたが、直後発生した謎のバリアのようなものによって大きくそらされて明後日の方向へと弾かれる。
ビナーが閃光……アツィルトの光の照射を止めたのと同時にB.O.Sの隊員たちが持っていた機械が煙を吐きながら小さく弾け、彼女たちを覆っていたシールドが消失した。
『マジか、ミレニアム製のシールド発生装置が一発でイカレやがった!?』
『くっ、よりにもよってこんな時に……!
こんな化け物相手にこんな装備じゃ通じないっていうの!?』
壊れたシールド発生装置を投げ捨て、舌打ちをしつつナイト•Mumはサブマシンガン二丁を構える。
しかし、先ほど補給したとはいえこのままではじり貧である。
虎の子であるシールド発生装置は先ほどの攻撃で完全に破損。
さらに通信機からの情報によると、先ほど弾いたアツィルトの光が戦車隊のど真ん中に命中し、戦車五台と部隊の指揮官であるナイト•Lotusのパワーアーマーが大破。
ナイト•Lotus本人は直撃を食らってアーマーが破壊されてなおどういうわけか無傷らしいが、戦車隊はそれなりの大打撃を受けたらしい。
その他の支援部隊は無事らしいが、先ほどのアツィルトの光の影響は多少なりとも出ているらしく一時退却して再編と補給を行わなければならなくなったらしい。
支援部隊の爆撃によってビナーの装甲にも目に見えて傷や小さな変形が見られるが、いまだ決定的なダメージが見られない。
○○先生はシッテムの箱越しに状況を確認しつつ、焦る心を落ち着けながら次の手を思考する。
確かにナイト•Mumと黒服からの情報通り、ビナーには爆発がよく効く。
しかし、あまりにも頑丈すぎて目に見える損傷が少ない。
シッテムの箱の機能とアロナの全力の解析によってビナーの耐久力が先生の目には可視化されてはいるが、それにしてもまだ大きくゲージを残している。
爆発ということであればアル達便利屋を頼りたくはあるものの、彼女たちは現在アビドス高校と市街地の方の防衛にまわされているために今から呼び出すには距離的にかなり厳しい。
セイジの方は……救出は済んだらしいが、何かを準備中らしく今すぐには動かせそうにない。
現状、今前線にいる生徒たち以外に戦わせられる戦力がない。
彼としてはこの状況はかなりマズイ。
もしこの前線メンバーが一人でも欠けるようなことがあれば、そのまま前線の崩壊と部隊の壊滅は免れない。
正直、かなり限界ギリギリである。
ここからどのような手を打ち、いかに戦力の消耗を減らすか……。
ここまでにいくらばかりか鉄火場を経験しているものの、このような持久戦は初めてなのだ。
ぶっつけ本番でここまで持たせてはいるものの、これ以上は犠牲を込みで考えねばならなくなる。
しかし、それは先生として……
生徒たちを守る大人として、絶対に避けたい一線であった。
だからこそ、○○先生はとにかく生徒たちへと絶え間なく指示を飛ばしながら考える。
この劣勢を打開する一手。
奇跡のようにも感じる、ただ一つの切り口を。
……しかしそれは、先生の思いもよらない形で現れた。
――ビーッ!ビーッ!ビーッ!
突然、何かの警告音のような物がカイザーの基地……
いや、それとは違うどこかから鳴り響いた。
同時にこのキヴォトスでは珍しい機械的な自動音声が響いてきた。
『防衛システム、再起動。防衛システム、再起動。
アビドス生徒、オヨビ認証サレタ生徒ト教師ヲ敷地内ニ認識。
警告:アビドス高校敷地付近ニ未確認ノ兵器ヲ確認。
防衛プログラムヲ起動シマス』
……時は少し遡る
――ザッザッザッザッ……カンッ!
『……!見つけたぞ!』
シャベルに硬いものがぶつかった感触を頼りに、イニシエイトは一心不乱に硬いものが当たった辺りを一気に掘り返し始めた。
中から出てきたのは……
『う、う〜ん……あれ、私今……?』
『大丈夫か!?今掘り出して助けるぞぉぉッ!!』
どうやら先ほどまで気絶していたらしいイニシエイト姉妹の妹へと必死に声をかけつつ、姉は可能な限り彼女を埋めている砂を掻き出して砂の中からパワーアーマーごと引っ張り上げた。
近くではセイジもナイト•Lillyを掘り当てたらしく、同じく砂の中から引き抜いて救助していた。
『大丈夫か妹よ!?動けるか!?』
『……ありがと、姉さん。
ちょっと待って………んんッ………あぁ、ダメみたい。
関節に砂が入ったのか全く動かせない』
『……防塵対策はしていたはずだが、どうやらコーティングだとかが甘かったらしい。
開閉機構までイカれやがった』
姉にいわれて妹はパワーアーマーを動かそうとしてみるも、関節に大量の砂が噛んでしまったらしくまともに動かせる様子ではない。
同じく気絶しているナイト•Lillyを引っ張り出そうとセイジがパワーアーマーのハッチを解放しようとしていたが、どうやらそこも所々砂が噛んでしまい開けそうにないらしい。
『……仕方がないか。イニシエイト、ちょっとどいてろ』
『……?パラディン、一体何を……』
イニシエイトの姉がセイジの声に反応して後ろに一旦退いた、その瞬間……
――ギュイィィィィンッ、ガギャッガギャッ!
突然彼の手にナイフのようにも見える小型のチェーンソーが現れ、イニシエイト姉が反応する間もなくそれで二人のパワーアーマーのとある箇所へと鋭く斬りつけた。
『……よし、これでOKだ』
『何がOKなんだ!?妹よ、大丈夫かぁぁッ!?!?』
突然の凶行とも見れる彼の行動に対し、イニシエイト姉は慌てふためきながら自身の妹へと駆け寄って彼女の状態を確認する。
しかし、彼女が見る限りではパワーアーマーに何か傷がついたような痕跡は見られない。
不思議に思い姉はセイジのほうへと振り返る。
すると、まるで貝の殻を剥がすのように胴体部のハッチをこじ開け、パワーアーマーの中から白目を向いて気絶したナイト•Lillyを引っ張り出す彼の姿があった。
姉はハッとして同じようにハッチの方へ手をかけて力を入れてみると、金属がネジ曲がるような音を出しながらパワーアーマーのハッチが外れた。
そのままギリギリと力を入れて引き剥がすと、中からゆっくりと這い出るように少女の手が現れた。
「……ありがと、姉さん。助かった……ふぎゅっ!?」
『お……おぉぉッ!!無事で……よがっだぞぉぉぉぉッ!』
パワーアーマーから這い出た少女……ゲヘナ生らしき特徴を持つ少女に対し、イニシエイト姉はアーマー越しに号泣しながら彼女を抱きしめていた。
そのあまりにも硬く強力な抱擁に妹は腕をタップして力を弱めるよう訴えるが、号泣する姉にはどうやら聞こえてないらしい。
一方でセイジのほうはというと、救助したナイト•Lillyを軽く揺らすようにして強制的に目覚めさせ、彼女たちのアーマーを回収しつつ自分もパワーアーマーから降りていた。
「……すまねぇ、パラディン。
アンタからせっかく貰ったアーマーをダメにしちまった」
「問題ない。これぐらいなら後で修理が利くさ。
……それよりだが、一旦ここから離れるぞ。
さっき〇〇から通信が入ったが、もう間もなく後方支援部隊のビナー……あのクソ蛇への爆撃が始まるらしい」
「うげ、マジか……!?
おい、そこの二人!お前達も早くここから退避するぞ……って、うわぁッ!?
ちょ、パラディン!?何して……」
「さっきまで気絶していたやつを走らせるわけにもいかんだろうが。
イニシエイト、そっちも抱えてやれ」
『Yes, sir!よし、妹よ!お姉ちゃんが抱っこしてあげるぞ〜』
「……姉さん、言い方がちょっとキモいよ。でもお願い」
セイジはナイト•Lillyの抗議の声を無視して彼女を両手で横抱きに抱え上げ、それにならうように妹を抱えたイニシエイト姉と共にその場から急いで退避した。
その直後……
――ズドドドドォォォォォォォンッ!!
無数の爆発音と共にビナーへと戦車砲の榴弾が直撃し、その爆発の余波が彼女たちが先ほどまでいた場所にまで及ぶように大爆発を引き起こした。
「うわぁぁぁぁぁぁッッ!?!?」
「きゃぁぁぁぁぁッ!?!?!?」
『うぉぉぉぉぉぉぉッ!?』
爆風とともに爆音と凄まじい衝撃が退避中の四人へと襲いかかり、思わずセイジを除いた少女たちは悲鳴を上げていた。
一方セイジは爆発に一切動じることなく足を動かしており、そのまま基地の敷地内まで特に難もなく退避していた。
「……よし、三人とも無事だな?」
『ぜぇ……はぁ……よ、傭兵時代でも味わったことないぐらいスリリングな体験だったぞ、パラディン……』
「……死ぬかと思ったわ」
「あぅ……きゅ〜……」
セイジ以外の三人がそれぞれ目を回したりグロッキーになったり、果てには顔を真っ赤にした状態でぐったりとしたりしつつ各々に返事を返した。
彼女たちの返事を聞きつつ、セイジはPIP-Boyから双眼鏡を取り出してビナーの様子を確認し始めた。
ひっきりなしの爆撃を受けてもなお、ビナーはいまだ健在……
ダメージも全体的にそこまで大きなものはなく、やはりというべきかただ火力をぶつけるだけではだめらしい。
『パラディン……思ったんだが、最初にぶっぱなしてたあのビーム兵器であの化け物を倒せないのか?』
「生憎だが、アレは一発分しか弾薬を用意してなくてな。
そもそもあの武器は本来の持ち主以外、普通はまともに扱えん。
毎度アレに頼りすぎるわけにもいかんのさ」
「……あれパラディンの物じゃないの?
それに、一発ちゃんと撃ってたのにまともに扱えないって……?」
「あいつが使っていたならあと何発かは余裕で撃てただろうさ。
俺は精々一発を辛うじてぶっ放せる程度だ」
そう言いつつ、セイジはPIP-Boyから二機のパワーアーマーを呼び出した。
一機はいかにもな悪人面をした顔のアーマーであり、B.O.Sで運用されているTシリーズのパワーアーマーとは大きく異なるデザインの機体だった。
もう一機もかなり武骨で異様な見た目だが、どことなくTシリーズの面影を悪人面のアーマーよりも感じる機体だった。
「ナイト、イニシエイト、ひとまずこのアーマーを貸してやる。
俺用に調整した機体だが、お前たちでも充分に動かせるだろう」
「……パラディン、貴方はどうするの?
わざわざあのアーマーから降りたってことは、何か別の機体に……?」
「まぁ、別の機体って意味ならあっているな。
ただ、パワーアーマーじゃアレ相手に有効打を打てる手も限られる。
もうコイツは少し寝かしてやりたかったが……背に腹は代えられんさ」
イニシエイト妹からの質問に対してそう返しつつ、セイジはPIP-Boyに特定のコマンドを入力する。
瞬間PIP-Boyの画面がノイズが走ったかのように一瞬揺れ、先ほどまではなかった画面がそこに表示されていた。
カチカチと何らかの操作をした最後に実行ボタンが押され、パワーアーマー二機が並ぶ横にソレが出現した。
「あぁ……悪いが、目覚めて早々に大仕事をしてもらおうか。
ま、お前なら泣いて喜ぶだろうがな……そうだろ、相棒?」
カツンと装甲を指ではじきつつ、セイジはソレにそう声をかける。
物言わぬ鋼鉄の兵士はまだ動かない。
だがその顔の奥にあるアイカメラが一瞬だけ、彼の言葉に反応するように赤い光をちらりとのぞかせていた。
いかがでしたか?
ちなみになんですが、B.O.Sのナイト達には現状花の名前を冠したコードネームが与えられてます。
理由は単純、本名の設定を考えるときに女性名だと花の名前を入れた方がそれっぽくなるためですね。
コードネーム方式にしてる理由の解説は一旦省きますが、要は私が名前を考えやすくするためというそれだけの理由ですね。
……まぁ、ナイト•Mumとナイト•Lillyの二人についてはさらに名前の元ネタがあるんですが……まあそれはいずれ彼女たちの本名を公開するときにでも。
というわけで、また次の話をお楽しみに。