新訳 そして伝説へ・・・   作:久慈川 京

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ジパング②

 

 

 奇妙な建造物が等間隔で続き、その下に敷かれる石畳の通路を歩いて行く。それは、かなりの距離があり、目の前に見えている建物の全貌が近づく程大きくなってきた。

 

「すごいですね」

 

「そうだな。この様な建物を私は見た事がない」

 

 通路の終点にあった家屋と呼ぶべきなのかどうかを悩む程に大きな建物を見上げ、サラは感嘆の言葉を洩らした。

 サラの足元でその建物を見上げるメルエの首は、『サクラ』の木を見上げていた時よりも直角に曲がっている。

 

 高床式に造られたその建物は、横にも縦にも大きい。何本も建てられた柱が横に広がった屋根を支え、入口の門の上には、藁で作った太い縄が掛けられていた。それが、どこか神々しい雰囲気を醸し出しており、その建物がこの国でも特別な場所である事を示している。

 

「ガイジン! ここに何の用だ!?」

 

「……旅の者です……入国のご許可と、一晩の宿泊の許可を頂くために、『ヒミコ』様への謁見をお願い致したく……」

 

 物珍しげに建物を見上げる一行に厳しい言葉が飛んで来る。ジパング特有の結い方で黒髪を結っている男が、開け放たれた扉の前に武器と防具を装備して立っていた。

 その容赦のない言葉に、リーシャは顔を顰めるが、そんなリーシャの行動を抑えるように前に出たカミュが仮面を被り、丁寧に門番へ国王への謁見を願い出た。メルエは門番の剣幕に驚き、カミュのマントへ逃げ込んで行く。

 

「ヒミコ様はお忙しい。お前達のようなガイジンとお会いする時間などない!」

 

「な、なに!?」

 

 四人を訝しげに眺めた後、門番は拒絶を告げた。その余りな物言いに、リーシャは驚き、怒りを露にする。

 通常の国への訪問であれば、リーシャも感情を抑えたかもしれない。リーシャとて、国家に所属していた騎士なのである。その国家の王への謁見が簡単に叶う事がない事ぐらい承知しているが、この<ジパング>に関しては、リーシャの中で国として認識できていなかったのかもしれない。

 

「……黙っていろ……」

 

「カミュ!」

 

 しかし、口を開いたリーシャに厳しい視線を向けたカミュは、門番に頭を下げる。その行為に抗議を示すリーシャに、再び向けたカミュの瞳は、とても厳しく、冷たい物であった為、リーシャは口を閉ざすしかなかった。

 

「供の者が失礼を致しました。異国の者故、この国の作法を知りません。『ヒミコ』様へのお取次ぎをお願い出来ませんでしょうか。この美しい国を治められる方に拝謁を許されれば、大変栄誉な事として、我々も胸を張って旅をする事が出来ます」

 

「……」

 

 リーシャを黙らせ、謙るような態度で話すカミュを見て、サラは目を丸くする。仮面を被ったカミュの言動や態度は何度も見て来たが、これ程に相手を持ち上げるような言動は聞いた事がなかったのだ。

 それが示す物。それは、カミュもまた、『どんな事があっても、<ヒミコ>という人物に会わなければならない』という事を考えているという事実。

 口では否定をしていても、カミュ自身もまた、『生贄』という儀式に抵抗感を感じている事に他ならない。

 

「……ふむ……しかし、ヒミコ様は相当な『ガイジン』嫌いだ。取り次ぐだけはしてみるが、あまり期待するな」

 

「ありがとうございます」

 

 門番も、自分の言動が攻撃的過ぎた事を自覚していたのだろう。丁寧に頭を下げるカミュを見て、表情を渋い物に変えた後、一言断りを入れて、中へと消えて行った。

 

「……アンタは交渉の場に出ない事を約束した筈だ……」

 

「し、しかし……すまない」

 

 カミュの言葉を受けて、反論を返そうとしたリーシャであったが、カミュの厳しい瞳に言葉を飲み込み、頭を下げる。サラも、そんなリーシャを見て、喉まで出かかっていたカミュへの抗議の言葉を飲み込んだ。

 

 その国の要人と会話が出来るのは、この中ではカミュのみ。しかも、『生贄』という物に対する抵抗感で感情的になっていたリーシャやサラが口を開く事が、この先の謁見が良い方向に向かわない事は、サラも理解していた。

 リーシャもサラも、ただ前に立つカミュの背中を見ている事しかできない。不思議そうに後ろを振り返るメルエに応える事も出来ず、只々、中に入った門番の帰りを待つ。

 暫しの時間が流れ、中に入った門番が浮かぬ表情を浮かべて戻って来た。

 

「取り次ぎはした。だが、悪いが、お前達をヒミコ様の前に案内する事は出来ない」

 

「……そうですか……」

 

 門番の表情から、本当に『ヒミコ』と呼ばれる国主に取り次ぎはしてくれたのだろう。しかし、中に入る時に溢した言葉通り、このジパングの国主の『ガイジン嫌い』は相当な物であった。

 

 カミュが一つ言葉を洩らした事を聞き、リーシャとサラが何かを言いたげに口を開くが、そこで声を発する事は出来なかった。

 ここは異国の地。その国主への謁見はカミュ達の義務ではあるが、国主側にとっては、それを受ける義務は生じないのだ。

 

「元々、『ヒミコ』様がガイジンの謁見に応じる謂れはないのだ。早々に立ち去れ」

 

「……わかりました……」

 

 門番の物言いに、再び口を開きかけたリーシャを押し留めるように、カミュが軽く頭を下げる。門番は、口調とは裏腹に、表情を硬くしている事にカミュは気付いていたのだ。

 柔らかく断れば、諦めずに懇願する者もいるのだろう。そうなれば、国主の機嫌を損ね、最悪の場合、旅人を処断しなければならなくなる。その役目もまた、彼のような国の兵士なのだ。

 

「待て!」

 

 カミュが踵を返し、リーシャとサラもその後を渋々歩き出そうとした時、先程門番が入って行った屋敷の中から、カミュ達の行動を制する声が発せられた。

 その声は少し高く、外にいるカミュ達にも良く響く物。

 振り向いたカミュ達は、その声の主の姿を見て、驚きを表した。

 

「この者達のような旅の者を粗略に扱ったとなれば、我がジパングの名折れ。そなたにはそれが解らぬのか!?」

 

 先程、顔を顰めながらカミュ達へ辛辣な言葉を発した門番を叱責している人間は、その高い声の通り、女性というよりは、女子に近い人物であった。

 年の頃はカミュやサラよりも幼く、メルエよりも上だろう。おそらく十四・五といったところだろうか。

 室内から出て来た彼女の髪は、太陽が差す光によって黒く輝きながら、風に靡いている。腰まで届きそうなその髪を、頭の上で結わえていた。

 

「申し訳ありません。しかし、ヒミコ様が……」

 

「ふむ……よい! (わらわ)が許可する」

 

 その少女と言っても良い者に、門番は恭しく頭を下げ、申し開きをしようと口を開くが、その言葉は、途中で少女に遮られる。しかも、門番が話す『ヒミコ』という国主の判断を覆し、自らカミュ達の参内の許可を出す少女に、サラは目を丸くした。

 

「し、しかし、イヨ様……」

 

「妾も母上に話がある。これ、そなた達も妾について参れ」

 

 未だに食い下がる門番の言葉を無視し、その『イヨ』と呼ばれた少女は、カミュ達へと視線を移した。しかし、余りの出来事と、『イヨ』と呼ばれた少女が『ヒミコ』を母と呼んだ事の衝撃が大きく、カミュでさえも素早く反応を返す事が出来なかった。

 

「イヨ様!」

 

「母上には妾から申しておく。お主に責任はない。これ、早う来い」

 

 追いすがる門番に、責任の所在を告げ、少女はカミュ達を呼び寄せ、中へと入って行った。

 門番に一礼を返した後、カミュもその後に続き、リーシャやサラも慌てて後を追って行く。大きな屋敷の入り口には、大きな溜息を吐く門番だけが残された。

 

 

 

 屋敷の中は、やはり、カミュ達が見た事もない物ばかりだった。

 入口を入ってすぐに、履物を脱ぐ場所があり、イヨが自らの履物を脱ぐのを見て、カミュ達もそれぞれの履物を脱いで行く。不思議そうにカミュ達が履物を脱ぐのを見ていたメルエに苦笑を浮かべたイヨが、メルエの履物を脱がすのを手伝い、そんなイヨにメルエは『ありがとう』と言葉を掛けた。

 

「そなた達は、どこぞの国の者だ?」

 

「……アリアハンから参りました……」

 

 カミュの前を歩くイヨと呼ばれていた少女が、カミュ達に振り返る事なく問いかける。屋敷の中もサラやリーシャの目を惹く物が多く、海を眺めるメルエのように瞳を輝かせながら周囲を見渡していた。

 

「アリアハン? うむ……聞いた事のない国じゃな?」

 

「……」

 

 どちらかと言えば、この<ジパング>という国の方が世界的には無名に近いだろう。だが、この国で生まれ育った人間にとっては、この国こそ世界の中心であり、自分の中心なのである。つまり、この<ジパング>という国は、それ程に他国との交流をしては来なかったのだろう。

 カミュからしてみれば、『知っている他国の名はあるのか?』と逆に聞いてみたい程の物だった。

 

「しかし、そなた達も物好きじゃの? この時期にこの<ジパング>に訪れるとは」

 

「そ、それは<ヤマタノオロチ>の事ですか!?」

 

「サ、サラ!」

 

 イヨという少女の姿に気を緩めてしまったのか、サラは無礼にも問いかけてしまった。それに対し、リーシャは注意を投げかける。しかし、声を発してしまったサラは、もう後戻りする事はできず、突如の言葉に振り返ったイヨの瞳を見つめるしかなかった。

 

「そなたら……それをどこで?」

 

 振り返ったイヨの瞳は、十四・五の少女が宿すには余りにも重く、暗い光を宿していた。その瞳にサラの足は竦み、声が出せない。

 それは、国の内情を知った者に対する当然の警戒心である事に、サラ自体気がついてはいないのだ。

 

「供の者が失礼致しました。<ヤマタノオロチ>と呼ばれる産土神様の事は、この国の人々から伺いました」

 

「……」

 

 動けなくなったサラの代わりに、カミュが一歩前に出る。サラをイヨの視線から護るように立ったカミュの言葉に、イヨは警戒の瞳を緩めずに、カミュを射抜いていた。

 それに対し、カミュも譲らず、自分よりも背丈の低い少女の瞳から視線を外さない。

 

 先に折れたのは、イヨと呼ばれるこの国の皇女だった。

 

「……そうか。民の心は、そこまで離れてしまっているのか……」

 

 溜息と共に洩らした言葉。それは、『ガイジン』と呼ばれる異国の者に、自国の内情を話す程に、ジパングの国民の胸の中に不平不満が溜まっている事を再認識したような物だった。

 そこに、自国の民を糾弾するような様子はなく、只々、その民の心の有り様に肩を落としている。

 

「いえ。我々がしつこく問い質したに過ぎません。皆、国主様の統治に不満がある訳ではなく、<ヤマタノオロチ>という未知の物への恐れを抱いているのでしょう」

 

「同じ事じゃ。<ヤマタノオロチ>を神と認め、差し出す『生贄』を決めるのも国主じゃ。大事な国民を護る事も出来ず、それ程の恐怖と疑惑を感じさせてしまっている事が、我々国を治める者としての恥となる」

 

 カミュと対等に話をする自分より幼い少女を見たサラは、驚きで足の竦みが溶けて行った。

 『この少女は本物』という想いがサラの胸に残る。

 以前、イシスで出会った女王である『アンリ』が持っていた女王としての威厳。そして、その威厳を放たせる程の知力。それを兼ね備えている者と感じたのだ。

 

「……余計な事を申しました……」

 

「よい! 妾が母上に申し上げようとしていたのも、その話じゃ。ちょうど良い。そなたらも付いて来い!」

 

 頭を下げるカミュに興味を示さず、イヨは踵を返して奥へと歩いて行った。そのまま無言で歩き続けるイヨの後を付いて行く一行。

 サラは、その道中で会う数多くの人間が、皆、優しい顔でイヨに頭を下げるのを見て、先程自分が感じた物が間違いではなかった事を確信した。

 

「イヨ様、その者達は?」

 

「客人じゃ。母上は奥に居られるのか?」

 

 一際大きな部屋への扉を潜ると、一人の兵士がイヨの傍に駆け寄って来た。その者に、目当ての人物の所在を聞いたイヨは、再び真っ直ぐ前に歩いて行く。兵士はイヨの行動を制しようとするが、その手をすり抜けて行くイヨに諦め顔を浮かべ、その後ろを歩くカミュ達に訝しげな瞳を向けた。

 兵士に対し、軽く頭を下げたカミュは、大した興味を向ける事なくイヨの後ろを歩いて行く。リーシャも同様で、サラだけが恐縮によっておろおろとしながら、カミュ達の後を追って行った。

 兵士が浮かべる表情を見ると、この<ジパング>でのイヨの立ち位置を窺え、それが決して国民にとって不快な物ではない事が解る。

 

「なんじゃ、イヨ!? 私は、許可を出した覚えはないぞよ」

 

 前を歩くイヨが立ち止まり、藁のような物を奇麗に編んだ敷物の上に座り込む。そのまま前方に向けて頭を下げたのを見て、カミュ達も慌てて跪き、頭を下げた。

 そんな一行の頭の上に掛る言葉は、明らかな拒絶。

 

「妾が許可致しました。異国の旅の者を粗略に扱えば、我が<ジパング>の名を落とします故」

 

「イヨ! そちは、この私に意見する気かえ?」

 

 とても十四・五の娘の言葉とも思えない程にしっかりとした物言いに驚いたサラであったが、カミュやリーシャは今回の謁見は全てをこの娘に託した方が良い事を理解し、そのまま頭を下げ続ける。

 驚きで顔を上げてしまったサラが見た物は、自分達が跪く植物の敷物よりも一段高くなっている場所に悠然と座る女性であった。

 この国の住民達と比べても更に異様な形で髪を結い、着ている物は、単純な一重の物ではなく、何枚もの布を重ねられている。それはまるで自らの内から発する物を抑え込むように厳重な物だった。

 唇は、何か病気のような色になる程に紅を塗り、外見では年齢を探る事などは出来ない。イヨが本当の娘であれば、当に三十路を越えている事は想像出来るが、リーシャと同年、もしくはサラと変わらぬ歳であると言われても納得してしまう程の見た目であった。

 

「いえ。母上に意見など……しかし、この国を想う気持ちは母上と同じだと自負しております」

 

「くっくっく」

 

 再び頭を下げたイヨが発した『国を想う気持ち』という部分に反応するように、『ヒミコ』と思しきその女性は、忍び笑いを洩らした。

 

「まぁ、良い。そちが想う『国』の為、『生贄』も決まった。それで、そちの要件は、ガイジン達の案内か?」

 

「いえ。母上にお話が……」

 

 然も可笑しそうに笑う『ヒミコ』は、外部の者の前でも平然と『生贄』という言葉を発した。それに一度眉を顰めたイヨは、顔を上げてしっかりと『ヒミコ』を見返す。イヨの言葉に今度は『ヒミコ』が眉を顰め、鬱陶しそうに視線を逸らした。

 

「……イヨ様、我々は席を外した方が……」

 

「よい! もはや、そなたら『ガイジン』に隠しても仕方がない事じゃ。そのままこの場に居れ」

 

 内々の話だと感じたカミュが、イヨに対し退席の意を示すが、それは静かに制された。

 もはや、カミュ達がその気になれば、すぐに知れる事だと言うのだろう。この場にいようが、退席しようが大差はないと言うのだ。

 

「それで、何じゃ!?」

 

 鬱陶しそうに、イヨに視線を向けることなく先を促す『ヒミコ』にイヨは再び口を開いた。その口から出た内容に、カミュ達は総じて驚く事になる。

 

「……ヤヨイの『生贄』の件、ご再考をお願い致します……」

 

「なんじゃと!?」

 

 それは、正しく『生贄』に関する抗議だった。

 カミュ達と同じように驚きの声を上げた『ヒミコ』の表情が、怒りを宿した物へと変化して行く。真っ赤に染まった唇を震わせながら、俯いた『ヒミコ』が顔を上げ、怒りに燃えた瞳でイヨを射抜いた。

 

「何を言っておるのか解っておるのか!? 『生贄』は神のお告げ。そのお告げに逆らうと言うのか!?」

 

「いえ。母上が、神通力を宿しておられる事は存じております。ですが、ヤヨイはつい先日に結納を済ませたばかり。『生贄』になるには、余りにも不憫」

 

 逆上した母に対し、落着き払った対応をする娘。

 その光景に、サラは見入ってしまう。

 自分が持ち合わせていない『落着き』と『強さ』。

 それに羨望の念を抱いてしまっていた。

 

「何が不憫じゃ。これまで、何人もの娘達が『生贄』となって来た。その者達は不憫ではないと申すのか? それに、結納を済ませたとはいえ、婚儀はまだ先。あの娘が『生娘』でいられるのも今の内じゃろう?」

 

「!!」

 

 イヨの言葉を聞き、逆上していた『ヒミコ』が一変する。見た目とは裏腹の醜い薄ら笑いを浮かべ、その厭らしい笑みと同じように、不愉快な言葉を発した。

 イヨは表情を歪ませながらも、一度言葉を詰まらせ、悔しそうに唇を噛みしめる。

 

「……存じております……我々は、何人もの娘のお陰でこうして生きております」

 

「そうじゃ。理解したのなら、下がるが良い」

 

 顔を俯け、肩を震わせるイヨに、『ヒミコ』は退席を命じる。しかし、一向にイヨは立ち上がる気配はなく、再び上げた瞳を真っ直ぐ『ヒミコ』に向け、その口を開いた。

 

「妾が参ります」

 

「なに!?」

 

 短く告げた言葉に、『ヒミコ』が驚きの声を上げる。

 後ろに控えていたカミュでさえも顔を上げてしまう程の言葉。

 言葉は短いが、イヨの内にある考えは、その場にいる全員が理解した。

 

「『生贄』の祭壇には、妾が参ります」

 

 静まり返った部屋に、もう一度言い直したイヨの言葉が響く。

 暫しの静寂の後、口を開いたのは『ヒミコ』だった。

 

「何を申しておる! 『生贄』は既にお告げで……」

 

「お告げは信じております! しかし、このままでは民の心が国から離れてしまいます! 『民の心が離れた国など、もはや国には非ず』。これをお教え下さったのは、母上ですぞ!」

 

 しかし、『ヒミコ』の言葉は、先程までとは打って変わったイヨの強い声に遮られた。声と同様に『ヒミコ』に向けたイヨの強い視線を受け、『ヒミコ』は一瞬たじろぎを見せる。その隙を突いて、イヨは言葉を続けた。

 

「この<ジパング>の国主たる『ヒミコ』の娘も『生贄』となったとなれば、民の不満も幾分か和らぎます。既に、民の不満は限界まで来ており、今回の『生贄』をヤヨイという事で強行すれば、その不満が母上に向かう事は必至です」

 

「くっくっく」

 

 続けたイヨの言葉を聞いている内に、『ヒミコ』の表情に余裕が戻り、イヨが話し終わる頃には、肩を揺らして笑いを忍ばせている状態となっていた。

 命を賭す程に覚悟を決めた諫言を笑われ、呆然とするイヨに、サラが見て来た物の中で最も醜い笑みを浮かべた『ヒミコ』が口を開いた。

 

「くっくっ……あはははは! 何を申すかと思えば、そのような事か!? それが、如何したと言うのじゃ。たかが民。妾に牙を向けたとしても、それが何程の物か?」

 

「……母上……」

 

 高笑いを発し、諫言を歯牙にもかけない『ヒミコ』をイヨは愕然と見つめる。イヨにとってみれば、『民こそ国』という事を教えてくれた人物と、今、その理を鼻で笑う人物が同一人物である事が信じられなかったのかもしれない。

 

「『生贄』はヤヨイという娘じゃ。儀式は今宵。理解したのなら下がれ!」

 

「……」

 

「下がれと申しておる!」

 

 口を開く事の出来なくなったイヨに厳しい言葉が飛ぶ。再度の退席の指示を受け、イヨは立ち上がった。

 目の前に座る母親に頭を一つ下げ、イヨは振り返って出口へと歩いて行った。

 

「妾はガイジンを好まぬ!」

 

 去って行くイヨの後を追うために立ち上がり頭を下げたカミュ達に、『ヒミコ』は鋭い視線を向け、口を開いた。

 

「良いな! くれぐれも、要らぬ事をせぬが身の為じゃぞ」

 

 顔を上げたカミュの瞳を射抜き、『ヒミコ』が忠告のような言葉を残す。まるで、カミュ達が何かに介入する事を見透かしたような言葉に、リーシャとサラは驚きを見せるが、カミュは毅然とその瞳を見返していた。

 ただ、何故か、この部屋に入ってから一度もメルエはカミュのマントから出て来る事はなく、そればかりか、立ち上がったカミュの腰に強くしがみ付き、何かに怯えるような様子を表していた。

 

 

 

 謁見の間を出たカミュ達は、そのまま屋敷の出口に向かう訳ではなく、イヨの姿を探した。

 先に謁見の間を出ていたイヨの姿は既になく、左右を見渡してもあるのは物珍しい<ジパング>特有の物だけ。

 

「……アンタはどっちに行ったと思う?」

 

「ん?……イヨ殿か? 私に解る訳がないだろう」

 

 迷路のように大きな屋敷の中で、方向を探るカミュは、隣に立つリーシャへと問いかける。しかし、リーシャにしてみれば、この屋敷に入るのは初めての事であり、何故自分にそのような事を聞くのかが解らなかった。

 

「え!? リーシャさんでも解らないのですか?」

 

「なに!? 何故、私が知っているんだ? 私もこの屋敷に入るのは初めてだぞ」

 

 それでも、何故か期待を宿した瞳を向けていたサラの驚きに、リーシャの疑問は強くなって行く。正直、リーシャが感じる疑問は、常日頃にカミュがリーシャにぶつけている疑問と同様の物なのだが、それに気が付くリーシャではなかった。

 

「……先程の会話を聞いた限り、行き先は『生贄』を監禁している部屋だろう……」

 

「それこそ、私に解る訳がないだろう!?」

 

 カミュが言う目的地の名を聞き、リーシャには益々理解できない。いつの間にかカミュのマントから出て来たメルエと同じように、首を傾げるしかできなかった。

 

「……わかった。ならば、出口はどっちだ?」

 

「なに!? カミュが覚えているのではないのか?」

 

 諦めたように溜息を吐いたカミュの次の質問に、リーシャは再び驚きの声を上げる。この広い屋敷の入り口からの順路など、リーシャは覚えていなかった。てっきりカミュが覚えているだろうと考えていただけに、目の前で自分の問いかけに対し、静かに首を横に振るカミュを見て、更に驚いた。

 

「……う~ん……そうだな……そこの通路を右ではなかったか?」

 

「右だな?」

 

 リーシャは、自信のない記憶を掘り起こし、道を指し示す。それに対し、自分が憶えている物と違う事を確認したカミュは、一つ頷きを返し、リーシャの指し示す道を目指して歩いて行った。

 先程『ヒミコ』から感じていた不可思議な威圧感から解放されたサラは、ようやく笑みを浮かべ、カミュの後を続いて通路を右に曲がる。どこか釈然としない想いを胸に、リーシャもその後を続いて歩いて行った。

 

 

 

 何度目かのリーシャの指示で曲がった通路の先に、物置のようなみすぼらしい部屋が見えた。何の躊躇いもなく、カミュはその部屋へと近付き、その木戸を横に引く。

 

「だ、だれじゃ!?」

 

 突如開けられた木戸に、中にいた人物の警戒した声が響いた。その声は、先程聞いていた幼くも良く通る声。この国の皇女であり、女王『ヒミコ』に唯一意見が言える存在が持つ声であった。

 

「……申し訳ありません……道に迷ってしまいました」

 

「……そなた達か……」

 

 静かに頭を下げるカミュに、一つ息を吐きだしたイヨは、再び厳しい視線をカミュに向けた。その視線の強さに、メルエは再びマントの中へと隠れ、リーシャとサラは思わず身構えてしまう。

 

「……まぁ、良い」

 

 暫し厳しい視線を向けていたイヨだが、ふと視線を外し、溜息を吐き出した。そして、まるでカミュ達を無視するかのように、自分の目の前に座る女性へと視線を移し、その手に持った小刀で、女性を縛っている縄を切り始めた。

 木で出来た柱に括りつけられるように縛られたこの女性こそが『生贄』として告げられたヤヨイという女性なのだろう。泣き腫らしたであろう瞼は赤く腫れ上がり、頬は涙の痕をくっきりと残していた。

 

「これで良い。ヤヨイ、そなたは逃げ、此度の生贄の儀式が済むまで、どこかに隠れておれ。そして、儀式が済んだ後、早急に婚儀を済ませてしまうのじゃ。良いな?」

 

「……しかし、イヨ様……『生贄』のお告げは私です。私がいなければ、儀式は終わりません」

 

 縄を切ったイヨは、自分よりも年上の女性に対し、諭すように声をかける。対するヤヨイと呼ばれた女性は、まるで子供のように、涙声で訴えていた。その涙を見たイヨの顔が一瞬の曇りを見せるが、すぐに笑顔に戻し口を開く。

 

「ヤヨイは何も心配せんで良い。儀式は終わる。終わるまでは、どんな事があっても隠れておるのじゃぞ?」

 

「……イヨ様……」

 

 イヨの言葉に、再び涙を流したヤヨイは、不意に上げた視線の先に居たカミュ達を見て、身体を強張らせる。

 例え、今ここから逃げ出したとしても『ガイジン』と称される異国の者に見られては、隠れている事も出来なくなるのだ。

 

「大丈夫じゃ。後ろの者達には、何も話させん。安心せよ」

 

「……はい……」

 

 幼子をあやすように言葉を紡ぐイヨの瞳を見て、ヤヨイは一つ頷きを返す。それを見たイヨは、ヤヨイに布を被せ、顔を見られぬように立ち上がらせた。

 

「出口までは送る。しっかりと隠れておるのじゃぞ」

 

 イヨの言葉に頷きを返したヤヨイを連れ、歩きだしたイヨを追ってカミュ達も出口へと歩き出した。そのまま屋敷内を歩き、最初に入って来た門へ来た時、イヨは門番に用を命じ中へと入らせる。

 

「そなた達には申し訳ないが、ヤヨイを連れて隠してやってはもらえないか? そして、早急にこの国から去れ。この国には、旅の者にとって有益な物など、今は何一つない」

 

「……」

 

 イヨの最後の言葉は、年相応の表情を浮かべた哀しい物だった。

 自国を心から愛し、誇りに想っている者だからこその、哀しき言葉。それが持つ意味を理解したからこそ、カミュは、自分よりも幼い娘に、深く頭を下げた。

 

「……ヤヨイ……幸せにな……」

 

「……イヨ様……」

 

 カミュからヤヨイに視線を移したイヨは、一言発した後、素早く踵を返し、中へと消えて行った。

 暫しの間、呆然と中を見ていたヤヨイの背中を押したリーシャがカミュへと視線を向ける。一つ頷いたカミュがサラへと視線を送り、それに応じたサラがヤヨイの隣へと移動した。

 

 ヤヨイを取り囲むように配置されたカミュ達。メルエが立つ方角に布を被り、後方は背の高いリーシャが立つ。傍から見れば、奇妙な格好をした『ガイジン』が奇妙な行動をしているぐらいにしか見えないだろう。

 元々は、排他的な国でもある<ジパング>。不満により、カミュ達に情報を漏らしはしたが、好意的に見ている訳ではない。奇妙な行動をする異国の者の姿を見ても、目を合わせぬように道を空け、近寄らないように離れて行った。

 

 ヤヨイの言葉通りの場所へと歩くカミュ達は、一軒の建物に辿り着く。そこは物置小屋と呼べる程に小さく、中に入っても下へと続く階段しかなかった。

 ヤヨイの指示で階段を降りると、そこは本当に物置きであり、いたるところに埃を被った物が転がっている。もはや使っていないだろう水瓶のような大きな瓶も何個も置かれていた。

 

「旅の方、ここまでありがとうございました。私はイヨ様のお云い付け通り、この場所に隠れます。くれぐれも……くれぐれもこの事は……」

 

「解っています。この場所の事は他言致しません。我々は、ここから出た足で、この国を出ますので」

 

 カミュの瞳を涙目で見つめ、その返答を受けた後、ヤヨイは奥に転がる大きな水瓶の中へと入って行った。

 カミュの返答に抗議の瞳を向けるリーシャとサラを無視し、カミュは階段を昇って外へ出て行く。

 

「カ、カミュ! このまま……このまま この国を後にするのか!?」

 

「カミュ様! 何とかなりませんか!?」

 

 外に出ると、既に太陽は傾き始め、夕刻を知らせる赤い光を降り注いでいた。空を見上げ、少し眉を顰めたカミュの後ろから、矢継ぎ早に言葉が飛んで来る。

 リーシャもサラも、言いたい事は一つ。

 『この国を、イヨという皇女を救えないのか?』という物だった。

 

「……儀式は今夜だ……」

 

「ですから、何とかイヨ様を救う方法はないのですか!?」

 

 ただ、空を見上げたまま呟いたカミュの言葉に対する反応は、リーシャとサラでは異なった物だった。

 サラは先程と同じように、カミュを動かそうと声を上げていたが、リーシャはカミュの表情を一目見た後、瞼を閉じたのだ。

 

「……カミュ……今夜、動くんだな?」

 

「えっ!?」

 

 瞼を開けたリーシャは、未だに空を見上げるカミュの横顔を見て、表情を引き締めた。

 それは正しく『戦士』の表情。

 戦いに向けて心を決めた『騎士』の表情。

 その表情と言葉を聞き、サラは驚きの声を上げる。サラには、先程のカミュの言葉とリーシャの言葉が繋がらなかったのだ。

 

「……イヨという娘は、『生贄』の身代わりになり、気付かれぬように『生贄の祭壇』まで行くだろう……」

 

「そ、そこで、<ヤマタノオロチ>を倒すのですね?」

 

 リーシャと視線を合わせたカミュの言葉に、ようやくサラが理解する。しかし、その理解は仮初の物で、カミュが首を横に振った事によって否定された。

 サラの考えは何処までも甘い。それが露呈した瞬間でもある。

 

「<ヤマタノオロチ>が、この国の『神』である事に変わりはない以上、外部の者が『神』を討伐する事は許されない。それを成すのも、命じるのも、この国の者でなければならない」

 

 首を横に振ったカミュが視線を向ける事なく、口を開く。

 その内容は、サラが期待した物ではなく、むしろ否定的な物であった。

 

「ならば、イヨ殿を救うだけなのか?」

 

「そ、そんな……『生贄』の身代わりを買って出た方ですよ? 自分だけが生き延びる事を良しとする訳がありません!」

 

 リーシャの問いかけ。

 サラの抗議。

 二人の異なる発言を受けたカミュの瞳の色が、冷たい物へと変わって行く。

 

「もし、この国の皇女を救う為とはいえ、<ヤマタノオロチ>を外部の者である俺達が討伐したとなれば、あのヤヨイという娘も、イヨという皇女も、『神に背いた者』となる。それは、この国で生きる権利を奪うどころか、処断の対象にさえなり得る筈だ」

 

「……そ、そんな……」

 

 珍しく、言葉を多く紡ぐカミュの話を、聞き洩らさぬように聞いていたサラは、呆然とカミュを見つめる事しか出来ない。しかし、反対に、リーシャは先程と同様に、瞼を閉じて、カミュの言葉を聞いていた。

 

「私達の旅に同道させるのか?」

 

「えぇぇぇ!? で、ですが、この国を放って逃げ出す訳ありませんよ!」

 

 予想もしなかったリーシャの言葉に、サラは大いに驚いた。

 しかし、サラの言うように、イヨのジパングを想う心は疑いようもない。故に、この国の現状を放って、自分だけが逃げ出すとは思えなかったのだ。

 

「この『死の旅』に連れて行ってもどうしようもない。だが……逃げると言う事に関してはあり得るだろうな」

 

「何故ですか!? カミュ様も、イヨ様のお心を聞かれた筈ではありませんか!?」

 

「…………サラ………うるさい…………」

 

 カミュの言い分に反論しようと、自然とサラの声が大きくなって行った。

 カミュのマントの中にいたメルエが顔を顰めて抗議を発する。夕刻という事もあり、周囲を忙しなく動いていた人々の視線もカミュ達に集まっていた。

 

「とりあえず、外で夜になるのを待つ」

 

「……わかった……サラ、行くぞ」

 

 周囲の視線が集まって来た事に気付き、カミュは表情を失くして踵を返した。

 国の外へ出ようとするカミュのマントに再び潜り込んだメルエを見て、リーシャもその後を追う。カミュが意図する事、リーシャが考えている事が解らず、サラはその場で暫し呆然としていた。

 

 

 

「カミュ。しかし、どうするつもりだ?」

 

 閉まり行くジパングへの門を眺めながら、リーシャはカミュに問いかける。しかし、カミュは口を閉ざしたまま、入口を背にして歩き出していた。仕方なく、リーシャもその後を追って歩き出す。

 木々が生い茂る場所の中で少し開けた場所でカミュ達は野営を準備し始めた。その場所からはジパングの入り口の門がしっかりと見えている。船から持って来ていた干し肉を火で炙った物を口にしながら、四人は焚き火を囲むように座った。

 

「メルエ、寝ても良いが、私が起こしたらすぐに出発だぞ」

 

「…………ん…………」

 

 眠そうに目を擦るメルエに微笑みながら、リーシャは自分の膝の上にメルエを抱きかかえた。一つ頷いたメルエは、リーシャの膝の上で丸くなり、そのまま瞼を閉じる。暫くすると、静かな寝息を立て始めた。

 

「カミュ様……先程、『逃げる事はあり得る』とおっしゃいましたが……」

 

 メルエに笑顔を向けた後、表情を引き締めたサラが、火に薪をくべるカミュに先程の件を問いかける。暫し、サラの言葉を無視するように、焚き火を弄っていたカミュだったが、一つ息を吐いた後に重い口を開いた。

 

「……そのままの意味だが……」

 

「何故ですか? 私には、イヨ様がそのような方には思えません」

 

 カミュの返す言葉に、サラは疑問に持っていた事を口にする。

 それはリーシャも同様だったのだろう。

 メルエの髪を梳きながら、視線をカミュへと移した。

 

「生贄の祭壇へ行けば解るさ」

 

「??」

 

 リーシャも、そして疑問を口にしたサラも、カミュの返して来た答えの真意が掴めない。再び疑問を口にしようと開きかけたサラの口は、カミュの言葉に閉じられる事になる。

 

「……あのイヨという皇女を説き伏せるのは、アンタ方の仕事だ……アンタ方が望んだ事の筈。救った後の事まで、考えてはいない」

 

「……カミュ様……」

 

 サラとリーシャの顔を交互に見ながら、カミュは口を開く。

 その言葉は、サラの胸に重く圧し掛かった。

 『自らが口にした望みならば、自らで何とかしろ』と言うのだ。

 

 再び、サラの悩みが増えて行く。リーシャはカミュの言葉に疑問を持っているも、今は寝息を立てるメルエの髪を優しく梳いている。

 まるで、『考えるのは自分の仕事ではない』とでも言うように。

 

「……リーシャさんも考えて下さい……」

 

「ん?……ああ。しかしな、サラ。カミュも言っていたように、『生贄の祭壇』に行き、イヨ殿にもう一度お会いしない事には、何も出来ないのも事実だろう?」

 

 恨み事のように言葉を溢すサラに視線を送ったリーシャは、然も当然の事のように話をし始めた。その内容に、サラも答えを返す事が出来ない。

 今、この場で出る答えなど、いざその場に立てば変わってしまう可能性があるからだ。それを、この『戦士』である女性は、本能なのか、経験なのかは解らないが、知っているのだ。

 

「サラも少し寝ておけ。おそらく『生贄』は夜更けに運ばれる筈だ」

 

「眠る事なんてできませんよ!」

 

 サラを落ち着かせようと掛けたリーシャの言葉に、サラは抗議を口にする。

 考える事が多すぎて、眠る事などできないと。

 そんなサラにリーシャは苦笑を洩らす。

 

「それでも、寝ておけ。この先の旅では、どんなに辛い事があった時も、どんなに苦しい事があった時も、しっかりと眠る事が必要な時が出て来る筈だ」

 

「……ソレの言う通りだ。眠れる時に眠っておけ……」

 

「……はい……」

 

 リーシャの言葉を肯定するように続いたカミュの言葉に、サラは渋々と頷きを返した。横たわるサラに笑顔を向けたリーシャは、メルエの髪を梳きながら武器の手入れを始める。

 太陽はジパングとは真逆の西の空へと沈んで行き、既に地平線の影に隠れようとしていた。

 『日出る国』の陽が落ちて行く。

 その国の行く末を示すかのように。

 

 

 

 




読んで頂き、ありがとうございました。

明日は更新できないと思いますので、今日中にもう一話更新致しました。
この「イヨ」という人物。
史実では「壱与」とか「台与(とよ)」と云われています。
漢字はもっと難しい物ですが、卑弥呼の後継者として記されている者です。
後継者といえども、その存在は実子という訳ではなく、卑弥呼の親族であったとも、弟子であったとも云われており、その人物像は謎に包まれています。
また、倭国の王は、卑弥呼ではなくこの壱与であったとも考えられており、歴史上、かなり面白い人物でもあります。

この物語では、少し久慈川式解釈と妄想が入っていますので、ヒミコの実子として登場して頂きました。また、名前の読み方に関しても、私が学校で習った時の読み方が「イヨ」であった事から、「トヨ」ではなく「イヨ」とさせて頂きました。
賛否両論がおありかと思いますが、ご理解頂ければ幸いです。

ご意見、ご感想を心よりお待ちしております。

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