さてはてアビドス編もそろそろ大詰めのドンパチが近くなってまいりました
流石にまだ幾らばっかりか会話パートがありますけど、それさえ終われば楽しい楽しい戦闘パートがやってきます
ついでに会話パートの終わり頃、ちょっとした告知も行う予定です
どうぞそれまでお楽しみにということで、早速本編をどうぞ
「先生!先輩が……ホシノ先輩が……!」
日が明けて早々にアビドス高校の校舎に響いた声。
○○先生の予想通り、ホシノは書き置きと退部届だけを置いてどこかに消えてしまった。
セリカとノノミが自宅の方まで探しに行ったが、そちらもやはり空振りに終わった。
○○先生は書き置きに目を通したが……次の瞬間にはソレをにぎり潰すかのごとく手に力を込めていた。
――時は遡り、七時間前……
「……ごめんね、みんな」
ホシノは一人、アビドス砂漠を歩きながらそう呟いた。
彼女はもう、何も分からない。
何を信じればいいのか、自分がどうするべきなのか。
一旦はセイジを信用したものの、それでもやはりあんな無茶な要求を出されても平然としていたりと何を考えているのか分からない。
○○先生についても頼りにはなるが、彼に今のアビドスを救えるとは思えなかった。
もちろん、今から私が向かい……契約を結ぶことになるだろう大人も信用はできない。
……だが、せめてでも自分にできる精一杯の抵抗をするしかない。
少なくともホシノが聞かされた条件として、彼女が奴らの下に降ることでアビドスの借金の半分を何とかすることができる。
たった半分、それでも半分。
たとえ降ったところでバカみたいに高い借金は残っているが、それでも何もしないよりははるかにマシだ。
それに、きっと後は先生たちがなんとかしてくれる。
自分一人の犠牲で皆の負担を大きく減らせるのだというのなら……
ホシノに躊躇う余地は無かった。
「"これは……"」
「先輩……どうして……!」
○○先生が持つ書き置きの最後に記された一文……
――もし、この先で私が敵になってしまったら……
――その時は、"私のヘイローを壊して"
ヘイローを……壊す。
それはつまり、生徒にとっての生命線を絶つ……より明確に言うなれば「殺す」ということ。
ホシノは文字通り、自分の命を賭けてしまったのだ。
誰かに相談することもなく、下手をしなくても最悪の結末を辿りかねない賭けに身を投じてしまったのである。
「……今ならまだ間に合うはず!先生、すぐにでもホシノ先輩を……」
――ズドォォォォォンッ!!!!
「「「「「"ッ!?!?"」」」」」
――時はまた、一時間ほど前にさかのぼる。
「クックック……お待ちしていましたよ、小鳥遊ホシノさん」
「……御託はいい。それより、例の契約だけど……」
「えぇもちろん、こちらに準備していますよ。
後は……貴女の署名を書くだけです」
薄明かりに照らされた、アビドスの一角に存在するこじんまりとしたオフィス。
迷いと苦悩で普段とは似ても似つかない雰囲気を漂わせるホシノを迎えたのは、不気味な笑い声を上げるこれまた不気味な異形の男。
黒いスーツを着こなす人型のソレは、白くひび割れた跡のある黒いモヤのようなもので覆われた顔を愉快そうに歪めて彼女を招き入れた。
ホシノは招き入れられた先にあったソファに腰掛け、目の前のテーブルに置かれた書類を手に取る。
書類の内容を確認しつつ、異形が用意したのだろうペンを手に取った。
「……これを書いたら、お前たちは後輩たちには手を出さないんだよね?」
「えぇ、もちろんですとも。それに署名さえしていただければ"私どもは"アビドスに一切手出しをいたしません」
ホシノは確認を取るように目の前の異形……彼女が「黒服」と呼んでいる不気味な謎のの大人へと問いかけた。
黒服は相変わらず不気味に笑いつつ、契約はしっかり守ると"正直に"言い放つ。
ホシノは疑いの目を向けつつも、彼の言葉に嘘はないと判断して書類の方へと向き直った。
……もちろん、これは詐欺である。
確かに黒服は嘘を言っていないのだが……逆に本当のことも言ってない。
ホシノは黒服がカイザーの関係者だと誤解しているが……
実際は、カイザーとはただのビジネスパートナーであるだけの別の組織の所属であった。
つまりたとえ今ここで契約を結んだところで、黒服はアビドスに手を出さなくなるだろうが……
一方で、カイザーはその件とは無関係ゆえに今までどおり干渉を続けるだろう。
そんなこともつゆ知らず、ホシノは一応不備はないかと書類に目を通していく。
彼女の視点では全く契約に不備はないように見えているが、それは彼女の誤解による先入観での誤認である。
書類上でも、確かに黒服たち"は"アビドスに危害を加えないと記載されている。
もちろん黒服は契約が締結されたのならしっかりとそれ自体は守る。
……だが、この契約とは無関係のカイザーが何をするかなどについて、彼は特に興味がない。
あくまで黒服の目的は目の前の少女……小鳥遊ホシノという研究サンプルの確保だ。
それさえ手に入るのなら後はどうなろうと彼の知るところではない。
……たとえその結果アビドス高校がカイザーの手により滅びることになろうとも、黒服には一切関わりのないことなのである。
その事実を知らない……いや、知ることができないホシノはペンを紙へと近づけていく。
彼女はただ、少しでも後輩たちの負担を減らしたい……
そして、アビドスを救いたいという一心でそのペンを手に取っていた。
(……ごめんね、みんな。)
改めて心のなかで後輩たちへと謝罪しつつ、ホシノはペン先を書類に走らせる………
その直前だった
「すまんがその契約、ちょっと待ってもらおうか」
突然、部屋の入り口のほうからそんな声が聞こえてきた。
紙にペンが触れる寸前でホシノの手が止まり、バッと顔を上げて声のしたほうへと顔を向ける。
突如開かれた扉の向こう側からアビドスの燦々と輝く朝焼けの太陽の光が入り込み、その向こう側から逆光に照らされた一つの人影が部屋へと入ってきた。
ホシノにとってその人物はとても見覚えがあり……
同時に、見たことがない格好をしていた。
「……よぉ、人の話を聞いてない大馬鹿娘。
白馬の王子サマじゃなくて悪いが迎えに来てやったぞ」
いつもと違い不敵な笑みを浮かべているその男……
セイジは肩にジャンク品っぽさのあるライフルを担ぎ、堂々とした態度でホシノと黒服に向かい合っていた。
いかがでしたか?
実はセイジの登場の辺りの描写なんですが、ボツ案の中にはシルバーシュラウドをイメージしたヒロイックなセリフの案もありました。
が、流石に彼とは似ても似つかないどころか……そもそもこの作品76とのクロスなので全く関係ないということでボツになりました。
まぁ仕方ないね()
というわけで、また次の話をお楽しみに