新訳 そして伝説へ・・・   作:久慈川 京

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トルドバーグ④

 

 

 

 優雅に舞う神鳥ラーミアの背から見る世界は、新たな希望の輝きに満ちていた。魔物が消滅した訳ではない。人類だけがこの世界に生きる生物でもない。だが、地上に見える雄大な大地と広大な海は、太陽の光を受けて喜びに満ちているようにさえ感じる物だった。

 吹き抜ける風も瘴気に満ちた物ではなく、潮の香りや緑の香りを運んで来ている。ラーミアの背で眠りに就いてしまったメルエの背を撫でながら、サラはそんな幸せを噛み締めていた。

 不意に上げた視線に映るのは、ラーミアに寄り添うように飛ぶ鳥達。群れで飛ぶ鳥達は、ここまでの旅でサラ達が渡り歩いて来た島々を飛んでいるのだろう。一鳴きして方向を変えた鳥の群れに手を振り、頬を緩める。彼女は今、世界はこれ程までに輝いているという事を改めて実感していた。

 

「その近くに下りてくれ」

 

「キュェェェェェ」

 

 そんな周囲の輝きに視線を向ける事無く、地上を見ていたカミュがラーミアへと指示を出す。それに応えるように声を上げた神鳥は、ゆっくりと高度を下げて行った。

 ポルトガの港から数隻の船が出ており、それを護るように寄り添う船の帆には独特の紋章が描かれている。既に海路を護る護衛船の噂は世界中に広まっており、商船などの護衛の仕事を独占的に行っているのだろう。

 魔王という脅威が去り、これから益々船の数は増して行く筈だ。だが、海は人間という一つの種族の為にある訳ではない。そこで暮らす魔物や海洋生物達の領土を侵せば、逆襲を受ける事も致し方ない事実である。それを理解し、航路に関して統制を取って行くのは、ポルトガ国王の仕事になって行くのかもしれない。

 

「ここからは歩く。悪いが、ここで少し待っていてくれるか?」

 

 無事着陸したラーミアの背から降りたカミュは、待機の依頼を口にする。長い首を動かして了承の答えを示したラーミアを見てカミュが歩き出し、その後ろをメルエを抱いたリーシャが歩き、最後尾をサラが歩く事となった。

 常に最後尾を歩いて来たリーシャではあったが、それは一行の危険性を考え、後方から広い視野を持って魔物を警戒する為という理由があったのだ。だが、魔王を討伐し、世界中の魔物達から狂気が薄れたとすれば、その警戒も無用の物となるだろう。しかも、この周辺に生息する魔物達であれば、今のサラであれば単独でも勝利出来るという考えもあった。

 それだけ、彼等四人の力は、規格外の物になってしまっているのだ。

 

「……町の名が変わったのだな」

 

「ウィザードバーグですか……」

 

 周辺の木を切り倒しただけの平地を、ここまでの大きな都市へと変貌させた男の名は、その町を示す呼称から取り外されていた。

 以前訪れた時よりもしっかりとした造りの門の上に掲げられた看板には、今も尚、メルエが持っていた魔道士の杖が打ち付けられており、その先端に輝く大きな石が太陽の光に輝いている。だが、その下に描かれた町の名前は、以前訪れた時とは全く異なる物であったのだ。

 『魔術師の町』

 別名でそう読める町の名を見たサラは、複雑な想いを抱きながらその看板を見上げていた。

 この場所は、彼等が初めて訪れた時には何もなかったのだ。ポルトガから出航して直ぐに襲われた嵐によって漂着した場所から歩き、辿り着いたこの場所は、遥か昔に漂着した一人の男性の悲しい願いに満ちていた。

 妻を失い、その時の経験から、この場所に町を作りたいという老人の願いを受け、当代の勇者がその大役として指名したのは、カザーブという小さな村で過去の過ちに苦しむ道具屋の主人であった。

 

「……入るぞ」

 

 来る度に変わって行く集落の姿は、『人』という種族の本当の強さを示しているようにさえ感じるものであり、サラはいつも目を輝かせていた。徐々に増える人と建物。その全ては様々な者達の想いの結晶であるのだろう。

 道具屋が建ち、宿屋が建ち、劇場が建ち、中央には綺麗な噴水も造られる。その光景は人々の希望の表れのようにも感じる物であった。僅か数年で都市としての形態を持ち、交易を含めての様々仕事が生まれる。その恩恵に与っていた者達が、それを生み出した者をこの場から排除した。

 それは『人』としての強さなのか、それとも弱さなのかは今のサラにも解らない。ただ、この場所を生み出した者の為にも、この場所がこれからも未来永劫在り続けて欲しいという願いを自分が持っている事だけは理解していたのだった。

 

「ようこそ、ウィザードバーグへ」

 

 町に入ると、見知らぬ女性がカミュ達に歓迎の言葉を投げかける。最近になってこの場所へ移住して来た者の一人なのかもしれない。カミュ達の顔も知らなければ、彼等がこの町を生み出す起源となった事さえも知らないだろう。もしかすると、この場所を生み出した男の顔も知らないのかもしれない。

 女性へ関心さえも示さず、カミュは町の奥にある一つの建物へ真っ直ぐ歩いて行った。代わりに頭を下げたサラを見て微笑んだ女性ではあったが、明らかにカミュに対して不信感を持ったように表情を曇らせている。

 町が大きくなれば、その利権などを求めて荒くれ者もまた流入して来る物である。特にカミュやリーシャは、その背に神代の武器を携帯しているし、サラもまた腰には剣を差していた。メルエの背中に括られた杖は、初見の者ならば恐れを抱くようなオブジェが付いており、それらもその女性が不信感を抱く原因となっていたのだろう。

 

「もし、この町の人々がトルドさんの最後の言葉を真摯に受け止めていたとしたら、自警団のような方々が来るかもしれませんね」

 

「ん? そうだな。まぁ、私達を止められるような者達がいたら驚きだがな」

 

 ようやく余裕を取り戻したサラは、不審顔のまま去って行く女性を苦笑を浮かべながら見送る。そんなサラの表情に気付いたリーシャは軽口を叩きながらも、抱いているメルエを起こそうと身体を揺すっていた。

 確かに、例え腕に覚えのある自警団であったとしても、魔王バラモスさえも打ち倒した四人を止められる者など、この世界の何処にもいないだろう。彼女達がその気になれば、ここまで大きくなった町であろうとも、一瞬の内に焼け野原に変える事も可能なのだ。

 

「ここは牢獄だ! この場所に何の用だ!?」

 

「……ここに囚われている人間と話がしたい」

 

 その強大な力は、知らず知らずの内に周囲に漏れているのかもしれない。近づいて来るカミュの姿に身構えた兵士のような者は、自分でも解らない怯えを隠すように、尊大な態度を持って声を荒げる。だが、そんな兵士の態度や声を意に介さないカミュは、自分の目的を簡潔に告げるのだった。

 もしかすると、彼自身がこの町の在り方に憤りを感じていたのかもしれない。誰にもそのような姿を見せはしなかったが、彼がトルドという商人を信頼していた事は確かであり、自分がこの町の創造を依頼したという負い目も感じていたのだろう。そんな憤りの一端がこの場で表に出てしまっていたのだ。

 

「こ、この牢獄には、今は誰もいないぞ!」

 

「な、なに!? ならば、トルドはどうした!? まさか処刑したとでも言うのか!?」

 

 人類最高位に立つ者の一人の圧力を受けながらも、兵士は気丈に口を開く。声も震えており、足元も小刻みに震えているものの、それでも職務を全うしようとする彼は、真面目で良い兵士なのかもしれなかった。

 だが、この兵士が発言した内容がカミュ達一行に衝撃を齎す。驚愕に目を見開いたサラと、瞬間的に眉を顰めたカミュを押し退けて前へ出て来たリーシャは、今にも兵士に掴み掛かりそうな程に肉薄し、怒声を上げた。その腕の中で眠っていたメルエが驚きで目を覚まし、周囲に蔓延する緊迫した空気に眉を下げる。

 長くリーシャと旅を共にして来たメルエでさえも恐れを抱く程の怒声。それを直接受けた兵士が失禁していない事を褒め称えるべきなのだろう。しかし、その怒声は町の中に響き渡り、数多くの町民達の注意を引いてしまった。

 

「何をやっている!?」

 

 先程の女性が呼んだのだろう。様々な甲冑に身を固めた兵士のような者達が、カミュ達を囲むように集まり始め、それぞれの武器に手を掛ける。そんな緊迫した空気なのにも拘わらず、先程まで目を見開いていたサラは安堵の溜息を漏らした。

 カミュ達四人を敵として見ている彼等は、この町を荒くれ者達から護るべく結成された自警団の者達なのだろう。少し短慮な部分がある事は否めないが、カミュ達の素性を知らなければ、町を荒らす者達と見えても仕方がないのかもしれない。

 この偉大な四人の今の姿は余りにも酷い。纏っている衣服は綻び、破れている。衣服や鎧には体液や血液がこびり付き、酷い部分になればどす黒く変色までしている始末。何日も湯浴みをしていない身体は埃と垢に塗れ、汗臭いに臭いさえも放っている。そのような人物達を快く受け入れる場所など、この世界の何処を探しても有りはしないだろう。

 自警団が組織されているという事は、トルドの助言も無駄ではなかった事を示している。それがサラには嬉しかった。この町はまだ、悪しき方角に向かってはいないのだと思えるからだ。

 

「カミュ、どうする? 全員を叩きのめす事は容易だが……」

 

「……考えが物騒過ぎる」

 

 メルエをそっと地面に下ろしたリーシャは、周囲をぐるりと見渡す。勿論、武器に手を掛ける様な事はしない。彼女が武器を手にしてしまえば、即座に戦闘が始まってしまい、この場を収める方法が全員を叩き潰すしかなくなってしまうからだ。

 そして、今のリーシャであれば、周囲を取り囲む自警団全員が一斉に飛び掛って来ても、素手だけで叩きのめす事は可能であろう。それだけの力量の差が今の彼等にはあるのだ。

 しかし、呆れるように溜息を吐き出したカミュの身体から先程までの緊迫感が抜けて行った事を見たリーシャは、瞬時に瞳を和らげる。もしかするとこの女性戦士は、何時になく怒気を露にする青年を諌める為に軽口を叩いたのかもしれない。

 

「待ちなさい! この者達は私の知り合いだ」

 

 そんな自警団の者達にとってすれば一触即発の状況の中に飛び込んで来たのは、初老の男性であった。背丈はそれ程高くはなく、何よりもその髪の色は漆黒に輝いている。それはカミュと同じジパングの血を受け継いでいる事を示していた。

 この土地に新たにジパングから移民が来ていたとしても不思議ではないが、その顔には見覚えがあり、以前に話した事のある鍛冶屋の人間である事が解る。突如輪の中に入って来た男性に皆の視線が集まるが、その視線を気にした素振りもなく、初老の男性はカミュの目の前まで歩いて来た。

 

「ここでは話も出来ん」

 

 一言だけ告げた男性は、カミュ達を伴って集まり始めた人々の輪を抜けて行く。突如表れ、町を荒らすと思われた者達を連れ去る男性を誰一人として引き止める事は出来ず、皆が呆然とその後姿を見送る事しか出来なかった。

 ようやく脅威が去った事で、牢獄を護っていた兵士は腰を抜かし、そのまま地面に座り込んでしまう。周囲を取り囲んでいた兵士達でさえ、額に汗を浮かべて一歩も動く事が出来なかったのだ。直接対峙し、言葉さえも交わしたこの兵士の状況を責める事が出来る者など誰一人としていない。町の奥にある一つの家屋へと四人の不審者が消えて行った事を見届けた後、皆がこの兵士の勇気を讃える事となった。

 

 

 

「さぁ、まずは掛けなさい」

 

 鍛冶屋と併設された家屋へカミュ達を誘った男性は、そのまま四人に椅子を勧める。そこで初めて自分達の酷い身なりを理解したサラは、それを固辞するように手を振った。だが、男性は柔らかな笑みを浮かべ、再度椅子に腰掛ける事を勧める。

 『座って貰わねば話しも出来ない』と言われては、それ以上固辞する事は出来ず、三人は丸いテーブルの傍に置かれた椅子へと腰掛けた。メルエはリーシャの膝の上に乗り、何とかテーブルの上に顔を出せるような形で男性を見上げる。

 

「お前さん達の事はトルド殿から聞いておるよ。今、この場にその姿でおられるという事は、『お前さん達』などと呼ぶのは無礼に当たるのかもしれないな」

 

「そ、そのような事は!」

 

 白湯を四人に出した男性はゆっくりと自分の椅子へと腰掛け、一度見渡した後、小さな笑みと共に言葉を漏らす。ジパングという小さな島国を出てこの場所に辿り着いた彼に『魔王バラモス』という脅威が正確に伝わっているかどうかは解らない。それでも、彼なりにカミュ達の偉業を讃えているのだろう。

 トルドという商人が、カミュ達に目的を漏らす程にこの男性を信頼していた事にも驚くが、この男性が未だにトルドに敬称を付けている事にもリーシャは驚いた。それは、この男性が未だにトルドに対して友好的な感情を持っている事に他ならないからだ。

 

「トルドは処刑されたのか?」

 

「いやいや。この町の人間とて、それ程の馬鹿達ではない。トルド殿は釈放され、カザーブの村という場所に帰ると言っていた……私の娘を攫ってな」

 

 待ち切れないように問い掛けたリーシャへの答えは、彼等の考えの遥か斜め上を行った物であり、四人全てが驚愕の表情を浮かべる。トルドが処刑されずに釈放される可能性というのは、彼らもある程度は想定していた。だが、トルドという人物の人となりを知る彼らにとって、女性を攫うという行為は寝耳に水のような出来事であったのだ。

 口を開いたり閉じたりしていたサラは、ようやく声を絞り出す。困惑が手に取るように解る程の困惑振りに、初老の男性は小さな意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「さ、攫って行ったとは……?」

 

「ふはははっ……すまん、すまん。大事な娘を奪われた爺の戯言だ。娘とは言っても、既に二十も半ばになる行き遅れだ。牢に入ったトルド殿を世話する内に、勝手に惚れて、勝手に付いて行こうとする。トルド殿は一人で帰るつもりだったようだが、この爺が娘の事を頼み込んだのだ」

 

 快活な笑みを浮かべる初老の男性は、何処か華やかな顔をしている。娘の将来を心配していたのか、娘が惚れ込んだ相手との幸せを確信しているようにも見える、心温まる笑みであった。

 ジパングで生きる者達の髪色や肌の色はこの世界の中でも独特である。背丈も他国の者よりも低い事が多く、その考え方も独自の慣習の為か他国の者とは異なっていた。ジパングという小さな島国を出て、父親に付いて来た少女は、様々な国で謂れ無き迫害を受けて来たのだろう。友も出来ず、恋人など作る事も出来ずに二十数年の月日を過ごして来た筈である。

 そんな娘を不憫に思っていた男性は、娘が一人の男に惚れ込んだ事を喜ぶと同時に、やはり大事な一人娘を取られる寂しさを一人で感じていたに違いない。そんな八つ当たりにも等しい物を、カミュ達は受けただけの事である。

 

「自分の娘ながら、あの子は気も強い。押しかけ女房になってでも、トルド殿の心を射止めるだろう」

 

「……そうですか、トルドさんと」

 

 優しく暖かな父親の笑みを浮かべる男性を見ていたサラの顔にも笑みが浮かび、安堵の溜息を漏らしたリーシャも爽やかな笑みを作る。一人、意味の解らないメルエだけは、頻りに首を傾け、それでも周囲の雰囲気を感じて可愛らしく微笑んでいた。

 トルドが最愛の妻と娘に別れを告げてから、既に十年近くの月日が流れている。その内の半分以上は、後悔と自分への憎しみによって費やし、妻や娘に囚われていたと言っても過言ではない。だが、カミュ達と出会い、己の中で一つの区切りを付けた彼は、この場所で新たな夢を追い駆けた。

 そろそろ、彼自身も人生の再出発を決めても良い頃合だ。それが、妻や娘を忘れる事に繋がるなどと誰も思わないし、彼がどれ程に妻や娘を愛しているかという事を、今は天上から見守っているアンと母親が誰よりも知っているだろう。

 

「……ありがとうございました。いつかカザーブへ向かい、トルドに会って参ります」

 

「うむ。あの馬鹿娘によろしく伝えておいてくれ」

 

 小さく頭を下げたカミュに、男性は優しい笑みを返す。口は悪いが、この男性も誰より娘を愛している事が解る表情であった。リーシャに手を引かれたメルエが、男性に向かって手を振る姿を見れば、この男性の持つ心の温かさが解るというものだ。

 鍛冶屋の家屋から出てみると、そこは既に通常の町の様子へと戻っていた。誰もカミュ達を気にする様子はなく、それがこの場所が大都市へと移り変わろうとしている事を示してる。それが良い事なのか、それとも悪い事なのかは解らない。ただ、この町を生み出し、育んで来た商人の願いが浸透している事だけは確かであった。

 宿屋にも、道具屋にも寄らず、一行はそのまま町の外へと出て行く。潜った門の上に掲げられた魔道士の杖を見上げた四人は、各々の胸に宿る想いに表情を変えた。

 何処か誇らしく、それでいて哀しげで寂しい。そんな杖の先に嵌め込まれた綺麗な石が、太陽の光を反射させ、一行を導く光を放っていた。

 

「よし! アリアハンへ向かうぞ」

 

「そうですね」

 

 胸の前で腕を組んで杖を見上げていたリーシャが、一つ息を吐き出して大きな声を上げる。何かを吹っ切るようでいて、何かを決意するような表情を見たサラも、笑みを浮かべて大きく頷きを返した。

 待機していたラーミアの背に乗り、徐々に離れて行く町を見下ろしながら、一行は遂に凱旋を果たす為の帰路に着く。多くの出会いを経て、多くの喜びと悲しみを経て、今の彼等は成り立っている。

その起点となったのは、辺境の島にある小さな国家。全てがそこから始まり、この四年の間、一度も戻る事のなかった場所へ、彼等は帰るのだ。

 

 

 

 カザーブという小さな村で生まれ、その小さな枠組みでは収まり切らない程の才覚に恵まれた商人は、己の才覚を過信した結果、生涯悔やみ続ける程の傷を心に負う事となる。だが、その決められたような運命は、一つの出会いによって大きく動き始めた。

 世界中の希望となる『勇者』との出会い。それは、朽ち果てて行くだけであった一人の商人の心の闇を打ち払い、再び希望と勇気を与える。胸の内に燻ぶり続けていた勇気の炎を燃え上がらせた商人は、自分の才覚を如何なく発揮し、後世に残る程の大都市を生み出した。

 その名は『ウィザードバーグ』。

 後の残る言い伝えには、この場所の創始者となった商人が、まるで魔術を使ったかのように町を生み出したとされている。人々が集まり、交易が開始され、後に世界中に広がる海の護衛団と単独で交渉し、その基盤を共に築いたとさえ云われていた。

 真相は定かではない。だが、その言い伝えの信憑性を高めるのが、この町の象徴ともなっている町章である。

 この世界を救ったとされる『勇者』に同道していた『魔法使い』から譲り受けたとされる魔道士の杖が、発展し続けて行く町を常に見守り続けていた。

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございました。
本当に短いお話になりますが、やはり前の話とは区別した方が良いと思い、二話に分けました。

ご意見、ご感想を心よりお待ちしております。

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