牙狼 異世界黄金騎士伝   作:コレクトマン

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ゾーラの里~Destiny~ 後編

 蒼牙はマスターバイク牙狼型で、リンクが落下した先――ゾーラの里へ走り込んだ。

 

 そこはまるで水の神秘ともいえる美しい場所だった。

 

「ザルバ、リンクが落ちた場所はここか?」

 

『ああ、それと僅かだがホラーの気配を感じる』

 

 このゾーラの里にもホラーが存在するとなるとより危険な状況かもしれないと判断し、リンクを探しているとゾーラ族の警備兵らしき者たちが蒼牙を囲んだ。

 

「そこの者、止まれ! 何者だ!」

 

「俺はソーガ。このあたりに俺の仲間が空から落ちていくの見て探しに来た。仲間はこどもだが、そちらで何か聞かされていないか?」

 

「つい先ほど泉に何かが落ちたとの報告があった。警備を二人つけ、里の奥へ案内する」

 

 蒼牙の情報を聞いてゾーラ族は心当たりがあった。つい先ほどゾーラの泉に何かが落ちてきたこと。そう判断したゾーラ族は蒼牙をゾーラの里に監視を付ける形で案内するのだった。

 

 

 

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 ゾーラの泉に落とされたリンクが次に目を覚ました場所は、サラサラっと滝が流れる音が響く場所だった。

 

「う~~ん……どこだ、ここ?」

 

『ここはゾーラの里だ。相変わらずせっかちな小僧だ』

 

「お前が空から落ちてくるところを目撃して追って来たんだ。全く、人騒がせな奴だ」

 

「ザルバにソーガ? ここがゾーラの里?」

 

「どうやら目が覚めたようじゃな」

 

 リンクはゾーラの里を見渡しているとそこにキングゾーラが現れる。重厚な体と威厳ある声でリンクを迎える。

 

「わあっ!?」

 

「無礼な! キング・ゾーラ様の御前であるぞ!」

 

「よい。その方達は何者じゃ?」

 

 リンクがハイラル王家の使いであり、“水の精霊石”を求めていることを説明した。

 

「ゾーラの王さま! 水の精霊石がどこにあるのか教えてください!」

 

「ハイラル王家の使者よ、すまんが今、余はそれどころではないゾラ。余の可愛いルト姫が、ジャブジャブ様に飲み込まれてしまったのだゾラ」

 

「ジャブジャブ様?」

 

 ナビィはジャブジャブ様について何も知らない様子。すると側近のゾーラ族が説明する。

 

「ジャブジャブ様は泉に住まうゾーラの守り神だ」

 

「ええ!? じゃあ守り神がお姫様を食べちゃったの?」

 

「そういうことになる。しかし、ここ最近ゾーラ族の誰かが消息を絶つ事件が起きていたのだが、それが今日の夜に限って止まった。お前たちは何か知らないか?」

 

 どうやらホラーキャンドリアによる被害が前から起きていたようだ。そのホラーを討滅したのはいいが、ホラーに喰われてしまった者はどうすることもできない。

 

「……その事件の犯人は魔物によるものだった。俺がその魔物を討滅したが、その魔物に喰われた可能性を考えると、残念だが……」

 

「そうか……すまない、ハイラル王家の使者よ。こうも立て続けに事が起きたのはあのガノンドロフとかいう奴が来てからだ!」

 

 ゾーラ族がガノンドロフの名を言い、リンクはガノンドロフがここにも訪れていたことに驚いていた。

 

「ガノンドロフがここにも!? ──で、姫はどうなったの!?」

 

「おそらく……まだジャブジャブ様のお腹の中だゾラ。この国一番の美男子を選んで、明日はめでたい婚礼の日だというのに……。おお、余の可愛いルト姫よ……」

 

 ルト姫に対する思いがいっぱいのキングゾーラを見て蒼牙は重度の親バカだと思った。側近のゾーラ族が蝶ネクタイをキリリッと整えてる姿があった。

 

 何かとこの場にいないルト姫の気持ちをなんとなく察した蒼牙であった。だが、やるべきことが分かったことに変わりはなかった。

 

「分かった。俺たちがジャブジャブ様の中に入り、ルト姫を救出しに向かう。無事に救出したら水の精霊石を渡してくれないだろうか?」

 

「おお! お安い御用ゾラ。ジャブジャブ様に向かう前にこの武器を持っていくといいゾラ」

 

 キングゾーラが側近にある武器を渡すよう指示を出し、側近はその武器を蒼牙に渡す。その武器はブーメランだった。

 

「ド・ボン家に代々伝わる、決してなくならない武器ゾラ。きっとジャブジャブ様の中で役に立つゾラ」

 

「感謝します、キング・ゾーラ様。……行くぞ、リンク」

 

「ああ、行こう!」

 

 蒼牙はリンクと共にゾーラの泉にいるジャブジャブ様のところに向かうのだった。

 

 

 

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 ゾーラの泉についた蒼牙たち。そこにジャブジャブ様が待ち構えていた。

 

「でけ~~……これがジャブジャブ様?」

 

「確かに人間一人飲み込むぐらいわけないね」

 

『こいつはゾーラ族にとって守り神だからな。お供え物で釣ったらどうだ?』

 

 ザルバの助言で蒼牙はゾーラ族からジャブジャブ様のお供え物の魚を取り出した。

 

「ゾーラの守り神、ジャブジャブ様。ルト姫を助け出すため、そのお口をお開けください」

 

 ジャブジャブ様は蒼牙の持つ魚に気づいたのか口を大きく開け、そのままお供えの魚ごと蒼牙たちを吸い込んだ。

 

「わあーっ!? すげえ食い意地!」

 

「くっ……! 巨体差で代替察していたが、ここまでとは……!」

 

 そうして蒼牙たちはジャブジャブ様に喰われる形で体内に入ることに成功する。

 

 

 

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 ジャブジャブ様の体内は心臓の鼓動が反響し、内部はゼリー状の壁だらけの有機的な迷宮。蒼牙はザルバを通してホラーの気配がないか聞き出す。

 

「ホラーの気配はありそうか? ザルバ」

 

『ああ、間違いない。ホラーの気配を感じる。しかもこの感じ、蒼牙が小僧と初めて会った際に討滅したゴーマと同じ気配だ』

 

「ゴーマと同じ? ──まさか」

 

 ゴーマと同じように元凶に憑依する可能性を考えていると、悲鳴が響く。

 

「ソーガ、あっちから悲鳴が!」

 

「ああ、急ぐぞ!」

 

 悲鳴が聞こえた場所に急いで駆けつけ、辿り着くとそこにはジャブジャブ様に寄生する魔物”電撃旋回虫バリネード”と倒れこんで動けないゾーラの子供がいた。

 

 そのゾーラの子供がルト姫と判断した。バリネードから放たれる電気クラゲの電撃を躱しつつもリンクはルトを救出し、蒼牙は魔戒剣に鞘を付けたまま叩きつけ、電気クラゲを追い払った。

 

 ルトをバリネードから離したところでリンクはルトの無事を確認した。

 

「君がルト姫かい? 無事でよかった! ”パチーンッ”──痛って!!」

 

 しかし、リンクの心配は裏腹にルトは鰭でリンクを”パチーンッ”と引っぱたかれる。

 

「無礼者っ! わらわはゾーラのプリンセス、ルトなるぞ!」

 

 まさかルトに引っぱたかれるなんて思いもしなかったリンク。蒼牙はルトをなだめながらもキングゾーラの頼みで助けに来たことを告げる。

 

「……父上に?」

 

「ああ。お前にとって嫌かもしれないが、父や他のゾーラ族がお前のことを心配しているんだ。ここにいるのは危険だ」

 

 蒼牙がそう言うが、ルトは父親のところに戻ることを拒んで蒼牙たちから離れる。

 

「いやじゃ!! そなたたちこそさっさと帰れ!」

 

「待てっ! むやみに動き回るな!」

 

「あっ、ちょっと……はっ!」

 

 ルトを追っていると、電気クラゲがルトに襲いかかろうとしている個体を見つけたリンクは剣で切り裂いた。

 

「危ない!!」

 

『斬るな小僧、感電するぞ!』

 

「へっ? あばばばばばばっ!?」

 

 ザルバの忠告は既に遅く、リンクは切った電気クラゲの電撃によって感電する。蒼牙は魔戒剣の鞘で叩き落としながらリンクの下に駆け寄る。

 

「リンク、大丈夫っ!?」

 

「大丈夫か、リンク!」

 

「な、なんとか……ケ、ケガはないか?」

 

「下手に動けばクラゲといった魔物が襲い掛かる。ここは一人で逃げるより一緒に行動した方が安全だ」

 

 蒼牙の言うことはもっともだった。ルトは蒼牙たちを見て、バリネードの方を刺した。

 

「ならば……あの石を拾ってまいれ! ジャブジャブ様に飲み込まれた時に落としたのじゃ」

 

 バリネードの下の触手下にルトの言う石があった。するとザルバがその石の正体を知っていた。

 

『あれは水の精霊石”ゾーラのサファイア”だ! 嬢ちゃん、とんでもない物を持っていたようだな!』

 

「何っ? だとすると……」

 

「そうじゃ! そなたたちがあの石をわらわのもとに持って来たら、帰ってやってもいいゾラ!」

 

 そんな大事なものをと考える暇もなく、リンクが取りに行こうと向かうが蒼牙がそれを止める。

 

「待てっ、むやみに突っ込むな! あの魔物の触手に掴まれば面倒だ! これを使え!」

 

 蒼牙はキングゾーラからもらったブーメランをリンクに渡す。

 

「これならクラゲや触手を遠距離で倒せる。それで援護するんだ」

 

「そうか、これなら。分かった!」

 

 役割分担が決まったところで行動しようとした時に今度はルトに引き止められる。

 

「こら、待て!! わらわを一人にするつもりか!?」

 

「そんなことを言ってる場合か! ルト姫はどこか安全な場所に……」

 

 ルトにどこかに隠れるよう言おうとした時にザルバから凶報が告げられる。

 

『蒼牙っ、ホラーだ! このタイミングでお出ましだ!』

 

 バリネードの近くに素体ホラーが現れ、ホラーはゴーマと同じようにバリネードに憑依した。するとバリネードの体の形が人型へと変わり、触手とクラゲをモチーフにした黒い衣装を纏う白い肌をした女性のホラーが誕生した。

 

『こいつはバリネードを憑依した個体。さしずめホラー”バリネード”だな。奴が憑依したバリネードの能力を使ってくるはずだ、注意しろ!』

 

 ホラーの出現により事態が悪化していく。ホラーを初めて見たルトは、恐怖を感じていた。

 

「な……なんじゃ、あの禍々しい魔物……なのか? それとも……」

 

 ルトが戸惑う中、ホラーバリネードは触手を操りルトを拘束してバリネードのもとに引き寄せた。

 

「きゃああぁぁっ!!」

 

「あっ、しまった!」

 

「マズい!」

 

 バリネードは捕らえたルトを観察し、喰らうのにちょうどよい獲物だと判断した。

 

『貴様……中々旨そうな種族だな?』

 

「ひっ……! い、いやっ……!」

 

「そうは……、させるかーっ!!」

 

 リンクはブーメランでルトを拘束しているバリネードの触手と、取り巻きのクラゲを切り裂く。落下するルトを蒼牙がキャッチして安全な場所に移した。

 

「大丈夫か?」

 

「あ……ありがとうゾラ」

 

 ルトの礼の言葉を聞いた後に蒼牙は魔戒剣を引き抜き、バリネードの方に向ける。

 

「貴様の陰我、ここで断ち切る……!」

 

 そして魔戒剣で円を描いてゲートを開き、牙狼の鎧を召喚して纏う。ルトは蒼牙が金色の鎧を纏う姿に見とれていた。

 

 バリネードは蒼牙に先手を打たせぬよう電気クラゲを向けさせるが、リンクのブーメランによる援護で電気クラゲは次々と落とされる。

 

「ソーガ、今だ!!」

 

「承知っ!」

 

 蒼牙は魔導ライターで牙狼剣に翡翠の炎を纏わせる。そして炎を纏った牙狼剣による斬撃を放ち、バリネードを両断。バリネードは黒い霧となって爆散した。

 

 ホラーバリネードの討滅を確認した後に鎧を解除する蒼牙。するとリンクが水の精霊石をもってやって来た。

 

「ソーガ、水の精霊石あったよ!」

 

「そうか……」

 

 蒼牙たちはルトのところに戻り、水の精霊石を渡すのだった。するとルトから本当のことを蒼牙たちに明かした。

 

「実は……わらわはジャブジャブ様に飲み込まれたのではない。隠れていたのじゃ」

 

「えっ? ど、どうして!?」

 

「大方、父親が勝手に結婚を決められて嫌気がさしたのだろう」

 

 蒼牙はキングゾーラの言ってた言葉を覚えていた。ルトの気持ちを聞かずに勝手に婚姻を決められて家出したのだろう。それもジャブジャブ様の腹の中という場所に。その蒼牙の考えは当たっていた。

 

「そうじゃ! 父上に、勝手に結婚を決められて……。あのオヤジは”余の可愛い姫、姫”とあーだこーだと口出しするが、自分の気持ちはちゃんとある。わらわは……父上の人形じゃないゾラ!」

 

本当のことを言えなかったことを言えたことでルトの瞳に涙がこぼれる。蒼牙はルトの気持ちを理解し、リンクは姫としての立場が大変であると同時に、親がいるルトのことをうらやましいと思った。

 

「……そっか。お姫さまって色々大変だね。でも――うらやましいよ。オレの親代わりだったデクの樹サマはもう死んじゃって会えないんだもの」

 

「だがお前には、お前の帰りを待つ者がいる。娘に対して過保護的なのは否定できないところだが、それでもキングゾーラはお前のことを大切にしてたはずだ」

 

「ソーガの言う通りだよ。心配して待っててくれる父さんがいるんだから――帰ろうよ」

 

リンクと蒼牙の言葉にルトはドキッとし、少し顔を赤らめた。

 

「……まあ、そなたたちなら、一緒になってやってもよいゾラよ?」

 

「「え?」」

 

あまりにも小さな声だったので聞き取れなかったリンク達。ルトは水の精霊石をリンク達に手渡した。

 

「これは水の精霊石……ゾーラのサファイア。わらわのフィアンセに授ける石じゃ。いわばゾーラのエンゲージリング……これをそなたたちに授ける!」

 

「何っ!?待てっルト姫、それって……」

 

言葉の意味を察した蒼牙。しかしリンクはまだ理解していなかった。知らないが故の幸せというべきだろうか……

 

「やった!精霊石が三つそろったぞ!ありがとーっ!」

 

「おいっリンク!……ルト姫、その話はまた訪れた時に!」

 

蒼牙は先に行ったリンクの後を追いかけるのだった。

 

「フフッ……必ず帰ってくるゾラよ。わらわの黄金騎士様」

 

ルトの意味深な言葉を呟き、リンク達はジャブジャブ様から出るのだった。

 

ルトもキングゾーラのところに戻った際に水の精霊石のこと聞かれてこう答えた。

 

「ゾーラのサファイア、もうあげちゃった」

 

「なぬっ?」

 

それを聞いてキングゾーラは驚き、婚姻の相手と思わしきゾーラ族が泡を吹いて気絶するのだった。

 

 

 

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 蒼牙はマスターバイク牙狼型を召喚し、リンクを乗せてハイラル平原を風を突き抜けるように走らせる。リンクはこの時にゼルダとの約束が果たせると高ぶっていた。しかし蒼牙はリンクとは真逆に嫌な予感がよぎっていた。

 

「ザルバ、ハイラル城に何か気配は?」

 

『マズいぞっ蒼牙!今、ハイラル城に邪気が蔓延してやがる!』

 

その予感が的中していた。マスターバイク牙狼型を止め、ハイラル城がある方角を見ると夜空を焦がす紅蓮の光があった。

 

「燃えてる……ハイラル城が……!」

 

「ガノンドロフが動き出したか……!飛ばすぞリンクっ、しっかり掴まってろ!」

 

 蒼牙はマスターバイク牙狼型を加速させ、一気にハイラル城へと走らせる。ここからが歴史のターニングポイントであることを今の蒼牙たちは知らない。

 

 ──続く。

 

 

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