隣に住んでる美少女は、ばあちゃんらしい   作:猫好きの餅

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シトラリ任務やって好感度あげてキャラスト読んでたら遅れました


お隣さんの悩み

 

 

 

 

 謎煙の主での生活が始まって数日。

 

「……ん、オロルンか。いらっしゃい」

「こんにちは。じいちゃん」

 

 僕はあの時襲ってきた彼とすっかり打ち解けていた。

 

 あの後すぐに謝りに来てくれた彼は僕のことを「じいちゃん」と呼んだ。理由は気になったけど、まあ年齢的に間違いじゃないし好きにさせている。

 

 僕は彼に茶を出すと、書きかけの原稿の脇に置いた万年筆を握り直した。

 

「なにを書いているんだ?」

「……ああ、この国には色々珍しいものが多いからね。それを使って何か話を書けないかなって色々と試してたところなんだ」

「なるほど。……そういえば、じいちゃんはこの前この国に来たばかりなんだろう?他の部族を回る前になんで謎煙の主に住んだんだ?」

「ほんとはそのつもりだったんだけどね。ここが一目で気に入っちゃったからだよ。それに拠点を構えてからいろいろと回る方が、色々と便利だしね」

 

 昨日、挨拶がてらに謎煙の主の集落お邪魔したんだけど、イクトミ竜の大族親様?になんか凄い懐かれてしまった。どうやら人の言葉は理解しているみたいで、読心で会話が成立した。

 

 集落の人にとって稲妻人(妖怪だけど)は珍しいらしく、色んな謎煙の主の民から質問責めにあった。その中でどこに住んでいるのかと問われ、素直に「シトラリの隣同士だよ」と言ってしまったものだから大変だ。

 

 僕は周りからシトラリとの関係をさっきを超える勢いで聞かれまくったのを何とか振り切り、天幕に帰ったところで同じ境遇を抜け出してきた真っ赤な顔のシトラリに遭遇し、そそくさと自宅に潜り込んでいくのを眺めた思い出がある。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、彼女とのお隣関係は良好で結構な頻度で顔を出してくれている。話によると八重堂の小説は彼女の家にほぼ全て揃ってるそうなので参考資料も多い。

 

 ふと、思いついた僕が新しい原稿に筆を走らせていると、それを見たオロルンが首を傾げた。

 

「さっきのと違うのを書くのか?」

「ちょっと思いついたものがあってね。シトラリ、数日間家を出てないみたいだし」

「つまり、ばあちゃんをおびき寄せるためのエサをつくるんだな」

「言い方」

 

 この子、歳の割に正直に育ってて逆に感心するな。

 

 

 

 

 

 

 

「シトラリ、起きてる?」

 

 シトラリが喜ぶものを作り終わり、野菜の世話があるとかで帰っていくオロルンを見送った僕は、彼女の家の戸を叩いた。中でごそごそ動いた音がしたと思ったら「ひゃぁ!」という声と何かが落ちた音と「……こ、コシが…」などという彼女の声が立て続けに聞こえてくる。

 

「……な、ナニ?」

 

 プルプル震えながら戸を開けたシトラリはちょうど眠っていたようだ。眠気まなこを擦りながら僕の顔を見上げてくる。

 

「ごめん、寝てたとこだったのか」

「ううん、大丈夫よ。昨日はちょっと遅くまで読んでたダケだから。…それで、ナニかあったの?……っ、また集落の人達に質問ゼめされたとかっ?」

「いやいや、それは大丈夫だよ。ただ2日くらい家を出てないみたいだからちょっと心配してね。その様子だと余計だったみたいだけど」

 

 出てきた彼女の雰囲気からして、これが普通なんだろうなと感じた僕が苦笑しながらそう言うとシトラリはブンブンと手と首を横に振る。

 

「ヨケイなんてっ、そんなことないわよ!ちょっと人と関わるのがメンドウなだけ。……あっ、幻目は例外よっ?」

「はは、ありがとう」

 

 コロコロ変わる表情と言い、やはり話してて退屈しないなこの子は。

 

 僕は謎の安心感を抱きながら、懐から例の物を彼女に渡す。

 

「さっき書いたんだけど、良かったら読むかい?」

「…コレ、原稿?」

「そう、覚孝行の続編」

「へぇっ!?」

 

 飛び上がったシトラリは原稿をゆっくりと受け取った。それを胸に抱いて「いいの?」と目で聞いてくる。

 

「続き楽しみだったんだろ?打ち切りに行くちょっと前の場面から続くように書き直してるから、不自然なところは無いと思う」

「で、でも……アナタ、これを書くのがしんどいって…」

「だから余計なお世話だったみたいだね。てっきり集落で色々聞かれて疲れちゃってるのかなって、元気出るように書いたものだから」

「……ぁ…」

 

 シトラリからか細い声が聞こえて、彼女の顔を見ると僕の顔を真っ直ぐ見たと思いきや、目線をあちこちに振り回している。

 

「わ、ワタシのため?」

「うん。完結した話を無かったことにするって作者失格だけどね」

 

 僕の言葉にまた抱いた原稿ごと首を振って否定したシトラリは、上目遣いで僕を見た。

 

「ありがとうっ、読ませてもらうわね」

「ああ」

 

 まるで花が咲いたような眩しい笑顔を食らって、やっぱりこれでばぁちゃんは無理があるなと僕は思った。

 

 

 

 

 

 

 その後僕は自分の天幕に戻り、気分的に外で筆を動かしていたのだけど。横から扉を開く音がしたのでそっちを振り向くと顔だけひょっこりと出したシトラリと目が合った。

 

 彼女は目が合うや否やびくっと顔を引っこめ、しばらくしてもう一度顔を出す。その様子が可愛いらしくて笑ってみていると、観念して家から出てきた。

 

「外で読むの?」

「……ぅん」

「ははっ、じゃあ茶を淹れようか。稲妻茶しかないけど、飲む?」

「…いただくわ」

 

 急須に茶葉を入れてその上からお湯をかける。少し待って湯のみに注いだらシトラリが座る椅子の横の台に置いた。

 

「こうして外で読むのはハジめてね」

「いつもは家の中で読んでるの?」

「ええ。いつもシトラリンの上で横になって…って、ゴロゴロしながら読むのって変じゃないわよね!?」

「変じゃないさ。家でくらいリラックスしないとね」

 

 あの神子ですら寝っ転がりながら稲荷寿司を喰らい、小説を読んでるんだからそのくらいいいだろうとは思う。ただまぁ、寝ながら物を食べてるのは行儀悪いとは個人的に思うけど。

 

「きゅぅぅぅぅ……全肯定……」

 

「…何か言った?」

「え!?な、なんでもないわよ!?」

 

 なんかイクトミ仔竜の鳴き声みたいのが聞こえた気がするけど……。

 

 シトラリは湯呑みを両手で持ち、ふーふーと息を吹きかけて冷ましながらひと口飲んだ。

 

「…ふぁ…、初めて飲んだけどおいしいわね」

「だろう?いろいろな国を回って色々な茶を飲んだけど、やっぱり稲妻の茶が1番だな」

 

 そういいひと口茶を飲む僕の顔に視線を感じた。彼女の方に戻すともう一度目が合う。

 

「…ねぇ」

「なんだい?」

「アナタは…これまでも色々な国を旅してきたの?」

「まぁ、そうだね。100年くらいは稲妻にいたけど、その前は転々と」

「それなら、色々な人とも出会ってきているわよね。仲がいい人だっていたんじゃない?」

 

 そう話したシトラリの顔が俯いたのを見た僕は彼女が言わんとしていることがわかった。

 

 長寿特有の悩み、人との死別。この前彼女はこの国で長寿なのは自分と炎神様くらいだと言っていた。つまり、それ以外の人とは死別をしてきたということだ。

 

 僕はお茶をもう一口飲む。ほっと息を吐き出して、そうだなぁと話し始めた。

 

「たしかに、いたね。その人たちはもうこの世にはいないとは思うけど」

「……それって、辛くないの?」

「シトラリはどう思ってるの?」

「…わ、ワタシは……」

 

 シトラリも開いた原稿を膝に置き、お茶をひと口呑んだ。そして彼女の目線が壁の方に向かうので僕も追う。

 

 シトラリは、壁に描かれたひとつの落書きを見てそうね、と口を開いた。

 

「……やっぱり、辛い。別れにじゃなくって、人と出会う度に、別れの時のことを考えてしまうのが…」

「気持ちはわかるよ。なんで、自分だけって。僕にも出会うのが面倒になった時代もあった」

「……今は違うってイイ方ね」

「ああ。……後悔したからね」

 

 僕の言葉に彼女は目を見開く。

 

「後悔?」

「試しに、150年ほど山に引きこもってみた。自分の知る人が全員居なくなったあとで山を出てみたらね。………いや、困ったよ。街が、人が、物が、まるで別世界のようになってたんだからね」

「……」

「当然、人は生きているうちに進歩していく生き物だ。街に起きた変化も自然の摂理、当たり前の事だったんだけど、当時…僕は世界にひとり、置いていかれたような気がしたんだ」

 

 僕は手元のお茶を眺める。

 

「確かに別れは辛い。でも、別れを認知出来ない方がよっぽど辛かった。お茶の味はいつまで経っても変わらないって言うのに、人が一代代わっただけで同じ場所が、同じ街が全くの別世界に見えるんだ。……だから、僕は筆を取った」

「……小説を書き始めたのね」

「ああ。いくら妖怪でも記憶力はそう人間と変わりない。でも寿命は人の何十倍もある。だから経験した出会いや別れ、出来事を忘れないように、書き留めておくって事にしたのさ」

「そう……なのね…」

 

 話を締めて茶を飲み干し、湯のみを置いて隣を見ると、彼女は何かを考えているようだった。だから、ひとつ釘をさして置こうかな。

 

「今のは僕の体験談だから、君が気にすることじゃないよ。ただ、長生きからのひとつの助言程度に思ってくれればいい。君と僕とじゃ境遇が違いすぎるからね」

「……うん、わかった。…ありがとね」

「どういたしまして。お茶のおかわりはいるかい?」

「貰うわね」

 

 その後はお互いに無言で過ごした。横をちらりと見ると原稿に集中しているようだ。……あ、仕込んでたギャグシーンにツボったらしい、肩が小刻みに震えている。

 

「…………そんなに面白かったかい?」

「…っ、ふふふっ……ええ。モデルが横にいると尚更っ…!」

「やっぱり黒歴史を掘り返すんじゃなかったか…」

 

 僕の書いた「覚孝行」はその名の通り、お人好しだけが長所の主人公が行く先々で人々を助ける物語。人を助けるためなら自分はどうなっても構わないと言わんばかりの勢いで人助けを重ねる姿に人気が出たとか聞いた事があるけど、返せばただの無鉄砲とも取れる。

 

「……でも、そうね。あなたに会えてよかった」

「……っ、なんだよ急に」

 

 なんか、シトラリの口調が柔らかくなったような気がする。前は三人称や同時にアクセントが着いていたような気がしたけど、それが抜けた気がする。

 

「……ふふ、これからも長生き同士、よろしくね」

 

「ああ。長生きだから、僕だけはいなくならないさ。だからこうしてまた話そう」

「……そうね」

 

 シトラリは僕の顔をじーっと見つめながら、原稿を抱いて微笑んだ。

 

 

 

 

 




すごく丁寧にシトラリの恋を仕上げてる

シトラリデレ率

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