以前は某サイトで連載いたしておりました。
そのサイトの閉鎖に伴い断筆を宣言していましたが、どうしても物語の続きを描きたいと思い、こちらのサイトに掲載させて頂きました。
よろしくお願い致します。
プロローグ
人々は望む。
この最悪な世界から誰かが救い出してくれる事を………
自分の子供達が外で元気に走り回れる日々を………
自分がその光景を見ながら目を細める日々を………
その為に、『勇者』が必要だった。
自分たちが平和に暮らせる日々の為に………
自分以外の誰かであれば良かった………
「カミュ、起きなさい。私の可愛いカミュ」
とても裕福とは思えない、城下町のはずれにひっそりと佇む一軒家の二階で、母親が子供を揺り起こす声がする。ベッドにはまだ覚醒しきれない少年が寝ていた。年の頃は十五・六といったところであろうか。
艶のある黒髪は
「……ああ、起きたよ。着替えて下に行くから」
母親の呼びかけに、心底鬱陶しそうに少年は答える。
それは、反抗期を迎える子供とはまた違う、一線を引いたものであった。
「今日はお城に行く大事な日ですよ。すぐに着替えて降りていらっしゃい」
母親は息子がベッドから起き上がるのを確認してから階下に降りて行った。
「……はぁ……」
少年は本当に気だるそうに身を起こし、着替えの準備を始めた。寝巻きから青を基調にした服に着替え、靴を履く。ベルトに薬草などを入れたポーチを付け、ベッドの枕元に立てかけてあったひと振りの剣を背に回して、鞘についているベルトを胸の前で止めた。
この剣は、この日に十六歳を迎える少年への祝いとして、彼の祖父から貰ったものだ。年期は入っているが、とても丁寧に手入れをされており、切れ味は申し分なく見える。マントを羽織った少年は、最後にサークレットを頭に付けた。サークレットの中心には青く輝く石が付いており、これも、十六歳の祝いにと、昨夜に母から手渡された物であった。
準備が済んだ少年は一度自分の姿を見下ろし、盛大な溜息をついてから階段を下りて行った。