「なにこれ、着ぐるみ着てんの? 小人?」
「さあ? チミケモって言うんだって」
ケージを医務室の隅に置く。
「チー」「チー」「チー」
チミ五が水飲み機で水をチロチロ飲んでいる。必死である。
「可愛いな」
家入医師が撫でると、ふわっと温かい命の感触がした。
「みっ」
「お? チー以外も言えんのか」
「教え込めば言葉も覚えるんじゃないかなって」
「賢いじゃん」
お腹をこしょこしょとする。
「でも、離れ離れにしとくなんて可哀想じゃないか?」
「ねずみ算になるから……。一回失敗して、それからは子供を皆里子に出して別で育ててる」
「は? え? あ。そ、そうか……ねずみ算……」
家入医師はドギマギした。
「どっちと? まさか両方か?」
「写真見る?」
携帯で見せられた写真には、チミ夏が子育てする様が写っていた。
「やっぱそこかよ!!!」
「失礼しちゃうよねー。ねーチミ家」
そしてお菓子を渡す。サクサクとチミ家は食べ、他の2匹も欲しがる。
家入医師は、それぞれのチミにお菓子をやった。
「こいつらも術式使えんの?」
「蠅頭がせいぜいだけど、使えるぞ」
「は? まじで?」
「まじで。えらいねー」
「すごいじゃん。私も飼いたい。増やしちゃだめかな?」
「あー。ちゃんと面倒見れるならいいんじゃね? しばらく様子見して大丈夫そうだったらね」
ということで、1ヶ月後。飼い方の要領もわかったし、補助監督や生徒達も合間に面倒を見てくれそうだと言うことで、一つのケージにする事にしたのだが、子チミケモを増やそう計画はあっという間に女子に広まり、飼い主希望が集まった。
「またたび!」
「またたびおっけ!」
「ベッド!」
「ベッドおっけ!」
「カメラ!」
「カメラおっけ!」
「よしいけ、五条さん!!」
「がんばれ、五条さん! そこでぐいッと」
ケージの中、まんまるのペット用ベッド、散乱するまたたび、そしてその上に投入されたチミ夏とチミ五。なにも起こらぬはずはなく……。
「なにやってるのかな?」
ちょっと怒った様子の五条がそこに乱入する。
怯えて抱き合っていたチミ五とチミ夏はミィと安心した声を出した。
「きゃああああああああああ!!!」
「はぁ、怒るよ? はいはい、カメラ没収! 硝子も止めてよね」
「悪かった」
とは言いつつ、暴走する女子をそれとなく止めてたし五条に連絡入れていたのだが。
ケージに黒い布を掛けてやり、とりあえずチミ達を隠してやる。
五条は肩にチミ家を乗せてやる。
「別にペットを配るまではいいけどさ。節度は守ってよね」
こんこんとお説教をして、ケージの黒い布を外してみると、チミ達が増えていた。
「は?」
「はや! ああん見逃した!」
「ええ!? もう繁殖したんですか!?」
「はやーい!」
「ねずみ算こわ……」
「あー。もう子供出来てて、今のタイミングで生まれただけでしょ。でも1ヶ月で子供できたって事? 早……。相当注意して育てないとだね」
そうして、あっという間に里子に出されていった。特に無下限が使える個体が縁起がいいとありがたがられた。
チミケモはお守りではないのだが。
プルプル震えるチミ夏が可哀想だったので、1匹子供を残してあげる事となった。これを家入医師の分にすればちょうどいい。
それからしばらく後。
「……隔離して育てたはずなのにまた産んでる……」
チミ達を出す際には、監視が必須と注意書きが増えたのだった。
ペットを買う際は多頭飼いに気をつけましょう。
まあでも、カードや同級生のこと、医療のコツ、仕事の愚痴、チミケモのこと、話題は尽きない。
家入達は和やかな生活を送ったのだった。
マシュマロ
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