「ローンチ1時間前です」
「分かった。各班、現時点のNoGo判定を」
「システムGo」
「発射機構Go」
「燃料Go」
「エンジンGo」
「機体Go」
「サーマルGo」
「発射シーケンスGo」
「発射システムオールグリーン」
彼女らの目の前には複数のモニターが鎮座している。
モニターには2段のロケットを備えた宇宙軌道投入用宇宙開発ロケット通称『スーパースペーストリップ君21号機』が写っていた。
全長65m、直径は約5.3m。補助固体エンジンを場合によっては2基〜4基を備える純粋な開発用ロケットである。
今回のロケットのペイロードにはミレニアムエンジニア部宇宙開発研究会謹製の気象観測衛星『スペースサンフラワァ君2号機』を一基、通信衛星『スペーステレグラム君1号機』を一基搭載。
すでに液体酸素及び液体酸素が注入され、発射の時を待っていた。
「発射30分前です。カウントダウンを開始します」
「無事に飛んでくれよ?21号機!」
「飛びますよ、会長」
カウントダウンが発射時間に向けて少しづつ減っていく様子に、さすがの航空宇宙開発研究会長も緊張が隠せえない。
それもそうだろう、この1射に研究会の宇宙部門全員の青春と人口衛星開発費用を含めて700億の開発費用が掛かっているのだ。
開発研究会宇宙開発部門だけではない、開発の際に提携したミレニ重工業、ミレニ電気など製造その他に関わった技術者らが固唾を飲んで見守っている。
場所は変わってミレニアムエンジニア部室にあるテレビ。
そのテレビにはカウントダウンが始まっている『スーパースペーストリップ君21号』が写っていた。
そこにはエンジニア部の全員が手元の変態技術を詰め込んだ工作物を放って食い入るように見ていた。
『まもなく打ち上げ10分前です。実況はここラガシュ宇宙センターから私リノがお送りいたします!スーパースペーストリップ君21号機は夜2時ごろから移動を開始し、本日お昼の3時ごろに発射される予定です。今そのロケットは私の後ろは5km先の射場で打ち上げの時を待っています』
「いよいよですね、部長!」
「そうだね、ぜひ成功して欲しい所だ!」
彼女らは少女とはいえエンジニア。宇宙開発ロケットとは先端技術の粋を集めて出来上がった技術の塊であることからして興味の10000%くらいはある。
そしてエンジニア部の中の研究会とはいえ、その実は唯一にして最大の研究会を有しているのがエンジニア部。その部長ともなれば、どうしても固唾を飲まずには得られないのだ。
とテレビの実況アナがうるさいのでテレビの画面を公式実況に切り替えた。先ほどの遠くからの映像とは打って変わり射場からのカメラ映像が映し出される。
アナウンスが発射7分前を告げる。
『安全系準備完了、射場系準備完了』
『発射6分前です。射場の天候は晴れ、気候は摂氏16.1℃、南南東の風3.2m/sです。打ち上げに気候による特段の影響はありません。本日の打ち上げ時刻はキヴォトス標準時15:38:00です」
そのアナウンスがされてもカウントダウンは続いていく。
そして管制から何が司令されたかがアナウンスされる。
そして打ち上げから30秒前。
『打ち上げから30秒前です、ウォーターカーテン散水開始。
15秒前フライトモードオン。システムオールグリーン、メインエンジン燃焼開始、補助エンジン燃焼開始、リフトオフ!』
メインエンジンと補助ロケットエンジンから燃焼炎が放出され勢いよく上昇していく。
『スーパースペーストリップ君21号機は、202⚪︎年午後3時38分00秒にラガシュ宇宙センターから打ち上げられました』
そしてすぐにロケットが見えなくなり、地上管制からの追尾経路表示に切り替わった。
『打ち上げから1分30秒です、現在ロケットの飛行は正常です」
「よし、よし!順調に飛行しているぞ!」
そして無事、スーパースペーストリップ君21号機は衛星を静止軌道へ投入するための軌道へ投入を成功させた。
『2段エンジン2回目の燃焼を終了、衛星を分離』
『いよっし!』
アナウンスから漏れ聞こえる発射管制から聞こえる少女たちの歓声は大きく、拍手も起きていた。
衛星を静止軌道へ投入するための打ち上げロケットと衛星との分離が確認できたからである。
そしてその歓声はエンジニア部でも起きていた。何より研究会の人員が多いとはいえロケットの打ち上げは最大の事業であり、研究会だけでは頭数が足らずをえない。
そのため安全装置としての破壊処理機構等、やその他爆破ボルト等の開発作成など助っ人で打ち上げまでの間大なり小なり関わってきたエンジニア部員も多くいるのだ。
そのロケットが無事に飛んだことで、関わった喜びを隠すことができるエンジニアがいるだろうか?
エンジニア部は歓声で湧き、万歳三唱をしたお陰で後日研究中に喧しいとクレームがついたという。
そんな平和なお話も過去のこと。かつて存在したゲヘナ学園の雷帝に対し技術的に優越していることを示すべく、超兵器を生み出す雷帝に対抗したミレニアムのエンジニア部航空宇宙開発研究会が送り出した戦略兵器が生み出された。
その存在は雷帝が失脚した今、ミレニアムにおいて知っている者は少ない。
その戦略兵器は航空宇宙開発研究会が有するラガシュ宇宙センターの敷地内地下に厳重に保管されている。
但しミレニアムに危機が迫った場合、セミナーのうち代表者一名及びエンジニア部代表者一名の決済により発射命令が降れば即座に発射される。
その弾頭は弾道状に飛行し、その終末突入速度はマッハ10以上に到達し運動エネルギーだけでも絶大である。
場合によってはその弾頭は通常で無い事とする事もあり得る。
ミレニアムが持つ最大にて最強かつ使用できない兵器。
それが『ピースキーパー君』である。
それがまさに発射されようとしていた。
場所は宇宙センター地下にある、通常時はロケットの管制を行う管制室だった。
「本気なのか、セミナーは?」
「間違いないありません、会長。セミナーと部長の緊急決済が降りている事は確認済みです」
「・・・・・・分かった」
廊下をもの凄い勢いで歩いている者は研究会会長と副会長だった。通常時はロケット開発に勤しんではいるが、ピースキーパー君の管理も同時に行っている。
有事に至ってはピースキーパーの発射権者となるのだ。
デカデカと歩きとある場所に辿り着く。
“関係者以外立ち入り禁止”と書かれた部屋の前でIDを翳し、さらに物理キーを挿入しドアを開けると中には壁の中に埋まった小さい金庫が二つあった。
各々が二つの金庫を開錠し中に入っていたキーを取り出す。
そしてその部屋にあった入ってきたドアとは別の扉を開けると彼女らの目の前には更に地下へと通ずる通路が広がる。
その場所を小走りで走り、管制室へ入室する。
管制室内には、いつもは研究室を兼ねた管制室内で和気藹々とロケット談義を交わし研究をしている研究会員がシリアス顔で待機していた。
会長と副会長がそれぞれ別の離れた椅子に座り、キーを目の前の鍵穴に差し込む。
「副会長、其方はセミナーへ最終確認を頼む。私は部長へ連絡する」
「分かりました」
彼女がホットラインの通話機を手に取り部長に連絡を入れる。
『やぁ会長。ウタハだ。決済内容は変わらないよ、座標E105,N20,地点ロの二へピースキーパー君11号機と12号機の発射オーダーだよ。これはセミナーのみならずエンジニア部総員としてピースキーパー君の発射はやむを得ないという総意になる。状況は極めて切迫している、また“司祭”への警告とパフォーマンスを含めた事でもある』
「司祭・・・・・・もしや!?」
『あぁ、つまりはそういうことだ。発射状況は規定に従い私の端末に表示されているから安心したてくれ』
「分かりました」
「会長、セミナーとの連絡取れました、間違いはありません!」
「ウタハ部長、ありがとうございます。これから発射オーダーに従い発射を実施します」
『頼んだ』
ホットラインを切った彼女は、副会長へ告げる。
「部長への確認が取れました。我々はピースキーパー君11号及び12号を発射する事となります。諸元入力は終了しましたか?」
「終了しています」
「各班、配置につけ。配置につき次第各システムNo,Go判定を」
「システムGo」
「発射機構Go」
「燃料Go」
「エンジンGo」
「機体Go」
「サーマルGo」
「発射シーケンスGo」
「サイロ内部機構Go」
「会長、システムオールグリーンです」
「よし。副会長、ありがとう。発射オーダーに従いピースキーパー君を発射する。合図は私が行う、副会長は合図と共にキー操作を実施してくれ」
「分かりました」
「よし。はぁーーーーーー・・・・・・・・・・・・
ファイアーワン!」
彼女のコールと共にキーが捻られる。
それとともに安全装置が解除されたピースキーパー君11号と12号は配置されたミサイルサイロから直角に発射され、少しづつ弾道軌道を描くように姿勢制御により空の彼方までに飛んでいった。
ピースキーパー君11号12号は弾道軌道を描き飛行、目標地点手前で弾頭が分離し着弾する。
その威力は、キヴォトス人であっても弾頭の爆発効果範囲であれば無事では済まない。その弾頭が6個空から降り注ぐのはまさに神の天罰の一撃。
今回は2発の発射オーダーであるため合計12発。
色々ありキヴォトスの危機に対応しようとしたリオ会長であったが、カクカクシカジカあってエリドゥに立てこもり未知のロボット軍団と防衛戦をしていたシャーレとミレニアムのゲーム開発部とC&Cの説得に応じたリオ会長が遂に。
色々キヴォトスの危機を作ってくる司祭やら何やらにブチギレてオーダーを入れた弾頭は、蛇口を締めるが吉と言うばかりにロボット軍団が沸いてくる出口周辺とその周辺に盛大に着弾。
神の一撃(物理)な12発は終端速度と弾頭爆薬を持ってして半径1kmのロボット軍団を見事に吹き飛ばした。
キヴォトスの平和が訪れたのである。
なおその後連邦生徒会にウタハ部長と航空宇宙研究会長が色々詰められたが、リオ会長の政治圧力によりすぐに解放される事となるが、今は語るのは辞めておこう。