今回は後々への伏線を置くための話ですね。
ついでに、現在の彼がどのような仕事をしているかという点も書きました。
そんなわけで本編をどうぞ。
先生として就任しそろそろ3日が経つ頃。
俺は連邦生徒会の方から流れてきたいくつもの書類を片付けながら、連邦生徒会長の行っていた施策と失踪後に行われた施策についての報告書を読んでいた。
やはりと言うべきか、今後を見据えた政策を行っていたらしい生徒会長に対し、現在の状況に合わせて改善を図ろうとしたのだろう現生徒会メンバーによる施策は悪手ともいえるものが点在していた。
その一例で言えば、連邦生徒会……というよりは連邦生徒会長の直属の特殊部隊である「SPECIAL RESPONSE TEAM」……通称、SRT特殊学園の閉校と、その戦力のヴァルキューレ警察学校への統合だろう。
ヴァルキューレ警察学校はキヴォトスの治安維持を行う組織であり、その直接の指揮権を持ってるのは連邦生徒会の防衛室となっている。
対して、SRTの指揮権を持っていたのは連邦生徒会長。
一応生徒会長は自分の失踪後、七神にその指揮権が移るようにしていた。
だが、七神は連邦生徒会上層部との会議の結果、SRTを解体してヴァルキューレに編入させることにしたらしい。
どうやら、会議の際に「ヴァルキューレに編入させ、彼女たちの培った技術等を組み込むことで組織力を高めさせる」という趣旨の案が採決されたのが理由らしいが……。
「……まぁ、政治屋としては悪手ではあったな。」
俺は思わずそう口に出していた。
これを実際の国で例えるとすれば、軍を警察に統合するということだ。
何が問題かというと、そもそも軍と警察では存在意義が違う。
警察は基本的に国内部の治安維持活動を行う。
国内で発生した犯罪の捜査や犯人の捕縛に留置……。
そういった内部で起きる犯罪を正すのと同時に、犯罪者に対する抑止力としての力を持っている。
一方で、軍というのは国が保有する暴力装置。
対外的な国同士の駆け引きにおける抑止力であったり、警察では対応できない大規模なテロ行為等への対応するための実力を持っている。
何が違うかと言えば、まず警察と軍とでは運用法が違う為に使用できる装備が違う。
警察はあくまで捕縛が前提の武力行使を行なうための最低限の装備を使用する事ができるということに対し、軍は場の制圧に長けた兵器や武器を運用できる。
それこそ銃火器だけでも普通の警官は拳銃のみで、機動隊でも運用しているのはサブマシンガンのような室内の制圧を行なうための武器やスナイパーライフルぐらいである。
これらは対人での効力こそあるのだが、一方で戦車のような兵器に対しては弱い。
ましてや武装化された兵士だとかはもってのほかとしか言いようがない。
しかも、そういった拳銃以外の武装はよほどのことがない限り引っ張り出せずに厳重に管理され、組織構造的にも即投入できるというものでもないために対応が後手に回りやすい欠点がある。
対して、軍の場合は警察では対応できないような大規模な戦闘、ならびに特殊作戦への対応を前提に訓練された暴力が前提の組織である。
警察のように捕縛が前提ではない分、やむを得ずの爆発物の使用や高威力の兵器の投入もしやすい点がある。
そしてその高威力の兵器や武装というのは分かりやすく抑止力として機能する。
軍という暴力装置は、テロリストや外敵にとっての脅威として目立って立ちふさがる役割も持つ。
法と秩序の守護者である警察と、国家の安全を守護する軍。
似ているようでそのあり方はまったく違った物となっている。
話を戻してキヴォトスの現状についてだが、キヴォトスの治安を守るヴァルキューレにSRTを統合するということは、連邦生徒会にとっての抑止力を一つ廃して統合するということだ。
これでクーデターや大規模テロでも起きようものなら、ヴァルキューレで対処ができなくなる可能性も高い。
……いや、これはむしろ……
「……ネズミが内側にいるかもしれんな。」
根拠も確証もないが、ありえない話ではない。
裏の世界に長く生きてきた中で、いくつもの組織が内部から崩壊した事例を知る機会は多かった。
それはアパラチアでも、さらにその前でもだ。
そして、そういうときはいつだって組織の中にネズミが紛れ込む。
気づかれないように、悟られることなくネズミは内側から食い破る。
そして、浅ましくも利益だけを持って敵方に回るというのが常だった。
それこそ、"あの時"も……
「……早いうちに手を打つか。」
たとえネズミが紛れていようと、俺がやることは変わらない。
俺は七神に電話をかけた。
「……七神か?俺だ。」
「……あぁ、少し気になることがあってな。……いや、お前にというわけではない。」
「……SRT特殊学園の元生徒達にコンタクトを取りたい。可能な限り内密に、だ。」
「……あぁ、可能な限り他の奴には悟られないようにしろ。特に、SRT解体に賛同していた連中と不知火には、だ。」
「……それについては後で話させてもらう。」
「……あぁ、頼んだ。」
俺は電話を切り、椅子に深く腰掛ける。
報告書の記録では特に怪しい生徒は2人だが、ほかにも紛れている可能性はある。
七神はむしろ利用されて解散させてしまったと考えてよく、恐らくは発案者や賛同者……そして受け入れを行った生徒が怪しい物と考えて良い。
確証がない以上、その企みを泳がせながら少しでも潰してやるつもりだ。
ついでにその黒幕だとかを探るのも手といえる。
そんな思考を回しつつ、俺は一つのホロテープをPip-Boyのストレージから取り出す。
「……就任早々、コイツの出番が来るかもな。」
そんなつぶやきを漏らしつつ、俺は懐にソレをしまって報告書へと目を落とすのだった。
いかがでしたでしょうか?
因みになんですが、彼はまだ連邦生徒会の内情だとかを把握してるわけではありません。
あくまで今までの経験や知り得た様々な記録をもとに、「恐らくはこういう可能性もある」程度に予測を立ててるだけです。
なのでまぁ、しばらくはこれに関しての言及も行動もないです。
そんなわけで、また次の話をお楽しみに。