……そういえばなんだかんだ忘れてましたが、例の新作の喧伝を改めてしましょうかね?
というわけで、更新不透明な新作はこちらです
作品「ウェスタン•オブ•キヴォトス」
https://syosetu.org/novel/404152/
とまあ喧伝もしたんで本編をどうぞ
ベルチバードを降りてすぐ、俺は指定された部室へと足を運んだ。
連邦生徒会には幾つかの部署が存在し、それぞれが他学園でいう委員会……部活動に該当している。
そのうちの一つ、防衛室はキヴォトスの治安維持等の業務を担当する部署であり、ヴァルキューレ警察学校の指揮権を所有している機関である。
――トン、トン、ガチャリ
「失礼する」
防衛室の戸を叩いて中へと入ると、そこで待っていたのは一人の少女……
「お待ちしておりました、セイジ先生」
胡散臭い笑みを浮かべつつ、ソイツ……
連邦生徒会防衛室長「不知火カヤ」が俺を出迎えていた。
ソファに互いに腰掛け、面と向かって俺たちは相対していた。
……こいつは、いつでも笑みを絶やさない。
ソレは長所のように見えるかもしれないが、こいつの場合は少し異なる。
こいつが浮かべる笑み……ソレは、人に向ける優しさなど欠片もないもの。
冷徹であり、挑発的であり、まるで自分以外のすべてを下に見ているかのように上から目線の感情が見える笑みなのだ。
「ふふふ……貴方とはこうして一度お話したいと思っていたのですよ、先生?」
「そりゃ済まないな。
こっちも色々とあれやこれやで忙しかったもんでな。
……で、そんな俺を緊急で呼び出すとはずいぶんと穏やかなもんじゃないな?」
「……まぁ前置きはこれくらいにして本題に入らせてもらいましょう」
一つわざとらしい咳払いを入れ、不知火は不気味なほどに張り付いた笑顔で俺に要求を突きつけた。
「単刀直入に申し上げます。
今すぐ、シャーレのアビドス高等学校への支援を打ち切っていただきたいのです」
…………やはり、というべきか。
あまりにも想像通りすぎる要求であったために、俺は内心失笑していた。
「……おいおい、ずいぶんとまぁ妙なことをいう。
そも、廃校寸前とはいえあれだけ広大な土地を治める学園に対して今まで何も支援していないのが異常だったんだぞ?
それを何とか立て直そうとしているところで水を差すたぁ……いったいどういうつもりだ、不知火?」
「先生こそ、どういうおつもりなのですか?
確かに我々の支援体制に不備があったのは事実ですが……とはいえ、申し上げ廃校同然の場所に肩入れして支援するなど、連邦生徒会の貴重なリソースを無駄に放出するだけでしょう?
そのような無駄な支援をするよりも、さっさと廃校にしてしまうほうが合理的でしょう?」
……無駄、か。
なるほど、やはりこいつらはまだまだ子供だ。
目先のことしか頭に入らず、その本質も立てるべき道筋も見ようとしない。
「不知火、その合理性で潰したアビドスの土地をどうする?
まだアビドスが学園として存在してアビドス自治区という形になっていればヴァルキューレ等の介入も含めて連邦生徒会の手をある程度入れられるが……
自治区が無くなれば連邦生徒会の法の力の及ばない、第二のブラックマーケットが生まれるぞ?」
「ふふ、そのようなことが起きるはずないじゃないですか。
先生もご存知でしょう?あの土地の大半は、大企業カイザーコーポレーションが所有しているのですよ?」
「はっ、カイザーねぇ?
連中に信用なんてあると思うか?」
「少なくとも、ほとんど滅びたと言っていい極小の生徒の集まりよりは信用できるでしょう?」
あぁ………やはり、こいつだ。
「不知火、率直に聞こう。
カイザーと何を取引した?」
「……………」
俺の問いに対し、不知火は無言で不気味に微笑む。
証拠も何もかも出揃ってはいたが、これでハッキリとした。
………こいつが、こいつこそが連邦生徒会に紛れ込んだネズミ。
カイザーコーポレーションの息が掛かった協力者であった。
「ふふふ………取引、ですか。
まるで私が何か後ろ暗いことをしてるかのような物言いですね?」
「実際そうだろう?
仮にも行政に携わる人間が、デカいとはいえ黒寄りのグレーな企業とコソコソと裏で繋がる………
マスコミにでも掴まれりゃぁ一貫の終わりな特大スキャンダルだろうが。
ましてやそれが幹部クラスともなればそう簡単に鎮火しない大炎上物だろう?」
「失礼な物言いですねぇ。
……私はただ、連邦生徒会……引いてはキヴォトスを正しく導くために動いているだけですよ」
ソファから立ち上がりつつ、不知火は芝居がかった仕草で言葉を続けていく。
「会長が失踪して以降、キヴォトスの治安や行政機能は低下していく一方。
それもすべて優秀なトップであった超人……連邦生徒会長が居ないという、連邦生徒会にとっての致命的な損失が原因です」
そう口にしながら机を大きく迂回するように歩き、不知火は俺のすぐ横へとやってくる。
「確かに序列上は七神行政官が代理にふさわしいでしょうが……
身に合わない権力を持った、その結果が今のキヴォトスの惨状です」
ですからと言葉を続けながら不知火は俺の横に座り、しなだれかかるように身を寄せてきた。
「……このキヴォトスにおいて、連邦生徒会に次ぐ超人となれるこの私が彼女の代わりに生徒会長代行……いや、新しい連邦生徒会長となるのです」
耳にささやきかけるようにそう語る不知火。
………色仕掛けのつもりかもしれんが、俺にその手の手法は効かん。
「それはつまり、今の体制に不満があるからと転覆を企んでいる………
そういうことでいいか?」
「………まさかピクリとも反応しないなんて。
やっぱり男はあの脂肪の塊が好物なのでしょうか……?」
何やら不服そうに身を離し、ブツブツと不満を呟く不知火。
生憎俺はその手の誘惑に興味が無い。
わざわざ言ってやることでもないが、懐柔するにしても他に方法はあっただろうに。
「………で、俺に接触を図ったのはその転覆劇のエキストラにでもなれとオファーしようとしたということか」
「ん〜……まぁ、そういうことになりますかね?
あなたの存在は私の計画の障害になりそうでしたし、何より七神行政官に対して都合のいい後ろ盾になりそうですからね?」
……確かに現在の連邦生徒会においてトップに立つのは、連邦生徒会長の代行役を担っている七神とその顧問である俺。
この場合七神がどういう判断をするかは分からんが……
少なくともアイツが首の挿げ替えに反対的だったと仮定すると、俺を取り込むことで七神に対して対抗することができる。
……まぁ、俺を取り込めればそうできるという話ではあるのだが。
「どうです?引き受けてはくだ…「断る」…即答ですか」
勿論、俺の答えはNOだ。
俺なりの見立てではあるが、少なくともコイツは七神以上にトップには向いてない。
指導者、あるいは先導者としての器かと言う視点で見ればコイツは落第点もいいところ。
仕事こそ相当できるのだが、その反面人望……S.P.E.C.I.A.Lで例えるならCarismaが足りていないのだ。
これでは上手いことトップの座についたところで、三日天下どころか一日持つかも分からない。
さらにいえば、こいつのバックについているのはカイザーコーポレーション。
推測にはなるが、こいつがここまで増長しているのも連中から煽てられたか妙なことを吹き込まれたかで調子に乗ってるが故だろう。
となれば、連中的にはこいつがトップだろうがなんだろうが関係はない。
連中の最終目標がよくわからんが……どうせキヴォトスの支配だとかのようなつまらん野望だろうな。
「これは困りましたねぇ……本当に、困りますよ」
不知火はソファから立ち上がり、ポケットの中から取り出したスイッチのようなものを押し込んだ。
――ガタンッ!カチャカチャカチャッ!
その途端、俺たちを囲むように四人の人影が天井から降るように現れた。
全員が狐のものと思われる耳を生やしており、セーラー服の上に身につけているすべての装備品はキヴォトスでも最新鋭の物ばかり。
何より、そこら辺の生徒たちとは比べ物にならないほどの熟練した身のこなし。
彼女達が身につける腕章には「SRT」の三文字。
――SRT特殊学園所属のエリート部隊「FOX小隊」
武装した状態で現れた四人は、無言のまま各々の獲物をいつでも構えられる態勢で待機していた。
「ふむ……ずいぶんな手駒を揃えたもんだな。
で、ここからどうする気だ?」
「こうなってはもはや仕方ありません。
先生、貴方には二つの選択肢から選ばせて差し上げます」
「今、ここで私に忠誠を誓うか……
それとも、FOX小隊の手でしばらく遠方にバカンスにでも行っていただくか……
どうぞ、お好きな方を選んでください」
「第三の選択肢として、すべて拒否するというのは?」
「ふふふ、ご冗談を。
この状況でそれがまかり通るとでもお思いですか?」
どうやらコイツに引く気はないらしい。
……実に残念だ。
賢い選択を取れていればもっと楽に人生を謳歌できたものを。
「勿論、どちらもNoだ」
「……残念です、先生。
それでは、よい休暇でもお楽しみください」
不知火が合図を出し、FOX小隊の隊員達が銃口を上げて構えた。
………実に、愚かなことだ
いかがでしたか?
因みにセイジのアレな事情というか要求についてですが、枯れてるとか以前にそもそもそういう気が発生しないようになっています。
なのでいくらカヤが頑張って色仕掛けをしようが、発達の激しい美人局を送りつけようが、そもそも彼には全く効果がありません。
つまりやるだけ無駄なので、素直に金とか物とかで交渉しましょう。
まぁそれでも中々懐柔難しいんですけど()
というわけで、また次の話をお楽しみに