酔っぱらった勢いで投稿してるので悪しからず。
一話:キヴォトス
カタン、カタン、カタン。
電車が走る音に惹かれ、俺は目を覚ました。
長らく聞くことのなかったその音に、俺はあの地獄から元の世界に戻ってきたのかと思った
…だが、それは目の前に座る見知らぬ少女の存在によって否定された。
今まで見てきた女性たちと比べても圧倒的と言わんばかりの差を見せるその美貌は、どこか後悔の念に押しつぶされているかのようだった。
「…すべては、私のミスでした。」
声をかける間もなく、彼女は何かを語りだした。
「私の選択、そしてそれによって招かれたこの状況。」
「……。」
俺には、彼女の言ってることが全く理解できなかった。
なぜ、俺にそんなことを語るのだ?
「ですが、あなたなら…。」
そう彼女が言うとともに、俺の意識は再び沈み始めていた。
「どうか、お願いします。キヴォトスを……生徒を正しく導いてください。」
「おまえ……は……」
薄れゆく意識の中、彼女の最後の言葉だけが俺の中に響いた。
「依頼料は、私のすべてをあなたに差し上げます。」
「……き……い…」
「お…て……さい!!」
「起きてください!!聞こえてますか!!」
「うるせぇぇぇぇぇッ!!目覚ましはシューベルトの魔王をかけろと言ってるだろうが、このポンコツスクラップがぁぁぁぁぁッ!!…あ?」
あまりにもうるさすぎて俺は飛び起きた。
いつものようにあのくそったれな程にポンコツなローズLOVEのポンコツプロテクトロンが起こしに来たかと思って怒鳴り散らしたが、顔を上げるとそこはいつもの自宅ではなかった。
目の前には先ほどの怒鳴り声に動揺でもしたのだろう白い制服姿の美女がおり、首を動かしてみれば横にアジア人らしき青年が呆けた顔でこちらを見ていた。
「…どこだ、ここ?」
あまりの場の空気に叩き起こされた怒りは冷え切り、冷静に今の状況を分析し始めた。
たしか、俺はあの時起動した機械に引きずり込まれて……んで、ナイフを突き立てて抵抗して……それからどうなった?
なぜかは知らんが、直前までの記憶がさっぱりといっていいほどにない。
「えっと……、大丈夫でしょうか?何やら混乱していらっしゃるようですが…。」
「…気にするな。突然怒鳴ってすまないな。」
彼女の心配する声に対して少々ぶっきらぼうながらも言葉を返すと、彼女は気を取り直したかのように話をつづけた。
「……お二人とも、いきなりのことで少々混乱していらっしゃるようですが、時は一刻を争います。」
「もう一度、改めて今の状況をお伝えします。」
「私は七神リン。この学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会の行政官です。」
「そして、あなた方が私たちがここに呼び出した先生……だとは思われるのですが……。」
そこで彼女は俺たち二人に困ったような視線を向けていた。
「……申し訳ありません。私たちも詳しくは聞かされていないのです。」
「ですが、会長によればお二人がこのキヴォトスの救世主ともなる方々とは伺っております。」
「救世主……ねぇ?」
なんとも要領を得ない。
あまりにも確かといえる情報が少ないのもあるが、一番不思議なのは俺の横にいる男だ。
見た感じは中性的で、日本人のようにも韓国人のようにも見える優男とでもいうべき明らかな一般人。
これといった特徴はそこまでないが、スーツ服を着こなしているあたり社会経験がありそうな雰囲気。
アパラチアでは見ることがほぼなかった草食系男子とでもいうべき雰囲気のまっとうそうな人間だ。
俺もまあ救世主というには手が汚れきっているが、コイツもコイツでそんなたいそうな肩書を背負える人間とは思えん。
「……こんな状況になってしまったことについては、私どもとしても遺憾に思います。ですが、今はお二人に……先生方にやっていただかなくてはいけないことがあります。」
「”えっと……僕たちはいったい何をすればいいのかな?”」
「学園都市の命運をかけた重要なこと……ということにしておきましょうか。」
そういいながら彼女……七神は俺たちを先導して歩き出した。
先導されながら歩く中、俺とともに先生と呼ばれた男からの視線を受けていた。
これはまあ……好奇心の混じった興味の視線だろう。
今は長々と話す時間はなさそうだが、一通り七神からの説明等が終われば根堀り葉掘り聞かれることだろう。
(はぁ……めんどくせぇ……。)
今すぐにでもここから離脱したいが、右も左もわからない土地に訳もわからず連れられてきた以上、今はこの流れに身を任せてできる限りの情報を引き出すべきだろう。
そう思いつつ、アパラチアや前世の日本に比べてずいぶんと発達した技術で作られているらしいエレベーターに乗り込む。
俺たちが収まって動き出すと、エレベーターの壁のガラスから外の光景が広々と見渡された。
そこは、俺の知る日本の東京やアメリカのニューヨークとも、文明崩壊前のウェイストランドの都市部のようなレトロフューチャーな都市とも違う近未来都市が広がっていた。
「「キヴォトス」へようこそ、先生方。」
「ここキヴォトスは数千もの学園によって成り立っている巨大な学園都市です。」
「そして、これからお二人が働く場所でもあります。」
……どうやら、俺はまたとんでもないことに巻き込まれたようだ。
エレベーターが到着した先では数人の少女が待ち構えており、次々と七神に苦情交じりの質問を投げかけていた。
学園の管理下らしい風力発電所の停止、矯正局とやらから脱走したとかいう不良生徒の暴走や破壊行為……
さらには、戦車やヘリだとかの明らかに学生の話題で出るようなものではない兵器類の大量流出……。
学園都市と聞いていたのだが、俺の耳はついにボケ始めたのか?
なんなら、陳情を垂れ流すうら若い少女たちも物騒な銃火器を携行している。
本当にどうなっている…?
「……連邦生徒会長は今、席におりません。」
ん?
「正直に申しますと、行方不明になられました。」
は?
……まて、落ち着け。いったん整理するべきだ。
まず、俺と横の男を「先生」という肩書の元ここに連れてきたのは会長こと彼女の言う「連邦生徒会長」。
その生徒会長がいなくなったことでキヴォトスでは混乱が起きている。
七神の続く話の内容からして、連邦生徒会なる組織が握っているらしいキヴォトスの行政権が生徒会長の失踪によって消失。
なぜ、一学生であるらしい彼女たちが行政だとかをやってるかの疑問は一度置くとしても、行政を行うための制御装置である「サンクトゥムタワー」なる物の認証もできずに八方ふさがり…。
もう訳が分からん。
「……それでは、今はその認証を迂回する方法があるということなのでしょうか?」
そこで一つ、黒いセーラー服に身を包んだこれまた黒い翼らしきものを背負った少女が疑問を投げかける。
その問いへ、七神は首を縦に振ることで肯定した。
そして、彼女は俺たちへと向き直った。
「ここにいらっしゃるお二人、先生方がフィクサーとなってくれるはずです。」
「“え?”」「は?」
まて、なぜそこで俺たちが出る?
…いや、まさかとは思うが連邦生徒会長とやらは俺たちにそのサンクトゥムタワーなる物の管理者権限でも譲渡したのだろうか?
というには俺もそうだが、隣の先生らしい男も知らない様子だ。
一体、どうなっている…?
「このお二人、○○先生とセイジ先生はこれからキヴォトスの先生として働く方々であり、連邦生徒会長が特別に指名された方々です」
「行方不明になった生徒会長が指名…?ますますこんがらがってるじゃないの…。」
これには全くの同意見である。
「……先生方は元々、連邦生徒会長が立ち上げた部活……「連邦捜査部 シャーレ」の担当顧問と副顧問、並びにこの連邦生徒会の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」
「…は?」
また、何も聞かされていない情報だ。
「○○先生が担当顧問を務めるシャーレは単なる部活動ではなく一種の超法規的機関です。連邦組織のためキヴォトス全ての学園の生徒たちを制限なく加入させ、各学園自治区内への武力介入等も制約なしに行うことができます。」
「また、副顧問であるセイジ先生には我々連邦生徒会の顧問として働いていただき、シャーレとしての業務の傍ら生徒会長が抜けたことによって不安定になった行政の立て直しの助力をしていただくことになります。」
……はぁ……またか、またなのか……。
俺はまた、訳もわからずに地獄のような場所に放り込まれてしまったらしい。
俺が天を仰いでいる間にも話は進んでいた。
どうやら、ここから少し離れた位置にあるシャーレの部室に俺たち宛の重要なものが搬入されているらしく、俺たちをそこに連れて行く必要があるらしい。
七神が通信機らしいものに声をかけると、けだるそうにスナック菓子をつまむ少女のホログラムが現れた。
要件としてはヘリの要請だったのだが……
『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
「「「“大騒ぎ……?”」」」
俺と隣の男こと○○先生、そして七神が異口同音に疑問の声を上げる。
『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしてて、そこは今戦場になってるよ。』
『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に周りを焼け野原にしてるみたい。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』
『それで、どうにも連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるみたいなの。まるで、そこに何か大事なものでもあるかのような動きみたいだよ?』
「「「“……”」」」
俺たちはそのあんまりな現状にそろって閉口してしまった。
その後モモカという少女は昼飯のデリバリーが来たからというふざけた理由で通信を切ってしまった。
このあまりの状況に、七神はうら若い女性がするわけにはいかないだろう程に顔を歪めていた。
「“だ、大丈夫?深呼吸でもする?”」
これには○○先生も心配の声をかけていた。
「……だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、たいしたことではありません。」
「……さすがに無理があるだろうが。」
これほどの酷い有様をもってして、どこが少々なのか……。
すると、七神は何かに気づいたかのようにある方を見ていた。
それは、先ほどまで陳情を垂れていた少女たちであった。
(…はあ、先が思いやられる。)
こうしてこの場にいる者たちを巻き込み、事態は動き始めたのであった。