こんにちは。この作品をお読みくださり誠にありがとうございます。
「おっ、シトラリの作品あるやんけ!」と作品をタップし、作者名を見た読者様の半分くらいはこう思ったことでしょう。
「……またあんたか」と。
そうです私です。綺良々、ニィロウ、千織、ムアラニに引き続き、今度はばあちゃんです。これからも改めてよろしくお願いします。
そんなに流行ってないって言ってたじゃん
───茹だるような暑さの砂漠。スメール特有の青々とした草木は1本も生えず、日陰に赤い実を実らせた変わった形の木が転々と生えている。
その中を、1人の男が進んでいた。
「…ア"〜……あづい…」
前髪から落ちた汗が眼鏡に当たり視界が塞がれる。男は眼鏡を外して服の裾で汗を拭ったが、その服も砂だらけ。眼鏡のレンズはさらに汚れてしまった。
「…はぁ。……ここがさっきの樹海と同じ国とか……冗談だろ」
男は眼鏡を諦めて懐にしまうと、フードを被って歩き出した。太陽のおかげで方向は見失う事は無いが、焼き付けるような太陽と足場の悪い砂がどうも鬱陶しい。男はため息を吐くと、南西の方角目指して足を進めるのだった。
それから数日後。寒暖差の激しさに悩まされながらようやっと砂漠を抜けた男は、ついに目的の国へと到着した。
「……おぉ」
先程までの砂漠とはもちろん、彼が旅をしたどの国とも違う。璃月のような高低差がある地形に目を惹かれるがあちらとは違い平らな地面が多い。水源も豊富で、見たことの無い生物が空を飛んでいた。
「……この景色は、記しておこうかな」
男はその場にしゃがみこむと、懐から万年筆と紙を出し、目に入る景色を文に直して紙に記していく。満足そうな顔をして紙を仕舞うと、今度は写真機取り出して1枚撮った。
「……うん、この国ならいい刺激になりそうだな」
男は先程川で洗って綺麗にした眼鏡をかけ直した男は、旅の目的地「ナタ」へ1歩を踏み出した。
<幻目>
──炎の国、ナタ。
6つに別れた部族で構成され、長い間アビスと戦争を繰り広げていると言われている。
聖火闘技場を中心にしてそれを囲むように、こだまの子、懸木の民、流泉の衆、豊穣の邦、花翼の集、謎煙の主の集落が建てられており、年に一度、聖火闘技場でアビスと決戦をする戦士を選ぶそうだ。
……そんな説明を国に入ってすぐにある「こだまの子」の集落で出会ったギャルっぽい女の子に教えてもらった僕は、とりあえず聖火闘技場に行こうと荷物を背負い直す。
「…しっかし、アンタ稲妻人?こんなところに来るなんて珍しいね」
「ああ、ちょっと気分転換にね。ここなら流石に稲妻の物はないだろうって」
「稲妻の物?」
白に近い金髪を揺らしながら首を傾げるギャルに僕は頬をかきながら目を逸らした。
だが、直後に裏切られることになる。
「…んー、確かに稲妻の物は無いかもしれないけど、最近コレが流行ってるんだよね」
ちょうど近くの露天で売られてた書物を指さして言うギャル。丁寧にネイルが施されてて、ほえー手が込んでんなぁと思いながら指先を視線で追っていくと。
「…な、……なん、なんで…っ?」
「え、どしたの?」
僕はフラつきながら、その露天に近寄り店主に声をかけた。
「あ、あの」
「ん?おお、旅の人かい?何か買ってく?」
「え、ああいや、その本なんですけど」
「…これかい?いやぁ、こういう本はこっちだと珍しいからね。売れ行きが良くてこれ1冊しかないんだ。ほんとは3冊続くシリーズ物なんだけどね」
その言葉を聞いて、僕は膝から崩れ落ちた。
「ちょ、ちょっとホントにどうしたの?」
ギャルちゃんが心配そうに話しかけてくるけど、僕はそれどころじゃない。
「……ここには僕の本がないと思ったのに…」
突然泣き出した男に周りの視線が集まる中、僕はガックリと項垂れた。
「…ぁ〜、マジかよ」
それから数十分後。とりあえず買い取った本を太陽に当てながら、集落を出る登り階段の先、七天神像の近くの草原に寝転がった僕はふっかーいため息を吐いた。
まさか、ナタにまで僕が書いた本が出回ってるとは。この国ならそれを気にせずに執筆に専念できると思ったのになぁ。
「で、その本がどうかしたわけ?」
「ん?……あ、さっきのギャルちゃん」
俺を追いかけてきたらしいギャルちゃんは、しっぽを揺らしながら俺の横に腰掛け、自分に指を指す。
「…ウチ、シロネンって名前ね。ここでモノづくりやってんの。よろ〜」
「ごめん、自己紹介もせずに。僕は
「その、しがない物書きさんが書いた本にしては中々の反応だったけど?」
「こ、これはその、所謂黒歴史なんだよ。勢いで書いたというか」
体を起こして、目を逸らしながら言った隙に、手に持っていた本を取られてしまった。その数ページパラパラと読まれる。
「コレ、ウチも読んだことあるけど…そんなに変なところはなかった感じだけど?……登場人物も別に………あ、あ〜」
「だから見られたくなかったんだよ」
何かに気がついてニヤニヤと僕の顔とページを見比べるシロネンの視線に耐えかねて後ろを向く。
「なるほどね〜、確かに、コレは嫌だわ。……だって、このめちゃくちゃカッコイイ事してる主人公、眼鏡なしのアンタにそっくりなんだもん」
「ぐぅ…!」
「ちょっと眼鏡とってみてよ」
「やだよ」
そうなんだ。この、僕が酒の席で神子に喧嘩売られて、酒とその場の勢いで書いてそのまま発行してしまった作品はこれでもかと僕を美化した主人公がハチャメチャに善行を重ねるというものだった。
なんか売れ行きがいいものだから調子に乗って2巻目を出し、3巻目を書いてる最中に自分がどんだけ恥ずいことをしてるのかを自覚。速攻で打ち切りみたいな完結を叩きつけ、僕は旅に出た。
なんで旅に出たかと言うと、稲妻はその本のおかげで有名になってしまってとても落ち着いて執筆ができる状態じゃなかったからだ。国を出て璃月、モンド、スメール、フォンテーヌと回ったが、どの国にも僕の本が売られていた。最後の希望としてナタに向かったんだけど、やっぱしダメみたいだ。
あ、スネージナヤは行ってないよ。だって寒いじゃん。暑いのはまだいいんだけど、寒いのは苦手なんだよ。
シロネンは僕の黒歴史をパタンと閉じると「ん」と返してくる。
「まぁでも、ああやって店にはあるけど、読んでる人は少ないかも」
「え、本当?」
「ウチら、どっちかっていうと運動の方が好きだからね。ここの部族もダンスしてる人が多いっしょ?」
「…あ、ああ。アレ、ダンスなんだ」
地面に手を着いたり頭を着いたりしてクルクル回ってるけど、稲妻とは違うんだなぁ。
僕は何度目かわからないため息を吐き、本を仕舞い立ち上がる。
「とりあえず、落ち着いて書けそうな場所を探してみるよ。色々ありがとう」
「別にいーよ。新作出来たら読ませてね」
シロネンに礼を言って手を振ると、僕はそのまま道なりに歩き出した。
「いやぁ、ほんとうにどこの国とも違う景色だなぁ」
まぁ、同じ景色がある国もほとんどなかったけど。てくてくと西に向かって歩き、さっきシロネンに名前を教えてもらった茶色いテペトル竜の親子の日向ぼっこを見ながら、ちょこっと遠目から模写したりして進んでいると目的地が見えてきた。
「…おぉ」
途中にあった高台的な場所から見ると、切り立った崖の開けた場所の中に一際大きい岩があり、その上に大きなコロシアムがそびえ立っている。
多分部族のモチーフなんだろう、6色の幕がかけられていて、この国の中心になるところだとひと目でわかった。
「とりあえず、ここで情報収集しようか」
どうやら橋を渡って行くらしい。落ちないように慎重に渡る。下を見ると30mはある。これ落ちたらどうやって上がって来るんだ?
そんなことを考えながら橋を渡りきると、今度は人の多さにびっくりする。
コロシアムの周りはバザーが開かれてるようで、売り子の呼び声が沢山聞こえてくる。その通りをとる人たちの服装も、ナタ独特の部族に分かれた物。
ただ、まぁ。国自体が暖かいから仕方ないけど、露出が多くないかな?青色の色の装束を来た女性の丸出しの腹を横目に見る。下も短いショートパンツにサンダルだし。水辺に住んでる部族なんだろうか。
って、あそこにいる白髪三つ編みの女の子に至ってはもう水着だ。…わ、なんかでっかいサメに乗ってる…、あれも竜なの?
「…っと、危ない」
僕は凝視しすぎてずり落ちそうな眼鏡を指で上げた。
こんなに人がいると、もしかしたら「視えて」しまうかもしれない。眼鏡をちゃんと上げておこう。
「っと、ひとまず酒場にでも行こうかな」
時間を見るともうすぐ夕方だ。看板を見ると宿も充実してるようだし、今晩はここに泊まって行こうかな。
僕は看板の案内を見ながら、酒場に向かって歩き出した。
──その途中。上に吊るされてる看板を見ていた僕は、前から来た人と肩がぶつかってしまった。
「…っと、すみません」
「…んぅ?ダレよ?」
肩に衝撃と「あうっ」という女性の声が聞こえて、僕は目線を下げた。反射的に謝罪が口から出たところで、床にペタンと女の子座りした女の子が身体を左右に揺らしていた。
紫がかった長い髪に、青い瞳。頬やむき出しの肩にも部族的な模様があり、側頭部にリングのような髪飾り。
──まるで物語の中から出てきたかのような絶世の美少女が、顔を赤くしてフラフラと立ち上がっていた。
「……っ、だ、大丈夫ですか?」
しばしの間見惚れてしまってから慌てて助けに入る。
「…ぅ…ん、だ、大丈夫よ。ちょっとフラついただけ」
俺の手を支えに立ち上がった女の子は俺の顔と服装を見ると目を丸くした。
「あっ!…もしかしてアナタ、稲妻人?」
「えっ、はい。そうですど」
「本は読むのかしらっ?」
「結構読みます……?」
「よしっ、ちょっと来なさい」
「えっ、え?」
え、なにこれ。なんで僕急にナタの超絶美少女に腕掴まれて酒場に引っ込まれてるの??
あと、多分だけどこの子酔っ払ってる。だってなんか足取り怪しいし。本当はここで色々問いたいことが多くあるんだけど、押し問答をこんなところでしてても目立つだけだ。とりあえず付いてってみよう。
僕は周りのナタの人達にすごい目で見られながら酒場まで連行された。
あれから少し移動して、酒場の席に座った僕に気まずそうに女の子は言う。
「……あ〜、その。急にレンコウして悪いわね」
「い、いや、大丈夫だけど。……逆ナンならもうちょいいいのがいた気がするよ?」
「逆ナン……?裏向きってコト??」
おっと話が通じてない。多分これ逆向きのナンだと思われてる?ナタって原始的な印象も受けるからこういう言葉は流行ってないのかな。
「いや、なんというか。随分大胆だなぁって」
「えっ!?…ち、違うわよ!?ソウイウのじゃなくて、…ちょっとイライラしてたのよ。誰も愚痴を聞いてくれる人がいなくて。…そんな中で話せそうな人がいたから、つい」
「その愚痴と俺が稲妻人なことに関係があるってこと?」
まぁこっちも酒場に用があったし問題ない。何故かびっくりした顔で歩いてきた店員さんに適当に注文をしながら聞くと、女の子は運ばれてきた酒を受け取りながら頷いた。
「えっと、そうなの。サイキンあった事なんだけど…」
「あ、多分暗い話なんだろう?とりあえず乾杯して、酒が進んでからでもいいよ?」
「……じゃあ、そのコトバに甘えるわ」
なんなんだろうか、この空気。まぁ初対面数分で飲み会したからこうもなるか、珍妙な状況に後でこれも記しておこうかななどと苦笑してジョッキに注がれた酒を持ち上げる。
女の子も「んんっ」と咳払いをすると、自分の酒を掲げた。
「じゃ、乾杯」
──10分後。
「それでねっ!ワタシ、す〜っごく楽しみにしてたのにイキナリ完結よ完結っ!しかも終わりもチョー雑なのっ!主人公が特に大好きだったのにぃ〜!」
「うぼぁ」
────僕は、さっきの発言を全力で後悔していた。
多分最速のシトラリヒロイン小説
シトラリ引きますか?
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引くに決まってんだろぉ!!
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マーヴィカも欲しいんじゃ……!!
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どっちも引くよォ!