アパラチア帰りの外道の先生生活日記   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんわ。
多分過去最長レベルで長くなりました()
まぁ……黒服と先生のやり取りを複雑めに描いたらこんなことになりましたわ。
とりあえず内容については話半分ぐらいに聞いていただければ……
というわけで、本編をどうぞ


七十七話:竜胆誠司

竜胆……?

 

もしかして、先生の名字……なのだろうか?

 

「……こっちじゃ一度も名乗ってないはずなんだがなぁ?

公開してる情報にも名字は記載してないはずだ」

 

「クックック、そこはまぁ調べたら自然と知れましたよ。

貴方の名前の由来、名付けた人物の身分や背景、名付けの経緯……そして、名付けられるまでに貴方が辿った運命も」

 

相変わらず黒服が何を言ってるのかはさっぱりだが、これだけは分かる。

 

……恐らくだが先生は、かなり過酷な過去を背負っているのだろうと。

 

先生が特に何も返さない為か、そのまま黒服は語りだした。

 

……そして、私は聞いたことを少しだけ後悔することになる。

 

「竜胆誠司。この名前は生まれたその時ではなく、貴方が拾われたその時に後の養父となる御仁から賜ったもの。

そしてそれ以前の貴方は……名もなき何者でもない子供だった」

 

「……そうだな。俺にとっての「誠司」という名はあの人の「息子」になれた象徴みたいなものだった」

 

 

 

 

……………。

 

 

………………………。

 

 

 

 

「貴方の生まれ、そして育ったその環境……

並の子供なら普通は死ぬか、もしくは性格が我々悪い大人以上に歪んでいるでしょう。

ですが……その割にはどこか真っ直ぐとしていますね?

それもまた、かの御仁の「息子」であったからですか?」

 

「そうだな。

あの人はドブの中に捨てられていたネズミ同然の俺を……

それに、"アイツ等"も拾ってマトモな世界に引きずり出してくれた。

暗がりで生き続けた俺たちにとっちゃぁ眩しいの言葉じゃ足りん……より明確に言うなら浄化されちまったわけだ」

 

「浄化……ですか。

クックック……中々面白い例えですね。

確かにそれなら今の貴方にもある程度説明はつきます」

 

 

 

…………………………。

 

 

………………………………………。

 

 

 

「なるほどなるほど……。

では、貴方はあの大人達……幼い名もなき少年を捨て駒として扱った者達のようにはならないと?

貴方が感じた痛みや恐怖、絶望を世に知らしめたいとは?」

 

「そんな事をして何になる?

絶望がさらなる絶望を呼んで、痛みと恐怖の混じった負の連鎖が続く……俺はそんな世の中なんぞもうたくさんなんだよ」

 

 

 

…………………………………………。

 

…………………………………………………………。

 

 

 

 

「ほう……なるほど。

クックックック、そういうことですか。

貴方は自らの絶望をこれ以上広げようとは思わなかったのですか。

誰かに理解させ、世に自らの痛みを知らしめようとも」

 

「そりゃそうだろう?

……あんなカスみたいな連中に飼われていた俺みたいなガキなんぞ、もうこれ以上増える必要はない。

そんなのは俺だけで充分だ」

 

「……クックック、なるほどなるほど……。

それもかの御仁の……いやこれは貴方自身が見いだした解というわけですか」

 

「そういうこったな」

 

 

 

……………………………………………………………。

 

 

 

もう……訳が分からない。

 

黒服が何を言っているのか……先生が何を答えているのかが分からない。

 

蚊帳の外にいる私に理解できたのはただ一つ。

 

 

――先生もまた、悪い大人の食い物にされた過去があるんだということ。

 

 

「ふむ……なるほど。

つまり貴方はこう言いたいのですね?

「子供に絶望を背負わせるのが大人の役割ではない」と」

 

「実際そうだろう?

お前の研究が何かはしらんが……その口ぶりからして「恐怖」に関わることか?」

 

「そうですねぇ……えぇ、確かにそのとおりです。

ですが、貴方の想像する恐怖と私の考える恐怖は全く異なるものです」

 

……そういえば、私はコイツの実験についてよく知らない。

 

いや、知る必要もないと聞く耳を持っていなかったというのが正しいだろう。

 

「誠司さん……いや、もうここからは先生として話しましょう。

先生はこのキヴォトスにおける生徒たちの力……我々が神秘と呼称するそれについてどう思いますか?」

 

「神秘?」

 

そういえば、黒服はよくその単語を口にしていた。

 

特に私に対してそれが優れているだとかなんだとか……

 

「神秘か……

そうだな、俺もそれについては調査をしているが……

強いて言うならアレは、人知の及ばない領域の力ってところか?」

 

「……ほう?

もしや、先生も我々のように神秘の探求を?」

 

「お前とは目的や手法はだいぶ違うがな。

まぁお前たちがアレで何を求めているのかは知らんが……

アレは本来、俺たちのような連中が手を出すべきではない力だ。

少なくともこうしてコイツを契約とかいう形で縛り付けて実験台にしたところでハイリスクにも程がある程度にはな」

 

「ハイリスク……ですか?」

 

先生もわけのわからないことを言い出したが……恐らく、私にも関わりがあることなのだろう。

 

「神秘っていうのは物で例えるなら温められた液体火薬みたいなもんだ。

この場合、神秘を持っている生徒達はその火薬を安全に取り扱う為の専用の道具ということになるんだが……

お前達、まさかこの道具の形を変えたり混ぜ物をぶち込もうとしたりとかするつもりじゃないだろうな?」

 

「…………………。」

 

突然、黒服が心当たりがあるかのような挙動で黙りこくった。

 

どうやら先生の推測は図星らしい。

 

「……なるほど、その手の実験だったか。

いいか?この専用の道具ってのはその形状、そのサイズで適切な配分や熱量の火薬を扱うためにある。

もしこれに変な混ぜものだとか余計なパーツだとかをつけてみろ、事故って大惨事にでもなったら目も当てられんぞ?」

 

「……クックック、そのために我々も保険として彼女への契約を行ったのですが……」

 

「その保険ってのは責任逃れの保険か?

だとしたら尚更お前たちにコイツらの身柄を渡してやるわけにはいかん。

実験するだけして、失敗したらそこらにポイ捨てとかをやらかすようなバカタレに将来ある子供を渡すわけがないだろうが」

 

先生の言葉に黒服は何か引っかかったような反応をした。

 

特に責任についてのあたりだろうか……?

 

「……先生、まさか責任を取れる範囲での研究をしろと言うわけではありませんよね?

貴方なら分かるはずです、研究や探求において責任というものが発生すればどれだけの足かせになるのか……」

 

「やらかした時の責任も取れない実験に何の意味がある?

それで何の成果が得られる?

お前が求めているそれは、しでかした罪の重さに比べてもなお重いと言えるほどに重要なことなのか?」

 

「……………。」

 

また黒服は押し黙った。

 

どうやらこの場では本当に分が悪いらしい。

 

「黒服、俺はな……前にいた場所「ウェイストランド」でお前みたいに責任を考えずに気ままに研究を進めようとしたバカを何人も見てきた。

その結果がこの始末だ」

 

そう言って先生はバンッと音を立てて机に何かを叩きつけた。

 

その叩きつけられたもの……それは複数枚の写真だった。

 

「これ、なんか黒服に似てる?」

 

「クックック……なるほど、これはこれは……」

 

そこに写っていたのは魑魅魍魎の化け物たち。

 

 

まるで黒服みたいに白い光を放つ目や口のような部位があるゾンビみたいなナニカ。

 

 

緑色の肌で巨大な棍棒らしきものを持った、あまりにもブヨブヨとした巨人。

 

 

他にも気色の悪かったり気味の悪かったりする生物や、見るのも嫌なぐらいグロテスクな化け物、そしてその一番奥にあった一枚の写真……

 

 

ナイフで刺し貫かれた跡があるが、コウモリのような特徴を持った緑色の粉のようなものをまき散らす化け物が写っていた。

 

 

「この写真にある奴らはな、そんな馬鹿どもが研究の果てに生み出したモルモット共の末路……

そして、馬鹿どもがこれを放った結果どれだけの損害が出たと思う?」

 

想像する。

 

先生たちは外の世界の人間、つまり私たちのようにヘイローの加護がないから銃弾一発で死にかねないほどに身体が弱い。

 

もし、そんな人たちがこんな化け物に襲われたら……

 

思わず私の背中に冷たいものが走る。

 

「……確かに、無責任な研究の果てにこれならば止めるのは無理もありません。

ですが、それでもこれらの影響でなにか成果はあったはず……」

 

「そんなものはない」

 

その瞬間、私は部屋の空気が凍りついたよう錯覚を覚えた。

 

あまりにも冷たく、吹き荒れんばかりの怒りを隣から感じる。

 

チラリと視線を向けたが……私は思わず悲鳴を上げそうになった。

 

――ソレを形容するならば、そこにいたのは悪魔も裸足で逃げ出すほどの恐ろしいナニカだった。

 

「……コイツらの研究の目的はただ一つ。

ただただ科学の限界を追い求めることだった。

誰かの為?大義の為?奴らにそんな崇高な考えなんぞありはしない」

 

 

 

 

 

「やつらはな、自分のエゴのために無差別に人間を食い物にしたクズばかりだった」

 

 

 

 

 

先生のその言葉は、あまりにも重かった。

 

「……科学や技術の発展?それなら大いに結構。

ソレの進歩は人を強くし生活を豊かにできる。

……だがな、やったことに責任を取ることもせずにやりたい放題した先には碌なことがない。

例えお前が関係ないことと切り捨ててやったとしても、それが回り回って何もかものバランスを崩す」

 

「その時、お前はどうする?

手遅れなほどに崩壊した全てに対して……お前は自分のせいではないと言い切れるのか?」

 

「…………………………。」

 

黒服は何も言わない。

 

いや、言えないのだろう。

 

「大人だから、子供でも必要だから責任を取るという話じゃない。

責任っていうのはな、やったこととその結果のすべてに付随してくる。

お前が実験に失敗してコイツが最悪死に、その結果アビドスの崩壊から連鎖してキヴォトスそのものに大きなヒビが入ったらどうするつもりだ?」

 

「………なるほど。

先生、貴方はこのキヴォトスのテクストについて理解があるのですね?」

 

「それは知らんが、ここが歪なバランスの理で成り立ってる薄氷の上の世界なのは理解しているさ。

ちょっとの歪みで容易く崩れていくぐらいには不安定だということもな」

 

「………ククッ、そうですか。

そうであるのならば私も諦めるしかありませんね」

 

………もう何がなんだか分からないが、これで決着はついたのだろう。

 

黒服は契約書を回収すると、近くにあったシュレッダーへとそれを投入した。

 

「………先生、カイザーは貴方を邪険に思っています。

彼らとしてはこのキヴォトスの覇権を握りたいのでしょうが………それをお許しにはならないのですよね?」

 

「当然だ。

ここキヴォトスはあくまで学園都市……大人が無理に出張って支配するようなことはするべきじゃない。

あくまで俺達大人がやるべきなのは、生徒達が間違った道を進まんように誘導してやるぐらいだ」

 

「……クックック、やはり人が変わろうとも先生は先生なのですね。

どのような人間であれ、結局は生徒が主体というわけですか」

 

最後に意味深げな事を呟きつつ、黒服はガチャリと入り口を開けた。

 

「……恐らくですが、今頃カイザーはアビドスを襲撃しているでしょう」

 

「……どういうこと?黒服、お前まさか……!」

 

「私はあくまでホシノさんと契約を結ぶだけ。

それと同時にカイザーが襲撃の手はずを整えていたとしても、私には関わり合いのないことでしたから」

 

「……クソッタレ、やっぱりそうなったか」

 

黒服の言葉に思わず殺意を抱いたが、今ここでコイツをぶちのめしたところで何も好転しない。

 

むしろ何かしら悪化しかねない。

 

先生も顔をしかめてはいるが……やはり…?

 

「……先生はこうなることがわかってたの?」

 

「少なくともバカが一人で突っ走ったらプランのいくつかが吹き飛ぶのは分かってはいた。

……それも見越してこっちも色々仕込んではいたがな」

 

そんな事を言いつつ、先生は古臭い携帯を取り出してどこかに電話をかけだした。

 

「……あぁ、俺だ。プランA〜Cが丸ごと潰れた。

例のプランの予定を早める。

……不本意なことにな。すまんが平行で連中をこっちに向かわせてくれ。

……あぁ、そっちについては例の部隊に任せてやれ。

陽動役はこっちで用意してやる」

 

そのまま二言三言程言葉を交わしたところで通話を切り、その次にはどこかにメッセージを送っていた。

 

 

「クックック。ホシノさん、貴女は幸運でしたね?」

 

突然、黒服がこちらに語りかけてきた。

 

「……契約しなかったのに、ずいぶんとうれしそうだね?」

 

「えぇ、確かに私の計画はご破産です。

……ですが同時に、別の可能性が見えました。

むしろ計画が頓挫してくれてよかったかもしれません」

 

……相変わらずコイツは何を考えているのか分からない。

 

相変わらず不気味な笑い方をしているが……一方でどこか愉快そうにしている。

 

「……おそらくこの先、キヴォトスは大きく変わることでしょう。

その中心には恐らくセイジ先生やシャーレの先生が居るはずです」

 

「……何が言いたいの?」

 

「ククッ、強いて言えることがあるとすればただ一つ……

貴女はこの先さらなる困難を経験するでしょうが、それを打ち破るのは貴女の神秘……私が求めたその力こそがゲームチェンジャーとなるでしょう」

 

……本当に、言ってることはさっぱりだ。

 

だがなんとなく……激励されていることは理解できた。

 

「……アンタは結局、何がしたかったの?」

 

「クク……そうですね。

私は貴女を通じて神秘よりも高みにあるもの……崇高を観測しようとしました」

 

崇高……

 

またよく分からない単語が出てきた

 

「キヴォトス最高峰である貴女の神秘に恐怖を注入することによりそれを観測するつもりでしたが……

どうやら私の見込みは理論から見直す必要があるみたいです」

 

「ずいぶんと嬉しそうだけど……

先生に自分の考えを否定されたことに何とも思わないの?」

 

「クククッ、思うことはもちろんありますよ?

私はこれ以上ないほどの理解者に出会えましたから」

 

「……わけわかんない」

 

本当に……なんなんだろうかコイツは。

 

「……黒服、お前も早めにここから撤退するといい。

こっちのに巻き込まれないうちにな」

 

「おっと、ご忠告ありがとうございます。

では私は軽い後始末をしつつ退場させてもらうとしましょう」

 

黒服は私たちに背を向けて部屋を出ようとして……一瞬止まった。

 

「先生……最後に一つ。

我々ゲマトリアは、いつでも貴方を見ています」

 

「プライベートの侵害は勘弁してくれよ?

さもないと俺がどう思おうがお前を豚箱にぶち込まざるを得なくなる」

 

「ククッ……その言葉、肝に銘じておきましょう」

 

それだけを告げて、黒服は去っていった。

 

静寂に包まれた部屋に私と先生を残して。




いかがでしたか?
I:5の知能ではこれが限界でした……
もっと深く書きたかったんですがねぇ
うまくいかないもんですな。
そうそう、次の話では久々にセイジがお説教かまします。
理由は……お分かりですね?
というわけでまた次の話をお楽しみに。
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