新訳 そして伝説へ・・・   作:久慈川 京

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シャンパーニの塔②

 

 

 

 サラが一行に追いついた時、カミュ達は戦闘状態にあった。

 相対しているのは、ロマリア大陸に入ってすぐに遭遇した<キャタピラー>のような魔物。形状は、<キャタピラー>のように背中を固い殻に覆われていて、数多くの足を持っている。

 それが三体。

 カミュとリーシャが剣を振り、一歩後ろでメルエが詠唱に入っていた。慌てて一行に近づくサラに鋭い声が届く。

 

「サラ! 不用意に近づくな! こいつらは、<キャタピラー>ではない!」

 

「えっ!?」

 

 リーシャの声に拍子を抜かれたサラは、魔物への警戒を緩めてしまった。

 その結果、固い殻に覆われた芋虫のような魔物は、その無数にある足の一部をサラに振り下ろし、反応が遅れたサラの左手を切り裂いた。

 

「サラ!!」

 

 サラが左腕を切られ、血飛沫を上げながら倒れ込むのを見たリーシャは、サラを攻撃した魔物を剣で牽制しながらサラに駆け寄る。

 

「……うぅぅ……」

 

「サラ! 大丈夫か!?」

 

 リーシャはサラの様子を見て、更に声を上げる。痛みに苦痛の表情を浮かべながら押さえている左腕からは真っ赤な血が吹き出し、押さえ切れていない為に、サラの右手を真っ赤に染め、更に床に血液が滴っていたのだ。

 

「ちっ!」

 

 そんな二人の様子を視界の端で捉えたカミュは、盛大な舌打ちをしながら、自分に向かってきた魔物の足を<鋼の剣>で斬り落とした。

 盛大に苦悶の鳴き声を発した魔物を一瞥し、カミュはメルエの場所まで後退した。

 

「…………まほう…………?」

 

 戻って来たカミュの傍に『とてとて』と駆け寄って来たメルエは、カミュを見上げるように顔を上げ、小さく呟きを洩らす。足下から見上げるメルエに視線を動かしたカミュは、少し考えてから、メルエに言葉を返した。

 

「ん?……ああ、今なら一ヶ所に集まっているな。出来るのか?」

 

「…………ん…………」

 

 今までカミュとリーシャが交差し、なかなか詠唱が完成しなかったメルエだったが、リーシャが下がり、カミュも戻って来た事で魔法使用が可能になった事をカミュに伝えたのだ。

 そしてカミュの回答にこくりと頷いた。

 カミュに足を斬り落とされ、怒り心頭といった魔物、そして、リーシャに牽制され、距離を保った魔物が一ヶ所に集まっている。狙った訳ではなかったが、それは魔法を効率良く行使するならば、都合が良かった。

 

「…………ギラ…………」

 

 詠唱と共に、三体の魔物に向けたメルエの右腕から熱風が迸る。メルエが唱えた呪文は、カミュ達と出会った最初の夜に覚えた呪文の一つ。

 

<ギラ>

『魔道書』に記載されている攻撃呪文の一つ。簡単に言えば、灼熱呪文である。<メラ>のように火球が飛び出す訳ではなく、火炎と共にその周囲を熱風が襲い、焼け野原へと変える。その範囲はある程度に広がり、<メラ>の火球の様に敵単体に向けられる物とは用途が異なってくる。 

 

 メルエの腕から発せられた火炎が、芋虫のような魔物の周辺に広がる。その熱に身体をうねうねと動かしながら耐える姿は、芋虫そのものの姿であった。

 周囲に魔物の焼け爛れていく異臭が広がり、魔物を焼いていた炎が収まると、そこには無残な魔物の姿が残されていた。

 

「……す、すごい……」

 

 左手を押えながら、その光景を魅入られたように眺めていたサラは、メルエの放つ魔法の威力に圧倒されていた。

 炭の様に黒焦げになった魔物が二体。リーシャの牽制を受け、他の二体と若干距離があった一体は、身体全体が焼け爛れ、身体を覆っている殻が溶けている。炭化していない一体にはまだ息があった。

 カミュは、無表情で<鋼鉄の剣>を振り上げ、魔物へと突き刺す。炭化はしていないまでも、全身が焼け爛れ、呼吸をする事も困難であるように横たわっていた魔物は、カミュの一突きによって絶命した。

 あの状態で生きているという事は、想像できない程の苦しみを味わっていた事になるだろう。ある見方をすれば、カミュの突き出した<鋼鉄の剣>が、その苦しみから魔物を解放した事なった。

 

「…………ん…………」

 

「……ん? あ、ああ、よくやった」

 

 魔物に止めを刺して戻って来たカミュに向けて、何かをねだる様にメルエは頭を突き出して来た。

 初めは何をしているのか理解出来なかったが、それが頭を撫でて貰いたいのだと気がついたカミュは、褒め言葉と共にメルエの頭を撫でつける。気持ち良さそうに目を細めてそれを受けるメルエ。

 

「サラ、大丈夫か!? お、おい、カミュ! 早く薬草を!」

 

 しかし、そのメルエの幸せな時間は、焦燥感に駆られたリーシャの声で終わりを告げる。カミュの手が自分の頭から離れてしまった事に、メルエは残念そうにしながらもリーシャを睨む事はせず、そちらに足を向けるカミュの後についてサラ達の下へと歩いて行った。

 

「アンタは慌て過ぎだ……まず体内に入った毒を抜かなければ、いくら薬草を使ったところで、傷口が膿んで来るだけだ」

 

「な、なに!? 毒を受けたのか、サラ!!」

 

「ぐっ!……わかりません……」

 

 カミュが発した溜息交じりの言葉に、更に驚きの声を上げたリーシャは、血が流れ続けるサラの左腕を掴んで声を掛ける。傷口を握られ、激痛に顔を歪めるサラは傷の痛みからなのか、毒からなのか分からない眩暈に悩まされていた。

 

「カ、カミュ! 早く<毒消し草>をよこせ!」

 

 ふらつくサラを支え、リーシャは後ろに立つカミュへと怒鳴りつける。先程の魔物から、サラが毒を受けたのであれば、早急な対応が必要である事は間違いない。アリアハンで遭遇した<バブルスライム>の毒よりも強力である可能性もあるからだ。

 

「リ、リーシャさん、大丈夫です……」

 

「大丈夫な訳あるか!! 毒を受けているとしたら、早めに解毒しなければ、最悪、死に至るのだぞ!」

 

 リーシャは、完全にパニック状態だ。

 朦朧としながらも、自分をそこまで心配してくれるリーシャをサラは嬉しく思っていた。

 仲間と認めた人間をそこまで想う事が出来るリーシャの人間性は、確かに好感の持てるものなのであろう。

 

「……完全に取り乱している『戦士』様は放っておくとしても、解毒はしておいた方が良い。幸い<毒消し草>の数には余裕もある」

 

「…………サラ……死ぬ……だめ…………」

 

 リーシャに続き、カミュ、メルエと言葉は違えど、サラを心配するような言葉に、サラの瞳は潤みそうになった。

 サラは、先程の盗賊との一件で、確かな溝が出来たと感じていたのだ。それは、サラとカミュに限る事ではなく、サラに向けるメルエの視線やリーシャの言葉から、自分と他の三人との関係はここで終ってしまうのかもしれないとまで考えていた。

 それ程の出来事。サラの根底にある物すらも大きく揺さぶり、崩してしまうかもしれない程の大きな物。それは、何もサラだけではなく、パーティー全体にも言える事だった。

 それでも、メルエは口を開いた。

 先日、森の中で小さな女の子を見つけた際に、サラから教わった『人の死』という概念。それをサラと結びつけたメルエは、眉尻を下げて涙を溜めていている。そんなメルエを見て、サラは込み上げる想いを押さえつけ、気丈に顔を上げた。

 

「……だ、大丈夫ですよ、メルエ。私は死にませんよ……キアリー……」

 

 視界が霞んで来た瞳をメルエへ向け、優しく微笑んだサラは、左腕を右手で押さえたまま詠唱を行った。

 <ホイミ>を掛けた時とは異なる色を放つ淡い光が、サラの患部を照らし出し、徐々に弱まる光と共に、サラの視界が開けて行く。

 

<キアリー>

教会にある『経典』の中に記載される呪文の一つ。身体を侵す毒を解毒するための魔法である。この魔法が教会に保管される『経典』内にしか存在しない為、必然的に『僧侶』以外は行使する事は出来ない。故に、<毒消し草>等で浄化しきれない程の毒等は、教会に赴き神父などに解毒してもらう。それも、教会の資金源の一つなのだ。

 

「ホイミ」

 

 解毒の光が収まると、サラは続けて<ホイミ>の詠唱を行う。

 <キアリー>とは違う、淡い緑色の光が再びサラの左腕を包み、ぱっくりと裂かれていた傷口を塞いで行った。 

 

「凄いな! サラ、解毒の魔法も覚えたのか!?」

 

「……あ…は、はい……」

 

 傷口は塞がっても、失った血液はそう簡単には戻らない。多少貧血気味なサラは、疲れたような声を出してリーシャへと答える。しかし、座りこんだままリーシャの方を見た際に、その後ろに立つメルエの頬が膨らんでいる事を感じたサラの脳は覚醒された。

 

「あ……あ…で、でも、メルエの新しい魔法も凄かったですよ! 私では、あのような魔法は使えません。わ、私など、驚いて呆然としてしまいました!」

 

「…………あたらしい………ちがう…………」

 

 サラが呆然としてしまったのは事実なのだが、メルエの機嫌を取るために多少大袈裟に話すサラに返ってきた答えは、予想外のものだった。

 そのメルエの答えにサラは驚きの声を上げ、メルエを見つめてしまう。そんなサラの視線を受けても、メルエは頬を膨らませたまま、『ぷいっ』と顔を背けてしまった。

 

「…………まえに………おぼえた…………」

 

「えぇぇぇぇ!! そ、そうなのですか!? メ、メルエ……貴女は、どこまで魔法を習得しているのですか?」

 

 サラはここに来て初めて、メルエの魔法の習得率の凄さを実感した。

 若干十歳に満たないような少女が習得するレベルの魔法の数ではない。貧血気味である事すらも忘れて、サラは大声を上げてしまっていた。

 

「メルエ、先程は凄かったぞ。良くやった」

 

「…………ん…………」

 

 サラが普段通りの様子に戻った事に安心したリーシャは、まだ労う事をしていなかったメルエの頭に手を乗せ、優しく撫でた。

 再び到来した至福の時に、メルエは目を細める。

 

「……新しい魔法は、また今度見せてもらうさ……もう、良いか? 良いのであれば、先に進む。陽が落ちる前にはここを出たい」

 

「少しくらいサラを休ませてやれ!」

 

 早々に動き出そうとするカミュを見たリーシャは、その行動に抑制を掛けるように声を上げる。しかし、その声に振り返ったカミュの表情は、明らかな呆れを含んでいた。

 そのカミュの表情に、リーシャは僅かに怯む。

 

「……アンタは何日かけてこの塔を上るつもりだ? まぁ、休もうが休まなかろうが、アンタの示す道を歩いていたら同じだろうがな……」

 

「ぶっ!」

 

 サラを気遣うリーシャの叫びに返したカミュの言葉は、サラのツボを突いてしまった。

 リーシャにも自覚があるだけに、その顔は見る見る赤くなって行く。それは、恥ずかしさからなのか、それとも怒りからなのか解らない。ただ、サラの噴き出しは、リーシャの堪忍袋を繋ぐ最後の緒を切ってしまった事に間違いはなかった。

 

「ふっふっふっ……カミュ、サラ……覚悟は良いのだな……」

 

 サラは、噴き出した後に胸に込み上げて来る笑いを抑える事が出来ず、くすくすと溢していたのだが、顔を伏せていたリーシャの声を聞き、その笑いも腹の底に引っ込んだ。

 まさか、リーシャがカミュだけでなく自分までも対象にするとは思わなかったのだ。

 

「あ……あ……リ、リーシャさん?」

 

 サラの顔から笑いが消え、青くなって来ているのは、決して貧血だけが原因ではないだろう。カミュにとってはいつもの行為である為、涼しい顔をしているが、サラにとっては初めてに近い。

 

「…………もう………いく…………」

 

 しかし、そんな二人の戯れのような行為は、リーシャの手が離れた事を不満に思っていた小さなお姫様によって幕を閉じられた。

 リーシャの手を引くように見上げたメルエが、先に進む事を提案したのだ。

 

「そ、そうですね! 私は大丈夫ですので、もう行きましょう!」

 

 メルエの呟きは、サラにとって渡りに舟だった。

 『とてとて』と先を進むメルエとカミュが先行し、サラ、リーシャが後ろを続く。リーシャとしても、先程まで一行を包んでいた重苦しい雰囲気を思っての行動だっただけに、怒りを治めた後にも拘わらず、笑顔を浮かべていた。

 

「しかし、あの魔物は<キャタピラー>ではなかったな」

 

「そ、そうですね。<キャタピラー>が毒を持っている筈はありませんからね」

 

 歩きながらリーシャが漏らした疑問は、サラも同様に考えていたものだった。

 若干、<キャタピラー>よりも色が濃かったような気もするが、見た目は<キャタピラー>と変わらないように見えていたのだ。

 

「おい、カミュ。あの魔物は何なのだ?」

 

 リーシャはその疑問を、前を行くカミュへとぶつける。リーシャの声に振り返る事なく、カミュの答えは返って来た。

 

「あれは、<毒いもむし>だろう。何の変異かは知らないが、<キャタピラー>が毒性を持った物だと云われているらしい。俺も遭遇したのは初めてだから、詳しい事は解らない」

 

<毒いもむし>

その名の通り、毒を有した芋虫である。<キャタピラー>の様に背中を固い殻に覆われており、その行動も<キャタピラー>に酷似していることから、魔物研究者の間では、<キャタピラー>の上位種とされている。何らかの変異か、環境への適応なのかは解明されてはいないが、毒性を持つ事になった<キャタピラー>ではないかと考えられていた。芋虫と呼ばれてはいるが、それが蛹となり、羽化をするかとなると、その過程や結果を見た者はいない。

 

「なるほどな……しかし、この塔の周辺では見なかったが、この塔にしかいないのか?」

 

「……さぁな。アンタは、少し魔物の知識も詰め込んだ方が良いのではないか? だが、魔法に続き、魔物の知識まで無理に詰め込む事は、筋肉の脳味噌には酷か……」

 

 カミュの答えを聞き、頷いたリーシャが更なる疑問をカミュにぶつけると、返って来たのは失礼千万な答えだった。

 今度は先程とは違い、リーシャの頭の中で、本気の怒りによる血液上昇が始まった。

 

「カミュ! 先程から言いたい放題言ってくれるな! そこまでして私と決着を着けたいのなら受けてやる!」

 

 腰の剣に手を掛けるリーシャの目は本気だ。

 サラは、そんな二人のやり取りを見て、不謹慎にも笑顔を浮かべ、笑い声を溢してしまった。

 

「な、なんだ? サラ、私は本気だぞ!? サラには悪いが、アリアハンの勇者はこの<シャンパーニの塔>に於いて、魔物に打ち倒されて死ぬ事となった!」

 

 サラの笑みを見て、リーシャの頭から、多少の血液が下がって行く。自分が本気である事をサラに伝えようと話せば話す程に、サラの笑みは濃くなって行き、洩れる笑いも大きくなって行った。

 

「ふふふっ、ありがとうございます。私はもう大丈夫です」

 

「ち、違うぞ、サラ。お前に元気がない事を気にしていた訳ではない。今の私は、本気で怒りを感じているんだ!」

 

 リーシャの怒りに、見当違いの言葉を返すサラに対し、リーシャは目を白黒させる。

 確かに、先程は若干演技の部分はあったのだろう。しかし、今回のリーシャの怒りは本物だ。その証拠に、腰の<鋼鉄の剣>は半分以上の刀身が出ている。

 今、まさにそれを抜き放とうとしていたのだ。

 しかし、そんなリーシャの弁明もサラには通じなかった。

 にこやかな笑顔を向け、リーシャに頷き返すサラを見て、流石のリーシャも怒りを鎮める他なくなる。

 

「……茶番は終わったか?」

 

「…………はやく………いく…………」

 

 そんなリーシャとサラのある意味微笑ましいやり取りも、その他の二人の冷たい言葉で終わりを告げる。しかし、リーシャ達のやり取りを茶番と言い捨てるカミュの表情も無表情ではあるが、冷たい雰囲気を持つものではなかった。

 再び歩き出した一行は、順調に一階部分を探索していく。先程の別れ道からは、ほぼ一本道だった。

 一本道といえども、それは塔の一番外側の部分を回り込むような道で、大きくカーブを描いている。途中で、<ギズモ>や<軍隊がに>などと遭遇はしたが、その程度の魔物は、もはやカミュとリーシャの剣、そしてサラとメルエの魔法の敵ではなかった。

 <ギズモ>をサラの<バギ>で吹き飛ばし、<軍隊がに>はカミュとリーシャが斬った後、メルエの<ヒャド>で凍らせる。

 

「…………また………サラ………たおした…………」

 

「えぇぇ!? メ、メルエも魔法で倒したではないですか!?」

 

「あはははっ。メルエ、皆で力を合わせると言っただろ?」

 

 サラの<バギ>で吹き飛ばされて行く<ギズモ>を見て、メルエは渋い表情を作っている。頭では、サラの攻撃呪文を認めてはいるが、幼いメルエの心では納得が出来ないのだろう。

 

「……これで一階部分も終わりだな……」

 

 後方での三人のやり取りを余所に、魔物達の死骸の後ろに見える階段を見つけ、カミュは二階部分へと足を運んで行く。

 

 

 

 二階部分に上がる階段を上ると、小さな広間のような空間に出る。

 その空間から一歩出ると、そこは酷い有様だった。

 

「カミュ、慎重に進んでくれ! メルエは私から離れるな! サラは私とカミュの間を歩け! カミュを見失うなよ!!」 

 

 後方からリーシャの大きな声がかかる。

 それ程周囲の音が大きいのだ。

 

 二階部分から<ナジミの塔>と同じように、塔を覆う壁が存在していないのだ。

 外の豪雨と言っていい程の雨と風が、直に塔の中に入って来ている。通路は強い風と雨で水浸しとなり、一歩踏み外せば、真っ逆さまに落ちて行く事は間違いないだろう。雨のおかげなのか、塔の外周に魔物の気配はないが、探索をする程の余裕もなかった。

 乾いたばかりの衣服は再び濡れ始め、徐々に体温を奪って行く。

 

「カミュ! とりあえず、少し中に入れる場所を探せ! 左側に行こう! 先程の階段があった空間の横に、同じような空間がある筈だ!」

 

「……」

 

 『リーシャは懲りない』

 サラは、雨風の中、必死に目を空けながらそう思った。 

 あれ程、自分が示す先が行き止まりだと知っているのに、まだ道を指し示そうとする。しかし、カミュはサラと違う印象を受けていた。

 リーシャも自分の方向音痴ぶりは解っているのだろう。故に、まずは雨風を防ぐ為の空間へ入ろうとしたのだ。

 自分の指し示す方向に、行き止まりの空間があると信じて。

 

 だからこそ、カミュもリーシャの発言通りに進路を左に向けたのだった。

 

 しかし、無情にもそれが仇となる。リーシャが指し示した左側には、いくら歩いても塔の中心部分に進む通路はなく、ようやく雨風を防ぐ事の出来る壁がある場所に辿り着いたのは、二階に上がる為の階段のある空間の真反対に当たる場所まで歩いてからだった。

 もはや、衣服の意味を見いだせない程に全身は濡れており、メルエに至っては寒さの為、小刻みに身体を震わせている。

 

「……すまない。もう少し早くにあると思ったのだが……」

 

「気にするな……先頭を歩いていたのは俺だ。アンタに責任はない」

 

 ずぶ濡れになり、身体を震わせるメルエやサラを見て、リーシャは素直に頭を下げる。しかし、そんなリーシャの考えていた事が、自分の予想通りだったと感じたカミュは、そんなリーシャの謝罪に対して気に病む必要性を否定した。

 リーシャはカミュの言葉に驚き、暫く放心したように立ち尽くしていたが、寒さに震えるメルエの呟きに我に返る。

 

「…………メラ…………」

 

「!!」

 

 寒さを和らげるためのメルエの詠唱と共に、薄暗かった周辺に明かりが灯り、全貌を現すと、広がるその光景にサラは息を飲んだ。

 そこは異様な世界だった。雨による気温の低下と共に、周囲に広がる筈の臭いは鳴りを顰めている。

 そこには無数の死体。いや、もはや皮も肉も存在していない骸骨達の墓場であった。

 鎧や衣服を纏っている者もいるが、ほとんどが骨だけの存在になっている。

 

「紋章はロマリアの物だな……カンダタ討伐隊の人間達か……」

 

 カミュが言うように、骸骨の一体が身に纏う鎧に施された紋章は、ロマリア王国の物であった。

 何度か編成されたカンダタ討伐隊の成れの果てなのだろう。塔まで辿り着いたが、カンダタ一味に返り討ちにされ、一ヶ所に集められた後、魔物の餌になってしまったのかもしれない。剥ぎ取られた衣服などが散乱しているが、骨は一ヶ所に固まっている事から、その予想は間違っていないと思われた。

 

「……酷い……」

 

「確かにな……死者の弔いもせず、こんな形で放置する等、人の所業ではない」

 

 その光景に呟いたサラの言葉に同意するように、リーシャが口を開く。しかし、カミュは何の感情も見い出せない表情でそれを見つめていた。

 雨音が消えた空間は異様な空気に満ちている。そこで眠る死者達の無念と、それを見つめる生者の想いが交差し、沈黙だけが広がって行った。

 

「……自らを守る為に、他者を害する事は当然の事だ。それに、立場が逆であれば……カンダタ一味がロマリア兵に殺されていたのなら、首領であるカンダタ以外の遺体は同じような扱いを受けていた筈だ」

 

「で、ですが!!」

 

「…………メラ…………」

 

 カミュの言葉に即座に反応したサラの反論は、再び唱えられたメルエの詠唱に搔き消された。

 メルエの指先から現れた火球は、周辺に散乱する骸骨達が身に着けていたであろう衣服の残骸に着火し、燻りながらも小さな炎を発し始める。衣服についた血液や肉片等が焼ける異臭が漂うが、炎が上がり始めたのは確か。しかし、メルエのその行為は、サラにとっては、死者への冒涜に映った。

 

「メ、メルエ! 亡くなった方の衣服に火をかける等、してはいけません!」

 

「…………さむい…………」

 

 突然自分に向けられたサラの叱責に、メルエは不満顔をサラへと向ける。サラは、メルエの表情を見て、驚きを隠せなかった。

 『精霊ルビス』を崇める者からすれば、サラの言っている事は至極当然の事なのだ。

 

「寒くても駄目です! その方達は、国の為にここまで来て、無念にも命を落とした方々なのです。その方々に敬意を払う事はあっても、その方々の遺品に手を掛ける事はしてはいけません」

 

 何故自分が叱責されているのかが、メルエには解らない。故に、自分の状況を正直に答えたのだが、それでもサラの叱責は止まなかった。

 困惑したメルエは、カミュとリーシャに顔を向けるが、リーシャはどうしたものかと渋い表情を浮かべるだけで援護はしてくれない。代わりに答えたのは、やはりサラの天敵たるカミュだった。

 

「……死んでしまった者に遠慮などする必要はない。遺品となりそうな物に、火をかけた訳ではない筈だ」

 

「そう言う事ではありません! 死者とは言え、『人』であった者に対して、敬意を払うべきと言っているのです」

 

 カミュの答えに満足するどころか、火に油を注いだ形となり、サラの言質は苛烈な物へと変化して行く。サラは、先程感じたカミュへの恐怖を忘れていた。

 魔物と対峙してから流れる穏やかな空気がそうさせていたのだ。

 

「……死者は何も感じない。今、生きている者こそ考慮に入れるべきだ。このまま暖を取らずにいれば、体温は低下し、最悪メルエの体力は底を尽きるぞ」

 

「……そ、それは……」

 

 カミュの言い分はサラにも理解出来る。しかし、だからと言って、何も理解していないメルエが、死者の物には何をしても良いと思ってしまうのではという危惧がサラにはあったのだ。

 

「サラの考えが正しい事は尤もだ。だが、カミュの言い分にも一理ある。ここは、死者達へ感謝しながら、申し訳ないが暖を取らせてもらおう」

 

「……はい……」

 

 調停に入ったリーシャの言葉に、サラは不承不承頷いた。

 サラが敗北した事が、自分の正当性を認めた物だと感じたメルエは、微笑みながら火の傍へ近づこうとするが、前に進まない。襟元を何かに掴まれているのだ。

 

「メルエ、サラの言う事は間違ってはいない。例え寒かったとしても、本来ならば、死者の持ち物を無碍に扱う事はいけない事だ。先程、メルエはあの男達に怒りを覚えただろう?」

 

「…………」

 

 襟元を掴んでいたのはリーシャだった。早く火に当たりたいと思っていたメルエではあるが、リーシャの表情を見て聞かなければいけない事なのだと感じ、リーシャの方を真っ直ぐと向き直る。

 話の内容は、サラの意見を肯定するもの。それ故に、最初はメルエも若干不貞腐れ気味だったが、リーシャの話の後半に先程の盗賊の話が出て来ると、メルエの表情も変わり、真剣に頷き返すようになった。

 

「私も、メルエと同じだ。殺してやりたいと思った。少し違うかもしれないが、もし、アイツ達がアンの遺品も持っていたり、その遺品を無碍に扱っていたりしたら、メルエはどう思う?」

 

「…………いや…………」

 

 メルエは、少し考える素振りを見せた後、首を横に振りながら否定的な呟きを洩らした。

 想像通りの反応を返すメルエに、リーシャは柔らかな笑みを作りながら頷き返す。

 

「そうだな。私も嫌だ。メルエ、死者の遺品の中には、その人を思い出させる大事な物があるかもしれない。それと同じように、その人間を表す物もある。だからこそ、本当であれば、メルエが先程した事は許される事ではないんだ」

 

 一つ一つ諭すように話すリーシャの話の内容にサラは頷いているが、それを聞くカミュの表情は冷たいものだった。

 まるで、全く関心を示していないような、馬鹿な事を言っているとでも思っているような態度である。

 

「死者となれば、何も言う事は出来ない。だから、私達のような生きている人間が死者の尊厳を守らなければならない。わかったな、メルエ」

 

「…………ん…………」

 

 最後に自分の頭に乗せられたリーシャの手を見上げ、メルエはこくりと頷いた。

 メルエの頷きを見たリーシャは、満足気に微笑み返す。サラも安堵の表情を浮かべて、表情を笑顔に戻した。

 

「ならば、ここにいる死者達に感謝をしよう」

 

「…………あり………が………とう…………」

 

 メルエが頷くのを優しい笑顔で見つめ、リーシャは更にメルエに促す。もう一度頷いたメルエは、一ヶ所に集まっている肉も皮もない死者に対して頭を下げ、感謝の言葉を発した。

 通常ならば、恐怖心すら覚える場所で流れる場違いのような穏やかな空気。それにサラの頬も緩んだのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

「……アンタは、幽霊は駄目なのに、完全な骸骨は大丈夫なのか?」

 

「はぅ! なっ、ど、どういう意味ですか!?」

 

 笑顔を作るサラの後方から掛けられたカミュの言葉は、サラを混乱状態へと突き落す。勢い良く振り向いたサラの表情は、恐怖と困惑に満ち満ちていた。

 

「そのままの意味だが……」

 

「あ、あれは……あれは急に出て来た為に、驚いただけです! ベ、別に、常に怖がっている訳ではありません!」

 

 誰がどう聞いても嘘。サラの弁明をカミュだけではなく、メルエもリーシャも若干呆れ気味に聞いていた。

 サラは誰にでも見る事が出来る骸骨は、死者が残した遺品と同じ物として考えている。しかし、魂は違う。つまり幽霊となれば、常に見えている訳ではないのだ。

 しかも誰でも見える訳でもない。実を言えば、サラが幽霊を見たのは、<カザーブ>が初めてなのだ。

 『僧侶』としての除霊という仕事が得意ではない理由は、サラには霊魂という物が見えないという最大の欠点があった。しかも、自分には見えない物が、神父や他の僧侶には見えており、その場所へ共に行かなければならない。

 どこにいるのか解らないもの。見えないだけで、自分のすぐ隣にいるかもしれない等と言われれば、誰でも恐怖を感じるだろう。

 見えないだけで、確実にいる物という恐怖を、サラは持っていたのだ。

 

「…………あわ………あわ…………」

 

「メ、メルエ!!」

 

 サラの悲痛な叫びが空間に響いた時、メルエの頭上へ軽い拳骨が落とされた。

 拳骨を落としたリーシャの表情は笑顔ではあるが、痛まない頭を手で押さえたメルエは、少し頬を膨らませる。

 

「もう言わない約束だろ、メルエ」

 

「…………うぅぅ…………」

 

 再びメルエがサラをからかい、リーシャに窘められる。

 そんな和やかな一時が激しい雨音が響く塔内で営まれた。

 

 

 

「……行くぞ。再びここを出れば、結局衣服は濡れる。中途半端に乾かした所で無駄だ。体が温まったのなら、すぐに出る」

 

 死者達の衣服も残っている物が多い訳ではない。もとより、衣服を完全に乾かす事など出来る量ではなかった。

 それを解っていた為、リーシャはカミュの言葉に頷き返す。

 死体置場を出ると、やはり外の雨脚は緩んでいる事もなく、むしろ雨も風も強くなっているかのようだった。

 そんな場所へと出て行く手前に、珍しくカミュがサラへ話しかけて来た。

 

「アンタの盾はまだ<革の盾>だったな。この<青銅の盾>を使え」

 

「えっ!? そ、それは?」

 

 何故、カミュが装備していた筈の<青銅の盾>を渡して来るのか、サラには見当がつかなかった。

 盾は、前線で戦うカミュやリーシャにとって、生命線と言っても過言ではない程の装備品である。敵の攻撃を防ぐだけではなく、その盾を使って敵を抑え込んだりと、様々用途がある物なのだ。

 故に、サラは驚いた。

 

「俺は、ロマリアの兵士が使っていた物を使わせてもらう。アンタにそっちを渡しても、死者の物という事で使わない筈だからな」

 

「えっ!? まさか、先程の方々の遺品を持って来たのですか!?」

 

 カミュの言う事が本当であれば、サラがメルエに話していた内容を無視された事になる。死者の遺品に手をかける事は、死者への冒涜であると信じているサラは、平然とその事実を告げるカミュを信じられない物でも見るように見上げた。 

 

「死者の遺品とはいえ、もはや遺族の手に帰る事のない物だ。あの兵士達の無念が、カンダタ一味へ向いているのならば、俺達が持っていっても何も言わない筈だ」

 

「で、ですが!」

 

 尚も反論しようとするサラを、カミュは冷やかな瞳で見下ろす。カミュからしてみれば、その無念を晴らすために使用するという大義があるのだろう。

 しかし、それは『僧侶』であるサラには理解が出来ない。

 

「使う、使わないはアンタの自由だ。ただ、この先のカンダタ一味が、一階で見たような雑魚ばかりではない事は、先程の兵士達の死体を見ても解る筈だ」

 

 曲がりなりにも一国の紋章を背負っている兵士達が、十人以上死んでいるのだ。カンダタ一味の力量を不当に低く見積もる訳にはいかない。カミュやリーシャだけで対抗出来る者達であれば、サラやメルエに危害が及ぶ事もないだろう。

 だが、一国の騎士達が手玉に取られる程の実力者であれば、最悪の状況も考えておくべきなのだ。

 

「……わかりました……」

 

 納得はいかない。

 だが、カミュの言葉にも一理ある。

 先程のリーシャの言葉を借りて、サラは無理やり納得する事にした。

 

 

 

 来た道を戻る形で歩き出した一行は、強い風と、その風によって叩きつけて来るような冷たい雨を全身に受けながら前へと進んで行く。サラは、先程渡されたカミュのお下がりとなる<青銅の盾>を顔の横に掲げ、雨によって視界が悪くなり、前を行くカミュを見失う事を避けて進んで行った。

 元の位置まで戻った時には、全員が再びずぶ濡れになってはいたが、今度は、リーシャがメルエに壁側を歩かせ、暴風壁のようにメルエの横を離れずに歩いていた為、メルエの身体は、マント以外はそれ程濡れてはいなかった。

 

「このまま、真っ直ぐ進む。ここから先は道が狭くなる。足を滑らせるな」

 

 前を行くカミュから後方の三人に声がかかり、この先についての注意事項が告げられた。

 カミュの言葉に大きく頷いた三人は、今までと同じ隊列で進んで行く。カミュの話す通り、通路が急激に狭くなり、踏み外せば、地面まで真っ逆さまという状況を四人は進んで行った。

 

 サラは必死に壁に手を付きながら。

 メルエはリーシャの腕に掴まりながら。

 

 

 

 ようやく一行は、塔の中心に向かう通路を見つけ、中へと入って行った。

 サラはここまで自分が息を止めていた事に初めて気が付き、慌てて目一杯空気を肺に入れ込む。メルエも頭からすっぽりと被っていたマントを取り、大事な<とんがり帽子>が濡れていないかを確かめていた。

 

「ふふっ、メルエ、大丈夫だ。帽子は何ともない」

 

 帽子の隅々まで確かめているメルエに優しい微笑みを浮かべたリーシャは、少し湿っぽいメルエの髪を梳いてやった。

 目を細めながらその手を受け入れるメルエは、年相応の少女のようで、サラにはつい先程、地獄の業火のような魔法を行使した『魔法使い』には見えなかった。

 

「……衣服を乾かしている暇はない。このまま上へと進む……」

 

「……わかりました……」

 

 やっと豪雨から解放され、和む一行の気をカミュの言葉が再び引き締める。おそらく、この上あたりから、カンダタ一味の本拠になっているのだろう。

 その証拠に、階段の上から暖かな空気が降りて来ている。通常暖かな空気は上へと昇るものだが、下までその空気が降りて来るという事は、人工的に空気を暖めている可能性が高い。

 

「…………いく…………」

 

「……メルエ……」

 

 しかし、リーシャはメルエの様子が少し気がかりだった。

 一階部分での一味の人間の話を聞いて以来、メルエの瞳に何かが宿り始めている。リーシャはその何かに見覚えがあったのだ。

 

 それは、アリアハン大陸で魔物を見るサラの瞳に宿っていたものと同じもの。

 それは、<カザーブの村>で見たトルドの瞳に宿っていたもの。

 そして、もしかすると自分の瞳にも宿っていたのかもしれないもの。

 

 リーシャは不安だったのだ。

 幼いメルエが抱える物としては、あまりにも重く、あまりにも大きすぎるそれを、彼女が背負ってしまったのではないかと。

 

「……カミュ……」

 

 それが言葉に出てしまう。

 しかも、それは先頭を行くカミュへ向けて。

 何故、カミュへなのか。リーシャは今までの人生の中で弱気になることなど滅多になかった。

 そんな弱音に近い物を漏らした相手が、よりにもよって『人』の感情など一切考慮に入れないであろうカミュであったのだ。リーシャにも、自分が何故そんな言葉を発してしまったのか、解っていなかった。

 

「……わかっている……いざという時は、何とかする……」

 

 しかし、リーシャの声で振り返ったカミュから発せられた言葉は、そんなリーシャの弱気を払うのに十分な威力を持った言葉だった。

 リーシャは何も言っていない。それなのにも拘わらず、このアリアハンが掲げた勇者には通じていたのだ。

 詳しい内容など一切会話の中に入っていないにも拘わらず、それがリーシャにも伝わった。

 カミュに力強く頷いたリーシャは、後ろに控えるサラを促し、カミュに続いて上へと続く階段を上り始めた。

 

 

 

 階段を上って行くと、上から漏れていた光が徐々にその明るさを増して行く。今日のように、真っ黒な雨雲に空が覆われている日にこのような光が差す事など、人工的な明かり以外にはあり得ない。

 

「あん?……なんだてめぇら?」

 

 リーシャが昇り切る前に、先頭のカミュとメルエが上階のフロアに辿り着き、そこにいたのであろう人間達とやり取りをしている声が聞こえた。

 リーシャのすぐ前を昇るサラを急がせ、リーシャも上のフロアに足を踏み入れると、そこは完全な一つの部屋になっていた。

 石畳の塔内部に赤い絨毯が敷かれ、机に椅子、更には壁側に暖炉もある。暖炉は赤々と炎が燃え盛り、フロアの温度を暖かく保っていた。

 一階や二階部分と違い、ここには外の雨音すら聞こえて来ない。そこに、五、六人の男達が杯を手にしながら座っていた。状況から考えて、彼等がカンダタ一味なのは間違いないのだろう。

 

「何だと聞いてるんだ! てめぇら、ここがカンダタ一味のアジトだって知ってるのか!?」

 

「おう! よく見りゃ女じゃねぇか!?」

 

「本当だぜ! しかも良い女じゃねぇか!?」

 

「なんか、余計なもんまで混じっちゃいるがな」

 

「たかだか一人じゃねぇか!?」

 

 薄汚い男達が、口々に一行を見て、その汚い口を開く。

 その様子にサラは顔を顰め、リーシャは眉を顰めた。

 

「…………アン………?」

 

 しかし、瞳の奥に重く暗い何かを宿し始めた、この少女には男達の言動など耳に入ってはいない。その少女の姿に、リーシャは再びカミュに視線を向ける。視線の先のカミュは、今度はリーシャの方を見ずに首だけを縦に動かした。

 

「ああ!? なんだお嬢ちゃん?」

 

「……アン? どこかで聞いたことあるな……?」

 

「ギャハハハッ。お嬢ちゃんよぉ…悪いが、俺達は殺した人間の名前を一々憶えてらんねぇんでな」

 

「ちげぇねぇ。ギャハハハ」

 

「おお! あれじゃねぇか? 昔、そのお嬢ちゃんぐらいのガキを狩りした……」

 

 それが決定打だった。

 この五人の男達は、間違いなくアンとその母親の殺害に関与していたのだ。それが、メルエにも理解出来た。

 

「おい!」

 

「…………イ!!!!…………うぅぅ!!」

 

 メルエの詠唱が始まるよりも一瞬早く、カミュがリーシャに声を上げる。カミュのその声に、リーシャは急ぎ隣に立つメルエの口を塞いだ。

 詠唱を邪魔されたメルエは、珍しく半狂乱の様になりながら、リーシャの腕から逃れるようにもがくが、幼いメルエが屈強なアリアハンの騎士を振り切れる訳がない。

 

「な、なんだ、てめぇ……ギャ―――――!!」

 

 そんなメルエとリーシャの二人のやり取りを眺めていた男達であったが、気を取り直し、声を上げようとした時、彼等にとって地獄の始まりである叫び声が響いた。

 リーシャへ声を上げたカミュは、一気に男達に肉薄していたのだ。

 近付き様に背中から剣を抜き、一番前にいる男の足を薙ぎ払う。鋭く鍛え抜かれた<鋼鉄の剣>が、男の太ももから下を斬り飛ばした。

 

「て、てめ……ギャ―――――――!!」

 

「……カ、カミュ様……」

 

 カミュは返す剣で近くにいた男の腕を斬り飛ばし、そのままその男の太ももに剣を突き刺した。苦しむ男は肩口から腕を失い、足には太い剣が貫通している。カミュは剣を抜くために男を蹴り飛ばした。

 もんどりを打って倒れ込む男の肩口からは、盛大に血液が噴出する。

 サラは再びカミュへの恐怖を思い出していた。

 本当に先程まで、無表情ではあったが、恐怖を感じるものではなかった筈なのに、リーシャに声をかけた途端、カミュから立ち上ぼる雰囲気は一変していたのだ。

 

「お、おい、ちょっと待てよ。何なんだお前ら……意味が分からねぇよ」

 

「お、おい! 逃げるぞ! こんな奴ら構ってられるか!?」

 

 残る三人の内、二人が目の前で剣を握る青年への恐怖を抑え、行動に出た。

 カミュ達が昇って来た階段の対角線上にある、上の階へと続く階段へと駆け出したのだ。しかし、力量に差がある者から逃げ出す事など出来はしない。

 

「ギラ!」

 

 いつものように呟くような詠唱ではなく、力強い詠唱。それが、術者の怒りを表していた。

 逃げる男達の背に向けて掲げたカミュの右手から熱風が巻き起こる。

 

「あ、あれは……」

 

 サラは言葉を失った。

 先程の戦闘でメルエが使った魔法。

 『魔道書』に記載される攻撃呪文。

 本来は、『魔法使い』しか使えない筈の呪文。

 

「ギャ――――――!! た、たすけてくれぇ!!」

 

 燃え盛る火炎の中、男達と思われる黒い影が二つ蠢いている。男達を取り囲むように巻き起こった炎は、サラの目にはメルエが起こしたそれよりも小さいように見えた。

 炎が収束し、下に引かれた絨毯等もあらかた燃えきったその後に、二人の男であった物体が姿を現す。サラの感じたように、カミュの放った<ギラ>は、メルエのそれよりも威力を抑えた物であった為か、男達は消し炭のように炭化した物ではなかった。

 

「……うぅ……うぅ……」

 

「……あがっ……」

 

 しかし、あの様な状態であれば、瞬間に炭化する程の威力の魔法を受けた方が彼らにとっては良かったのかもしれない。身体は焼け爛れ、皮が剥がれ、肉が焼け落ち、呼吸すらも定かではない。それでも生きているのだ。

 生きているよりも、死んだ方が良かったと考える程の苦痛を味わっているだろう。

 

 『もし、これがカミュの意図的な行為なのだとしたら』

 

 サラはそれが怖くて仕方ない。

 そんな呆然とするサラの前にいた最後の一人となった一味の男は、震える足を引きずりながら階段を上ろうと必死に移動していた。

 それに気が付き、そちらに視線を向けたカミュはもう一度腕を掲げる。

 それを止めたのは、意外な人物だった。

 

「…………メルエ………やる…………」

 

「メ、メルエ!」

 

 カミュの掲げられた腕に掴まったのはメルエだった。

 五人の内、瞬時に四人を片付けてしまったカミュへ、不満と若干の怒りを滲ませた表情をしする。そんなメルエの様子を見て、更に不安を掻き立てられたリーシャは、未だにカミュの腕にしがみ付くメルエを後ろから抱き締めた。

 一行が予期せぬアクシデントに戸惑っている間に、階段に辿り着いた男は、震える足で立つ事が出来ない為、這いつくばりながら階段を上って行く。

 

「……上の連中に気づかれたな……」

 

 リーシャがメルエを引き剥がした事により、カミュは腕の自由を取り戻す。その腕を軽く振りながら、剣を背中の鞘に納めたカミュは、未だに呻きながら横たわる男達の下へと歩いて行った。

 

「……カ、カミュ様……な、何を……」

 

「……カミュ……」

 

 サラはカミュの行動に眩暈を覚える。

 メルエを胸に抱くリーシャも言葉を失っていた。

 

「た、たすけてくれ。な? 頼む……」

 

「……」

 

 剣を受けた足から血を流し続け、立つ事も叶わない男達の襟首を掴んだカミュは、その命乞いに耳を傾ける事なく、先程上って来た階段から男達を落として行く。

 まるで家庭で出たゴミを捨てるように何の感情も感じさせない表情で、カミュは二人の男を階下に落として行った。

 

「ギャ――――――――!!」

 

 石で出来た階段に身体を打ちつけながら転がり落ちて行く男達の叫び声が遠くなって行った。おそらく彼らの末路も、血と肉に飢えた魔物達の餌となってしまうのだろう。

 サラは唇を震わせながらその光景を見ているしか出来ない。

 メルエは何も感じていないような、カミュのような表情を作っていた。

 二人の男達を階下に落とし終わったカミュは、続いて呻き声を上げ続けている二人へと近づいて行く。そのカミュの行動を、リーシャは止めべきかを悩んでいた。

 

「……うご……うぅう……」

 

 男達であったものに近づいたカミュは、そのまましゃがみ込み、手を二人の上半身に掲げる。その姿に他の三人は見覚えがあった。

 それは、何度かサラが行った事のある態勢。

 

「……ホイミ……」

 

 それは、本来、聖職にある『僧侶』にしか使用する事の出来ない魔法。

 教会にある『経典』にその契約方法が記されている回復魔法の詠唱だった。

 

「……カ、カミュ……お前……」

 

「……ど、どうして……」

 

 カミュの行動に対し、発したリーシャとサラの疑問の言葉は根本的に違っていた。

 リーシャは、『何故回復させる必要があるのか?』という疑問。

 そして、サラは『何故、<ホイミ>が使えるのか?』という疑問。

 しかし、本当はこの時点で、カミュの考えている事が大凡ではあるが、リーシャには見当がついていた。

 それでも、それを飲み込む事をリーシャの心のどこかが拒絶していたのだ。

 カミュが当てた掌から淡い緑色の光が瞬き、男達を癒して行く。焼け爛れ、肉も溶け落ちていた男達の顔面が奇麗に修復されて行くのだが、<ホイミ>程度の回復呪文であれば、これが限界であった。

 逆に、カミュにとってみれば、それで十分だったのかもしれない。

 男達に、ほんの数時間の命が残るだけで。

 

「あ、あ、あ、た、たすけてくれ!」

 

「いてぇよ……」

 

 口が動くようになった男達は、身体を蝕む痛みを我慢しながら、カミュへと命乞いを繰り返す。しかし、その男達の姿を見下ろすカミュの表情は氷のように冷たい物だった。

 先程と同じように男達の頭に残った髪を鷲掴みにし、階下へと続く階段へ引き摺って行く。

 

「た、たすけてくれ―――――!!」

 

「死にたくねぇよ!」

 

 男達の悲痛な叫びがサラの耳に残って行った。

 それでも、サラは口を開く事が出来ない。無言で男達を引き摺って行くカミュが、『人』には見えなかったのだ。

 恐怖がサラの心を支配し、その身体の自由を奪って行く。

 

「…………カミュ………きらい…………」

 

 再び男達を階下に突き落とし終えたカミュへ、初めてメルエが嫌悪感を表した。

 それは、サラの様に恐怖を感じた物ではなく、自分の出番を奪ったカミュへの怒り。アンの話を聞いた時から、メルエの胸に渦巻いていた『憎悪』に近い感情を吐き出す事が出来なかった事への憤り。

 

「メルエ……俺の事を嫌うのは構わない……だが、メルエはアンとは友達なのだろう?」

 

「!!…………とも………だち…………?」

 

 『嫌っても良い』と言われ、自分を嫌いになったのではないかと身体を震わせたメルエであったが、その後に続く聞き覚えのない言葉に首を傾げた。

 

「メルエ……カミュは、『メルエとアンは仲が良いのだろう?』と聞いているんだ」

 

「…………」

 

 カミュの言葉の補足をするためにリーシャが口を開く。その言葉に、再びメルエの首が傾いたが、しばらく考えた後にこくりと頷いた。

 

「だからだ。だから、メルエの代わりにカミュがあいつ等に剣を振るったんだ」

 

「…………???…………」

 

 メルエにはリーシャの言葉が理解出来ない。

 それはサラも同じだった。

 

「メルエ……アンはメルエに会った時に、『あいつ等を殺して欲しい』と言ったのか?」

 

「…………」

 

 メルエは少し考えた後、首を横に振った。

 アンはメルエに優しく笑いかけていた筈だった。

 

「メルエの気持ちは解る。私もメルエと同じようにあいつ等を許せない。だが、カミュもそして私も、メルエに『人』を殺して欲しくはないんだ。それは、私は会った事はないが、アンも同じではないかと思う」

 

「…………」

 

「……リーシャさん……」

 

 暖炉の炎が赤々と燃え、周囲の壁に血液が飛び散っている部屋の中で、リーシャはメルエの帽子を脱がし、頭に手を乗せる。サラはリーシャの話す内容が何となくだが理解出来た。

 それは、カミュが全ての罪を被ったという事。

 

「メルエ……ここからは少しメルエには難しくなるかもしれない」

 

「……それでは、アンタにとっても難しくなるのではないか?」

 

「う、うるさい! お前は少し黙っていろ!」

 

 リーシャの話の腰を盛大に折る声が、先程までの無表情を少し崩したカミュから上がる。向きになって怒鳴るリーシャに口端を上げるカミュのそれは、もしかすると照れ隠しなのかもしれないとサラは見当違いの事を考えていた。

 

「カミュは納得しないかもしれないが、今の世の中で魔物を倒す事は奨励されている。つまり認められているんだ。だけどなメルエ、『人』を殺すという事は忌むべきものとして嫌悪される」

 

「…………」

 

 メルエは、瞳を見つめながら真剣に話すリーシャの言葉は大事な事だと、この短い旅で学習している。その言葉の全てを理解する事は出来ない。それでも、メルエはリーシャの瞳を見つめながら、その言葉を聞いていた。

 

「『人』を殺す者は、アンを殺した盗賊達ような奴等だけだ。そして、そう言う人間は普通に暮らす事など出来ない。村に入っても忌み嫌われ、隠れて住んでいたとしても、気付かれれば追い出される。もし、メルエがあいつ等を殺したとなれば、アンもメルエをそういう目で見てしまうかもしれない」

 

「…………いや…………」

 

 自分の話を一つ一つ頷きながら、真剣に聞いていたメルエが、首を横に振りながら発した言葉を聞き、リーシャは満足そうに頷いた。

 

「そうだな。私やカミュも、メルエがそういう目で見られるのは嫌だ。だから、メルエには手を出させなかった。もし、もう一度メルエがアンに会った時に、また笑って話せるようにな」

 

「…………でも………カミュ…………」

 

 リーシャの言いたい事は、メルエにも理解出来た。

 本当の意味で理解出来たかどうかは定かではないが、納得はした。

 しかし、それならば、手をかけてしまったカミュはどうなるのか。メルエは不安な表情を浮かべカミュの方へと顔を向ける。

 

「俺は大丈夫だ……元々、俺はどうなろうと普通に暮らす事など出来ないのだから……」

 

「カミュ……はっ! メ、メルエ、カミュもあいつ等を殺してはいないぞ!」

 

「……生きている方が辛いでしょうけど……」

 

 カミュの言葉は、まるで自分に言い聞かせるような呟きだった。

 一瞬、カミュを見つめてしまったリーシャが気を取り直し、メルエへまだ盗賊達が死んでいない事を告げるが、それも隣で放心状態にあったサラの故意的な呟きにより意味を無さなかった。

 

「……メルエ……これから先、俺と旅をする中で、こういう場面が何度もあるだろう。だが、メルエが罪を被る必要はない。それらは、全て俺に被せれば良い。メルエが苦しんだり、悩んだりをする事はないんだ」

 

「……カミュ……お前は……」

 

 眉尻を下げてカミュを見上げるメルエは、自身の頭に手を乗せながら話すカミュを見つめていた。

 その哀しいやり取りを見ていたリーシャは、言葉に詰まってしまう。それは、望んで持った責務ではない。それでも、言葉を洩らすリーシャに視線を動かしたカミュは静かに口を開いた。

 

「……元々、俺はそういう存在だ……」

 

 アリアハンが国を挙げて送り出した世界の希望。

 綺麗な言い方をすればその通りだろう。しかし、裏を返せば、世界中の人間が、自分の命が惜しいが為に、この『勇者』一人の命を犠牲にしているとも言える。世界の黒い部分も、世界中の欲望も、この青年と言うにはまだ若い少年に全てを背負わせているのだ。

 

「…………」

 

 リーシャの言葉も、もちろんカミュの言葉も半分程しか理解していないのだろうが、メルエはカミュにこくりと頷いた。

 メルエの頷きを満足そうに見つめ、リーシャは軽くメルエの頭を撫でた後、再びその頭に<とんがり帽子>を被せた。

 

「わ、私も、メルエに『人』を殺してほしくはありません……ですが、あの行為は酷過ぎるのではないですか!?」

 

 会話に置いて行かれていたサラがようやく口を開く。リーシャの話の中に、自分の名前がない事を、実は不満に思っていたのかもしれない。

 

「……サラ……」

 

 『人』である者の命に格差はないという事を根底に持つサラは、やはりどこか納得が行かなかった。

 確かに、あの盗賊達の所業は許されざる物ではあるが、カミュのした事は余りにも酷過ぎるのではないかと思うのだ。

 ひと思いに殺す事をせず、いたぶり殺しているようにさえ感じる。ましてや、<ホイミ>までかけて傷を癒しておきながら、魔物の餌とする為に階下へ放り投げるなど、悪魔の所業ではないかとサラは感じたのだ。

 

「……その戦士が話した話と矛盾するが、俺はあいつ等を『人』とは思っていない」

 

「ど、どういう事ですか!?」

 

 暫し、サラの目を見据えてからカミュは重い口を開いた。

 その言葉の内容は、サラの口にする前提を根底から覆す物である。

 

「……逆に聞きたいのだが、アンタは、あいつ等が犯した罪は『人』の行う所業だと考えているのか?」

 

「そ、それは……しかし、カミュ様がした事もまた、彼らと同じ事ではないのですか?」

 

 サラは引き下がらない。

 この旅を始めて、もはや何度目かすらも分からない程のサラとカミュの問答が始まる。その二人のやり取りを、リーシャもメルエも、唯見守る事しか出来なかった。

 

「そうかもしれないな……奴等を裁く権利など俺にはない。ただ、他者の命を、自己の快楽の為にいたぶり殺したあいつ等に対して、憎しみを感じただけだ。魔物以下である奴等を、『人』とも、ましてや『魔物』とも思わない。その辺に転がるゴミと同じだ」

 

「……そ、そんな……」

 

 サラはカミュが漏らした考えに絶句する。

 『これが世界を救うと信じていた勇者の姿なのか?』

 『自分は、この勇者に何を望めば良いのか?』

 サラはこの旅に同道する意味を見失いそうになる。

 

 しかし、アリアハン大陸であれば、おそらくサラと同じような想いを持ったであろうリーシャは、違う感想を抱いていた。

 カミュは、アリアハン大陸では、サラの糾弾に対して、自己の考えなどをあまり話す事がなかった筈だ。話の途中でサラの存在自体を拒絶すような言葉を発したり、話す意味がないと黙りこんだりというのが常であった。

 それが今は、しっかりとサラに告げている。

 それは、果たしてカミュの変化なのか、それともカミュへの見方が変わった事が理由なのかは解らなかった。

 

「時間をかけすぎた。メルエ、服は乾いたか?」

 

「…………ん…………」

 

 もう話は終わりだとでもいうように、視線をメルエに向けたカミュの言葉に、メルエは一つ頷く事で返した。

 

「……上へ進む……カンダタ本人がいるか分からないが、『金の冠』はこの塔にある筈だ」

 

 一行が疾うに忘れていた、カンダタ一味を追っている理由を述べ、カミュは上のフロアに続く階段に足をかけた。

 カミュ、メルエ、リーシャと続き、階段を上って行く。

 一人残されたサラは、今尚、先程までカミュが立っていた場所を焦点の定まらない瞳で見つめていた。

 その時、階下から悲痛な叫び声が上がる。おそらく、血の臭いと肉の焼ける臭いに誘われた魔物達が、カミュによって階下へ落とされた者達を発見したのだろう。

 

 サラは叫び声を聞き、ようやく覚醒を果たす。

 『自分が目指すのは、魔王ただ一人』

 『その為にも、ここで立ち止まる訳にはいかない』

 強引に自分の心を抑え込み、サラは立ち上がった。胸に去来する様々な葛藤は、このメンバーで旅を続ける限り無くなる事はないだろう。それでも、サラは前に進む事にしたのだ。

 

 サラが階段を上りきった頃、階下では魔物達の咆哮が響いていた。

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。

ここ数日、帰宅がこの時間になってしまっています。
明日も更新をする予定ですが、もしかすると眠ってしまうかもしれません(苦笑

ご意見、ご感想を心よりお待ちしています。

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