新訳 そして伝説へ・・・   作:久慈川 京

257 / 277
ゾーマ城①

 

 

 

 ゾーマ城。

 それは、絶望と闇の象徴である。漆黒の闇の中に聳え立つ城は、周囲の炎に照らされたその姿に畏怖を覚える程の物であった。

 巨大な扉は開け放たれており、来た者を選別する為に設けられる城門とは異なっている。開け放たれた門の奥には、アレフガルドを覆う物よりも濃い闇が広がっており、門の前に立つ物全てを吸い込む口のようにも見えた。

 ここまで旅を続け、門番のように立ち塞がっていたヒドラという強敵をも退けた者達の心でさえも飲み込む強大な闇は、この城の奥に居るであろう大魔王の力を明確に示している。その前に立つだけで、ここまで来た事を後悔してしまいそうになるのは、生物の本能の奥底に在る危機管理が警告を鳴らしているからであろう。それ程に、この巨大な城を包む瘴気と闇は強大であった。

 

「行くか?」

 

「それ以外にどんな選択肢がある?」

 

 その異様さと強大さに飲み込まれそうになるサラとメルエを見たリーシャは、門の奥へと瞳を向ける青年に問いかける。だが、彼が返して来た言葉は、彼女が想像していた通りの物であった。

 一言一句違わないそれを聞いたリーシャは微笑み、後方で表情を強張らせたサラの背中を軽く叩き、若干の怯えを見せるメルエの肩に手を置く。どんな生物でも、『命』を有している物であれば、この城を前に足が竦むだろう。破滅と絶望を顕現したようなその城の姿は、覚悟を決めた者達の心でさえも揺るがす物なのだ。

 それでも、肩に置かれた温かな手に少女は微笑み、背中を力強く張られた賢者は苦笑する。自分達が本当に恐れる物は、決して大魔王ゾーマではない。心の奥にあるその恐怖に比べれば、この城もそこに居るであろう大魔王も些細な物でしかないのだ。

 

「さぁ、行くぞ二人とも」

 

「はい」

 

「…………ん…………」

 

 母親のような姉のような女性の笑みを見て、彼女達の心に再び炎が点る。勇者一行としての顔に戻った二人にリーシャは表情を引き締め、前方に立つカミュへ頷きを返した。

 一歩前へと踏み出したカミュが門の奥の闇へと消えて行く。それを追って三人も巨大な闇の中へと入って行った。

 

「グオォォォォ……」

 

 門を潜ってすぐに、遠くから咆哮のような物が聞こえて来る。それは竜種の咆哮のようにも、吹き抜ける風の音にも聞こえる物であった。

 警戒を表すように剣を抜いたカミュであったが、その咆哮が間近に聞こえる物でない事を悟り、そのまま剣を降ろす。しかし、それを待っていたかのように、城内の篝火が一斉に灯った事で全員が戦闘状態へと移行した。

 城内に続く通路の壁に掛けられた燭台にも火が点り、まるでカミュ達を誘うかのように通路を明るく照らして行く。闇に包まれていた筈の城は、瞬く間に周囲を見渡せる程の明るさとなった。

 

「……私達がこの場所に来た事を、ゾーマは知っているのか?」

 

「ルビス様や竜の女王様をも凌駕する程の存在です。私達の事など見透かしていても不思議ではありません」

 

 この演出が城の主の意向であったとすれば、闇に生きる魔族が犇く城に明かりを点す理由など一つしかない。カミュ達の襲来を知り、それでも尚、奥へと誘おうとしているという事。それは、大きく口を開けた絶望の闇へ誘う罠なのか、強者としての絶対的な自信が成せる物なのかは解らないが、自分を討ち果たそうとしている者達を嘲笑うかのような行動である事だけは確かであった。

 明かりに照らされた城の壁には、どす黒い血痕のような染みが付着している。それは魔物同士の争いで出来た体液の染みなのかもしれないし、この場所まで辿り着いた人間の残した物かもしれない。それを見たリーシャの脳裏にある一人の英雄の姿が浮かび、彼女は顔を顰めた。

 

「どっちだ?」

 

「ん? どちらへ行っても変わらないように思うが……」

 

 そんなリーシャの考えを遮るように発せられたカミュの問いかけは、ここまでの旅で何度も繰り返されて来た物。洞窟や塔、バラモス城でさえも、彼は必ず進むべき方角を彼女に尋ねている。必ず彼女が発した方角とは逆を進むのだが、それでもそれは絶対的な信頼を向けている証拠でもあった。

 案の定、彼女が口にした言葉に頷きを返した彼は、そのまま右の通路へと向かって歩き出す。もし、リーシャが右と答えていれば、彼は必ず左へと進んだだろう。逆に左と答えていれば、右に向かって歩いた筈だ。どちらも同じだと口にされた為に、彼は己が武器を振るい易い右の通路へ歩を進めたのだろう。

 このゾーマ城の外観を見る限り、右の方角へ進めば、いずれ北へ向かう為に左へ折れなければならない。右手に武器を握り、左腕に盾を持つ彼にとって、左からの攻撃への対処は右からの攻撃よりも容易なのだ。

 

「腐敗臭とは異なる死臭が酷いな」

 

「腐乱死体が出て来る時の臭いに比べれば良いが、不快である事に変わりはないな」

 

 先頭を歩くカミュが持っていた『たいまつ』の炎を消し、袋に納める。状況を見る限り、この城の内部の燭台全てに炎が点ったと考えても良いだろう。だが、見晴らしが良くなりはしたが、城の奥から吹き抜けて来る死臭は、一歩進むごとに強まって行った。

 カミュ達が最も苦手としている魔物の一つである腐乱死体が迫って来る時のように、目の奥にまで痛みが走る臭いではないが、それでも顔を顰めたくなる不快な臭いである事は確かである。放置され続けた死体が、腐敗し、肉が溶けてなくなり、骨となる。その骨さえも風化する程の時間の経過の中で床や壁に染みこんだ臭いは、彼等の未来を示すかのように城全体に漂っていた。

 

「ギシャァァァァ」

 

 真っ直ぐ伸びた通路が突き当たりを迎え、左に折れる場所まで進んだ時に、カミュは咄嗟に勇者の盾を掲げる。横合いから突如聞こえて来た奇声と共に、錆と刃毀れの酷い剣が振り抜かれたのだ。

 乾いた金属音と共に弾かれたように後方へ飛んだカミュの目の前に、六本の腕を持った白骨が一体立っている。もう一度振られた腕からの剣撃。まるでカミュの行く手を遮るように四本の腕が同時に剣を振るった。

 上からも両脇からも、そして下からも振るわれる剣。同時に振るわれた四本の腕から逃れる術はない。僅かの時間で絶体絶命の危機に陥ったその姿が、ゆっくりとリーシャには見えていた。

 

「ふざけるな!」

 

 しかし、そんな絶望的な景色は、危機に陥った本人が発した心の叫びによって掻き消される。全ての剣戟を無視するかのように前方へ盾を掲げたカミュは、そのまま一気に骨の剣士に向かって突進したのだ。

 錆びた剣が彼の纏う鎧に跳ね返され、刃毀れした剣が兜によって折られる。神代の盾の突進を受けた骨は、そのまま壁に叩きつけられ、乾いた音を立てて床へと崩れて行った。

 だが、大魔王ゾーマが居城とする場所に居る魔物が、その程度で行動を停止する訳がない。盾を降ろしたカミュの周囲に散乱する数多くの骨が再び動き出し、生前の身体を形成し始めた。人ではない事を示すように、腕を六本持つその骨の集団は、傍に落ちている朽ちた剣を握り、勇者一行の進路を塞ぐように揃ったのだ。

 

【ソードイド】

骸骨系の剣士最強の魔物である。朽ち果て、白骨化した者達を膨大な魔力によって現世に甦らせ、そこに意志さえも植えつけられた。異世界さえも滅ぼす事が出来る力を持つ大魔王の傍にあり、その強大な魔力を与えられ続けた為、その力は増大し、数多く居る魔物や魔族の中でも上位に入るだけの力を持っていた。手に持つ剣は錆び、刃毀れが酷い為、斬り裂く事は容易ではない。それでもその剣で強引に生物を切り刻む力を持ち、それで斬られた傷痕は修復が難しく、斬られた者は苦しみ悶えながら命を落として行くのだ。

 

「四体か……多いな」

 

「それでも、呪文は極力控えるのだろう?」

 

 完全に戦闘態勢に入ったカミュの横にリーシャが並ぶ。前衛組と後衛組に別れ、磐石の布陣を敷いた一行は、油断なく骸骨達へ視線を送った。

 目の前に居るソードイドの数は四体。その腕の合計数は二十四本となる。カミュ達四人の腕の合計数が八本であるのだから、その三倍の数量になるだろう。それらの攻撃を掻い潜りながら本体を破壊して行く行為は、かなりの困難な物となる筈だ。

 それでもカミュとリーシャは、後方に控える二人の呪文行使を最低限に抑えようと考えていた。自分達前衛だけでこの局面を乗り越え、後方支援組の魔法力を温存しなければ、この先で相対する大魔王との戦闘で勝利を掴む事など出来ないと考えていたのだ。

 魔法力は無限ではない。如何に魔法力の量を桁違いに持っているメルエといえども、その大呪文に使用する魔法力の量は多く、休憩を挟んだとしても全てを回復する事はないのだ。この魔の島に入ってからだけでも、マヒャドの進化系やイオナズンという大呪文を行使している。この先も同様に呪文を行使し続ければ、大魔王ゾーマの場所に辿り着く頃には魔法力の底が見えて来てしまうだろう。『祈りの指輪』という道具で回復する量も全快には程遠い事を考えると、無理をするべきではない事は明白であった。

 

「では、私達だけであの骸骨達を冥府へ送り返さないとな」

 

「そのつもりだ」

 

 魔神の斧を肩に担いだリーシャが前方でカタカタと奇妙な音を立てるソードイドへ視線を送る。それに頷きを返したカミュが、一足飛びに一体のソードイドの前に接近した。

 カミュの接近に気付いたソードイドがその六本の腕を振るう。先程とは異なり、同時に振るわれた訳ではない腕を盾と剣で弾き返したカミュは、ソードイドの胸部を模る肋骨を蹴って距離を取り、態勢を崩したその頭部に向かって王者の剣を振り下ろした。

 だが、そんな一対一の状況を許す程、ソードイドも甘くはない。カミュの横合いから現れた他のソードイドが左右から刃毀れだらけの剣を振るった。既に振り下ろした王者の剣を引き戻す事は出来ないカミュではあったが、彼の瞳の端に映った影を確認し、横から迫る剣を無視してそのまま剣を振り下ろす。

 ソードイドの被っていた錆びた鉄兜ごと頭部に入った王者の剣は、その身に宿した真空の刃のような切れ味を持って、頭蓋骨を真っ二つに斬り裂いた。それと同時にカミュの身体へと食い込む筈であった刃毀れの多い剣は、後方から現れたリーシャの持つ力の盾によって遮られ、そのまま振り抜かれた斧によってソードイドの身体を支える背骨ごと斬り裂かれる。

 

「あと二体だ!」

 

 背骨を斬り裂かれ、上半身と下半身が分かれてしまったソードイドは、転がる他の骨を持って修復しようと動くが、這いずるそれの頭蓋骨を踏み砕いて、リーシャが前方に残る二体のソードイドに視線を送った。

 瞬く間に上級の骸骨剣士を葬り去った彼らの力量は、既に人間と称して良い物なのかは甚だ疑問である。もし、今の彼等が上の世界の魔物達と遭遇したとすれば、魔物の方が裸足で逃げ出す程の力量なのだろう。

 現に、残る二体のソードイドでさえ、カミュとリーシャを前にして戸惑っているように見える。彼等の攻撃方法と言えば、その数の多い腕による四方八方からの剣撃という物しかない。それを抑えられてしまえば、彼らには術は残されていないのだ。

 

「ちっ」

 

 しかし、それでも大魔王ゾーマの城に棲み付く程の魔物である。慢心して相手が出来る程度の魔物ではないのだ。

 舌打ちと共に掲げた勇者の盾を持つ手に伝わる衝撃は、通常の人間であれば吹き飛ばされる程の強さであった。それを生身で受けてしまえば、刃毀れだらけの剣によって傷ついた内臓は修復出来ず、徐々に迫る死の恐怖と戦いながらソードイドの追撃を受けなければならないだろう。

 盾で剣を弾き返したカミュは、そのまま王者の剣を振るい、ソードイドの腕一本を斬り飛ばす。空中に飛んだ腕は、そのまま後方のソードイドの腕に落ち、カミュに向かって来ていた一体が後方へと下がった。

 

「なに!?」

 

 しかし、腕を斬り飛ばしたカミュが追い討ちをかけようとしたところで、目の前に広がった信じられない光景に絶句する事になる。

 後方にいたもう一体のソードイドが、斬り飛ばされた腕を持って近付き、それがあった部分に当てた後、なにやらカタカタと音を立て、淡い緑色の光を発したのだ。その光に包まれた腕は、光が収まると同時に元通りに接続され、それを確認したソードイドがその腕を再び振るい始めた。

 その光景は、その奇跡の理由を知るカミュ達にとって驚愕する物であったのだ。その淡い緑色の光がベホマだろうがベホイミであろうが、欠損部分を繋ぐという行為は不可能に近い。生身の身体であれば、その傷痕を塞ぐ程度しか出来ない中で、骨だけという特殊な状況であって尚、異常な物であった。

 

「あれがベホイミやベホマであっても、欠損部分を繋ぐ事は生身の身体では困難です。ですが、大魔王の魔力によって生み出された骨という特異性を考えると、可能なのかもしれません」

 

「そうか……カミュ、生半可な攻撃であれば、長引くぞ。全ての攻撃に会心の物が求められる。気合を入れろ!」

 

「……気合で何もかもが上手く行けば良いがな」

 

 呆然とその光景を見ていたリーシャであったが、後方からのサラの声に我に返り、再び魔神の斧を握り直す。それと同時に発せられた言葉に、カミュは苦笑に近い表情を浮かべた。

 会心の一撃とは、何度も何度も繰り返して来た中の至高の一振りである。それは狙って出せる物ではない事など、武器による攻撃に最も長けた彼女が一番解っている筈なのだ。それでも、その一振りを常に追い求めるからこそ、彼女は戦士であり、騎士である事もまた事実である。そして、今こそその至高の一振りを出す事をカミュにも求めるという事は、その頂まで彼もまた登っている事を認めている証拠でもあった。

 その心理を理解しているからこそ、苦笑を浮かべ、嫌味を口にしながらも、彼は剣を握るのだ。

 

「おりゃぁぁ」

 

 ソードイドの六本の腕から繰り出される剣戟を斧で弾き、弾き切れない物を盾で防ぐ。それでも避け切れない物は、横から加わったカミュが弾いて行った。

 二体のソードイドと二人の人間。剣戟の数であれば、圧倒的にソードイド側が優勢であっても、戦闘自体の情勢は徐々にカミュ達二人へと傾いて行く。人間離れした速度での剣捌きは、戦士としての頂点に立つ者の技であった。如何に大魔王ゾーマの魔力で底上げされた剣士であるソードイドであっても、その骨に刻まれた剣士としての力量は、カミュやリーシャに及ぶ物ではない。後方で眺める事しか出来ないサラやメルエでさえも目で追う事しか出来ない剣速は、最早神域にまで達しているのかもしれない。

 

「!!」

 

 一筋の光のように走った剣筋は、右斜め下からソードイドの身体を斬り裂いて行った。カミュの持つ王者の剣が走った道筋は、大気さえも斬り裂いたかのようにソードイドを真っ二つに両断する。己が斬られた事さえも気付かないソードイドが尚も剣を振るおうと動くと同時に、その身体を形成していた骨が床へと落ちて行った。

 崩れ落ちたソードイドの頭蓋骨を再び踏み砕いたリーシャは、そのまま跳躍し、後方から迫るもう一体のソードイドの脳天目掛けて魔神の斧を振り下ろす。錆びた鉄兜諸共、斬るというよりは圧し砕くという形で粉砕して行き、ソードイド達との戦闘は終了を向かえた。

 

「ふぅ……終わりか?」

 

「ちっ、無茶をし過ぎだ。後ろで回復魔法を掛けてもらえ」

 

 斧を一振りしたリーシャは、周囲へ警戒の視線を巡らせた後、一つ大きく息を吐き出す。その手足からは真っ赤な鮮血が流れており、顔にも傷痕が見受けられた。如何に人類を超越した剣戟を繰り広げていたとはいえ、ソードイド程の強敵との戦闘を無傷で終える事は出来ない。致命傷を避けてはいても、その身体には激戦の証が刻み込まれていた。

 溜息を吐き出すカミュは、全身を光の鎧で保護されている為に目立った外傷はないが、彼よりも前線に立っていたリーシャの身体全てを大地の鎧では護り切れないのだろう。だが、現状でこれ以上の防具となれば、戦闘での機敏さと引き換えにする他なく、当のリーシャ本人もこの大地の鎧が最も身体に馴染む物であると考えていた。

 

「ベホマ」

 

 再び探索の隊列へと戻ったリーシャに、サラが最上位の回復呪文を唱える。出来る事ならば、回復呪文を行使する回数さえも節約したいところではあるが、それを優先させる事で命を落としてしまっては本末転倒である為、カミュもリーシャもその治療に対して何かを口にする事はなかった。

 動き出した一行を誘うように、ゾーマ城内の通路に灯った明かりが強まって行く。左に折れた通路は狭く、四人が横に並ぶ事は出来ない。人が擦れ違う事が可能な程度しかない通路を一列で進んで行く間、カミュもリーシャもそれぞれの武器を納める事なく、歩いて行った。

 

「メルエ、足元に気をつけろ」

 

「…………ん…………」

 

 ゾーマ城内は、魔物なのか人間なのか解らない骨が散乱している。魔族同士の争いに敗れた者、魔物同士の闘争に敗れた者などの成れの果てなのだろうが、それでも歩き難い通路である事に変わりはない。特に幼いメルエにとっては、足場が不安定な場所を長時間歩く事は見えない疲労の蓄積に繋がって行く筈である。それを察したリーシャが、彼女に忠告を漏らし、それを受けた少女も大きく頷きを返した。

 トラマナは常に唱え続けている。今のサラやメルエにとって然程影響がある物ではないが、それでも長時間に渡る行使の継続は、彼女達呪文使いの身体に見えない疲労を積み重ねている事は事実であった。

 しかし、この城は、諸悪の根源と謳われる、大魔王ゾーマの居城。そこへ踏み込んだ勇者一行にとって楽な道など有りはしない。真っ直ぐに続いた通路を左に折れ、その先へ視線を向けると、再び分かれ道が見えて来ていた。

 

「どっちだ?」

 

「良く見れば、左に向かえば部屋のような扉が見えるぞ?」

 

 反射的にリーシャへ問いかけたカミュであったが、壁の向こう側をメルエと共に覗き込んだリーシャの答えを聞いて、視線を向ける。その言葉通り、左手に続く通路はすぐに行き止まりとなっており、左右に扉が見えていた。

 燭台の炎に照らされ、この城の中は見通しが良い。闇に包まれたアレフガルド大陸の中で、最も探索し易い場所でもあるが、それが逆に彼らを迷わせていた。

 頼りない『たいまつ』の炎のみで進むのであれば、カミュは迷いなくリーシャの言葉の逆へ進んでいるだろう。だが、その先の通路が見えているだけに、リーシャもまた決定的な言葉を口にしない。それがまた、彼等全員を出口のない迷路へと陥れる事となっていたのだ。

 

「行ってみるか?」

 

「アンタは行ってみた方が良いと思うのか?」

 

 それでも、この一行を常に導いて来た青年は、再度『行き止まり探知機』へと問いかける。それだけ、彼がこの女性戦士を信頼している表れであるのだが、当の本人はその信頼に気付かず、真剣に悩み込んでしまった。

 斧を持ちながら腕を組んだ彼女は、暫くの間考え込む。それを真似するように足元で少女が腕を組む姿は、この場所で無ければ微笑ましい物であろう。だが、いつこの場所に強力な魔物が顔を出すか解らない状況では、少しの油断も許されず、メルエの行動に微笑む人間もいなかった。

 

「私は、あの右の扉の先へ行ってみたいとは思うが……」

 

「……わかった。ここは、あの二つの扉を無視して進む」

 

 暫く考えて、ようやく出たリーシャの答えは、素気無く無視される事となる。左へ折れる道へ進む事なく、再び真っ直ぐに歩き始めた一行は、即座に見えて来た突き当りを右へと曲がった。

 その時、地面が大きく揺れる。まるで地震のように床が波打ったのだ。幼いメルエは床へ尻餅を突き、体勢を低くしなければカミュ達でさえも転倒しかねない程の揺れ。それは、一際大きな明かりが漏れる右手の空間から発生しているように感じた。

 既に臨戦態勢となったカミュ達は、そのままゆっくりと歩を進める。大きな燭台が見える場所には、まるで王城の謁見の間へ続くような大きな扉が見えていた。

 ここが通常の国家の王城だとすれば、あの扉の先に玉座がある間があるのだろう。ここが大魔王ゾーマの居城である事を考えると、そこに玉座があるのであれば、必然的に頂点に立つ者が居るという事になる。

 そして、それは大魔王ゾーマとなるのだ。

 

「……準備は良いか?」

 

「愚問だ。私達はこの時の為に歩んで来たのだからな」

 

 扉の前に立ったカミュが、一度振り向く。その先にある三つの顔へ順々に視線を送り、そしてゆっくりと問いかけた。

 それに対して、返って来る答えを彼は知っている筈である。そして彼の予想を全く違える事なく、斧を肩に担いだ女性戦士は言葉に乗せた。

 アリアハンという国を出てから六年以上の月日は、この時を迎える為の物。ここまでの苦労も悲しみも、喜びさえも、この先に居るであろう大魔王を討ち果たす為の物であった。リーシャの後ろで神妙に頷くサラとメルエの表情にも決意の色が表れている。それを確認したカミュは、ゆっくりと扉を押し開いた。

 

「ゾーマ様の城に何の用だ?」

 

「!!」

 

 しかし、その扉の先に居た者は、カミュ達が想像していた者ではなく、醜悪な姿を持つ巨大な肉塊であった。

 醜い紫色の体皮を持つそれは、このアレフガルドで最初に入った洞窟の中で彼らを苦しめた者と酷似している。異なるのは、それが発した人語だけであろう。勇者の洞窟という場所に生息していた同様の魔物は、唸り声を上げるばかりで言葉を発する事はなかった。だが、今目の前に存在する魔物は、はっきりとカミュ達にも理解出来る言葉を口にしたのだ。

 周囲に目を向ければ、そこは間違いなく謁見の間と呼ばれるような場所。通常の国家であれば王が政務を行う場所とされる間である。それを示すように、醜い巨人の後方には、装飾が施された玉座が見えていた。

 

「お前達がゾーマ様の下へ辿り着く事はない。この場で俺達に喰われるのだからな!」

 

 玉座とは王が座す椅子である。そして、カミュ達の前に存在する二体の巨人もまた、その種族の王であった。

 トロルキングと呼ばれる、トロル族の王。そして、このゾーマ城に居る者達はその中でも更に上に君臨する者達であろう。トロル族を纏めるのがボストロールであり、そのボストロール達を指揮出来るのがトロルキングだと区別するならば、今目の前に居る二体は、そのトロルキング達さえも統べる、トロル族の大王なのかもしれない。

 大きな雄叫びを上げて振るわれた棍棒が大気を動かし、カミュ達の身体ごと震わす振動を生み出す。

 

「カミュ様、魔法力の節約が出来る場面ではありません」

 

「頼む」

 

 口からはみ出した長い舌から唾液を滴らせ、今にも手に持つ棍棒を振り下ろそうとしている二体のトロルキングを見上げたサラは、視線を動かす事のないカミュへと言葉を告げる。それに対して返って来た物は、単純な僅か一言のみ。だが、その短い言葉が後方支援組の二人の心に火を点した。

 勇者とは、『勇気有る者』という事に加え、『勇気を奮い立たせる者』という面もある。その点で言えば、このカミュという青年は間違いなく『勇者』なのであろう。

 具体的な指示はない。どのような呪文を行使し、どのような効果を求めているのかも口にはしない。それは、彼がサラとメルエという二人を心から信じている証でもあるのだ。必要な場面で必要な効果を持つ呪文を行使してくれるという絶対的な信頼を向けられた者が奮い立たない訳がない。振り向きもせず、視線さえも動かさない青年の背中を見ながら、二人の呪文使いは万全の態勢を築き始めていた。

 

「ブモォォォォ」

 

 豚のような、牛のような奇声を上げたトロルキングが、カミュ目掛けて棍棒を振るう。後方へと飛んで避けたカミュがいた場所の床が抉られ、石畳の破片が飛び散った。追い討ちを掛けるように、もう一体のトロルキングが横薙ぎに棍棒を振るう。それを勇者の盾で受け止めたカミュの身体が宙に浮き、吹き飛ばされると同時にリーシャが前へと出た。

 振り抜かれたトロルキングの腕目掛けて振り下ろされた斧は、紫色の皮膚を斬り裂き、大量の体液を飛び散らせる。だが、それでも巨人の腕を斬り落とす事は出来なかった。

 怒りの咆哮を上げたトロルキングは、傷を受けていない腕をリーシャ目掛けて振り下ろす。横殴りの拳とは異なり、全体重を乗せた一撃は、如何に強靭な戦士の身体であっても相応の損傷を与える程の物。盾を掲げてそれを受け止める事を諦めたリーシャは、転がるように避けた。

 

「…………メラゾーマ…………」

 

 リーシャが転がった先に、先程までカミュと対していたトロルキングが棍棒を振り下ろす。体勢を戻した瞬間に迫る影に気付いたリーシャが盾を掲げようとするが、それは後方から飛んで来た巨大な火球によって無用となった。

 多少離れてはいても、リーシャの金髪を焦がす程の熱量を持った火球は、そのままトロルキングの胴体目掛けて飛んで行き、肉を焼き焦がす轟音と、肉が焼け爛れる異臭を放ちながら壁に直撃する。そして、その場に残ったのは、円形に胴体を抉られたトロルキングだけであった。

 

「グオォォォォ」

 

 腹部の大半を融解させ、命さえも奪われたトロルキングであったが、それでも最後の力で棍棒を振り下ろす。最上位の力を持つ巨人の命を掛けた一撃は、カミュ達にとっては痛恨の一撃であろう。メルエの放ったメラゾーマを見たリーシャは、僅かな時間ではあるが力を抜いてしまっていた。その一瞬を狙われたのだ。

 凄まじい轟音と共に、巨大な棍棒が床へとめり込んで行く。それと同時にゆっくりとトロルキングの巨体もまた、床へと沈んで行った。巨体が倒れた振動が床へと響く中、後方で成り行きを見ている事しか出来なかったサラが動き出す。

 サラの動きに気付いた残る一体のトロルキングが棍棒を振るい、それを遮るようにカミュが盾を掲げた。先程宙に舞ったカミュであったが、今度は床に根でも下ろしたかのように動かず、それに驚いたトロルキングの隙を突いて、王者の剣を真っ直ぐに突き出す。肉を突く不快な音と共にトロルキングの腹部に突き入った剣は、そのまま真下へと振り下ろされた。

 

「リーシャさん、しっかり!」

 

「ぐっ……」

 

 トロルキングの死体を乗り越えてサラがその場に着いた時、そこには虫の息の女性戦士が横たわっていた。

 強力な一撃を受ける際、咄嗟に盾だけは掲げたのだろう。それでも盾を持っていた左腕の骨は砕け、身体の内部にある臓物は傷つき、外からの圧力に耐え切れなかった身体の各所が裂けていた。瞳の光も虚ろになっている事から、生命の炎さえも消え掛けている。それでも、この女性戦士ならばと、サラは必死に呼びかけながら最上位の回復呪文を唱えた。

 身体全てを包み込むような大きく柔らかな光が放たれる。淡い緑色の光がサラの身体からリーシャの身体へ移って行った。

 徐々に癒えて行く外傷と同時に、リーシャの吐き出す息も整って行く。それを見届けたサラは安堵の溜息を吐き出し、既に終幕を迎えたカミュとトロルキングの戦闘へと視線を戻した。

 

「その力を示せ!」

 

 下腹部に渡る致命傷を負ったトロルキングではあったが、流石はトロル族の王の中の王と感心する程の粘りを見せている。大量に噴き出す体液を気にもせず、怒りに染まった瞳をカミュへと向け、手に持つ棍棒を振り回していた。

 その人間の希望の王者とトロル族の王者との戦闘には、メルエであっても入り込む隙はなく、呪文を行使する機会を見付ける事が出来ない。だが、その戦闘も徐々にカミュの方へと形勢は傾いて行った。

 動きが緩慢になって来たトロルキングの小さな隙を見つけては剣を振るい、その身体の機能を徐々に奪って行く。そして、最後に距離を取ったカミュは、外でヒドラへ向けたように、王者の剣を高々と掲げて見せた。

 

「グボッ」

 

 王者の剣が稲光のように輝き、真空の刃となってトロルキングへと襲い掛かる。十字に切られた真空の刃は、その大きな胸に風穴を空けた。

 逆流した体液を盛大に吐き出したトロルキングが遂に膝を着く。その隙を見逃さずにカミュは王者の剣を横薙ぎに振るった。

 首筋を深々と斬り裂かれたトロルキングの体液が天井に向かって噴き上がる。噴き上がる体液の量が減って行く毎に、その大きな瞳に宿る光もまた、萎むように失われて行った。

 最後は呻き声も漏らす事が出来ずに、巨体がゆっくりと床へと落ちて行き、大きな振動と共に倒れ伏す。その命の灯火が消えた二体の巨人の死体が横たわる中、主の居ない玉座だけが眩い光を放っていた。

 

「……コイツは大丈夫なのか?」

 

「はい。内部の傷も癒えていると思います」

 

 剣に付着した体液を振り払ったカミュは、横たわるリーシャの許へと移動する。既にメルエもその場所に移動しており、心配そうに母のような女性に視線を送っていた。

 問いかけに笑みを浮かべて頷いたサラを見て、カミュは小さな溜息を吐き出す。この戦いに慢心も油断もなかった筈。それでも尚、一瞬の気の緩みが生死を分かつ事を改めて実感していた。それはサラやメルエも同様であり、先程カミュへ向けた笑みを消したサラは、真剣な表情で眠るリーシャへと視線を戻す。

 ここが全ての魔物や魔族を統べる大魔王の居城である事を忘れた事はない。それでも心の何処かに、『大魔王を倒す為に来た。それまでの道で相対する魔物や魔族は前座に過ぎない』という想いがあったのだろう。その証拠に、彼等は極限まで魔法力を節約するという事を念頭に戦闘を行っていたのだ。それを慢心と言わずして何を慢心と呼ぶというのだろう。

 この城に居る魔物達は、それこそ大魔王ゾーマの側近中の側近。居城に居付く事を許された者達であれば、それ相応の実力を持っていて当然なのだ。全力で相対すれば、カミュ達に負けはないかもしれない。それでも制限を掛けたままで打倒出来る程に甘い相手ではなかった。

 それを彼等は身を以て痛感していた。

 

「カミュ様、リムルダールに捕らえられていた囚人の話を覚えていらっしゃいますか?」

 

「……ああ」

 

 目が覚めないリーシャの頬に優しく手を当てるメルエを見て微笑みを戻したサラが、再び厳しく表情を引き締め、カミュへと問い掛ける。その言葉を聞いた彼は、暫し考えた後で頷きを返した。

 ここは大魔王ゾーマの城という認識が彼等にはある。だが、精霊神や竜の女王と同等以上の力を持つ大魔王を魔神と称しても可笑しくはない。そう考えれば、この場所を神殿と考えても不思議ではなかった。

 そして、この謁見の間のような場所には一つの玉座がある。トロルキングの体液が発する生臭さと、その死体が放つ異臭に包まれる間の中で一際輝く装飾が施された玉座が、場違いのように目立っていた。

 

「あの囚人は、『玉座の後ろに秘密の入り口がある』と語っていました。調べてみる価値はあるかと思います」

 

「わかった。アンタは、コイツとメルエを頼む」

 

 この城の中で行動していない場所は多い。まだ行っていない場所の何処かにも玉座がある可能性はあった。だが、この場所にある玉座の後ろを調べてみる価値はあるだろう。

 あの囚人の話が全くの出鱈目である可能性は高い。何故なら、このゾーマ城がある魔の島に渡る術は何年も前に失われているのだ。となれば、この場所に渡った者も皆無に等しく、情報自体の信憑性が薄くなる。

 それでも彼等の中に残る最後の情報はそれしかなかった。他の道を歩めば、大魔王ゾーマへと続く道も見つかるかもしれない。だが、先程の戦闘から考え得るに、彼等には悠長に城探索をする時間も余裕もないのだ。

 強力な呪文を唱えれば、魔法力の残量に不安が残る。かといって、前線の二人の直接攻撃だけに頼れば、結局は回復呪文を行使する為に魔法力を使う事になる。結局、補助も回復も呪文に頼る事になるのだ。

 もし、この状況さえも見越した形で、この城の明かりを灯したのが大魔王ゾーマだとすれば、カミュ達が苦しみ悶えながらも自身の下へ辿り着く様を楽しんでいるとしか思えない。そして、満身創痍の状態で辿り着いた彼等の絶望に歪む顔を見る事を待っているのかもしれなかった。

 

「ぐっ」

 

「リーシャさん!」

 

 カミュが玉座の裏へと姿を隠した頃になって、ようやくリーシャの意識が戻る。回復したとはいえ、身体に走った一瞬の激痛に顔を歪ませたリーシャであったが、心配そうに覗き込んで来る二人の妹達の表情を見て、無理やり笑みを作った。

 ゆっくりと身体を起こし、立ち上がって身体の状態を確かめて行く内に、先程まで軋むように体を襲っていた激痛も霧散して行く。あれ程の激痛に苦しむ程の怪我を負った自分を、懸命に癒してくれたのだと理解したリーシャは、心配そうに見上げて来る二人に今度こそ心からの笑みを浮かべた。

 

「カミュはどうした?」

 

「あっ、カミュ様は玉座の後ろを調べています。私達も向かいましょう」

 

 頷いたリーシャの手を引いたメルエがトロルキングの死体を越えて行く。死の一歩手前までリーシャを追い込んだトロルキングは、メルエの中で温情を与えるに値しない死体なのかもしれない。死体に一瞥も送らず、それを乗り越えた彼女は、大きな玉座の裏に姿を隠したカミュを覗き込むように顔を出した。

 まるで何かから隠れているように覗き込むメルエの姿に苦笑したリーシャは、そのまま玉座の後ろに回り込み、そこで屈み込んでいるカミュの背中越しに床へと視線を送る。屈み込んでいた彼は、床へ手を当て、何度か叩きながら確認作業を行っていた。

 

「何かありそうか?」

 

「この部分だけ、音が違う」

 

 後方から声を掛けて来たリーシャに振り向く事もせず、カミュは床を軽く叩き続ける。確かに、カミュが足を付けている場所と、少し前方とでは、叩いた時の音が微妙に異なっていた。前方の部分は叩くと甲高い音が響いている。まるでその下が空洞であるかのような音に、カミュは確信を持って立ち上がった。

 そのまま何も言わずに手を翳し、リーシャ達三人を後方へと下がらせる。彼の行動を不思議そうに見ていたメルエは、下がった場所に屈み込み、先程のカミュと同じように床を叩き出す。しかし、何処を叩いても同じ音しかせず、眉を下げて首を傾げるのだった。

 そんな少女の行動に気付く事なく、カミュは右足を上げ、一気に床へと落とす。大きな破壊音が玉座のある間に響き、その音に驚いたメルエが立ち上がる頃、カミュの右足が踏み抜いた床がその全貌を現した。

 

「地下へ繋がる階段ですね」

 

「まぁ、魔族は地中深くと相場は決まっているだろうな」

 

 長年開けられる事のなかった床からは、地下へと続く階段が見えている。大魔王ゾーマが地下に居ると決まった訳ではないが、カミュ達はある程度の確信を持っていた。

 基本的に魔族は闇を好む。獣が凶暴化した魔物であれば、陽の光の下でも活発に活動し、そこで食料などを確保するだろうが、純粋な魔族などは、闇の中で生きて来ていた。魔王バラモスもまた、ネクロゴンドの城の玉座がある場所ではなく、地下に自身の場所を作っている。あれが、大魔王ゾーマの居城であるこの場所を模倣した物であるとすれば、間違いなくこの先でゾーマは待ち受けているだろう。

 この階段がトロルキングなどの巨大な魔物達が通れる大きさではない事を考えると、他にも地下へと繋がる道があるのかもしれないが、今それを探している余裕はない。無言で頷き合った四人は、一歩一歩階段を降りて行く。

 

 ゾーマ城とも、ゾーマの神殿とも云われるこの場所は、通常の王城とは異なり、天に向かって高さを伸ばした城ではない。存在していたとしても二階層程度の物であろう。だが、逆に地中深く掘り進められていた。それが何階層あるのかは定かではない。それでも、彼等は進まなければならないのだ。この先の道中で遭遇する多くの強敵達を討ち払いながら、全ての元凶である大魔王を討ち果たす為に。

 再び点された『たいまつ』の炎が地下へと消えて行く。静まり返った玉座の間を照らしていた明かりもまた、その役目を終えたかのように次々と消え去って行った。

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございます。
1月に3話更新が間に合いませんでした。
2月は3話更新を目標に頑張って行きます。

ご意見、ご感想を心よりお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。