ある日のアビドス高校車庫
「先生、この部品は……」
「それは後で溶かして再利用する。取り敢えずジャンクに突っ込んでくれ。」
「分かりました!後はここをつけ直せば……」
「つけ直す前に軽く油を差しとけ。当てにならんパーツを使い回してる以上、いつ使えなくなって取り外すかも分からんからな。」
「はい!」
一つのライトが照らすだけの薄暗い車庫。
いくつもの装甲車やジープ等が埃を被っているその場所で、二つの人影が動き回っていた。
そのうちの一人はセイジ。
ここに来てから先生として活動するにあたって着ていたスーツから着替え、かつてのアメリカが軍の整備士達用に支給していた服「軍作業服」を身にまとっている。
もう一人はアビドス廃校対策委員会書記の奥空アヤネ。
彼女もまた、普段の制服ではなく汚れても問題のない服に身を包んでいた。
彼らが向き合っていたのは、車庫の車両達の中でも比較的綺麗になっているように見られる一台……
かなり古い型のハンヴィーを二人は修理していたのだった。
時は遡ること数時間前……
「……ずいぶんと派手にやったな。」
『コノグライ タイシタ コトハ アリマセン。カスリキズ デス』
「その割には所々フレームが歪んだり装甲に穴が空きかけたりしているがな。思考用回路まで焼き切れたか?」
『オモシロイ ジョウダン デスネ?ハ ハ ハ』
「……今からでもアサルトロンの方に切り替えるか?」
『ハ ハ ハ …… ワラエナイ デスネ』
そんなコントみたいなやり取りを繰り広げているセイジとドライブボット。
色々と一段落ついた為、今のうちにとドライブボットのメンテナンスを行なっていた。
『デスガ 当機 ハ ワルク アリマセン。ウッテ クル 不良達 ノ セイデス』
「戦場から逃げる事を優先するようにプログラムしてるはずだが……お前、自分から戦場に突っ込んでいるな?」
『当機 ハ ナニモ シリマセン。職務 ト 奉仕 ニ ツトメテイル ダケデス』
「………やっぱり、アサルトロンに変えるべきか?」
『マイスター:ウタハ ガ プログラムニ ヘンコウ ヲ クワエマシタ』
「なるほどな。次会ったら説教だ」
哀れ、ミレニアムエンジニア部のウタハ部長。
ドライブボットの告発により、セイジからのお説教コースが確定した。
そんな会話をしながらメンテナンスを終えた頃……
「あ、セイジ先生。こちらにいらっしゃいましたか。」
セイジは誰かに声を掛けられ、後ろを振り向いた。
振り向いたその方向……
普段の制服姿ではなく作業用と思われる服装になっているアヤネが、工具箱と思われる物を持ちながら駆け寄ってきていた。
「奥空か。何の用だ?」
「えっとですね、先生に診てもらいたいものがありまして……」
「……これは?」
「昔、アビドスで使われていた物を修理していたのですが……未だに動かせていなくて。」
アヤネに連れられたセイジが目にしたのは、外装を取り外した状態で吊るされている車両……輸送車として広くキヴォトスでは流通しているハンヴィーだった。
「なるほどな……症状は?」
「エンジンをかけようとしても全くつかなかったり、その度にどこかでカラカラと変な音が鳴ってました。」
「ふむ……恐らくだが、エンジンがついてないのはどこかのパーツが外れたり、ガソリンのパイプかポンプ、フィルターが詰まってるのかもしれんな。最悪、ここまで酷いとプラグやヒューズもやられてる可能性もあるが……」
早速、セイジは作業に取り掛かり始めた。
アヤネに指示を出しつつ、いったんエンジンを丸ごと切り離して引き抜く。
古い設備故に多少ガタついているウィンチをなんとか動かし、引き抜いたエンジンを作業台へと運びだした。
「取り敢えず一旦バラして確認する。この際だ、技術の授業も兼ねてやっていく。」
「いいんですか…!」
セイジのそんな提案に、アヤネは驚くとともに非常に喜んでいる様子を見せている。
プロテクトロンやアサルトロン等のロボットたちを自力で製作したり、つい最近では便利屋の社長の銃を修理するどころか改造までしてみせるほどの技術力を持つセイジ。
独学でなんとか技術を習得していたアヤネにとっては彼のその提案は相当に魅力的であり、まさに願ったり叶ったりというものなのだ。
「これでも一応教師だ。これぐらいのことは教えてやる」
「ありがとうございます!それでは、よろしくおねがいします!」
こうして、セイジによる(恐らくは)初の授業が開始された。
授業が始まって数時間が経過した頃……
外装は外したままだが、エンジンやシャフト……その他精密なものも含めたほぼ全ての機械部分の修理が完了した。
「よし、取り敢えずエンジンをかけてみろ。」
「はい!」
早速、アヤネは運転席に乗ってエンジンをかけた。
つい先日までは燃料を入れようが電源を取り替えようが動かなかったハンヴィー。
数年ぶりにその排気管がけたたましく咆哮し、脈動する心臓のごとくエンジンが震え上がり始めた。
「う、動きました!やりましたね、先生!」
「あまり吹かしすぎるなよ。一応新品のパーツが届くまでのつなぎで使っているポンコツも載っているからな。」
「はい!本当にありがとうございました!」
永らく修理に手こずっていたハンヴィーの調子に対し、満面の笑顔でセイジへと感謝するアヤネ。
今この時だけは、一人の技術者として誇らしい気持ちが湧き上がる。
そんな感情をいだきつつ、まるで照れ隠しでもしているかのようにジャンクパーツの解体に取り掛かりだすセイジなのだった。
いかがでしたか?
車に関しては素人に毛が生えてる程度の知識しか無いので苦労しましたが、多分こんなんでもいい気がする……よね?
この手の専門家な知り合いに力を借りるべきだったかなぁ……。
そんなことはさておき、また次の話をお楽しみに。
追伸:車に関してはアレですけど、作業機械はよくイジる人なのである程度機械そのものの知識はあるはずです。