隣に住んでる美少女は、ばあちゃんらしい   作:猫好きの餅

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 高評価、感想ありがとうございます。なんかもう皆予想しててちょっと悔しかったですね笑。

 ガチャ結果は250連でシトラリ2凸餅、マーヴィカ無凸餅という最高の滑り出しとなりました。今年もよろしくお願いします。


こんな可愛い子の拳骨が効くわけない

 

 

「──それでねっ!ワタシ、す〜っごく楽しみにしてたのにイキナリ完結よ完結っ!しかも終わりもチョー雑なのっ!主人公が特に大好きだったのにぃ〜!」

「うぼぁ」

 

 

 乾杯するなりごくごくと一杯目を飲み干した女の子が話だしたその「愚痴」とは、まさかまさかの僕の作品のことだった。

 

 ちなみに彼女の話を要約すると、元々娯楽小説を読むのが好きで、色々稲妻から取り寄せてたところ、過去一でハマったシリーズがあったそうな。それにどハマりしてら新刊を日夜楽しみに待ち、新刊をルンルンで読んでみたら超雑に終わらされてキレた、と。

 

 それでヤケ酒して愚痴ろうとしたんだけど、娯楽小説を読んでるナタ人が少ないからそんな相手もおらずムカムカが収まらなくなりそうだったところで僕に出会ったと。

 

 え、僕は今どうしてるかって?

 

 当然、この場から逃げたいのを我慢しようとしたところに、ついに女の子の「このシーンが特に良かったんだからね!」パートに突入。

 

 果てはセリフを声真似付きで音読し出した時はもう突っ伏して口から何かが出ていきそうな感覚に陥った。

 

「は、ははは…、君はその作品が好きなんだね…」

「そうよっ!今まで読んだ中で1番…トクに主人公ワタシの好みドンピシャだったのよ!」

「ま、まぁ完結しちゃった物はしょうがないし、次のやつに…」

「イヤよ!続きが出ないならワタシがあの作品の流行を作るのっ!あんなにいい作品が廃れてくのはゼッタイに嫌っ!」

「うぼぁ…」

 

 うう、この子は純粋に褒めてくれてるのはわかってるんだけど、一言一言が僕のボディに響いてくる。違うんだよそんなに大層な考えで書いたんじゃないんだよー。

 

「……そういえば…名前、聞いてなかったわね」

「あ、そういえばそうだね。……僕は幻目。しがない旅の物書きさ」

「ふーん。ワタシはシトラリ。…まぁ、他のコトは周りにでも聞いてちょうだい」

「わかったよ。お嬢さん」

「なによお嬢さんって!子供アツカイしないでくれるっ?」

「おっとすまない。シトラリさん」

 

 やっぱり年頃だからか、お嬢さんはダメだったか。

 

「……で、ワタシばっかり話しちゃったけど、キミはこの作品を知ってるの?」

「…うん、知ってるよ。結構有名だよね」

 

 話を聞くと、ナタだと娯楽小説自体が流行ってないせいでこの作品のことを愚痴りたくても相手がいなかったらしい。

 

 途中飛んでくる僕の作品の褒めちぎりは勘弁願いたかったけど、こうして話してみるとなんだろう、あんまり少女って感じじゃない。なんか言い回し古いし、僕と同じで見た目よりトシ取ってるのかな?

 

 そんなことを考えながらシトラリさんの話を聞いて相槌を打っていると、頬杖を着いた彼女がプクっと頬をふくらませた。

 

「…むぅ…、続き見たかったのに…」

 

 いや違うな。歳いってる人が出せる顔じゃない。僕が旅してきた国の中にも美人さんはいたけれど、シトラリさんはなんかこう、抜けて可愛らしく見える。

 

 まぁ絶対に顔には出さないけど。

 

 その後の彼女の愚痴に付き合い、酒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────30分後。

 

「……ねぇ、アレ……何人なの?」

「ん?……あの店員さんですか?………え、1人ですけど」

「えぇ?…そうなの?」

 

 コレはアレだ。シトラリさん、完全に酔っ払ったな。なんだからさっきからニコニコしながら椅子の上で左右に揺れてるし、ステーキ1口頬ばってはニコニコしながら椅子の上でぴょんぴょん跳ねてるし。

 

「ねぇ、そういえばさっき、ショウセツ書いてるっていってたわね?」

「うん」

「なにかいてるのよ?」

「まだ途中なんだよ。とても人に見せられるものじゃない」

「なんれよ〜!」

 

 ああもう、呂律回ってないじゃんか。1時間くらい飲んでるし、そろそろ潮時だろう。俺は店員さんを呼んで会計を済ませた。

 

「…シトラリさん、帰りは?」

「…うにゅ……オロ……が……かえに…」

「なんて?」

 

 こりゃダメだ。潰れてしまった。そこに酒場のマスターらしき女性が話しかけてくる。

 

「あら、潰れちゃいましたか?」

「そうみたいです。空いてる宿ってあったりしますか?」

「……すみません、本日はもういっぱいで…」

「そうですか」

 

 それなら先に部屋取ってから酒場来れば良かったな。聞くとこの子は「謎煙の主」と呼ばれる部族の司祭さんらしい。……しかし、グラスバーバってなんなんだろ。みんな口にしてたけど、その場に老婆なんていなかったじゃん。

 

 肩を支えてるシトラリさんの方をちらっと見たがやっぱりそうには見えない。見た目より歳いってる人は知り合いに何人もいるけど、ここまで若々しい言動をする人はいなかったはずだ。

 

 謎煙の主の集落までは数kmあるみたい。でもこの子1人置いてくのも違うし、部屋がないなら集落まで連れて帰るしかない。

 

 絵面大丈夫かな?酔っ払った女の子を持ち帰りしてると勘違いされそうで怖い。

 

 このままおんぶも色々問題が起きそうだし、僕は闘技場から出たところで懐から札を1枚取りだした。

 

 そして、僕はその札に妖力(・・)を込める。すると寝落ちしたシトラリさんがふわりと浮かび上がった。

 

「ちょっと不格好だけど、これなら触れずに運べるな」

 

 僕が歩き出すとふわふわ宙に浮いたシトラリさんも独りでに空中を追随しだす。普段は荷物に使う術だけど、まぁあながち間違いはないから別にいいか。

 

 チラリと彼女の顔を見るとすやすやとあどけない寝顔をしている。

 

 外はもう日没、集落に着く頃にはもう夜になりそうだ。僕が集落に着いた時の言い訳を考えながら道を歩いていると。

 

 

 ─僕の耳に風切り音が聞こえた。

 

 ドスッという音が足元から聞こえたので視線を下げると、僕の靴ギリギリに矢が刺さっている。

 

「お前っ、何故ばあちゃんを連れている?」

「えっと、君は?」

 

 崖の上から降りてきたのは、闇色のフードを被った男だ。冷たい瞳で俺を睨みながら、手にした弓に矢を番えて構えている。

 

 って、ばぁちゃん?誰のことだ?

 

「っと、ごめん。多分人違いじゃないかな?僕は今、この人を送ってく最中でさ」

「ばあちゃんは、僕が迎えに行く話しだった。ばあちゃんもそれを知っていたはずだ。……なのにお前が眠るばあちゃんを連れている……。おまえ、ばあちゃんに何をするつもりだ」

「ば、ばあちゃん?」

 

 ぐるりと辺りを見回して見るけど、ばあちゃんなんて見た目の人はやっぱり居ない。

 

「も、もしかして……君の言うばあちゃんって…この子のこと?」

「とぼけるな。この国に居る人で、ばあちゃんを知らない人なんていない。…ばあちゃんを離せっ!」

「いい!?」

 

 僕の脚に向かって放たれた矢を後ろに飛んで避ける。術の発動主の僕が動いたことによって、浮いたすやすやシトラリさんもすい〜っと僕に追随する。

 

 それがこの男の子には変に見えたようで。

 

「お前、どういう術を使ってるんだ?そんな術、ばあちゃんに教わったどの巫術にもなかった」

「い、いやこれは稲妻って国の術なんだって!」

「……イナズマ?」

 

 もしかして知らないの!?ナタの人は国から出ないって有名だけど、うっそだろ!?

 

「わ、わかった!降ろす!降ろすからっ!一旦攻撃を辞めてくれっ!」

「いやダメだ。知らない人の言うことは信じたらダメだってばあちゃんに言われてるからな」

「良い保護者だなホントにっ!」

 

 ダメだ。このままだと話も聞いてくれなさそうだし、シトラリさんを降ろすのにも札を出して詠唱しなければならない。一旦、この男の子には大人しくてもらうしかないみたいだ。僕は腰に着けた「神の目」を紅に光らせながら眼鏡を外した。

 

「…チッ、怪我しても文句言うなよ?」

 

 瞬間、身体に妖力が迸った。そして僕の古来の能力が発動し、彼の心の中の声がそのまま聞こえる。

 

『な、なんだあれは!?』

 

 ま、そう思うよね。心中では、狼狽しつつも、矢を放ってくるあたり訓練をしっかりとしているのだろう。ただ、どこにどう狙うのかは、僕の『覚妖怪』の読心能力で全て筒抜けだ。

 

 右脚、左肩、左手と思わせて脇腹狙い。後ろのシトラリさんに当たらないように気をつけて躱し、そのまま距離を詰めた。弓矢が当たらないことを目を見開いた彼は少しの間だけ目を閉じて後ろに飛ぶ。空中で目を開けた彼の身体に謎の靄が浮かび上がり、ゆらゆらと身体の輪郭に合わせて紫紺色に輝くそのオーラを纏った彼の速度が先程と見違えるほどに上がった。

 

 恐らく雷の神の目を持っているのだろう。瞬く間に後ろに飛んで空いた距離を詰め直した彼の拳が目の前に迫るが、読心でそれもわかっていた僕は流れるように掌底でクロスカウンターを合わせた。僕の掌底が彼の首元にモロに入る。

 

「ぐぅ!?」

「いいから、落ち着け」

 

 雷元素が彼の脚に集まったのを感じる。ノーモーションで跳ね上がった右脚を足裏で防ぐと、首元の手を襟に移してそのまま背負い投げた。

 

「ぐはっ」

「僕はただ、酔いつぶれたこの人を謎煙の主に送ろうとしただけだ。怪しいものじゃない」

「……」

 

 どうやらやっと落ち着いて考えが回ったのか、彼の瞳が揺れ始めた。心の中でも僕の発言と行動を思い返して自問自答を繰り返している。

 

「……ほんとう、なのか?」

「ああ。誓って、君のばあちゃんには指ひとつ触れてない」

 

 この子が彼女のことを「ばあちゃん」と呼んでいたということは、多分僕と同じ長命種なんだろう。僕がゆっくりとそう言うと、やっと話が伝わったのか、彼の身体から力が抜けた。

 

 僕が手を離すとゆっくり彼が起き上がる。何か言いにくそうにしている様子だ。まぁ、彼が誤解するのも仕方ない状況だったしと、なにか声をかけようとしたその時。

 

 僕の背後から、怒気がこもりきった声が聞こえた。

 

「アンタ…なんでオロルンを投げ飛ばしてるワケ?」

「ば、ばあちゃん!?」

「…っ!?」

 

 振り向いた僕の目の前にいたのは、据わった目をして、先程の彼と同じように白銀の靄を纏ったシトラリさんだった。あの術、1人で破れるものじゃないんだけど!?

 

 僕が何かを言う前に、彼女の腰だめに構えられた拳が発射された。咄嗟に炎元素と妖力で壁を作るが、バリンバリンと呆気なく突破される。

 

「───ウチの孫に何してんのよっ!!」

「ぐほぉっ!?」

 

 なんという威力。僕の腹に突き刺さった拳は一瞬にして意識を刈り取った。沈みゆく意識に引っかかったのは焦ったようなオロルンという彼の声。

 

「ば、ばあちゃんっ、そ、その人はっ」

「オロルンっ、ケガない?大丈夫だったの?」

「いや、そうじゃなくてその人は────」

 

 

 あぁ、今日ついてねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

 

 天幕から差し込む光で、僕は目を覚ました。傍らを見ると、神の目と眼鏡が置いてある。これがないと覚妖怪は大変なんだ。

 

 はてさて、ここは一体どこなのだろう。体を起こして周りを見ると、ここは天幕の中のようだった。

 

「お、起きたのね」

 

 聞こえた声に振り向くと、天幕の入口から遠慮がちに顔を出しているシトラリさんの姿が。彼女はそのままもじもじしながら僕の前まで来ると、勢いよく頭を下げた。

 

「ゴメンなさいっ!酔いつぶれたワタシを送ってくれようとしたのに、変なカンチガイで殴っちゃって…!」

「いやいや、大丈夫だよ。思い出せばオロルンが迎えにくる〜みたいなこと言ってたしね。余計なことをした」

「ヨケイなんかじゃ…、お腹は大丈夫?イタかったでしょ?」

「あはは、あれは効いたよ。一応防護術使ってたんだけど貫通されるとは」

 

 あの一撃でわかったことはこの人、かなりの猛者だ。こっちだって無駄に歳食っては無いから、あの時貼った防護術はとっさとは言え、そこらの攻撃では突破できないほどの硬さなのに、簡単に突破された。多分妖力で身体強化してなかったら危なかったかも。

 

「……うぅ」

「ああいや、嫌味とかじゃないんだ。…えっと、ここは?」

「ココは謎煙の主のウチの隣の空き天幕よ。ずっと住む人がいなかったトコだから、安心して使って」

「ああ、ありがとう。……えっと」

「な、ナニよ」

 

 聞いた方がいいんだろうか。………おばあちゃんなんですか?って。

 

 いや気になるんだけど、そもそも女性に年齢を聞くこと自体が失礼だし……。

 

「あ、そういえばあの男の子は?ケガ無かった?」

「ええ、大丈夫よ。あのコもアナタに謝りたいって言ってたわ」

「そうなんだ。……その、彼が言うばあちゃんって…」

「……そうよ。ワタシのこと。黒曜石の老婆って聞いたコトあるかしら」

 

 シトラリさんは自分に指さしながら言う。

 

「悪いわね、こんな年寄りに絡まれて、メイワクだったでしょ」

「いやいやそんなことないよ。……失礼を承知で聞くけど何歳くらいなの?」

「……はぁ、いつもならレディに年齢を尋ねるなんて…!って言うところなんだけど、まぁいいわ。そうね、……200、は超えてるわ」

 

 ヒいたでしょ?と目を逸らしたシトラリさんに僕は首を傾げる。

 

 200?そんくらいならわりとメジャーなっていうか、むしろ若い気すらするけど…。

 

「あれ、もしかして…ナタって長命種少ない?」

「長命種?…よくわからないけど、ワタシより年上は炎神様くらいかしら…」

「ああ、なるほど……」

「そ、それがどうしたのよっ…!」

 

 なんかわかったような気がした。酒場の周りの彼女を見る目や、距離の取り方、それに彼女自身の他人への態度も。

 

 僕は眼鏡を外し、能力を発動させる。

 

「……な、ナニ…?目の色が…」

 

 恐らく、彼女から見たら僕の瞳の色が変わったように見えたはずだ。

 

「いやね、シトラリさんも話してくれたからさ、改めて自己紹介をしようかなって」

 

 僕は困惑一色の彼女の目を見ながら、微笑んだ。

 

「…僕は幻目。稲妻の覚妖怪で…年は600と、32歳だよ。改めてよろしくね。お嬢さん」

「…えっ、……ええええ!?」

 

 

 

 

 

 

『と、年上〜っ!?ね、ねね念願の!?

…………マジ?』

 

 え、食いつくのそこ?

 






 シトラリも長命で周りが早く死んじゃうからしないだけで、本当は恋をしたいはずだと思って書いた話。

シトラリ引いた?

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  • 1凸
  • 2凸
  • 3凸〜
  • 未所持
  • 原神やってねぇんだ
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